最終日
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その後、試合は大騒ぎを起こしながらも進行した。試合は総当たり方式だったため、全て終わるまでに一週間かかった。ちなみに、その間ミスカルデはお祭りムードだった。
ちなみに俺達は危なげなく勝ち続け、唯一の全勝パーティとなっている。
「色々あったけど、ようやく今日で最終日か」
「はい! アドゥさんのおかげで楽に戦えました」
「いや、俺よりもエリーゼのおかげだな。事前に練ってくれた作戦がなかったら負けていた試合が沢山あったと思うぞ」
「そ、そんなことないですよ!」
とエリーゼは否定するが、実際のところ、彼女の力は大きい。どうもウィズから色々と習うことでより広い視野で戦闘のことを考えることが出来るようになったようだ。
(俺と違って元々頭が良いんだろうな)
まあ、自信がないのがたまにキズだが。
「そう言えば、俺達の最終試合の相手って……げっ!」
今日の相手は『銀の爪』だ。忘れていたけど、総当たりだから必ず奴らとも当たるんだ。
「楽しみですね。アドゥさんへの無礼、みんなの前で謝ってもらいましょう!」
「おいおい!」
優しい性格のエリーゼだが、セシル達には容赦がない。まあ、分からないでもないし、それがちょっと嬉しかったりもするのだが。
「油断せずに行きましょう。試合開始までみっちり作戦会議ですよ、アドゥさん!」
あ、エリーゼの目が据わってる……
※
(セシル視点)
「くそっ、何でこんなことに」
試合直前の控室、俺の口から出たのはこんな言葉だった。武具を身に着けるために手は動かしているが、独り言は止まらない。
「こんなハズじゃ……」
俺達は今までの試合でほぼ負け続け、今日までの成績は最下位。今やDランクの奴らにさえ馬鹿にされる始末だ。
(くそっ! 何が“運頼みパーティ”だ。馬鹿にしやがって!)
こんな試合の結果が何だって言うんだ。冒険者なんだから、魔物と戦うべきだろうが!
だが、問題はこれだけじゃなかった。腹が立つことにアドゥ達は全戦全勝。つまり、俺達は大差で負けてしまっているのだ。
そして、俺はアドゥと”負けたら土下座“という魔法契約を交わしている。
(契約の執行は割り込み契約を何度もして止められたが……くそっ、罰則が多すぎる)
割り込み契約も無制限に出来るわけじゃない。契約を変える場合には相応の代償が必要だ。俺の場合は、不眠や食欲等の減退、また負けた場合の罰則の追加などだ。
(まあ、今日勝てば何とかなるからな)
本来、勝ち負けについて契約の宝珠はこの第三戦の成績と考えていたようだが、割り込み契約によって直接戦って勝てば良いことにしてある。
(俺達がアドゥに負けるはずがない)
アドゥはタンク。俺達全員でボコッて終わりだ。
「セシル、そろそろ時間だけど」
ニノの声だ。もうそんな時間か。
「分かった。すぐに行く」
俺は立ち上がり、剣を持ってドアを開けた。
「セシルがアドゥに先制攻撃。体勢を崩したところに私達が魔法で攻撃……でいいよね」
「ああ」
ニノはバリアローブ、シオンはファイヤーステッキを装備している。これだけの魔道具があるんだ。負けるはずがない。
「じゃあ、行くぞ! 勝利は俺達のものだ!」
「「お―!」」
気合いを入れて試合会場に入った俺達。だが……
「最終試合がよりにもよって『銀の爪』かよ。テンションが下るな」
「あいつらまだ試合が残ってたのか。ゲッ」
下品な野次に気分が悪くなるが……まあ、いい。試合が終われば吠え面をかくのはこいつらの方だ。
「では、試合開──」
係員の声が聞こえた瞬間、俺はウイングソードの力を発動した。
ガキィィン!!!
合図の前から準備していた俺の攻撃は“開始”の合図と同時にヒットする。
ん? 何だこの金属音?
「来ると思ったぜ、セシル!」
アドゥの奴、剣を抜かずに盾だけを持って防御に専念してやがる! 俺の裏をかいたつもりか!
「っ!」
だが、俺は何も言わずに後退する。まだ俺達の攻撃は終わってない!
「いけっ!」
「【雷撃】!」
シオンとニノの魔法がアドゥに向かって飛ぶ。どうだ! これなら……
「エリーゼのおかげで助かったな」
白く輝く盾を構えたアドゥが平然とそう言うのを聞いて俺は驚愕した。
(魔力が付与された盾で魔法を防いだのか!)
今更だが、俺は奴が一人でないことを思い出した。
(確か仲間はエンハンサーだっか。サポートなんて取るに足らないと放置したが、放っておくと面倒かも知れないな)
俺は剣を握りなおして駆け出す。が……
「【挑発】」
くそっ! アドゥから目が離せなくなる。タンクのよく使うスキルだな
「【敏捷性上昇】」
仲間がアドゥを強化するが、まあ身体強化魔法なんてたいしたことはない。とにかく攻撃を畳み掛けてやるか。
「【烈火大斬】!」
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