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話せばわかりますよね?ヒロイン?

「誰が?」


「左大臣が。」


「え?

あのキモい男が?」



「レモニーを悪女にすればするほど、あなたは輝いた存在になる。


王子たちと危機を乗り越え、愛されていく。


終盤ともなると、攻略対象と揺るぎない愛を、誓えるほどの関係になっている。」



「そ、そうだけど。」



「そのお膳立てをして、レモニーを悪役に仕立てたのが、左大臣だとしたら?


雛を育てるように、悪女と対極をなすヒロインに、この世界で最上の幸せと輝きを手に入れさせ、最後はその見返りに自分のものにする、と。」



「キモすぎて、吐き気がしてきたわ。」



「最後に左大臣が、毒の入ったワインを飲むとき、言いますよね?


あなたのためなら何でもできる。


このワインを毒味することで、自分の愛を信じろと。」



「言うわね。

私もこのゲームは5周目だから、覚えてる。」



「左大臣は、瀕死の状態で倒れ、レモニーは処刑。


彼女の後ろ盾の右大臣も、失脚。

ヒロインは、敵が全ていなくなってめでたく結婚。


でも、ラストシーンでは、意味深に左大臣の指が動く画面がある。」



「あぁ・・・。」


「どの攻略対象と結末を迎えても、あの画面は変わらない。


あれは、左大臣が回復して、ヒロインを手に入れる暗示かもしれないんです。」


「なによそれ・・・。

お、王子がそれを許さないわよ。」


「もちろん、王子も戦うでしょうけど、レモニーという引き立て役のなくなったヒロインを、王子がどこまで魅力的に感じてくれるかわかりませんよ。」


「つまり何?

レモニーがいなくなったら、ヒロインは愛されなくなるの?」


「レモニーがしっかり悪役しないと、自分は平凡なヒロインになると、あなたはおっしゃったでしょ。」


「う・・・。

で、でも、それじゃ真のヒロインはレモニーみたいにならない?」


「攻略対象キャラクターを、奪うとかではないと思います。


おそらく、真相と彼女用の恋愛ストーリーが展開されるかと。


今回は、レモニーの裏シナリオの解放にご協力ください。

お願いします。」


「・・・、主役を取る気ね。」


「レモニーの視点で、ヒロインが後日どう語られるか見てみたくありませんか?


あなたのゲーム内の選択肢が反映され、その課金しまくって揃えたヒロインの容姿のアバターの評価が聞けます。


そして、裏シナリオを攻略したら、お約束の特典がつくかもしれません。


誰もまだ手に入れたことのない、レアなもの。」


「・・・。」


「それに一度開けば、6週目はもういつでも裏シナリオにいけますよ。」


「・・・。


左大臣に奪われるかどうかなんて、エンドロールの後にも何も表示されない以上、わからないし、知ったことでもない。


それがなくても、その周を終えて、次の攻略対象キャラクターを選んで新しい恋ができる。」


「はい。」


「でも、このヒロインのアバターは一番のお気に入りなの。


お金も時間もかけて揃えた。


私はVRゴーグルをつけて、このゲームをしてるから、キャラクター目線なのよね。

俯瞰画面とかじゃないの。

つまり、普段は自分の姿が見えないのよ。


このゲームの世界の完成度は高いから、なりきりたくてね。

手触りやら温もりまで再現する、ものすごいゲームだもの!


つまり、自分の姿を見たければゲーム内の姿見の鏡で見るか、回想シーンで画面に見える時くらい。


うっとりしたわよー。


SNSで公開した時も、みんなに羨ましがられた。


みんなやり方を聞いてくるくらい。」


「そうでしょうね。

納得です。」


「だから、たとえ目に見えなくても、左大臣に奪われるなんて嫌。


特典もほしい。


そして、隠しシナリオを私が最初に開けたら、世界中から注目される。」


「世界でも有名ですもんね。

このゲームは。」


「あなたに協力すれば、私は左大臣に奪われず、裏シナリオに世界で最初に到達できて、特典ももらえるわけね。」


「私はこのゲームの中で、生き残ることができます。」


「よし。やるわ。

協力してあげる。

ただし!」


「わかってます。

ちゃんと悪役しますから。」


「いいわ。

じゃ、どうやるの?」


「ここからは、ティモシー王子にも加わってもらいましょう。

もちろん、余計なことまで教えなくていいです。

あくまでも、ライカとレモニーとして、これからを展開していくのがベストかと。」


「面白くなってきた。」


「よかったです。」


ティモシー王子が痺れを切らして、近寄ってくる。


「さっきから何をしてるんだ!?


レモニー、侍女の格好をして、ライカに何の用だ。


彼女に危害を加える気なら、すぐにでもケルフェネス王子たちを呼ぶぞ!?」


私はレモニーとして、話し始めた。


「ティモシー王子。

私は毒の入ったワインなんて、使節団に贈っておりません。

失礼しちゃうわ。

やってもいないことで、捕まるなんて嫌。」


腕を組んでそっぽを向く。


「ティモシー王子。

レモニー様は、私たちの婚約のお祝いとしてこのワインを持っていらっしゃいました。

使節団にお贈りする理由がございません。」


ティモシー王子は、戸惑うように私たちを見る。


私はさらに畳み掛けた。


「ライカ姫もこう言ってらっしゃるし、協力してください、ティモシー王子。

それとも、無実の罪を着せて処刑なさる気?

無能な王子として、王家の恥になりますわよ。」


「い、言い過ぎです。

レモニー様。」


ライカが、ティモシー王子を庇うように、その腕をとる。


「いや、大丈夫だ、ライカ。

レモニーの言うことも一理ある。

ここにレモニーが持ってきたワインがある。

ケルフェネス王子のところに届いたワインと比較すれば、同じかどうかすぐにわかるからな。」


ティモシー王子は、ライカの肩を抱き寄せる。


プレイヤーのライカも嬉しそう。


「侍従のダニーが私からだと言って、毒入りのワインを受け取り、使節団に届けたそうですわ。

ダニーを呼んでください。」


私は、横目でティモシー王子を見ながら、言った。


「ダニーだと?」


「ええ、誰から受け取ったかわかれば、その先が追いやすくなるでしょ?」


「わかった。

誰か!

ダニーを呼べ!」


ティモシー王子の一声で、侍従のダニーが連れてこられた。


「ダニー、ワインを誰から受け取ったの?」


レモニー本人を前に、ダニーの目が泳いでいる。


「私、あなたにワインをお渡しした覚えはないんだけど。」


さらに詰め寄る。


「言わないと、どうなるかわかるわね?

私はレモニーよ?

あなたを酷い目に合わせるくらい、すぐできるわ。

言っとくけど、王子は助けないわよ?」


シャーリーンが、ダニーの目の前で、指をぼきぼきと鳴らし始める。


ダニーは、怯えながら話し始めた。


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