VS『黒鉄の剣』
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そんなこんなで始まったエキシビションマッチ。『黒鉄の剣』はリーダーのマックスとその後ろにいる二人の男の三人のパーティ。全員がアタッカー最強の呼び声が高いクラス、『ソードマスター』についているのが特徴だ。
(確かエリーゼからは…_)
俺は事前にエリーゼから提案された作戦を思い出し、スキルを発動した。
「【守護壁】」
「【体力上昇】」
その瞬間、リーダーのマックスの鋭い斬撃が俺に迫る。
(流石に速いし、鋭い。けど……)
俺はその一撃を盾で受け止めると同時に【盾打撃】を放とうとするが……
「【流星剣】!」
マックスの隙を潰すように仲間が俺に攻撃スキルを放つ。
(エリーゼの言った通り、【挑発】を使わなくても俺を狙って来たな!)
必ず俺から狙ってくるから【挑発】より【守護壁】を先に発動して欲しいとエリーゼには言われていたのだ。
「くっ!」
【流星剣】はソードマスターの固有スキル。何とか盾で受け止めるが、あまりの威力に腕が痺れてしまう。
(しかも……っ!)
今までの攻防の間にもうひとりの仲間が俺の背後に回り込んでくるのが見える。挟み撃ちにするつもりだな!
バシュッ!
突然、背後に回り込もうとしたマックスの仲間の背に巨大な光の矢が突き刺さる。苦悶の声を上げて倒れる仲間を見て、マックス達の動きが止まった。
「【挑発】」
俺はすかさずスキルを発動し、『黒鉄の剣』の注意を自分に引きつけた。
(ナイスだ、エリーゼ!)
さっきの攻撃はエリーゼのボルトワントによる攻撃だ。かなりのMPを使ったことに加え、完全な不意打ちになったため、相当な深手を与えたらしい。食らった相手は地面にうずくまったままだ。
(二人ならっ!)
マックスと仲間は連携して俺に波状攻撃を仕掛けてくるが、その斬撃には先程のような鋭さがない。エリーゼの奇襲を警戒しているのだろうが……
(ここだっ!)
攻撃の隙間に俺はスキルを発動した!
「【盾打撃】!」
「ガッ!」
マックスがスタンを起こす。すると、仲間はマックスを庇うように前に出て来た。
「今度はこっちの番だ!」
俺がリンクソードを振るうと、相手は受けようと剣をかざす。だが……
「グッ!」
防御しきれずに姿勢を崩したところにエリーゼのボルトワントから光の矢が飛んだ。
(これで一人片付いたな)
実はさっきの攻防の間にエリーゼから【敏捷性上昇】と【運気上昇】を受け取っているので、俺のリンクソードの攻撃力はもはやタンクでも受けられないくらいに上がっているのだ。
「マ、マックス。済まなかった」
最初に倒れていた仲間がふらつきながら立ち上がり、頭を振るマックスに声をかける。
「下手打ったのは俺も同じだ……いや、これが『守りの樹』の実力か」
「いやいや、あんたらは強いよ。評判以上だ」
実際、パーティの連携攻撃は見事だった。ここまで出来るパーティはなかやかいないだろう。
「アハハ、無傷でそんなこと言われても。まっ、礼は言っとくぜ」
そう言うとマックスは仲間と並び、呼吸を合せた。
「もう実力差は理解したつもりだが……最後までやるぜっ!」
マックスと仲間は全身に闘志をみなぎらせるのを見て、俺は素直に感心した。流石Aランク、気構えまで立派なものだ。
「ああ、こっちも全力だ!」
※
試合が終わった後、会場は興奮に包まれていた。
「スッゲー試合だっな!」
「あの黒鉄の剣を手玉に取るような戦い方、痺れるわ―!」
「ボルトワントって一ツ星魔道具なのに上手く使えば戦闘に役に立んだな! 勉強になったよ!」
正直、褒められ過ぎて居心地が悪いくらいだ……
「しかし、『黒鉄の剣』も流石だったよな!」
「ああ! Aランク最強は伊達じゃない」
負けた『黒鉄の剣』への賛辞も結構多い。まあ、良い試合だったもんな。
「良い戦いだった。有難う」
マックスは”こういうのはガラじゃないんだが……“と言いながら手を出す。俺はマックスの手をしっかり握った。
「俺達の力が必要な時はいつでも声をかけてくれ。力になる」
「ありがとう。逆に俺達の力が必要な時は言ってくれよ」
「おお! ありがとう!」
マックスは嬉しそうに笑顔を浮かべると、まだ興奮冷めやまぬ冒険者達に向かって大声で叫んだ。
「聞け―! 俺達、『黒鉄の剣』は『守りの樹』と同盟を結んだ! 『守りの樹』を侮辱したり、敵に回したりすれば、それは『黒鉄の剣』にも同じことをしているんだと肝に命じろっ!」
わ―っ!という興奮の声が再び起こる。
(あれ……同盟? まあ、良いけど)
ちょっと話が飛躍したみたいだけどまあ良いか。
読んで頂きありがとうございました! 次話は明日の7時に投稿します!