エリーゼの覚醒
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”ローアイアスはエリーゼが巫女の血族であることを確認。エリーゼに新たなスキルを付与されました“
え__新たなスキル?
「【聖別の祈り】」
これは……体の傷が完全に癒えていくぞ。
(それだけじゃない……これは……)
体に力が満ちていく。これなら!
「どうしたんだ? 早くかかってこい!」
「【盾突撃】」
「ブペッ!」
俺はニヤついたローガンの鼻先に【盾突撃(シールドチャージ】をお見舞いしてやった。
(よし、スタンだ!)
俺はリンクソードを一閃!
ズバッ!
「ば、馬鹿な! 何故神器でも無い武器でダメージを受けるのだ!」
実はエリーゼの新しいスキルは傷を癒やすだけでなく、俺に強力なバフをかける力もあるらしいのだ。
(だけどまだ足りない……)
エリーゼのおかげで奇襲には成功したが、地力の差はまだ埋まっていない。
(なら、やるしかないか)
ローガンが動揺している今がチャンスだ。
「【反転防壁】」
【守護壁】から派生したスキルなのだが、その効果は……
「喰らえ、【冥獄──がふっ!」
俺はローガンの詠唱を【盾突撃】で止めた。
「アドゥさん!?」「バカな!」
エリーゼとローガンが俺の動きに驚くが、悪いが今は時間がない。俺は続いて、リングソードでローガンの首を薙──
「ぐっ、調子に乗るなっ!」
回避こそされなかったが、ローガンは自分の右腕を盾にして致命傷を防ぐ。
(ならっ!)
俺は右腕に深々と刺さったリングソードを手放し、両手で【盾打撃】を放つ。ローガンはその威力に吹き飛ばされ、壁に激突した。
「この力、貴様、死ぬ気か!」
どうやらローガンは【反転防壁】の効果を理解しているらしい。このスキルは自分のステータスを限界以上に上げる代わり、発動中自分のHPが減り続けてしまうのだ。
「大丈夫です、【聖別の祈り】」
ローガン同様、スキルの効果を理解したらしいエリーゼがスキルを使うが……
「え……効果がない!?」
【反転防壁】発動中はあらゆる魔法やスキルの効果を受け付けない。実はさっきローガンの【冥獄炎】も発動を妨害したかった訳ではないのだ。
「だが、くそっ……深手を負いすぎた。忌々しい。この俺が人間風情に遅れを取るとはな」
いつの間にか、ローガンの傍には赤いフードを被った人物が現れ、ヤツの肩を支えている。
「アドゥとか言ったな。今度は必ず殺してやるから覚えておけよ!」
言うが早いか、ローガンは赤いフードの人物と共に消える。そうか、転移魔法はローガンの力じゃなく、部下の力なのか……
「アドゥさん!」
エリーゼが慌てて俺の元へと走ってくる。スキルを解いたら、倒れ込んでしまったせいかな。
(だが、エリーゼは守れた……)
【反転防壁】を使ったせいで体中はボロボロ。でも、俺は満足だ。
「こんなボロボロになってるのに何で笑ってるんですか! 早くポーションを飲んで下さい!」
あ、ポーションなら効くかもな……でも、何だかすごく眠い。
「あ、アドゥさん!? しっかりして下さい!」
意識が……
(ん?)
柔らかな感覚を感じた後、俺の意識は急にクリアになった。
「気がつきましたか?」
そう声をかけるエリーゼの顔は吐息がかかりそうなくらい近い。
(綺麗だな……)
そんな場違いなことをぼんやりと考えていると、エリーゼは急にポーションを口に含んだ。
(そうだな。ここから出る前に回復した方がいいな)
だが、エリーゼは自分のためにポーションを口に含んだ訳ではなかった。彼女はそのまま俺に顔を寄せ……
(!!!)
再び喉に送り込まれたポーションが俺のHPを回復させる。が、今俺はそれどころじゃなかった。
(俺、今エリーゼと……)
「気がつきましたか?」
「ああ」
我ながら間の抜けた返答だな……
「あの……アドゥさん こんな時に何ですけど、私、アドゥさんのことが好きです!」
!
嬉しいのか、ビックリしたのか……俺の意識は真っ白だ。だが、エリーゼに対する返事は自分でも驚くほどに滑らかだった。
「俺もだよ、エリーゼ」
「アドゥさん!」
俺は飛び込んでくるエリーゼの細い体を抱きとめた。
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