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《無敵チート》で異世界無双!~猛毒茸だってドラゴンだって俺の体に傷一つ付けられない~  作者: 長尾隆生@放逐貴族・ひとりぼっち等7月発売!!
アブリルへの道

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第7話 夜襲!ギンの争奪戦

 胡散臭い商人ボルボンと別れ、俺たちは再び街道を進んだ。

 陽が傾き、空が茜色に染まる頃、その日の野営地を決めることにした。

 街道から少し離れた、小川が流れる静かな森の中の開けた場所だ。


 いつものようにアンリヴァルト流サバイバル術で手早く寝床と焚き火を用意し、夕食の準備を始める。

 メニューは昨日仕留めた猪の干し肉を戻したスープと、道端で採れた山菜の炒め物だ。


 焚き火の炎がパチパチと音を立て、森の中に温かい光と影を投げかける。

 夕食を食べながらも、昼間の出来事が少し気にかかっていた。

 いや、俺自身はそれほど気にしていなかったのだが、エルラードがやけにうるさいのだ。


『アンリヴァルトよ、本当に大丈夫なのかの? あのボルボンとかいう商人、どうにも信用ならん。あの執念深い目つき……絶対に諦めておらんぞ』


 サンテアの口を通して、エルラードが心配そうに言う。


「へーきだって。あんな小物、次会ったらデコピンで吹っ飛ばしてやるよ」


 俺はスープを啜りながら、軽く答える。

 正直、あの程度の商人に何をされるというのか。

 力では絶対に敵わないし、金で釣ろうにも俺の方が持っている。


「でも、アンリ様、あの人、なんだか怖かったです……ギンちゃんのこと、じーっと見てて……」


 サンテアも不安そうだ。

 腕の中のギンも、昼間のことを思い出したのか、小さく身震いしている。


「大丈夫だって。俺がついてるだろ? 何かあったら、俺が全員まとめて吹っ飛ばしてやるって」


 俺は二人の頭をまとめてわしゃわしゃと撫でる。

 サンテアは少し顔を赤らめ、ギンは気持ちよさそうに目を細めた。


『むぅ……お主のその根拠のない自信はどこから来るのじゃ……。まあよい、何かあっても我は知らぬぞ。せいぜいサンテアと、その毛玉を守るのじゃな』


 エルラードはため息をつき、それ以上は何も言わなかった。


 食事が終わり、焚き火の火を小さくして、俺たちはそれぞれの寝袋に潜り込んだ。

 サンテアはギンをしっかりと抱きしめて、すぐに穏やかな寝息を立て始めた。


(やれやれ、心配しすぎなんだよな)


 俺も目を閉じる。

 無敵の体は疲れ知らずだが、眠気は普通に感じる。

 森の静かな夜……のはずだった。


 どれくらい時間が経っただろうか。

 真夜中を過ぎ、辺りが完全な闇と静寂に包まれた頃。

 俺は微かな物音で目を覚ました。

 いや、目を開けただけで、体は寝ているふりを続ける。


(……来たか)


 昼間のエルラードの警告が脳裏をよぎる。

 どうやら、あの女神の勘は当たっていたらしい。

 複数の気配が、音を立てないように、慎重に俺たちの寝床に近づいてくる。

 殺気は薄いが、油断しているわけではないようだ。

 プロの仕業か?


 気配は全部で五つ。

 おそらく、ボルボンが雇った連中だろう。

 目的はギンで間違いない。


 俺は寝息を立てるふりをしながら、気配がすぐそばまで近づくのを待つ。

 一人が、俺の腕の中にいるギンにそっと手を伸ばすのが気配でわかった。

 ふわふわの毛に指が触れた、その瞬間。


「……んあ? 人の連れに、なにしてんだ、お前ら」


 俺はゆっくりと目を開け、寝ぼけ眼で、目の前に屈み込んでいる男を見上げた。

 男は黒い頭巾で顔を隠しているが、その目が驚きに見開かれているのがわかった。


「なっ!? 起きて……!」

「ば、馬鹿な! 気配を完全に消していたはず……!」


 他のならず者たちも動揺し、警戒して武器を構える。

 リーダー格らしき、少し体格の良い男が一歩前に出た。


「小僧……運がいいのか悪いのか。まあいい、その腕の中の魔獣を大人しく渡せ。さすれば命だけは助けてやろう」

「あー? 何言ってんだ、お前。人のモンを勝手に取ろうとしといて、命だけは助ける、だぁ?」


 俺はゆっくりと上体を起こす。

 寝起きで少し頭がぼーっとしているせいか、あるいは単純に邪魔されたせいか、少しばかり不機嫌になっていた。


「こいつは俺の連れだって、昼間も言っただろ。聞き分けのないやつらだな」

「ふん、小僧一匹に何ができる! やれ!」


 リーダー格の男の号令と共に、五人のならず者が一斉に襲いかかってきた。

 剣が月明かりを反射し、棍棒が風を切る音が響く。


「……うるさくて、よく眠れなかったんだよなぁ!」


 俺は寝袋を蹴り飛ばし、地面を蹴る。


 まず、先頭で剣を振りかぶってきた男。

 その手首を掴み、そのまま一本背負いの要領で地面に叩きつける。

 ゴッ、と鈍い音がして、男は白目を剥いて動かなくなった。


 次に、横から棍棒で殴りかかってきた男。

 その棍棒を片手で受け止め、握り潰すように力を込めると、木製の棍棒は粉々に砕け散る。

 男が呆気に取られている隙に、鳩尾に軽い一撃。

 男は「ぐえっ」と呻き声を上げて崩れ落ちた。


 残りは三人。

 彼らは仲間が一瞬でやられたのを見て、明らかに動揺している。


「ひ、化け物か!」

「構うな、三人で囲め!」


 連携を取ろうとするが、遅い。

 俺は地面に転がっていた手頃な石を拾い上げると、一番近くにいた男の膝に的確に投げつける。


「ぎゃあっ!」


 石つぶてとは思えない衝撃に、男は膝を押さえてうずくまる。

 その隙に、残りの二人に肉薄。

 右の男には回し蹴りを顔面に叩き込み、左の男には石を持ったままの拳で顎を打ち抜く。

 二人とも、派手な音を立てて地面に転がった。


「ふぅ……終わりか。思ったより歯応えがなかったな」


 俺は石を放り投げ、伸びをする。

 サンテアはいつの間にか起きていて、少し怯えた様子で俺の後ろに隠れている。

 ギンも警戒して唸り声を上げていた。


「大丈夫か? サンテア、ギン」

「は、はい……アンリ様、すごいです……」

「きゃうん……」


 俺が二人を安心させようと声をかけていると、少し離れた茂みの奥から、甲高い声が聞こえてきた。


「ば、馬鹿な! あの五人が一瞬で……!? くそっ、役立たずどもめ!」


 声の主は、言うまでもなくボルボンだ。

 彼は茂みの中から慌てて飛び出すと、停めてあった馬車に飛び乗り、御者に鞭を当てて猛スピードで走り去っていく。


「お、覚えていろよ、アンリヴァルトォォ! その魔獣は、必ずこのボルボン様が手に入れてやるからなぁぁぁ!」


 遠ざかる馬車から、ボルボンの捨て台詞が聞こえてくる。


「……追いかけるか?」

『放っておけ。あのような小物、相手にするだけ時間の無駄じゃ』


 エルラードが冷静に言う。


「それもそうか。やれやれ、夜中に叩き起こされたせいで、また眠れなくなっちまった」


 俺は大きなあくびをする。


『だから言ったであろう! お主が油断するからこうなるのじゃ! 我の言うことを聞いていれば!』

 エルラードが、待ってましたとばかりにドヤ顔で説教を始める。

 サンテアも「アンリ様、やっぱり気をつけてくださいね」と心配そうに言う。


「はいはい、わーったよ」


 俺は地面に転がっているならず者たちを見る。

 全員、気絶しているか、痛みでのたうち回っているかだ。

 死んではいないだろう。


「こいつら、どうするかな……」

「……縛っておきましょうか?」

「そうだな」


 俺はならず者たちの装備から適当なロープを見つけ出し、五人をまとめて縛り上げる。

 そして、少し離れた街道脇まで引きずっていき、転がしておいた。


「まあ、朝になったら誰かが見つけて、衛兵にでも突き出してくれるだろ」


 後始末を終え、俺は再び寝床に戻る。

 サンテアとギンも、もう大丈夫だとわかったのか、少し安心してまた寝袋に潜り込んだ。


「やれやれ、これでやっと眠れるな……」


 俺は今度こそ本当に眠りにつこうと目を閉じた。 あの商人の捨て台詞が少しだけ気になったが、まあ、大丈夫だろう。 無敵だし。 ……多分。

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『悪徳領主の息子ですが、父の真似をしたら名君と呼ばれてしまいました』
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