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《無敵チート》で異世界無双!~猛毒茸だってドラゴンだって俺の体に傷一つ付けられない~  作者: 長尾隆生@放逐貴族・ひとりぼっち等7月発売!!
アブリルへの道

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第9話 嵐の峠越えと雨宿りの洞窟

 陽気な吟遊詩人レオと別れた翌朝、俺たちは宿場町を後にして、アブリルへの最後の道のりへと足を踏み出した。

 レオの話によれば、この先にある険しい峠を越えれば、あとは港まで下るだけらしい。


「あと二日もあれば着くって言ってたっけな。よし、さっさと越えちまうか!」

「はい!」


 俺はいつものようにサンテアを肩に乗せ、ギンを腕に抱えると、軽快に街道を走り出す。

 宿場町を出てしばらくは、なだらかな丘陵地帯が続いていたが、徐々に道は険しくなり、深い森に覆われた山々が前方に迫ってきた。

 ここがレオの言っていた峠なのだろう。


 道幅は狭くなり、傾斜もきつくなる。

 馬車などはかなり難儀しそうな道だが、俺の足には関係ない。

 むしろ、変化に富んだ地形の方が走っていて楽しいくらいだ。


「うわぁ、高いですね……!」


 肩の上でサンテアが感嘆の声を上げる。

 見上げれば、切り立った崖が迫り、見下ろせば、深い谷底が広がっている。

 豊かな緑と岩肌が織りなす雄大な景色だ。

 ギンも興味深そうにキョロキョロと周囲を見回している。


『ふむ、この辺りはなかなか魔力が濃いのう。古い山には、時折、力の強い精霊や地霊が宿ることがあるからのう』


 エルラードが珍しく周囲の自然についてコメントする。

 神力回復の手がかりにでもなるかと思ったが、特にそれ以上何かを感じるわけではないらしい。


 順調に峠道を登っていく。

 昼過ぎには、かなり標高の高い場所まで到達した。

 見晴らしの良い場所で少し休憩を取ろうかと足を止めた、その時だった。


 さっきまで青く澄み渡っていた空が、にわかに掻き曇り始めたのだ。

 みるみるうちに厚い灰色の雲が空を覆い、冷たい風が吹きつけてくる。


「ん? なんだか天気が怪しくなってきたな」

「本当ですね……急に暗く……きゃっ!」


 サンテアが言い終わるか終わらないかのうちに、大粒の雨が叩きつけるように降り始めた。

 それも、ただの雨ではない。

 風も急速に強まり、横殴りの暴風雨となった。


 ザアァァァァァァッ!!


 バチバチと音を立てて降り注ぐ雨粒が、俺の体には大した影響を与えない。

 風が強くても、足元がふらつくこともない。

 さすが無敵。


 だが、サンテアとギンはそうはいかない。


「うぅ……寒い……」

「きゅぅぅん……」


 サンテアは降りかかる雨と風に体を縮こませ、がたがたと震え始めた。

 ギンも俺の腕の中で不安そうに鳴き、雨に濡れた毛がぺったりと体に張り付いている。


『おい、アンリヴァルト! 何をしておる! さっさと雨宿りできる場所を探さんか! このままではサンテアの体が持たんぞ!』


 エルラードが焦ったように叫ぶ。

 普段はサンテアの体調などあまり気にしない彼女だが、さすがにこの状況はまずいと思ったらしい。

 あるいは、単に自分が濡れて寒いのが嫌なだけかもしれないが。


「わーってるよ! ちょっと待ってろ!」


 俺はサンテアとギンを自分の外套でできるだけ覆い隠し、周囲を見渡す。

 こんな山道で、都合よく雨宿りできる場所など……。


「あった!」


 視線を巡らせていると、少し先の崖の中腹あたりに、ぽっかりと口を開けた洞窟があるのを見つけた。

 大きさも、俺たちが入るには十分そうだ。


「よし、あそこまで行くぞ! しっかり掴まってろ!」

「は、はい!」


 俺は雨風でぬかるむ急斜面をものともせず、一気に洞窟へと駆け上がる。

 普通の人間なら足を滑らせて谷底へ真っ逆さまだろうが、俺の足は地面に吸い付くように安定している。


 洞窟の中に飛び込むと、嘘のように雨風の音が遠のいた。

 中はひんやりとしているが、外の嵐に比べれば天国だ。


「ふぅ、助かった……。サンテア、ギン、大丈夫か?」

「は、はい……なんとか……。ありがとうございます、アンリ様」

「くぅん……」


 サンテアとギンはまだ震えている。

 俺はすぐにリュックから焚き火用の道具を取り出し、洞窟の入り口近くで手早く火を熾した。

 パチパチと音を立てて燃え上がる炎が、冷えた洞窟の中に温かい光をもたらす。


「さあ、火のそばに来い。濡れた服も脱いで乾かさないと」


 俺は自分の外套も脱いで、サンテアに被せてやる。

 サンテアは少し躊躇いながらも、濡れた上着を脱ぎ、焚き火で乾かし始めた。

 ギンも火のそばに寄り添い、濡れた毛をぶるぶると震わせて水を飛ばしている。


 炎の暖かさと安心感からか、サンテアの表情も少し和らいできた。


『やれやれ、危ないところじゃった。まったく、山の天気はこれだから好かん』

 エルラードが、まるで自分が嵐を乗り切ったかのように偉そうに言う。


「まあ、いい休憩になったじゃないか。どうせこの嵐じゃ、しばらく動けそうにないしな」


 俺は洞窟の入り口から外を見る。

 雨風はますます強まっているようだ。

 雷鳴も轟き始めている。


「ここで一晩明かすことになるかもしれんな」


 そう呟きながら、洞窟の奥へと視線を向けた、その時だった。


 カサッ……。


 洞窟のさらに奥、暗がりの中から、微かな物音が聞こえたのだ。


「ん?」


 俺は咄嗟に身構える。

 サンテアもギンも、音に気づいて緊張した面持ちで奥を見つめている。


『……何者かおるようじゃな。魔物か? いや、この気配は……人間か?』


 エルラードが囁く。

 どうやら、この洞窟には先客がいたらしい。

 雨宿りをしている旅人か、あるいは……。


「ちょっと様子を見てくる。サンテアとギンはここにいろ」

「アンリ様、気をつけて……」


 俺は焚き火のそばから燃えている手頃な枝を一本手に取り、松明代わりにすると、音を立てないように慎重に洞窟の奥へと進んだ。

 洞窟は思ったよりも奥に続いているようだ。

 壁は湿っており、時折水滴が滴り落ちる音が反響している。


 松明の光が照らす先、洞窟が少し広くなった場所に、それはいた。


 丸くなって蹲る、小さな人影。

 フード付きのマントを深く被っており、顔は見えない。

 だが、その傍らには粗末な杖が置かれており、服装もどこか見覚えがあるような……。


「……誰かいるのか?」


 俺が声をかけると、人影はびくっと肩を震わせ、ゆっくりと顔を上げた。

 フードの隙間から覗いたのは、怯えたような大きな瞳と、そばかすの散った若い少年の顔だった。

 数日前、峠の手前の洞窟で出会った、あの気弱な魔法使い見習いの少年、アルフだ。


「あ……あなたは、あの時の……!」


 アルフも俺に気づき、驚きと安堵が入り混じったような声を上げたのだった。

◆新連載◆


リストラされたおっさんの下克上ダンジョンものです。

早いテンポで物語が進むように心がけていますので、サクサク読めますので是非。


『リストラされたおっさんのスキルは【配置換え】。ダンジョンでモンスターや宝箱の位置を入れ替えたら、Sランクパーティーも攻略できない最難関フロアを一人で踏破してしまった』

https://ncode.syosetu.com/n2269kt/

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◆ 新 連 載 ◆

『悪徳領主の息子ですが、父の真似をしたら名君と呼ばれてしまいました』
https://ncode.syosetu.com/n7911kj/
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