遭遇
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「もうっ! アドゥさんの凄さも知らないくせに好き勝手に言って!」
あの後、俺達は薬草採取のクエストを受けたのが、エリーゼの機嫌は最悪だった。
「まあまあ、別に間違ったことを言ってる訳じゃないし」
「間違ってます!」
ブチブチ!
嫌な音を立てて薬草が引き抜かれる。もっと丁寧にやらないと商品にならないぞ~
「まあまあ。俺は気にしてないし。言わせたい奴には言わせておけばいいさ」
「むー」
エリーゼはむくれるが、そんな顔も可愛──って違う!
「そう言えば何でエリーゼは俺のこと、“アドゥさん”って呼ぶんだ?」
「?」
「いや、パーティー組んでるんだし、呼び捨てでいいんだけど」
「それはその……アドゥさんの方が年上だからです!」
そ、そうなのか? 同じくらいに思えるけど。
って言うか、俺、エリーゼに自分の年を話したっけ?
「エリーゼは──」
いや待て。女性に年を聞いていいのか?
「それよりアドゥさん、私のことは──」
その時、森の奥の方から悲鳴が聞こえてきた。
「助けてくれ~」
「何であいつがこんなとこに!」
荷物を捨て、手ぶらで逃げているところを見ると、よほど手強い相手に遭遇したのだろうか。
「どうしたんだ?」
「赤暴牛だよ! はぐれた奴がここまで来てるんだよ!」
何っ……こんな町の近くにか
「俺が足止めをする。助けを呼んできてくれ」
「おおっ! 恩に着る……ってお前はさっきのタンクじゃねーか」
「Dランクのタンクに倒せるわけねーじゃないか!」
よく見たら、逃げてきた二人組は冒険者ギルドで会ったロランとジョーだった。
「駄目だ、もう……」
「ああ、ここで死ぬのか……」
死なないし、早く助けを呼びに言ってくれよ……
そうこうしているうちに赤暴牛の唸り声が近づいてくる。
「「ヒィィー!」」
ロラン達は一目散に逃げ出した。
「アドゥさん、大丈夫ですか? 赤暴牛は中級の魔物です。しかも、スタミナが桁外れと聞いています」
エリーゼが杖を構えながらそう訊ねる。
「任せろ……とまで言う自信はないが、こんな近くまで来た赤暴牛は流石にほっておけないしな」
盾を構えながら俺は迷っていた。いくらパーティーを組んだとは言ってもエリーゼを巻き込んでもいいのかと。
「ですね! 私も戦います!」
だが、エリーゼの答えは初めから決まっていたらしい。
(頼もしいな)
俺はそんなことを思いながら、姿が見えた赤暴牛にスキルを放った。
「【挑発】!」
赤暴牛の視線が俺にロックオンされる。俺はすかさず【守護壁】を発動し、盾を構えた。
「【体力上昇】!」
打ち合わせ通りに結界石を設置したエリーゼは続けて俺にバフをかける。が、赤暴牛はそれにも構わず俺に突っ込んで来た!
ガキン!
俺は真正面から受けるのではなく、少し斜めを向いて突進を受ける。すると、赤暴牛の体が盾に沿って滑り、俺は魔物の背後をとることに成功した。
「今だっ!」
俺は赤暴牛に剣を突き立てる……が、さほど手応えがない。背後からじゃ急所は狙えないことに加え……
(肉がかなり硬いな)
赤暴牛は攻撃力だけでなく防御力も高いのだ。
「ブモモモッ!」
ダメージはあまり無かったが、赤暴牛を怒らせる効果はあったらしい。奴は角を振り回しながら俺に向かってきた。
「ぐっ!」
とにかく耐えるしかない! 幸い突進と比べれば、一撃の威力は低い。しかし、反撃の隙がない……
そう思っていると、バフがかかった。
(エリーゼの【敏捷性上昇】だ!)
これならっ!
俺は攻撃の隙間を狙って剣を突きだした。が……
「ブモモモッ!」
「がっ!」
俺の攻撃は怒った赤暴牛の力に押し負けた。相手の手数が多すぎて攻撃を当てることさえ出来ない。
(くそっ……まずは距離を取らないと)
幸い防御力は高いので、強い一撃には耐えられる。その直後に見せた隙に攻撃するというのが俺のスタイル……というよりそれしか出来ないのだが。
「【運気上昇】」
エリーゼのバフが届いた丁度その時、赤暴牛に疲れが見えた。
ここだっ!
「でやっ!」
俺が突きだした剣は幸運にも赤暴牛の目に当たった!
「モモモッ!」
痛みのあまり、赤暴牛が俺から距離を取る。
(よしっ、来い!)
俺はしっかりと盾を構える。が、赤暴牛が再び俺に突進するより早く、エリーゼがスキルを放った。
「【精霊賛歌】!」
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