悪女の次は魔女ですか・・・
ケルフェネス王子が、ベットのそばにある椅子に腰掛けると、指を組んで話し始めた。
「レモニー様は、魔女。
兄上を籠絡して国外へ追いやり、私を呪い殺して他の兄妹も全滅させる。
唯一呪いにかからぬ強さを持つのは、末の弟カチャリナだと。」
「なに!?」
「魔女、て。
なにそ・・・!」
言おうとして、頭の中で何かがフラッシュバックする。
『信じて!
私は魔女なんかじゃない!』
・・・!?
何?
私、誰に何を伝えようとしてるの?
「レモニー様?
ご無理はいけません。」
シャーリーンが私の様子に気づいて、毛布をかけ直す。
ケルフェネス王子が、すまなそうに顔を覗き込んだ。
「すみません。
私はハーブティーが大好きで、レモニー様のお父上様の領地から取れる上質な茶葉を、定期的に購入しているのです。
その中に、毒の葉が混じっていたことが最近わかったのです。」
「え!?」
私は驚いてケルフェネス王子を見る。
「茶葉の監督はレモニー様がしていたと伺いました。
ハーブティーに詳しいそうですね。
国でも指折りの知識を持つと。」
そう。
レモニーはとても詳しい。
私も見様見真似で必死に覚えて、なんとかできるようになってきた。
でも、元々の私にも才能があったらしく、そこまで苦ではなかったの。
もちろん、毒草が混じらないように気をつけていたはずだし、今までこんなこと起きたことはない。
「最近、軽い眩暈や倦怠感を覚えるので、医師に診せたところ、毒草の混入の疑いがでたのです。
そして、調べてみると、カブラリトの葉が混じっていたのです。」
ケルフェネス王子が俯く。
そういえば、少し顔色が悪い。
カブラリトといえば、うちの領地によく生える毒草だ。
虫除けになるので、ハーブ畑の周囲によく植えているが、もちろん一緒に刈り取ったりしない。
「今、その茶葉をお持ちですか?」
私が尋ねると、ケルフェネス王子はポケットから取り出して、見せてくれた。
私はシャーリーンに支えられながら起き上がり、匂いを嗅ぐ。
「・・・!!」
アップルミント、メリッサ、レモングラス・・・そしてカブラリトの匂い!!
「そんな・・・!
混じってる・・・。」
私の言葉に、シャーリーンも覗き込む。
「毒草の混入には、かなり神経を使ってるはずなんですよ。
それが出来ているから、長年信頼を得ているのです。
特にレモニー様も、今のようなレモニー様になる前から、ハーブティーには誠実でいらっしゃったんです。」
シャーリーンのその言葉を受けて、ケルフェネス王子が怪訝な顔になる。
「今のようなレモニー様・・・て?」
「あ、ああ、性格を変えたんです。」
私は急いで誤魔化す。
べ、別に嘘じゃないし。
「そうですか・・・。
なんだか前より綺麗になりましたね、レモニー様。
最初にお会いした時は、ライカ様にしか気がいかなかったんですけど、今はあなたに目が行きます。」
ケルフェネス王子がさらりと言って、シャーリーンが片手を口にあて、ライオネルが冷たい目でケルフェネスを見ている。
こ、これがヒロイン効果・・・。
そういえば出会う男性は、次々と魅了されるもんね。
恋愛ゲーム、て。
なんだか懐かしいな。
あの元左大臣は、カウントしないようにしよう。
「お前には婚約者がいるな?
ケルフェネス。
浮気者は嫌われるぞ。」
と、ライオネルが、ケルフェネス王子に言う。
「形だけの婚約者ですよ。
ろくに会わないのに、さっさと決められてしまって。
レモニー様、茶葉のこと、もっとお話ししたいです。」
「後にしろ。
とりあえず入手ルートを洗い直せ。
誰かが故意に入れている可能性が高い。
お前は彼女に、それ以上近寄るな。」
「もう、既に自分のものみたいな言い方しないでください。」
「彼女は誰のものでもない。
少なくともお前のものではない。」
「だったら挑戦くらいさせてくださいよ。」
「他を当たれ。」
兄弟が静かに火花を散らしているみたい。
ケルフェネス王子は素敵だけど、次回のライカの攻略対象キャラだし、深入りは禁物。
私は・・・私は・・・。
そう思ってライオネルの後ろ姿を見る。
「私だって、レモニー様が何かしたなんて思ってませんよ。
茶葉の入手ルートは、もう一度改めます。
にしても、籠絡されてるのは本当みたいですね?
兄上。
とにかく、そんな噂がこの国にはある。
これで収まってくれるといいが・・・。」
ケルフェネス王子が呟き、私も俯く。
「私が魔女だなんてどこからそんな・・・。」
「元左大臣じゃないんですか?
あいつならレモニー様がいること、知ってるだろうし。
また、なんか罪を着せて、まろの元へくれば解決するでおじゃるとか言いそうでしょ。」
と、シャーリーンが私を寝かせながら、言った。
「だとしても、なんで魔女なの?
今まで散々悪女呼ばわりしてたのに。
今更変えるかな・・・。」
「たしかに。
あいつそういうことには、頭回らなさそう。
どう思います?
ライオネル。
あいつの思考なら読めるでしょ。」
シャーリーンの言葉に、ライオネルが考えこむ。
「全く無関係ではないと思う。
だが、魔女の発想は彼ではない。
魔女といえば、パム村で起きた魔女狩りの悲劇くらいなものだ。
まだまだこの国の辺境には、魔女狩りの習慣が残っているからな・・・。」
パム村!?
何故かその名前に聞き覚えがある。
おかしい。
シャトラ国は、まだケルフェネス王子が攻略の解禁になっていないので、プレイヤーは来ることができない場所だった。
なのに、私には覚えがある。
そう思いながら意識が遠のいていく。
私は必死にライオネルの洋服の袖を掴んで、目を閉じながら呟いた。
「信じて・・・。
私は・・・魔女じゃ・・・な・・・。」
ライオネルが驚いて振り返るけど、私はそのまま意識を手放した。
読んでくださってありがとうございました。
お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。




