表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/61

帰還

「君が存在するゲームの世界は、完全に命を持ったということ。

異世界が誕生したんだ。」


そ、そんなことあるの?

機械が意識を持つようなもの?

映画でよくあるような?


「どうしてそんなことが起きたの?」


「原因は君だ。

僕たちは、君が現実のレモニカの生まれ変わりであると結論づけた。

理由は、他のプレイヤーのレモニーにはない、あの悪夢のシーン。

あれだけは、君にしかないんだ、レモニー。」


そ、そういえばライカも言ってた。

他のプレイヤーのレモニーたちには、起こらないことだと。


「でも、私はいきなりこのゲームの中に宿ったわけじゃないわ。

普通に・・・、現代に生きる日本人のプレイヤーとしてこの恋愛ゲームもやっていたという前世の記憶があるの。」


「そうみたいだね。

でも、子供時代を日本で過ごしていた記憶はないんだろ?」


「え、えぇ・・・。」


「実はね、このゲームを作っていた時に、レモニーのキャラクターデザインを担当していたのが、欧州で生活していた日本人の女性スタッフだったんだよ。

名前は檸檬(れもん)。」


「!!」


檸檬(れもん)は体が弱い人だけど、レモニーになりきって日々奮闘(ふんとう)していた。


自分をレモニー・ケルと呼んでというくらい、はまっててね。


彼女も、君のようにレモニカの悪夢を見ていたそうだ。


レモニーにはまりすぎたのが原因だと笑っていたけど、そうではなかったんだと思う。


ある日とうとう体調を崩した。

だから実家のある日本に帰ったんだ。


せめて配信されたゲームをやって、自分がデザインしたレモニーの出来を確かめる、と言ってた。

でも、最近亡くなってね。


彼女は君の直近の前世だ。

レモニカから彼女になり、ゲームのレモニーへと魂が転生していったのだと思う。」


「そう、『檸檬(れもん)』。

(たちばな)檸檬(れもん)』。

名前だけは覚えてる。

制作スタッフの一人・・・。

だ、だから私、この部屋やあなたに見覚えがあるのね・・・。」


「そうだね。

元々このゲームの設定でも、レモニーはレモニカの生まれ変わりという位置付けだったが、君は現実のレモニカの生まれ変わりであり、制作スタッフの一人、(たちばな)檸檬(れもん)であり、ゲームの中のレモニーに転生した存在なんだよ。


嬉しいよ。

そんな人に出会えたことが。」


「じ、自覚がなくてごめんなさい。

ほとんど覚えてないの。」


「いや、いいんだ。

そんな君がこのゲームの世界で、幸せや充実を感じてくれたことが、何より嬉しい。

そして本物の異世界へと、生まれ変わらせてくれたことに感謝しかない。」


「クランシー・・・。」


「それにね、転生は君だけじゃない。

ライオネルもおそらく、現実のライオネラが宿った可能性がある。

彼の数値もまた、最初にプログラムされたものとは違う現象をみせているんだ。

レモニカの魂を追ってきたんだろう。

今度こそやり直すために。」


「え?

彼も?

じ、じゃ、私たち二人で来たの?」


「おそらくね。

二つの魂の影響も、異世界化に関係していると思うよ。


君らが存在するこの恋愛ゲームだけは、周りのキャラクターたちも、もはやプログラムされた人形ではなくなっている。


ライオネルと触れ合った君なら、よくわかってるんじゃないのか?

彼の体はCGなどではなかったはずだ。

もはや生身の人間のそれだと。


たとえ、時間の流れや怪我の治りの早さや、体力的なことなど、諸々のことに現実と同じ制約がないにしてもだ。


もう血の通った人間たちなんだよ。

ライオネルも、シャーリーンも、みんな。


もちろん君自身もそう。

そして、彼等は君を心から愛してるんだよ。」


「・・・!わた・・・し・・・。」


「戻りたいんだろ?

レモニー。

レモニカとして生きる必要はない。

(たちばな)檸檬(れもん)も忘れていい。

帰るんだ。

君の現実に。」


「最後に一つ。

レモニカの悲劇を回避するような筋書きにしなかったのは、なぜ?」


「知っていてほしかったから。

かつて他人の思惑に流されて、偏見と決めつけによって死んでいった女性がいたことを。


愛する人がいても、守れないことがあることを。


現実には、何人も魔女狩りで死んでいるんだ。


あのシーンは、他のプレイヤーの間でも賛否両論だ。

ゲームなんだから幸せにするべきだってね。

でも、僕はそうは思わない。

後世の人間が繰り返さないためには、(はず)せない話だから。」


「・・・そうね。

忘れないためには、それがいい。」


「時間だ、レモニー。

今はライカが必死に君を生かし続けている。

レマニカルが効いて君は息を吹き返す。

この世界に宿ってくれてありがとう。

・・・そしてさようなら。

元気でね。

今度こそ永遠に幸せであってくれ。」


「クランシー、ありがとう。」


風景がぼやけて、その場面が遠くなって行く。


再び暗闇に包まれて、遠くで誰かが呼ぶ声が聞こえてきた。


うっすらと光を感じて目を覚ますと、涙目のライオネルと、シャーリーンが見えた。


瞬きをすると、ライオネルが抱きしめてくる。


「よかった・・・。

また、失ったかと・・・。」


と、ライオネルは言った。


「うわーん!

レモニー様!

レモニー様がいなかったら、私生きていけません!!」


と、シャーリーンも大泣きしている。


「ごめん・・・ね。

心配かけて・・・ごめん・・・なさい。」


力が戻ってきて体を起こすと、燃え上がる処刑台が見えた。


「私どうやって・・・。」


手元を見ると、少し焼け焦げたライカの手紙があった。


『レモニー?

レモニー生きてる!?

あれから、私色々やって、あなたの体を動かしたの!

あなた・・・!

ゆっくり動いてくれて!

レマニカルも(かじ)らせた。

少しずつ体も前に進んで・・・、ドレスは少し焼けたけど、一定距離進んだらライオネル達が来てくれて・・・。

もう、この最後のミニゲームが一番きつかった!!』


ライカの文字に思わず吹き出す。

ミニゲームなんだ・・・。

ライフがなくなる前に、クリアしたら助かるやつね・・・。


ありがとう、ライカ。


『どこに行ってたの?

私、あなたが戻ってこないから、死んだのかと・・・。

シャーリーンと、ライオネルたちの悲痛な声に必ず戻るから!て、ここで叫んでたの。

うう、レモニー。

愛する人たち泣かせちゃダメよ!』


ごめんね。私、ここにいる。


「ただいま・・・みんな。」


そう言ってライオネルを見る。

ライオネルは、ライオネラの生まれ変わりということは・・・。


「もしかして、ライオネラの記憶があるの?」


私の言葉に、ライオネルは一瞬驚いたけど、


「レモニー様と過ごすようになって、時々夢に見てた。

その(たび)にもう失うまいと・・・。

でも、俺はライオネラじゃない。

俺は・・・俺はライオネルだ。」


と、言った。


私も頷いた。


「私もレモニカじゃない。

私はレモニー。

レモニー・ケル!」


そう言ってお互い抱きしめ合う。


シャーリーンが私たちを見て泣きながら、


「もう、あのミア第二王妃!いや、ダリア!

見つけたらただじゃおかないんだから!」


と、言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ