8.プログラマー、フォントサイズに驚愕する
「嬢ちゃん、人が良すぎるよ。」
「それはこっちのセリフです。相当な額なのに...」
「サウルタイガーを倒したのは嬢ちゃんだ。当然だろ。」
「トドメを刺したのも解体して換金したのもラルさん達です。働いてもらったのに全額受け取るなんてできません。」
「律儀だなぁ。わかった。じゃあ、明日村長と相談して分配を決めよう。それでどうだ?」
「はい。お願いします。」
一文無しでどうしようかと思ったけど、当面心配は無さそうだ。
「次は魔法のことだな。」
「はい!お願いします!」
技術者としての好奇心が燃え上がる。
「まず魔術カードを見せてください!」
「お、おお...ちょっと待ってろ。」
ラルさんが立ち上がって、窓際のキャビネットの引き出しを開けた。
引き出しから取り出して机に並べられたのは、2リットルペットくらいのサイズの木の板と、羊皮紙を使った大きめの単語帳、治療に使ってもらった羊皮紙だった。
私は文字を見て愕然とした。
「どうした?」
「えっ...あ、あの、文字サイズおかしくないですか!?」
「そ、そうか?これが普通だぞ。」
「ええっ!?そんな馬鹿な!フォントサイズデカすぎでしょ!」
木の板に書かれた文字は2行だけ。デカデカと書かれていた。
目算で114ポイントだから約4cm。Wordの基本サイズが10.5ポイントなのを考えると、デカすぎて意味がわからない。
なんだこれ!?
「ふぉんと...?」
「あっ...!す、すみません!」
落ち着け私。
日本の常識とこっちの世界の常識が一致するとは限らない。
「説明お願いします。」
「ああ。まず、この木の板が魔術版だ。一番安くて手に入りやすいんだが、弱い魔法しか使えないし、使用回数が少ない。これだとせいぜい10回だ。」
「回数は決まってないんですか?」
「大体の計算のものも、決まってるものもある。嬢ちゃんに使った魔術カードは一回限りって決まってた。例外もあるが、強い魔術や高価な物になるほど回数が少ない。」
大体ってことは、魔力量なんかで変わるのかな。
「こっちは魔術カード。大中小とある。」
ラルさんから単語帳の様に纏められた羊皮紙を受け取った。サイズは一般的なスマホくらいだ。
表紙をゆっくり捲る。
うん、やっぱり大きい。
さっきの半分だけど、目算56ポイント。約2cm。大きすぎる。