9.謎は深まるばかり
「魔術カードは魔術版より高度な魔術や強い魔術が使える物もある。使用回数は大体の物は魔術版より回数が多いんだが、外で使ってると、すぐボロボロになるし、水に濡れたりして、回数分使えないことも多いんだ。」
呪文を読めば何となく術の内容が分かった。
文字が薄い青色に見えるのは、魔術だからだろうか。
あの文字列も青色だったし。
「それでこれが、魔術カードの中間のサイズだ。」
私は手にしていた魔術カードを返して、私が使ってもらった魔術カードを受け取った。
文字は黒色で掠れていた。使ったからなんだろう。
フォントサイズは目算で44ポイント。約1.5cm。まだまだ大きい。
高度な物ほど文字が小さく出来るのかな。
そう考えても釈然としない。
あの文字列は小さかったし、大量だった。文字の中から文字が出て来ないと説明が付かないけど、それと文字の大きさの件は真反対に思えるからだ。
調べたいな。早く調べたい。
「それはかなり高価で、サウルタイガーを売った金がなかったら買えなかったくらいだ。治癒魔術は特に高価で希少価値が高い。一番大きい魔術カードはその羊皮紙の2倍のサイズだ。大きな街のかなり儲けてる店や貴族しか買えない値段がする。」
A4サイズの魔術カードもあるんだ。最早カードのサイズではないと思うけど。
「これより文字は小さいですか?」
「近くの街じゃ売ってないから見たことがないんだ。なんでそんなに文字の大きさにこだわるんだ?」
「なんとなく気になって。普段使われる文字のサイズもこれくらいなんですか?」
「いや。もっと小さいぞ。これくらいだ。」
ラルさんは親指と人差し指で輪を作った。それは私の知っている標準サイズだった。
「なんでも、板だと魔術が書きにくくて大きく書かないといけないらしい。文字を小さくするには技術が要るから、高い物程文字が小さいそうだ。」
「そうなんですか...」
検証したいことが山ほど生まれてしまった。
これは一日じゃ終わらない。
「嬢ちゃんがサウルタイガーに使った魔術は、少なくとも一番大きい魔術カードくらいの威力はあったはずだ。魔術カードが見当たらなかったから、嬢ちゃんはカードが無くても魔法が使える魔女なんだろう。」
「私が魔女...」
「魔術を学べるのなんて一部の優秀な奴か貴族だけだ。言葉遣いが丁寧だから、きっと貴族なんだろう。街に行ったら、黒髪で黒い瞳を持つ貴族がいないか探すといい。嬢ちゃんみたいな黒髪と黒い瞳は珍しいからな。」
「そうなんですか。わかりました。教えていただいてありがとうございます。」
お礼を言いながらも、私は明日の検証に思いを馳せていた。