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興味を持っていただきありがとうございます!

(セシル視点)


「君達には本気で失望したよ」


 ルーンガイア王国騎士団長に呼び出された俺達に待っていたのは思った以上に厳しい言葉だった。


「君達の評価は“限りなくSクラスに近いAクラス”。この任務でも指折りの実力者のはずがこの失態だ」


 俺はぐっと言葉を飲み込んだ。


 失態……確かに失態だ。俺達は受け持っていた持ち場から赤暴牛レッドバイソンを一匹逃してしまったのだ。


「幸い通りかかった勇気ある冒険者達のおかげで事無きを得た。真の英雄とは彼らのことだよ」


 くそっ! 誰か知らないが上手くやりやがったな!


「なのに君達ときたら……」


 騎士団長は大きくため息をつく。


 そうは言うが、俺達は不意打ちに近いかたちで赤暴牛レッドバイソンにあったせいで混乱しただけだ。だから、いつも通りなら問題なく対処出来たはずだ。


「不意打ちでなければ問題無かった、そんな顔をしているね」


 ギクッ!


「いつも自分達の思うとおりに戦闘が始まると思っているのか? 不意打ちでも騙し討ちでも何でもありなのが実戦というものだ」


「……」


「全く! こんな話は駆け出しのEランクにするような話だぞ! 今までは一体どうしていたんだ!」


 今まで?


 不意打ちを受けても俺達は上手く立ち回っていたさ! 態勢を立て直すまではとにかく誰かが時間を稼いで……あれ、誰が時間を稼いでたんだっけ?


「とにかく違約金を払ってもらう。前金の二倍だ。後、これは重大な失態だ。当分Sクラス昇格の話は回ってこないぞ。むしろ、次に何か失敗すればBランクに降格だからな!」


 最後にそう言われて俺達はようやく解放された。


「何よ、アイツ! ネチネチネチネチ嫌味な奴ね!」


 帰り道、開口一番にニノが怒りを露わにした。


 まあ、ニノにしたらよく我慢した方だよ。


「本当、ただの八つ当たり。そもそも騎士団がだらしないから私だけが不意打ちを受けた」


 まあ、シオンの言うとおりだ。ルーンガイア王国の騎士団長には逆らえないから何も言わなかったけどさ。


「まあ、気持ちを切り替えて、次どうするかを考えよう」


 俺がそう言うと、ニノが真っ先に手を上げた。


「もうこのままミンスを出ようよ。元々このクエストが終わったら移動するつもりだったんだし」


 まあ、荷物も全部持ってるし、ギルドでまたネチネチ言われるのもなあ……


「賛成!」


 シオンもニノに賛同した。ならまあ、満場一致というやつか。



(アドゥ視点)


 赤暴牛レッドバイソンの群れを撃退した後、ミンスではちょっとした祭りが行われる。俺とエリーゼは冒険者ギルド長から“是非参加して欲しい”と言われて参加したのだが……


「いやー、大変だったな」


 俺は町を守った英雄として祭り上げられ、ミンスや近隣の町長、さらにはルーンガイア王国の騎士団長にも褒められるという何とも居場所のない思いをするはめになった。


「アドゥさんの凄さに気づいてくれてよかったです」


 そう言うエリーゼも皆に褒められていたが、彼女はそんなことより、俺が皆に認められるのが嬉しいらしい。


「いや、別に褒めて欲しかったわけじゃないしな」


「まあまあ、いいじゃないですか。美味しいですよ、赤暴牛レッドバイソンの肉」


 そう言うと、エリーゼは赤暴牛レッドバイソンの肉を口に入れて幸せそうな笑顔を浮かべた。


(可愛いなあ)


 まあ、正直この笑顔を見れただけでも赤暴牛レッドバイソンを倒したかいがあったと思う。


(最初のセレモニーはそれらしかったけど、後はただの祭りだな)


 お偉方の紹介と功労者──つまり、俺達のことだ──の紹介の後、今は皆に赤暴牛レッドバイソンの肉が振る舞われているのだ。


(単に焼いて塩を振っただけなのに旨いよなあ)


 俺は肉汁がたっぷりの赤暴牛レッドバイソンの肉にかぶりつく。


 赤暴牛レッドバイソンが群れをなして村の近くにやって来ることは間違いなく脅威なのだが、防げてしまえばミンスにとっては実りになる。赤暴牛レッドバイソンの肉や角を使った商品はミンスの特産品なのだ。


「今日は町の外から来た商人も店を出してるみたいだし、後でのぞいてみるか?」


「行きましょう! 是非行きたいです!」


 俺が何気なくそう提案すると、エリーゼは目を輝かせた。露店が珍しいのかな? それとも買い物が好きなのかな?

読んで頂きありがとうございました! 次話は明日の7時に更新します!

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