新しいレモニー様?(シャーリーン視点)
レモニー様は、片想いしているティモシー王子と、ライカ姫の婚約パレードに何も意地悪しなくていいと言うの。
おまけに今日二人に持って行く予定の、贈呈用のワインに毒が入ってないか調べてくれだって・・・。
えー、どうしたの?と思ったけどとりあえず調べてみたさ。
そしたら、ワインのコルクに小さな針の跡があったんだよ!?
無傷のワインと比較してすぐにわかった。
慌てて外に出して叩き割る。
近くにあった花壇の花に飛沫が飛んで、花がみるみる萎れていく。
ちょっと何これ!
この屋敷に侵入者がいる?
私は新しい予備のワインをしっかり包むと、レモニー様に報告に行った。
すごいわ、この人。
超能力にでも目覚めたの?
私は内心感心したね。
それから、レモニー様と一緒にティモシー王子の部屋にワインを届けに行ってさ。
いつもなら、ライカ姫とティモシー王子が一緒にいたら、ぐちぐちと嫌味言い出すのに、今日は別人みたいに大人な対応するんだよ、この人。
頭打った?
変な薬してないよね?
と、思えるくらい。
ライカ姫も面食らってたよ。
ティモシー王子もね。
本当にこの人レモニー様なの?
中身が他人になったみたい。
ティモシー王子にもバッサリと未練を断ち切るように、自分は関係ないみたいにいうの。
こんなこと言えるように、成長されたんだな。
そう思ってたら、いきなり部屋に隣国の王子の一団が踏み込んできたのよ。
シャトラ国の王子『ケルフェネス』と、ご一同様。
すっごい美形の王子なんだよ!
思わず私もレモニー様も、ボーッと見惚れちゃった。
でも、次の瞬間サーベルを抜いて、レモニー様の首にあててきたのよ。
「レモニー・ケル。
我ら親善の使節団に対し、毒入りのワインを送りつけた罪は許さん。
我が国に連行して、死刑にしてやる。」
と、ケルフェネス王子が言うの。
私は、素早くサーベルを持つ手を蹴り上げた。
ケルフェネス王子は、サーベルを取り落として隙ができたから、私はその間にレモニー様を連れて部屋から逃げ出したよ。
こう見えて、私は戦える。
スラムで女は強くないと生き残れない。
弟や妹たちを守るために鍛えたこの腕前で、今度はレモニー様を守るの。
レモニー様の指示を受けて、私たちは侍女の部屋の一つに逃げ込んだ。
運良く部屋の持ち主はいない。
追手も振り切れたみたいだ。
その部屋でレモニー様はさ、毒入りワインのこと、推理しだしたの。
屋敷の毒入りワインは私が割って処分した。
でも、使節団にはレモニー様の名前が使われたワインが届いた。
いよいよ、誰か何か仕掛けてることが明らかになってきた。
私はレモニー様を置いて、素早く使節団の部屋にワインを調べに行った。
ささっと、この城の侍女みたいに振る舞って、部屋に残る数人の護衛に労いの言葉をかけて、褒めちぎってさ、気を良くしたところで、さっとワインを確認したのさ。
時間はかけないよ。
怪しまれるもん。
ラベルは確かに、レモニー様が持ってきたものと一緒だ。
次に栓を開けて、ワインの香りを嗅いだら、私たちが持ってきたワインと違うことがわかった。
持ってきたのは、ティモシー王子の侍従の1人、ダニー。
レモニー様からと言って渡したらしいの。
そのあと、元左大臣の従者だったライオネルがやってきて、このワインは毒入りだと言って、花壇にこぼして見せたんだって。
花壇の花がみるみる枯れて、みんな毒入りだと納得したんだってさ。
私はすぐにレモニー様のところに戻った。
「お待たせ致しました。」
「はやっ。」
レモニー様の驚く顔はなかなか面白い。
そしてワインが違うこと、あれは左大臣の領地で取れるワインであることを伝えた上で、わかったことを伝える。
ライオネルか・・・一番読めないやつなんだよね。
今はティモシー王子の侍従で、仕事はできるし、すっごいイケメンだし、密かにファンクラブが侍女の間にあるくらい。
この国にやってくる女性は、ティモシー派とライオネル派に分かれるそうだわ。
でもさ、女に気がないというか、みんなスルーされるんだって。
とにかく、このライオネルが一番怪しいけど、証拠なんてないんだ。
そしたら、このレモニー様ったら、いきなりわからないこと言うの。
「裏シナリオ・・・。」
と、ボソッと言ったの。
「え?」
「通常の攻略では辿り着けない、トゥルーエンディング。
ヒロインが恋の相手と結ばれるだけでは、到達できないシナリオがあるとしたら・・・。
だから、毒の送り主が最後まで伏せられていたのだとしたら・・・。」
「レモニー様?
何を?」
「まさか・・・、レモニーは裏シナリオの主人公なんじゃ・・・。
毒入りワインを送りつけた真犯人を見つけ出し、彼女を生存させて初めて開くシナリオがあるんじゃないの・・・?」
「レモニー様?
あなたが、レモニー様でしょ?」
な、なんなのこの人。
まるで自分はレモニー様じゃないみたいなことを言う。
ついに頭がおかしくなったのかしら。
「シャーリーン。
私、私はね、本当のレモニーじゃないの。」
と、レモニー様が言う。
え!?
どういうこと?
「説明が難しいんだけど、私は、外の世界からレモニーとして転生した人間なのよ。
ほら、あなたの知るレモニーと違うでしょ?」
と、言われて妙に納得するんだよね。
「た、確かに、レモニー様はこんな知的な会話が出来る方ではありませんでした。」
と、言うしかない。
ホントこんな会話したことないもん。
「シャーリーン、私は新しいレモニーよ。
それでも今味方はあなたしかいない。
お願い、真犯人を見つけ出すことに力を貸してほしい。」
と、レモニー様・・・いや新しいレモニー様は言った。
そうだね、やられっぱなしは嫌だよね。
なんだろう、ついに反撃する気になった?
こんな面白そうなレモニー様、いいな!
やってやりますか?
「私は、今のレモニー様の方が好きです。
中身が変わろうと、あなたのメイドであることに変わりはありません。
なんなりと御用命を。」
と、私は答えた。
よろしく、新しいレモニー様!
読んでくださってありがとうございました。
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