私は魔女ではありません!
私は、王の目を見てはっきり言った。
「私は魔女ではないし、王家に今起こっている数々のことにも関わりはありません。」
私の言葉に、周りは一斉に野次を飛ばすけど、王が片手を挙げると、皆静かになっていく。
「ほぅ、やっと喋ったか。」
「私が発言する機会がなくて。
次から次に、他の人が喋るからです。」
「ふふ、確かに。
まるでお前の口から真実が漏れるのが、まずいかのようにな。」
王はそう言って、剣を鞘に戻した。
・・・怖かったわ。
「王様?
な、何を?」
「首を刎ねないので?」
ミア第二王妃と、ペヤパヤ大臣が慌てたように、王を見ながら言った。
「聞いたのはお前たちの考えだけだ。
あのパム村の悲劇の根拠はなんだった?
レモニカの呪い?
馬鹿馬鹿しい。
私はあの時の王と同じ轍は踏まぬわ。」
と、王は言うと、玉座に戻って座った。
「かつて先の王は、レモニカの件を異端審問官に任せ、子供たちの後継者争いを静観した。
臣下の話を唯々諾々と受け入れ、ダリア第三王妃の諫言を信じ、子供たちを失って初めて物事を点としか見ていなかったことに気づいたと言う。」
王は静かに玉座の上で指を組んだ。
そして、私たちを見回していく。
「点に囚われてそれが結ぶ線を見なくなった時、王は王ではなくなる。
王は臣下の意見を聞いても、言いなりになってはならぬ。
お前たちは、自分たちの言葉にどれほど責任が負えるのだ?
言いっぱなしに終わらないと、ここで言えるのか?」
その言葉に、一同は皆何も言えなくなった。
「レモニー・ケル。
一つずつ確認する。
まずはライオネルの件だ。
お前が出国を唆したのか?」
「いいえ。」
「どうやって証明する?」
「本人がそう、証明します。」
と、言ってライオネルが立ち上がる。
周囲がざわ!と騒ぎ出した。
そりゃそうよね。
かつてのこの国の王子だもの。
そして私の隣に歩いてきて跪いた。
「ライオネル!?」
と、叫んだミア第二王妃が、表情を変える。
「私が国を出たのは、後継者争いに終止符を打つため。
私が片目を失った時に、決意しました。
レモニー様とは何の関わりもありません。
まだ、出会ってもいなかったし。」
と、ライオネルは堂々と言った。
王はニヤリと笑ってライオネルを見る。
「そうか。
確かにその目をなくしてから、お前はいなくなった。
わかった。
次だレモニー。」
「はい。」
「ケルフェネスの体調不良は、お前の呪いによるものか?」
「いいえ。
私の父の領地の茶葉を購入されているようですが、茶葉に毒草が混入しており、それが原因だったようです。
毒の混入経路はわかりませんが、私の呪いではありません。」
と、私は言った。
「証明できるか?」
「私がします。」
王の質問に、ケルフェネス王子が立ち上がる。
「私が入手ルートを洗いだしていると、隣国から交易都市カチャガチャに着くまでの輸送船の中で、不審な動きをする貨物係がいたことかわかりました。
決まって私が茶葉を注文した時のみ、乗船していたのです。
これがその船員名簿です。
そしてこちらが私の注文書です。」
王は書類を受け取ると、検分して頷いた。
「船会社に確認したのか?」
王の言葉にケルフェネス王子が、
「はい。
日雇いの臨時船員だったそうですが、その後身分証を奪われたと訴える別の船員が、警察の方に届け出たそうです。
どうやら、身分証を盗んでなりすましていたようです。
犯人は発音や容姿からシャトラ人であることが、判明しております。」
「ふむ。
レモニーが雇ってやらせたにせよ、呪いとは言えないな。
大体お前を狙う理由がない。
・・・彼女にお前が悪さでもしたなら別だが?」
王はそう言って、片眉を上げてケルフェネス王子を見る。
「そんな覚えはありません。」
ケルフェネス王子も澄まして言う。
「まあ、いい。
次に他の子供たちの不調や災難だが。
これに関しても、無関係か?」
王の質問に私は頷く。
「もちろんです。
まだお会いしたこともない相手を、どうやって呪えるのです?」
その言葉に、包帯を巻いた一人の姫が立ち上がった。
「私の全身にできる皮膚炎は、あなたのせいだって、ミア様が言うの。」
12歳くらいだろうか。
可愛らしい姫だわ。
この人がスワン姫ね。
「僕が風邪をひきやすいのも、あなたのせいだってミア様言ってたよ。」
9歳くらいの男の子。
この子が三男のケシェティ王子。
「私はお馬から、落ちたの。
それもあなたのせいだって、ミア様が言ったー。」
7歳くらいの女の子。
車椅子に乗っている。
この子がメロディー姫ね。
「いいえ。
どれも違います。
スワン姫、お医者様はなんて?」
私はスワン姫に尋ねた。
「体を清潔にして、薬を塗れ、て。
そうしているのに、治らないの・・・。
痒くて掻いてしまう。」
「石鹸が合わないのかもしれません。
低刺激の石鹸を使っていますか?」
「いいえ。
ミア様が、高級な石鹸をくださって、それなら治る、て・・・。」
「一度、低刺激の石鹸をお使いください。
体の皮脂を取りすぎるものは、かえって乾燥を招いて痒みをひどくします。
洗髪用のものも同様です。
そして着るものも、通気性を重視してください。
蒸れもまた、痒みの原因になります。」
「ミア様は、熱がこもるくらいの材質の方が細菌が死ぬからいいとおっしゃったわ。」
「いいえ。
蒸れは汗をかかせるし、対処が間違ってます。
肌よっては、自分の汗まで皮膚炎の原因になります。
どうか、一度やってみてください。」
私が言うと、ミア第二王妃が忌々しそうにこちらを向いた。
「ケシェティ王子、風邪をひきやすいそうですね。」
「うん。
僕ね、泳ぐのが好きなの!
ミア様がたくさん遊びなさい、て言うから遊ぶんだけど、疲れてそのまま寝ちゃうんだー。
髪もね、乾かしてるけど、濡れたままでも気にしないの!
ミア様が、ボクは強いからそんなことで風邪はひかない、て。」
「濡れたまま寝てしまうと、大人でも風邪をひきますよ。
汗や水分が蒸発するとき、気化熱と言って、体の表面の温度も一緒に奪ってしまうのです。
髪をもっと短くして、乾かしやすくしてください。
お洋服もちゃんと着替えて寝てください。」
ミア第二王妃は、扇子を握りしめて、歯を食いしばっている。
「メロディー姫、馬が暴れたそうですね。」
「大人しい子なのよ?
暴れたことないのに!」
「その日は、何かありました?」
「ミア様が、新しい刷毛をくれて、それですいてあげたのよ。
とってもいい花の蜜の香りがしたんだけど、蜂さんもついてきて・・・。
ミア様は大丈夫だっておっしゃってた。」
「メロディー様も刺されたのでは?」
「少しね、でも、私、強いもん!
泣かなかったのよ?」
「素晴らしいです。
メロディー様。」
私が言うと、ミア第二王妃にみんなが注目している。
「ええい!
だからなんだというのだ!?
お前が魔女ではないと、証明できてはいないぞ!?」
彼女はそう言うと扇子を投げ捨てた。
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