悪魔(デーモン)
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“アドゥさん、ウィズさんは神器は悪魔を倒せる唯一の力だと話していました! その盾なら!”
エリーゼの声が頭に響く。人差し指につけた指輪の力の一つで、俺達は距離に関係なく意思疎通が出来るのだ。
(だけど、どうやって使うんだ?)
盾だから、盾としての使い方は分かる。だけど、どうやったら悪魔を倒せるような力が出るんだろう?
「オオオッ!」
悪魔が奇声を上げながら両手を天に掲げると、禍々しい黒い光が現れる。
(あれはヤバい!)
あんなものが炸裂したら、ここにいる人間はみんな吹き飛ぶぞ!
「ひ、ひいい! 何だあの化け物は!」
「い、いや、」
「無理!」
セシル、ニノ、シオンが悪魔のプレッシャーに負けて腰を抜かす中でエリーゼはボルトワントを構え、集中している。
(この場にいる人を、エリーゼを何としても守る!)
その時、そんな俺の思いに応えるように神器が白く光る。
(これは!?)
訳が分からなかったが、俺は悪魔に向かって走り出した。
「【盾打撃】!」
俺がスキルを放つのと同時に悪魔が黒い光を解き放つ。爆発的に広がる白い光と黒い光はお互いを消し去ろうとするように広がるが、勝ったのは神器の白い光だった。
「オオオ……」
気味の悪い声を上げながら悪魔が倒れると、その体は灰になって崩れていく。どうやら、倒したみたいだな。
「アドゥさん!」
駆け寄ってきたエリーゼが俺に抱きつく。その体が震えているのに気づき、俺はエリーゼも悪魔に怯えていたことを知った。
「良かった、無事で……」
「エリーゼのおかげさ」
俺がそう言うと、エリーゼはいつもの様に慌てて謙遜した。
「わ、私は何も」
そう言ってエリーゼが体を離す。それにちょっと残念な思いを抱いていると、今度はウィズが砲弾のような勢いで俺に向かってきた。
「さっきの神器ですね! そうですよね! もう一度見せてください!」
あ、いつの間にか神器が消えてる……
「いや、俺もどうやったら出せるのかは分からなくて……」
もちろん、そんな答えでウィズが納得するはずがない。ウィズはより一層ヒートアップして矢継ぎ早に話し始めた。
「あんな化け物をアドゥが倒した……」
「私達と戦った時でさえ全力じゃなかったっていうの……」
「私……アドゥ以下……」
だから、俺は三人がそう呟いていたことには気が付かなかった。
※
騒ぎが一段落した後、俺達は領主の館に招かれた。
「本当にありがとうございました」
ミスカルデの領主は俺達に会うなりそう言って頭を下げた。
「あなた方が悪魔を倒して下さらなかったら大変なことになっていたでしょう」
何でも研究者の試算では、俺達が倒せなければ、どんなに被害が少なくてもミスカルデは壊滅しただろうとのことだ。
「いえ、とっさのことでしたので」
「わ、私は何も。全部アドゥさんが」
いやいや、エリーゼ! 一緒に戦ってくれたし、エリーゼも助言をくれたじゃないか
「アドゥさんの働きは勿論ですが、エリーゼさんの働きの素晴らしさもよく分かってますよ」
「ええっ! そんなこと!」
エリーゼが困ったような顔で見るので、俺は大きく頷く。すると、エリーゼは顔を真っ赤にして下を向いた。
(可愛いなあ)
まあ、そんなことを思ったり、言ったりする場面ではないか。
「そう言えば、悪魔はどうやってミスカルデにやってたのでしょうか」
話題を変えるためにそんな質問をすると、領主は困った顔をして首を傾げた。
「転移魔法の一種のようですが、まだよく分かっていないのです。未知の魔法らしいと報告を受けてはいますが」
そうか……じゃあ、またいつ何処で出くわすかは分からないな
ちなみにミスカルデの領主が一介の冒険者にこんなに丁寧に話してくれるのは、ミスカルデの領主は貴族ではなく、ミスカルデの研究者から選ばれるからだ。
「謝礼は勿論ですが、この偉業を広く語り継ぐためにアドゥさんとエリーゼさんの銅像を立てようと思ってますよ」
銅像? 冗談だろ?
「い、いや お言葉ですが、あまりに勿体ない話です!」
「だ、駄目です! 私達のためになんて」
「そんなことを言わず! 既に図案は出来上がってるんですから!」
いつもはエリーゼの謙遜を止めることが多いのだが、今回ばかりは例外だ。俺達は小一時間ほどかけて領主の要請を断り続ける羽目になった。
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