※後日談 この世界はこれからもそこにある
「私たち、どういう縁なんだろうね。
それが分かれば、いつでも来れる気がするな。」
と、ライカが言った。
「私がこの世界に転生する前の、直近の前世は橘檸檬と言う日本人女性なんです。
知ってる人ですか?」
私が尋ねると、
「ううん、ごめんなさい。
知らない。」
と、ライカが言う。
違うか・・・。
この世界に転生したのは、あの婚約パレードの日。
どうしてだろうか。
ゲームの始めからではなく、あんな途中から。
そう言えば私が橘檸檬だった頃は、かつてのこのゲームの制作スタッフでレモニーのキャラクターデザイン担当者。
体を壊して欧州から日本に戻り、このゲームの出来の確認も兼ねてプレイしていたと、クランシーは言ってた。
ゲームスタッフとしての私の記憶は曖昧だけど、裏シナリオの存在も知らなかったくらいだから、そんなに長く制作に携わってないんだろうな。
でも、ヒロインのアバターパーツも、いくつかデザインした覚えがある。
確か一組だけ、お気に入りの組み合わせを作り出して、それが採用されていたから、自分がプレイする時は、それを使っていた気がするわ。
あれは、どうしたんだっけ。
誰かにあげた?
プレイヤー同士が出会う場は、恋愛ゲームの中ではほとんどない。
あれ?
そういえば、アバターの魅力数値をあげやすくする、レベルアップポイント制というものがあって、お友達申請をして承認されると、自分がヒロインとして適切な行動をしたり、セリフを言ったりした時、そのうちの10%が相手にも入る仕組みがあったな。
そして、それは、もうこのゲームをやめるとき、それまで貯めたポイントやアバターを任意のお友達に譲ることもできる。
まさか・・・。
「ライカ、あの婚約パレードのシーンに入る前に、かつてお友達申請して、承認してもらった相手からポイントやアバターを貰いませんでした?」
と、私が尋ねると、ライカはハッとしたように体を起こした。
「もらった・・・。
もう辞める、て人がいて・・・!
病気で続けられないから、どうぞ、てコメントが・・・。」
「それはいつ頃?」
「ティモシー王子と、街ごと焼き殺されようとした、あのシーンを終えた頃。
婚約パレードに入る前に・・・!
私、それからしばらく仕事が忙しくてアクセス出来なくて、久しぶりにやった時に、あなたが来たの・・・。」
「その時のアバターは、まだ取ってる?」
「ある・・・あるよ!!
顔のパーツや、ドレスや靴や装飾品は変えてるけど、この元になる体や髪の色は凄くいいから、そのまま使ってる。
レベルアップポイントもちゃんと加点させてもらった。」
「もしかしたら、それを使ってくれているから、私はあなたのゲームに宿ったのかもしれません。
つまり、そのアバターがこの世界とあなたをつないでいるのかも。」
「!!」
「ということは、橘檸檬にもらったアバター全てを装着すれば、自由に出入りできるかもしれません。」
「待って・・・待って今変える!!」
ライカの姿が変わり始める。
やがて、目の前には、見覚えのあるパーツを組み合わせた、ヒロインのアバターが現れた。
今度は、私が涙を流した。
「そう・・・思い出した・・・。
これです。
この姿で、最後のアクセスを終えて、あなたに全て譲ったんです・・・。
それから、入院したんでした。
私・・・死んだらこの世界に生まれ変わりたいと願ってたから・・・。
この世界でなら、彼に・・・ライオネラにまた会えるとレモニカが教えてくれていたのかもしれない・・・。」
「レモニー・・・。」
「ライカ、この姿のままこのシナリオを一旦終えましょう。」
「え!?」
「完結後そのまま保存して、再度アクセスしてみて。」
「『新しく始める』しか、選べないよ?」
「その姿のまま『続きから始める』を選択してみて。
多分次の後日談の配信まで、任意に出入り出来るはず。」
「・・・。
わかった。」
私たちは、船を港に向けて進ませて、エンディングを迎えた。
ライオネルと馬車に乗ったあたりで、エンディング曲が流れ始める。
私はライオネルに伝えて、馬車を途中から船に向かって引き返させてもらった。
確信があるわけではないんだけど・・・。
これまでライカは、アバターのパーツを一部しか使ってなかったから、一度接続を切るとダメだったと思うんだよね。
でも、全てを檸檬の使用していたものに変えれば、きっと!
ライカのアバターは、ティモシー王子と共にまだ、港にいる。
抜け殻のアバターは、反応でわかるの。
あまり積極的に動かず、質疑応答もなんとなく固くなる。
「ライカ様?」
恐る恐る声をかけてみる。
「レモニー様、ご機嫌よう。」
・・・これは抜け殻のアバターの最初の反応だ。
間違えたかしら・・・。
「・・・なんてね、レモニー?」
俯きかけた私の顔を、ライカのアバターが覗き込む。
「え!?
まさか!!」
「やったよ!
すごい!普通にアクセスできた!
このアバター、すごいね!」
ライカが嬉しそうにはしゃぐ。
「アクセスした後で、グレードアップしたアバターに取り替えればいつも通りだよ。
出入りの時だけ、檸檬さんのアバターにすればいいみたい。」
「やったねー!!」
お互い手を取り合って喜ぶ私たちを、周りの人たちは奇異な目で見ている。
「さっきから何してるの?ライカ。」
と、ティモシー王子。
「大体わかるけど、周りはついていけない会話だよ、レモニー。」
と、ライオネル。
「ご、ごめんなさい。」
私たちは二人で謝った。
「ふふ、でも、嬉しい。
このアクセスは、プレイヤーというより、キャラクターの一人になったみたい。
シナリオのない世界はこんなふうに見えるんだね。」
ライカは嬉しそうにこちらをみる。
「次の後日談配信までこんな感じてアクセスしてくださいね、ライカ様。」
と、私が言うと、ライカは激しく頷いた。
「嬉しい・・・、いつでもみんなに会える。」
そのまま、ライカはティモシー王子に抱きついた。
「変なライカ。
いつでもそばにいるのに。」
ティモシー王子も、優しくライカを抱き締めている。
私もライオネルのそばに行って、抱き締め合った。
望む相手と幸せになれる世界。
それが恋愛ゲームの世界。
この『僕の隣は君がいい』のゲームの世界は、かつて不幸な人生の終わり方を迎えてしまった女性が、生まれ変わって幸せになれるよう願って作り出されたものだった。
それが本物の魂が宿る奇跡を起こし、本当に異世界となって今ここに存在している。
プレイヤーライカだけが、アクセスできるこの世界。
おそらくゲームの配信が終わっても、この世界は永遠に存在し続けると思うわ。
私は今日もこの世界で、ライオネルたちと愛し合い、助け合って暮らしている。
これからも、ずっとね。
読んでくださってありがとうございました。
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