第二話 楽しかった日々
役場での登録はすぐに終わった。
『超健康』『強化再生』ともに丙種判定で登録された。
この丙種というのはスキルをダンジョン外で使用しても危険がないかの判定だ。甲種は使用禁止、乙種は制限ありの使用許可、丙種は完全使用許可だ。
とはいえ冬馬のスキルは2つとも常時発動型かつ自己対象型のため当然といえば当然である。
午前中で役場での予定がすべて終わったため午後から学校に行くことにした。
「来たか冬馬!今日午前中いなかったてことはユニークスキルを手に入れたんだよな!?教えろよ〜、な?いいだろ?」
このやたらテンションの高い男は同級生である牧原 勤だ。
何かと冬馬のことを気にかけてくれるいいやつである。
「はあ、人にスキルを聞くのはご法度だろうに何を言う」
「俺とお前の仲だろ?それに俺のスキルも教えただろ?」
そうこの男、ユニークスキル持ちなのである。
それも冬馬とは違い甲種判定を受けている危険なスキルを。
「しょうがないな、後で教えてやろう」
◇ ◇ ◇ ◇
「2つもあったのか!?すっげぇ運がいいじゃないか冬馬!」
「まぁな、だけど常時発動してるのに実感がわかないんだよなぁ」
「まあ、健康になるスキルと怪我が治るスキルだからな。まあそのうちわかるんじゃね?」
「そうだといいな」
◇ ◇ ◇ ◇
「うおっ。すごく運動能力があがってね?」
「確かに、『超健康』がとても健康な体を得るってあったからそれかな?」
◇ ◇ ◇ ◇
「イテッ」
「うわっ、気持ち悪っ」
「うわホントだ」
「怪我したところが秒で治るのは凄いけど少し怖いな」
◇ ◇ ◇ ◇
「俺はずっと考えていた」
「何だ急に」
「俺のユニークスキル『呪毒師』を使って毒、呪いを冬馬が耐えれる程度与え続ければ完全なる無効化ができるのではないかと」
「何怖いこと考えてんだよ。嫌だぞ俺は」
「何を言うんだ。お前が呪い、毒に完全なる耐性が出来たら、俺たち最強だぞ。俺が呪毒をまき、冬馬が突っ込むこれで勝てない相手はいないっ」
「怖いこと考えるな」
◇ ◇ ◇ ◇
「マジで出来たな呪いと毒の無効化」
「ああ、しかもステータスボードに『強化再生』の派生で『呪毒無効』が生えた」
◇ ◇ ◇ ◇
「なあ、お前の『超健康』を研究して魔道具に落とし込むことができたら儲かるんじゃね?」
「俺らまだ高校生だぞ。無理に決まってる」
「そうだ、だから俺らで将来一緒にやらないか?」
「それもいいかもな」
◇ ◇ ◇ ◇
高校の三年間、とても楽しく馬鹿ばっかりやって過ごしていた。
◇ ◇ ◇ ◇
「あと少しで高校生活も終わりだな」
「とても長かったようにも短かったようにも感じるよ」
◇ ◇ ◇ ◇
「卒業後は俺らで事業を立てて俺のスキルについて研究するんだな?」
「おうよ、人間の限界を超える『強化再生』と一度は人が夢見る体を手に入れる『超健康』だぞ。俺らでその2つを魔道具に落とし込めればとてつもない利益を生む。そして何より、出来なかったとしてもこれからも俺らで馬鹿をやれる。人生楽しんで生きようじゃねぇか」
「ははっ、楽しい未来か。俺もやれるだけやってやるよ。相棒」
◇ ◇ ◇ ◇
只々、楽しかった。
結局、『超健康』と『強化再生』は魔道具にすることはできないことがわかったがそれらの経験を生かしてスキルそのものの研究をすることにした。
そしてかなりの評価され研究事務所もでかくなり一緒に研究する仲間もどんどん増えた。
女っ気はまったくなかったがとても充実していた。
そしてこのまま牧原と一緒に少しずつ少しずつ歳を重ねていくのだと思っていた。
だが、30代後半に差し掛かったとき冬馬は自分だけが外見が20代の頃から全く変わっていないことに気がついた。