3.投げやりな神様
『起きて。』
さっきの男性神の声で私は目覚めた。と言っても、体の感覚はまだ無い。
『 言われた通りの加護を付与した。適当なところに召喚するから、呪いを解いて世界を救って。』
男性神はひどく投げやりに言った。
呪いってどんな?私一人にそんな重い使命持たせるの?
私にとんでもない重責を担わせておいて、男性神は質問には答えなかった。
また眠りに落ちた私は、やっと瞼を開いた。
私か最初に見た景色は、予想に反して生い茂った木々だった。
体を動かすと、ザラザラしたもので皮膚が擦れて、感覚が戻ったことを実感した。
見上げた空には、微かに木漏れ日が見える。
昼ではあるようだけど。
見渡すと、木々が生い茂っていて道が見当たらない。
あの神様に、適当なところという言葉の意味を正したい。
適当なところとは、物事に都合のいい場所のことだ。
ランダムに選んだ場所のことでは無い。
私はイザナミ様の様に深い深いため息を吐いた。
折角ホワイト企業に就職して幸せになったのに、今度はブラック神様に引き抜かれて異世界の命運を背負わされた上、鬱蒼とした森に身一つで召喚されるなんて、イザナミ様の言う通り、我ながら不憫だ。
俯いた私は足を見て固まった。
「嘘でしょ...」
私、死んだ時のままなんだ。家の中で死んだから、靴なんて当然履いてない。
靴を履かずに...?
改めて周りを見渡したら頭痛がした。
風が吹いて木々がざわめく。
あっという間に夜になりそうだ。
早く森を抜けた方がいいけど、無闇に歩くのは自殺行為だ。まずは情報を整理しよう。
「あの男性神が呪い、召喚って言ってたから、まず間違いなくこの世界には魔法が存在する。イザナミ様の話ぶりだと、加護は能力のことで、使命を全うできるだけの能力を貰っているはず。」
上半身を動かして見たけど、特段変化は見られなかった。
「魔法が使えるようになったんだと思うけど...」
ゲームによくある、自分のステータスを見るためのワードや呪文を一通り唱えてみたけど、うんともすんともならなかった。
「加護はひとつじゃないだろうから、この状況から脱却できる加護が他にあるはず。」
だって、イザナミ様が大丈夫だって言ったんだから。
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