※後日談 色恋は慣れたもの(ケルフェネス視点)
「君が一番素敵。
また、会いたいな。」
こんなセリフは掃いて捨てるほど、言ってきた。
女性たちは、こんな嘘くさいセリフでも喜んで顔を赤らめて、本当にまた来てくれる。
私に本当に好かれてると思ってんの?
違うよね?
できれば私の子を宿して、権力を握ろうとしてるよね?
と、頭の中でいつも彼女たちに話しかけている。
女性たちが部屋を出た後、
「そうはさせないからなー。」
と、小さな声で呟くことが癖になっている。
彼女たちには満足してもらっているけど、そこはうまく誤魔化してるんだよな。
兄上も私も、その秘技のお陰で彼女たちの思惑通りにはならないようにしてきた。
兄上に関して言えば、私より女性たちには淡白に接してきている。
彼女たちを早々にメロメロにして、その間に済ませてお帰りいただくという、早技の持ち主。
二度目を決して許さずに、朝まで共寝もさせない潔癖さは、逆に女性たちの関心を引いてしまい、さらにモテっぷりに磨きがかかったが、後継者争い勃発後、片目を失って去っていった。
お陰で、女性たちの関心が私一人に集中してしまった。
世界一の美形で未来の王。
うんざりする。
それの何がいいってんだよ。
何一つ自由にならない癖に責任と、義務ばかりのこの王という椅子が、そんなにいいものか?
美形?
褒められて嬉しいけどさ、そこだけだろ?
見てるのは。
私の中身にみんな興味ないの?
その点、ライカ姫、レモニー様、シャーリーンは面白い。
ライカ姫は、あんな不利な状態のレモニー様を必死に庇っていたし、洞察力が鋭かった。
ああいう女性は好きなんだよね。
こう、流されずに見極めようとするところ。
それからレモニー様・・・。
私の本命。
出会いがよくなかったけど、兄上をひたむきに見るあの視線に強く惹かれた。
あんな目で見てもらえたら、私は何もかも晒け出して、全てを捧げたくなる。
もちろん、叶わなかったけど。
彼女に愛されたのは兄上だったから。
でもさ、女性に関して淡白な兄上が、レモニー様にキスされて機能停止しているサマは本当に笑えたよ。
私たち兄弟は、キスが上手いことでも有名だからさ、女性に昇天させられることなんか一度もなかったんだ。
それだけ、兄上にとっても本命だったんだろうな。
あの兄上が自ら眼帯を外し、朝まで一緒にいるのを見た時、本当に驚いた。
本気で彼女を抱くなんて思わなかったし、手早く済ませて出てきたら、私が代わろうと思ってたのにね。
あてが外れて、そこにいたシャーリーンに迫ったんだ。
彼女も可愛らしい女の子だから、楽しかった。
キスしたら目がトロンとしてたし、いけると思ったんだけどさ、そのまま絞め技かけてくるとは思わなかったな。
一応暗殺の危険が付き纏うから、兄上ほどではなくても、私も体術は鍛えている方だ。
それでも鮮やかに気絶させられたよ。
かなりの手練れだね、彼女。
ばれてないと思ってるところが可愛いんだけどさ、しっかりばれてるし、忘れないからね。
未遂は初めてだ。
その後別の男に失恋したシャーリーンを慰めて、その気が起きてくれることを願ってると伝えたんだけどね・・・。
今のところはまだ来ないな。
手応えあるけど、まだ仕留めてないね。
彼女もいいよね、あんたの嘘には騙されないと言わんばかりのあの目は、大好きだ。
そうやって、私の本音を見ようとするところは、本当にほっとするよ。
そんな私に王は苦言を呈してくる。
「婚礼の儀は今度の吉日でいいな。
お前は婚約者を持つ身だ。
いつまでも、侍女たちと遊んでばかりいないで、少しは彼女も気にかけろ。」
だそうだ。
2回くらいしか会ってないのに、もう、結婚なんて。
「たいして知らない相手ですよ。」
私が言うと、
「王族の婚礼は、愛情を前提としない。
勢力のバランス保つことこそ重要なのだ。」
と、返された。
「わかってますよ。
・・・でも、私にも愛する人がほしいだけです。」
「寵愛したい女がいるのなら言え。
妃は3人まで迎えられる。
ただし、入れ込みすぎるな。
その女性が嫉妬の集中砲火を受けて、下手をするとそのまま・・・。」
と、言って王が声を詰まらせた。
レイカ様を思い出しているのだろう。
王が最初に愛した女性で、彼女に愛情が集中したために、周りが嫉妬。
そして兄上を宿したまま、この城を叩き出された挙げ句、出産後に死んでしまった当時の第一王妃。
そのあと、第二王妃を昇格させず、私の母を第一王妃に迎えて、私が産まれた。
・・・私の母は、不義の子を宿したと言われたレイカ様の潔白を、唯一信じたレイカ様の従姉妹なのだ。
「わかったな、ケルフェネス。
お前はライオネルと違って、情より先に客観的な思考が先立つ奴だ。
それは、とても大切なこと。
多くの点が結ぶ線を見極めて、大局を知る視点は王者には必須だ。
お前にはそれができる。」
「・・・情が先立つ兄上は、王者になれない代わりに、愛を手にできました・・・。」
「レモニー・ケルのことか?」
「はい。
私も彼女が好きでした。
彼女ならば、他の女性を全て断ってもいいくらいです。」
「ケルフェネス、忘れろ。
ライオネルは王座は譲っても、レモニーは譲らない。
それに奪おうとしても、まず、レモニーが嫌がるだけだ。
あのひたむきな愛は結局は得られない。」
「・・・。」
「シャーリーンと言ったか?」
「え?」
「お前の毒牙にかからずに、お前を一撃で気絶させたらしいな?」
「もう、お耳に?
呆れたな、隠し部屋にまで隠密が入り込んでるんですか?」
「ふ、心底面白い子だな。
スラム生まれのメイドで、レモニーの身辺警護までこなす有能な女性だ。
今のところ、決まった男はなし、と。
お前の誘いすら、まだ乗ってないようだな・・・。
安心しろ、彼女にも迷いがある。」
「迷い?」
「お前に弄ばれることに警戒感があると同時に、惹かれてもいるんだよ。
お前のキスは彼女の心を捉えているんだ。
ケルフェネス、レモニーを忘れて彼女を得なさい。
シャーリーンなら、退屈しない。」
「ふふ、確かに退屈はないでしょうね。
でも、彼女もレモニー様の元を離れないでしょう。
とても慕っているので。」
「知っている。
だが、お前はこの王宮内に愛する人がほしいのか?
違うだろ?
例えここにいなくても、掛け値なしにお前を慕い駆けつけてくれるような相手がいいんじゃないのか?」
「・・・つまり、外に妃を囲う『ソキ・サキ』ですね。」
「知っているだろうが、国外に作ってもソキ・サキは一人しか認められない。
今や国中の美女たちが、お前の妃になるか、ソキ・サキになるかを競っている。
そんな女たちを差し置いて、迎えるともなれば反発はデカいぞ。
しかし、そこは上手くやれるな?」
王は挑発するように私を見る。
「私も兄上も、女性を泣かせても恨まれません。
やりましょう。」
私は、笑顔で王に言った。
愛情も欲しいが、私は退屈が嫌いだ。
その点、シャーリーン、君は合格ね。
さて、何から始めよう。
彼女を手に入れる点を結ぶ線を、私は見極め始めた。
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