恋と嫉妬と本当にそれだけ?
私は2枚のサインを見つめていた。
確かに少しだけずれてる。
「ベクトリアル、このライオネラの走り書きの紙は、普通の紙?」
私が質問すると、ベクトリアルは、
「え・・・と、いえ、これは複写用の紙の一番上の紙を使ってますね。
おそらく普通紙を切らしていて、複写用の一番上の紙を剥いで書いたものかと。
普通紙と比べると、少し薄い紙ですからね。」
と、言った。
・・・ということは。
ライオネルが、指を挿しながら、
「今こうして見ても、この紙は確かに薄い。
こうやってライオネラの走り書きの紙の上に、処刑執行書を重ねて、透かしながら、書いたんだろう。
後から検証されてもばれないように、文字の位置を合わせる必要があるからな。」
と、言った。
「それでも、他人ではなく王家の誰か?」
私が聞くと、ライオネルは頷く。
「なぞるにしては、ゆっくりではなく、迷いなく流れるように書かれている。
この文字を書き慣れた人間が、書いたと見て間違いない。」
そう言われて、カチャガチャで、ペヤパヤ大臣が言っていたことを思い出す。
『レモニカの死は謎も多いのですが、一説によると、領主ライオネラの弟である皇太子も彼女を愛してしまい、兄に取られる前に手を回して彼女を殺したとも言われているのでございます。』
そうだ・・・。
当時の皇太子のパティスン!
動機があるとすれば彼だ。
シャーリーンも、同じことを口にする。
「皇太子のパティスンも、レモニカが好きだとペヤパヤ大臣言ってましたね。
ここに潜んで、ライオネラが出ていってから書いたかもしれませんよ。」
ベクトリアルも頭を掻いて、頷いた。
「あー、確かにそんな話もありましたね。
ライオネラの手記にも出てきますよ。
パティスンが、レモニカのところによく来ると。
彼女の淹れるハーブティーが美味しいからと、足しげく通ってくると。
レモニカの日記にも出てきませんか?」
その言葉に、レモニカの日記を開くと、確かに書いてある。
『今日もパティスンがやってきた。
彼と結婚したら義理の弟になるから、できるだけのことはしてあげたい。
そんなにこのハーブティーが気に入ったのかな。
嬉しい。』
なるほど、ハーブティーか。
さらにページをめくると、
『パティスンに好意を伝えられた。
ライオネラがいるからダメだと伝えると、諦めきれないと迫られたので、追い返した。
これで終わったと思ったのに・・・。』
と、書いてある。
次のページを開くと、
『今日は本当に危なかった。
昨日のお詫びの印だと、パティスンが高価な紅茶を淹れてくれたのだけど、薬が入っていた。
この味は『ヒボレメト』という王族がよく用いる媚薬で、解毒薬は王族しか持たない。
私は正気を失いかけながら必死に逃げていたら、ライオネラが来てくれた。
彼も解毒薬を持っていて、助けられた。
パティスンは、ライオネラに殴られていたけど、私たちを呪う言葉を吐いて帰っていった。』
と、書いてある。
きっとこれだ。
パティスンはレモニカに薬まで盛ったけど、彼女は結局ライオネラに助けられて、自分のところには来ないことを確信したのね。
それで、彼女の処刑に力を貸したのかも知れない。
「ハーブティーに皇太子・・・か。
レモニー様もケルフェネス王子には気をつけてくださいよ?」
日記を読んでいたシャーリーンが、私を見上げてくる。
「え、なんで彼の話が出てくるの?」
「もぅー、ケルフェネス王子は、絶対レモニー様に気があります、て!
ライオネルがいなかったら、あのまま迫られてますよ。」
「またまた、そんな。
彼は婚約者いると聞いたじゃない。
それに、ライオネルの大事な弟だし。」
「甘いですね、レモニー様。
あの時、ライオネルとケルフェネス王子の間に火花が散ってたの見てましたか?
まあ、ケルフェネス王子は薬を盛るとか、そんな卑怯なことは、しないでしょうけど。」
シャーリーンと、私が話していると、ライオネルが咳払いした。
「レモニー様、これを。」
ライオネルが小瓶を取り出して、私に握らせた。
「え、何これ。」
「解毒薬。
ヒメボレトは、この薬でしか解毒できない。」
「ラ、ライオネル、さっきの話を真に受けてるの?
ケルフェネス王子はからかってるだけなの。
面白がってるだけの人にそこまで・・・。」
ライオネルは、無言でにっこり笑う。
・・・怖い。
笑顔が怖い・・・。
「もらっておきます・・・。」
迫力に押されて薬を仕舞い込む。
するとキーアイテム入手の音がした。
ライカの手紙を開くと、
『キーアイテム入手よ。
『領主の走り書き』
『処刑執行書』
『解毒薬』
だって。
それにしてもライオネルは、解毒薬持ってたんだね。
そらから、レモニー?
ケルフェネス王子はだめよ?
私の次回の攻略対象よ?
手を出さないでね。』
と、書いてある。
・・・。
あなたは、今ティモシー王子の妻よね?
とりあえず、これでキーアイテムが揃ったんだ。
これまでにわかったことは。
処刑執行書の偽造により、領主に裏切られたと思い込んだまま、レモニカは処刑された。
その偽造を仕組んだのは、ライオネラに嫉妬していた弟のパティスンらしい。
領主は、偽造に気づかぬまま、自分が処刑執行書にサインしたと後悔の念を抱えてレモニカの家で暮らし続けた。
ということ。
もちろん、疑問は残る。
本当に領主は、あのサインを疑わなかったのか。
ライオネルが気づいたように、彼も気づいたのでは?
王家の後継者たちが、末の息子を除いて全員死んだのは、本当にレモニカの呪いなんだろうか。
レモニカの身になって考えると、呪い殺すなら、ライオネラのはずだ。
王家の後継者をまとめて殺す必要なんてないはず。
顔をあげるとそこには、ライオネラの肖像画があった。
・・・確かにライオネルにも、ケルフェネス王子にも似てる。
私はそっと肖像画に近づくと絵に触れた。
「ずっと誤解してた・・・。
ごめんなさい。」
レモニカ、許してあげて・・・。
この人は、最後まであなたを助けようとした。
わかって欲しい。
そう願っていると、外から騒がしい音が聞こえてきた。
「魔女、レモニーがここにいると聞いた!
すぐに引き渡せ!!」
ベクトリアルが慌てて窓に駆け寄り、
「王室警備隊!?
地方警察ではなくなぜ中央の彼等がここに?」
と、叫んだ。
私たちは思わず顔を見合わせる。
ベクトリアルが、急いで部屋の暖炉の後ろにある、スイッチを押す。
暖炉が動いて抜け道のようなものが見えた。
ベクトリアルは、必死な顔で私たちに向かって叫んだ。
「ここから地下へ!
真っ直ぐ一本道をぬけると、交易都市カチャガチャへ抜けられます!
人混みに紛れて逃げるんです!
早く!!」
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