表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/61

レモニーパート開始!

私は必死に昔を思い出そうとした。


子供の頃の記憶はある。


でも、そこは日本かといわれたら、自信がない。


むしろ、むしろあの風景は・・・。


「ま、いいわよ。

無理に思い出さなくても。

これからも、あなたはここで生きていくんだし。

このゲームの世界のキャラクターとして。」


そう言ってライカは笑った。


「行くよね?

ほら、そこを出たらレモニーパートよ?」


ライカに言われて振り向くと、控室の扉の上に、レモニーパートの文字が浮かび上がっていた。


そして、ゲームの中では聞いたことのない、BGMが流れる。

でも、なんだろ。

とても懐かしい。


「あ、じゃ、ここから・・・。」


「そう、あなたが主役。

ちょうどね、今ゲームの画面が、あなたの後方少し上から見る画面になったわ。

あなたを中心に周囲が見れる感じね。

ま、プレイヤーは私だから、見るのは当たり前ね。」


「画面酔いしないでくださいね。」


「大丈夫。

休み休み見てるから。

私の実体は家の中にいるからね、横にだってなれるのよ?」


ライカは優しく肩に手を置いてきた。


「さあ、レモニー。

交代よ。

何かあったら相談には乗るから。

いってらっしゃい。」


私は笑顔で頷くと、扉を開けた。


ここから私がヒロイン。


久しぶりのヒロイン。


私は廊下を駆け出して行った。


表に出ると、馬車に乗る。


「フェシャティナフィアの監獄へ!」


シャーリーンが、動き出した馬車の中で着替えを渡してくれる。


「旦那様には、うまく誤魔化しておきました。

今日こそ会えるといいですね。」


私はドレスを着替えながら、頷く。


そう。


会いたい。


まだ、聞きたいことがある。


お祭りムードに沸く街の中を、私たちは馬車で駆け抜けた。



『フェシャティナフィアの監獄』は、離れ小島の中にある監獄。


船でしか行けないところにある。


重罪を犯したり、逃亡の恐れがある囚人はここに収監される。


ライオネルは、逃亡なんかしない。


問題があるのはむしろ・・・。


「あー!

また、来たでおじゃるか!

この悪女めが!

お前のせいでまろはこのような、かび臭い牢獄の囚人となったでおじゃる!」


元左大臣。


この人は何故か個室の豪華な牢屋に入れられている。


看守を買収したとか・・・。

本当に汚い奴。


面会室に行くには、こいつのいる牢屋の前を通らないといけない。


行くたびに罵られて、もう慣れてしまった。


もちろん、無視。


「こりゃー!

聞こえておるのでおじゃろ!?

こっちを向くでおじゃる!!

お前にぶたれたこの高貴な顔は、一流の医者に診せて治したでおじゃるよ!

・・・・あれ?」


怒鳴り声が止んで、静かになる。


続いて、何やら粘っこい視線が刺さってくる。


・・・嫌な予感。


早く行こう。


「待つでおじゃるよ。

ライオネルのことでおじゃる。」


その言葉に足が止まる。


振り向くと、元左大臣が体をくねらせだした。


う・・・、ライカの気持ちが今更ながらわかる。


「奴は、会わないでおじゃるよ。

所長にでも聞かないと。

この監獄の、一番重い罪を犯した重罪人の牢屋の中にいるでおじゃるからな。」


「え!?」


「囚人同士の喧嘩に、巻き込まれたでおじゃる。

ここで争い事を起こせば、さらに刑期が伸びて罪も重くなるでおじゃるよー。」


「け、喧嘩に?

何故ですか?

彼は争いなんて・・・。」


「レモニー様!」


シャーリーンが、走り寄ってくる。


「元左大臣が逃亡するために、囚人にお金を渡してわざと喧嘩をさせたそうです。

そのどさくさに紛れて逃げようとした左大臣を、ライオネルが捕まえようとして、喧嘩に巻き込まれたそうです。」


「何ですって!?」


私は元左大臣を睨みつけた。


「ほほほ、レモニー。

よく見たらレモニーも可愛いでおじゃる。

睨む顔もそそるでおじゃる。

ライカ姫はもはや人妻。

レモニーが、まろの10番目の妻になってたもれ。」


「お断りします。」


無視!無視!


私はスタスタと歩いて、ここの所長に会いに行った。


フェシャティナフィアの監獄の所長『キリ』は、剃刀のように鋭い目を持つ男性。


ライオネルのために直談判にきた私を、ジロリと睨みつける。


「ライオネルは、争い事に巻き込まれたとはいえ、罪は罪。

ここでの争い事は、一番罪が重いのです。

例外はありません。」


「でも、彼は元左大臣の逃亡を阻止しました!

大体、何故あの人はあんな豪華な牢屋にいるのですか!?

ライオネルよりもあっちを重罪人の牢屋に入れてください!!」


「・・・元左大臣は、罰金等全て支払ってもあまりある金を持っているのです。

あの牢屋も彼のお金で増築したのです。

王も呆れておりますが、彼は逃さずここに収監できれば、それでよしという判断をされたようです。」


「そんな・・・。」


「ま、ライオネルも争いの主犯ではありません。

もう、10日ほど収監しましたから、今日から元の一般房に戻ります。

面会はできます。」


私はそれを聞いて、顔を上げた。


キリは横を向いて、軽く咳払いする。


「ただし、本人に会う気があればですが。」


その言葉に、胸に石が沈んだような気持ちになった。


面会室へ行き、私はひたすら待った。シャーリーンも、心配そうにこちらを見ている。


今日もダメ?


そう思った時だった。

もの凄い音と共に、ライオネルが走り込んできた。


「何故来たんですか!?

来てはいけません!!」


ガラス越しの向こうから必死な顔で、叫ぶ。


顔中殴られたような痕があり、眼帯もボロボロになっていた。


「そ、そんなこと言わないで。

あなたに会いたかっ・・・。」


「危険だから来るなと手紙を出しました!

すぐにお帰りください!!

読んでいないのですか!?」


あまりの必死の言い方に、目を白黒させてしまう。


手紙を?

いつ?


「手紙なんて、知りません。

いつそんな・・・。」


「レモニー様!!

お逃げください!!」


シャーリーンが叫び声をあげた。


ライオネルが私の後ろに気づいて、顔色が真っ青になった。


な、何?

どうしたの?


「レモニー。

捕まえたでおじゃるー。」


元左大臣の声がして、振り向こうとした時、凄い力で羽交い締めにされた。


「きゃーーーー!!!」


「レモニー様!!」


私の叫び声と、ライオネルの声が同時に響き渡った。



読んでくださってありがとうございました。

お気に召したら、ブックマーク登録してくださるとうれしいです♫ とても励みになります。


〜次話、18時30分前後に投稿致します。〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ