土下座
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(セシル視点)
「【烈火大斬】」
俺は攻撃スキルを発動してアドゥを攻撃する。【烈火大斬】は俺のスキルの中でも最も攻撃の高──
「ガハッ!」
スキルが当たる間際、俺は顔を何かで殴られて転倒した。くそっ! 何だ?
(た、盾? 盾で俺を殴ったのか?)
盾で攻撃するなんて聞いたことがない。何だよ、一体!
「セシル!」
シオンがファイヤーステッキの力でアドゥに【火槍】を放つ。
「【雷撃】」
続いてニノも攻撃する。良いぞ、二人共!
(俺もっ!)
俺はアドゥに攻撃するために立ち上がろうとする俺に光の矢が降り注ぐ。これはアドゥの仲間の攻撃だな!
(くそっ! 威力も速度もさほどじゃないが)
とは言っても、不十分な体勢では避けきれない。俺が手傷を負いながら回避した。
「行くぞ、セシル!」
アドゥが俺に斬りかかってくる。馬鹿か? お前の攻撃なんて俺の前じゃ……
ズバッ!
な、何で斬られてるんだ、俺? アドゥの攻撃がこんなに速いはずが……
ガツン!
一瞬気を取られたせいだろう。俺は再びアドゥから盾による攻撃を受けた。
(何だ……意識が)
それがスタン効果を受けたせいだと気づいた時には意識が暗転し、何も見えなくなっていた。
※
(アドゥ視点)
スタンしたセシルを戦闘不能にしたあとはニノとシオンだ。ファイヤーステッキが使えなくなるまで待っても良かったのだが、正直そこまでする必要はなかった。
「勝者、『守りの樹』!」
ニノが戦闘不能になったことを確認し、係員はそう宣言した。
(はあ、やっと終わったな)
駆け寄るエリーゼに手を振りながらそんなことを思っていると、突然、人のものとは思えない声が聞こえてきた。
「ケッカヲカクニン。ケイヤクヲリコウシマス」
倒れたセシル達の体が何かの力で動かされ、三人は俺の前で跪いた。
「くそっ」
「やだっ!」
「無理!」
三人は何とか抵抗しようとするが、彼らの体は止まるどころか、動きが鈍ることさえない。
「「「今までの無礼、申し訳ありませんでした!」」」
三人は頭を勢いよく地面に打ちつけて土下座した。
「私はあなたを無能扱いし、パーティから追放しました!」
セシルがそう告白すると、会場の観客にざわめきが走る。
(えっ……ここにいる全員に聞こえているのか!?)
契約の宝珠の力だろうか
「更には新たに重戦士が加わるとウソまでつきました!」
あ、そう言えば
「誠に申し訳ありませんでしたっ!」
セシルがそう言うと、次にニノが続く。
「私は自分の未熟さも分からず、ただひたすらあなたに無礼な言動を繰り返しました」
………
「誠に申し訳ありませんでした!」
最後はシオンだ。
「私はあなたを無能扱いし、無礼な言動を繰り返すばかりか、あなたを困らせるために冒険者ランクが低くなるように工作をしました」
……『銀の爪』脱退後、Dランクになったのはシオンのせいか。
「誠に申し訳ありませんでした!」
三人が土下座しながら告白したことには俺が知っていたことと、そうではないことが混ざっていたが……正直、もういまさらどうでもいい。
「お前らのしたことは分かったが、もう過ぎたことだ。俺は気にしてないから、もう絡んでくるな」
俺はそう言うとセシル達に背を向けて試合会場の外へと歩き出す。が、その時……
ドッカーン!
空から落ちてきた何かが、凄まじい音を立てて水晶のような透明なもので出来た天井を壊して落ちてきた!
「何だ!?」
落ちてきたのは頭部に角、背中に巨大な翼を持つ魔物だ。いや、果たして魔物なのか? あれじゃまるで……
「悪魔? 何故こんなところに!」
エリーゼがそう呟くと、悪魔は耳をつんざくような大きく不快な声を上げた。
(ヤバい!)
悪魔はまだ土下座をしているセシル達に注意を向けているぞ!
「【挑発】!」
スキルを発動した瞬間、肝が冷えるような感覚が俺を襲う。悪魔の敵意が俺に向いたからだ。
(敵意を向けられただけでこれだけのプレッシャーを受けるなんて……)
今まで戦ってきた魔物とは別格だ。
(来るっ!)
悪魔が拳を握り、俺に向かって飛びかかる!
(防げるのか、この攻撃!)
そんな考えが脳裏によぎる程のプレッシャー。俺は死さえ覚悟したのだが……
「グギァァ!」
悲鳴を上げたのは悪魔の方だった。
「アドゥさん、盾が!」
あ、いつの間にか神器が腕に!
引きに引いたざまあ回、読んで頂きありがとうございました! 次話は明日の7時に投稿します!