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思い通りになんて、させないから!

左大臣は、ライカに少しずつ近づいて行く。


「姫、姫は嬉しかったでおじゃろ?

王子との恋だけではなく、その容姿、やることなすこと褒められたり、憧れられたりして。

みーんな姫が好きでおじゃる。」


少しずつライカも王子も、後ろへ下がる。


「まろから離れれば、その憧れの眼差しは減っていくでおじゃるよ。

賞賛の声も落ちていくておじゃる。

王子の愛情だけで、本当に満たされるのでおじゃるか?

一度得た物を失う恐怖は、それが大きければ大きいほど、姫をさいなむでおじゃる。

耐えられるでおじゃるか?」


左大臣は両手に握っていた、折れた扇子を投げ捨てる。


「こっちへ来るでおじゃる、姫。

その熟れきった果実のままで、いたいでおじゃろ?

このレモニーに代わる悪女をたくさん用意して、その対比で姫は輝き続けるでおじゃる。

散々、レモニーを犠牲にして、作られた困難を王子と切り抜けて、守られ続けてきたまろの愛しい果実。

仕上げにまろが食べてあげるでおじゃる。」


「下がれ!

左大臣!

それ以上近づけば、そなたこそ処刑台に送るぞ!」


ティモシー王子が叫ぶ。


左右から衛兵が駆け寄ってきて、左大臣を抑え込んだ。


「ライオネル!

ライカ姫を連れて来るでおじゃる!

見える・・・見える・・・。

キラキラポイントが、落ちてきているでおじゃる。

けけけ・・・、まろから離れるから下がるでおじゃる・・・。」


叫びながら、目を血走らせる左大臣に恐怖を感じて、私はライオネルに尋ねる。


「キラキラポイント・・・て?」


「ヒロインの行動によって加算される、好感度ポイントのことです。


これが下がりすぎると、周囲の好感度が落ちて、より、左大臣の元へと嫁ぐ確率が上がるのです。


・・・お話しした輝きを失っていくというのは、このポイントが下がる仕組みのことです。

通常エンドで、話が完結した後のアバターはヒロインとして行動しなくなっていくので、下がるのです。


でも、今は違います。


ライカ姫、逃げてはなりません。


左大臣なしではやっていけない、ヒロインになってしまいます!」


私は今にも恐怖で逃げ出しそうな、ライカの元へと走りより、その肩に手を置いた。


震えているのがすぐにわかる。


「ライカ姫!」


私の声に、ライカが今にも泣きそうな顔を向ける。


「私たち、いいチームよね!?」


その言葉に、ライカの顔がハッとなる。


「私はしっかり悪役をやるわ!

だから・・・、あなたは、ちゃんとヒロインをやるのよ!?」


そういうと、ライカを庇うティモシー王子の前に進み出た。


左大臣が邪魔だと言わんばかりに、舌打ちをする。


「どくでおじゃる!

この役立たずの悪女め!!

下手に足掻かずに、黙って処刑されていればいいものを、身の潔白の証明などする奴があるかでおじゃる!!」


私は大きく深呼吸をして、左大臣を睨みつけると、


「やかましい!

このエロじじい!!」


と、叫んだ。


みんな呑まれたように、シーンとなった。


「何が、『仕上げにまろが食べてあげるでおじゃる。』よ!

あんたはただのスケベで、告白する勇気すら持たない、意気地なしのちっさい男であることをみんなに教えただけじゃない!!」


一気に捲し立てて、肩で息をする。


左大臣は、顔を真っ赤にして怒り出した。


「な、何を言うでおじゃるか!

この口の悪い、小娘!

畏れ多くもまろはこの国の左大臣・・・。」


「ライカのことを好きになったけど、ライカはティモシー王子が好きだから、悔しくて、振り向かせたくて、こんなことしただけでしょうが!!

身分がどこに関係するのよ、このお馬鹿!!

恋したり、嫉妬に狂ったりするのは、庶民と一緒なの!!」


最後まで言わせず、私は左大臣に向かって、言い放つ。

左大臣がワナワナと震え出した。


「お生憎様!

そんなことしたってライカはなびかない!

なぜなら、彼女はもう自分の力で輝いてる!

私の無実を信じて、一緒に行動してくれた時から、あんたの人形でも、果実でもないの!」


「そ、そなたホントにレモニーでおじゃるか・・・?

レモニーは、そんなに饒舌ではな・・・。」


「それから、『散々、レモニーを犠牲にして、作られた困難を王子と切り抜けて』ですって?犠牲にしたのは彼女なの?

作られた困難て、勝手に作らせたのよね!?

全部彼女ではなく、あんたのため!

ライオネルに丸投げして、彼の手を汚してあんたのために全部行われてた!

他人事みたいに言わないでよ!!

がっつり当事者じゃないの!!」


言いながら涙が出てきた。


かつて、自分もこのゲームのプレイヤーだった。

左大臣の掌の上で、攻略対象である王子と恋をして、レモニーを憎み、彼女の無実の訴えに耳を貸さなかった。


彼女が処刑されたと聞いて、せいせいしていたのを覚えているの。


あんなひどい女は当たり前だと。


そこに疑問は感じなかったし、次の攻略対象のことや、アバターのパーツ交換、セリフの選択肢は次は何にしようか、追加イベントはないか、特典は・・・そんなことばかり。


ライオネルから、話が完結した後の、プレイヤーが離れたそのアバターは、左大臣に嫁ぐと聞いて、何てひどいと思った。


・・・でも、自分はどうだろう。




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