天才魔術師、初めての授業①
前のエピソードで
ちょこっとフリッツさんの口調を変えました
内容に変更はありません
ペンとノートを準備してわくわくとした面持ちで見上げているレオナルドとレティーツィアにフリッツはクスリと笑みを溢してからすぐに真面目な表情で授業を始めた。
「適性検査の時に説明されたと思うが、魔術の基本六属性は覚えておるかの? 」
「火、水、土、風、ひかり、やみの六つがきほん六ぞくせいと言われています 」
レオナルドが直ぐに答えるとフリッツはうむ、と頷いて何処からか黒板を取り出すとそのまま『火』、『水』、『土』、『風』、『光』、『闇』と基本六属性を書いていく。
突然出てきた黒板にレオナルドとレティーツィアが目を丸くしていると悪戯が成功したかのようにフリッツはニヤリと笑った。
「これも魔術の一つ、闇属性の魔術じゃな 」
「やみのまじゅつ……、わたくしも使えるようになりますか? 」
レティーツィアはフリッツの言葉を繰り返してから瞳をキラキラと輝かせて、そのままの勢いで身を乗り出す。
フリッツはレティーツィアの様子に苦笑を溢しつつも頷く。
「諦めなければ、きっとのう。 闇属性の魔術は使えるようになるのが一番難しいと言われておるから努力は必要になるがの 」
「はい、出来るまで頑張りますわ! 」
「闇属性の魔術は『黒魔術』と言われとって、主に空間に干渉する魔術の事を言う。 黒板が突然出てきたのは収納の魔術を使って異空間に入れていたからじゃ。 重さを感じずに物を持ち運べるからとても重宝するの。
黒魔術には他にも転移の魔術もある。 これはとある場所から行ったことがある別の場所に時間を掛けずに移動が出来る 」
転移の説明をしたフリッツがその場から突然姿を消し、レオナルドとレティーツィアが目を見開いていると二人の後ろから声が掛かる。
「こんな具合にのう 」
レオナルドとレティーツィアは声のした方に振り返りフリッツが今まで居た場所から自分達の後ろへ転移した事を認識した。
「凄い! 」
思わずと言ったようにレオナルドが声をあげる。フリッツが今度は転移を使わずに歩いてまた二人の前へと戻り黒板の『闇』と書かれた場所に黒魔術、収納、転移と説明した事を書いていく。
「まぁ黒魔術はさっきも言ったが一番難しいと言われておるから練習するのは一番最後になるけどのう 」
フリッツは全て書き終えると振り返ってニッコリと笑った。
「さて、闇属性の魔術を『黒魔術』と言うように他の属性の魔術もそれぞれ呼び方があるが知っているかの? 」
「知りません 」
「わたくしも 」
「魔術にはそれぞれ呼び方がある。 火属性の『赤魔術』、水属性の『青魔術』、土属性の『黄魔術』、風属性の『緑魔術』、光属性の『白魔術』、そして闇属性の『黒魔術』」
フリッツの説明する声とカツカツと黒板とチョークが当たる音が響く。レオナルドとレティーツィアは話を真剣に聞き、必要な部分はメモを取っていく。
「それぞれどんな魔術か想像がつくかの? 」
「火、水、土、風をあやつるものではないのですか? 」
「ひかりは何かしら? 」
レオナルドは知っている内容を答え、レティーツィアは白魔術がどのようなものか右手を頬に当てて考えていた。
「レオナルド様は惜しい、正解にしてあげたいけど正確にはちょいと違う。
レティーツィア様は白魔術がどんなものか想像がつかないかの? 」
レオナルドは惜しいと言われ、何が違うか考えるが分からず、レティーツィアもまた白魔術がどんなものか想像がつかなかった。
フリッツは一生懸命自分達の考えを声に出してくれる教え子達に満足そうに頷き授業を続けた。
次回更新
3月21日予定