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それなら、なんとかするしかない!

悪役のレモニーが、実は何も命令していない!?


ゲームの中では、あの憎たらしいBGMと共に、レモニーが悪事の命令を出すシーンが沢山あった。


でも、プレイヤーが見れるのはそこまで。


翌日その命令を取り消すシーンなんて、見たことがない。


こ、これはどういうこと?


悪役令嬢として、何もしていないのに、最後は処刑?


「ひどいわ・・・。」


思わず口から言葉がこぼれ出る。


「間接的とはいえ、あなたのご希望通りのことが起き、全て王子たちによって阻まれる。

私も驚いております。」


シャーリーンが、答える。


「どうしてこんな。」


「日頃の行いのせいでしょう。

あなたは、昔から人間的には最低なんです。

なんでも口ばかりで、責任は全部他人。

そのくせ、いいことが他人に起きるのは許せない。

奪い取って、自分のために使ってしまおうとする。

他人は見下す。

そういう人間であることは、周知の事実です。」


「うぅ・・・。」


「そう、周りに言われてご成長されたのは、存じております。」


「え?」


「私がお仕えする前から、そういう前評判でした。

だから、みんなそんなふうにあなたを見ていた。

何か悪質なことが起きれば、それは全てレモニー様のせいだ、と。」


「シャーリーン?」


「私は、元スラム育ちでした。

あなたの財布を盗もうとして、取り押さえられ、警察に突き出されようとしたのを、あなたが止めてくださったんです。


何も盗まれていない、そんなにお腹が空いてるなら、私のメイドになればいいじゃない、と。


私は、その日からあなた付きのメイドになりました。」


「そうだったっけ・・・。」


設定資料には確か、『シャーリーンはレモニーのためなら、悪事に手を染めることも躊躇いのないスーパーメイド』としか、書かれていなかった。


「私はスラム育ちなので、悪人は見ればわかります。


あなたは、単に小心者で、無知で、勉強不足で、周りからいろんな悪いイメージを転嫁されやすい存在にすぎない、と思いました。」


「そ、それは褒めてるの?

けなしてるの?」


「もちろん、両方です。」


「あ、そう・・・。」


「ただ、恐ろしいのは、あなたは結果を引き寄せてしまうこと。

悪事の面に特化してますけど、口にしただけで、それが起こってしまう。

密室で言っただけのことで、悪事は起こりません。

実行するものがいないと。」


「そうよね。」


「誰かが、あなたを悪女にしようとしています。

おそらく、ワインの件も。」


「それが、ライオネル?」


「確証はありませんが、可能性は高い。

でなければ、王子たちをああも確実に、現場に連れて行けるはずがないんです。

自分で仕込んだのなら筋が通ります。」


「シャーリーン・・・。」


嬉しいな。

こんなふうに思ってくれる人がいる。


でも、どうやって証明すればいいのだろう。


「シャーリーン、使節団の誰かが、もうワインを飲んでるの?」


ワインが毒入りだとわかったということは、犠牲者が出た・・・?


「いいえ、どなたも飲んでいません。

ライオネルが入ってきて、これは毒入りだと言って止めたと。

その場で花壇にワインをこぼし、たちまち花が枯れるのをみて、皆毒だと確信したそうです。」


・・・・!!


間違いない。


ライオネルは、私を悪女に仕立てようと動くキャラクターなのだ。


ゲーム内の、ストーリーの補正役が相手となると難しくなる。


でも、なんでなの?


ストーリーを考えるなら、いっそレモニーが黒幕ということにした方が、スッキリするはず。


わざわざそう見えるよう、しないといけないなんて。


まるで何かを隠すみたい。


隠す・・・。


「裏シナリオ・・・。」


「え?」


「通常の攻略では辿り着けない、トゥルーエンディング。

ヒロインが恋の相手と結ばれるだけでは、到達できないシナリオがあるとしたら・・・。


だから、毒の送り主が最後まで伏せられていたのだとしたら・・・。」


「レモニー様?

何を?」


「まさか・・・、レモニーは裏シナリオの主人公なんじゃ・・・。

毒入りワインを送りつけた真犯人を見つけ出し、彼女を生存させて初めて開くシナリオがあるんじゃないの・・・?」


「レモニー様?

あなたが、レモニー様でしょ?」


私はシャーリーンを見た。


「シャーリーン。

私、私はね、本当のレモニーじゃないの。」


「え?」


「説明が難しいんだけど、私は、外の世界からレモニーとして転生した人間なのよ。

ほら、あなたの知るレモニーと違うでしょ?」


「た、確かに、レモニー様はこんな知的な会話が出来る方ではありませんでした。」


・・・、そういえば、シャーリーンとの会話シーンでも、話し合うなんてなかったもんな。


命令して、怒鳴って、わがままばかり。


最後は泣いて開き直り。


こんな人が裏シナリオの主人公だなんて、誰も思わないもんね。


でも、レモニーの出演シーンといえば、ヒロインが攻略対象キャラクターと仲良くなりだして、それに対する嫉妬に燃えて、意地悪を考えるシーンばかり。


誰だって好きな人を目の前で奪われていくのを見たら、あんなふうになるんじゃないのかな。


ヒロインとの会話シーンで、意地悪なことしか言わないのも、最初からみんなに愛されてるヒロインが、羨ましかっただけかもしれない。


それでも、今は私がレモニーなんだ。

こうなったら、私が私の裏シナリオを開けるよう、動くしかない!


「シャーリーン、私は新しいレモニーよ。

それでも今味方はあなたしかいない。

お願い、真犯人を見つけ出すことに力を貸してほしい。」


シャーリーンは、真顔でしばらく考え、ふっと笑った。


「私は、今のレモニー様の方が好きです。

中身が変わろうと、あなたのメイドであることに変わりはありません。

なんなりと御用命を。」



読んでくださってありがとうございました。

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