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「おい、『守りの樹』が出てきたぞ」
「またまた最速かつ唯一のノーダメージ勝利。マジか!」
俺達が競技を終えると、周りからはそんな声が聞こえてきた。
「流石ですね、アドゥさん!」
「いや、今回はエリーゼが主役だったよ」
エリーゼの【魔力付与】がなかったら打つ手なしだったからな。
「そんなことないですよ! 私なんか……」
俺はいつものようにそう謙遜するエリーゼの頭をポンポンと叩いた。
「いつも助かってるよ、ありがとう」
「アドゥさん……」
俺はちょっと涙目になるエリーゼを連れて落ち着ける場所に移動した。
「……スミマセン、急に」
しばらくして気持ちを落ち着けたエリーゼはそう言って俺に謝ったが……別に謝るようなことじゃないぞ?
とゆ―か、そんなエリーゼも可愛い。
「気にするな。ちょっと休憩しよう」
そんなふうに俺達がまったりしていると、急に周りが騒がしくなり始めた。
「おい、次は」
「ああ、あの話題の『銀の爪』だよな」
「急げ! なんかもう凄いらしいから! 無様過ぎて笑えるらしいから!」
そんなことを言いながら観覧席へと急ぐ人々を見て、俺達はため息をついた。
「一応見ておいた方がいいでしょうか」
「まあ、そうだな」
正直もう顔も合わせたくないが、魔法契約までしてしまってるので、そうはいかない。
(もう放っといて欲しいんだけどな)
何でこんなことになったのやら。
※
俺達が端の方の観覧席に座ったのは、『銀の爪』の競技が始まる直前だった。
「あ、セシルの武器が変わってる」
セシルの持つ魔道具がウイングソードではなく、エーテルソードという魔力を帯びた剣に変わっている。ちなみにこれにも相手に先制攻撃が出来る効果が付いている。
(まるで競技の内容を知ってたみたいだな)
まあ、流石にこれは邪推しすぎだろうけど
「おい、あいつらズルして競技の内容知ってたんじゃないか?」
「何て汚い奴らだ!」
『銀の爪』はかなり嫌われてるな。
(でも、”ズルしてる“は言い過ぎじゃないかな)
と思ったのだが……
「あれ、シオンの装備が無属性の魔法弾を放つエーテルステッキに変わってるな」
うん、こりゃ怪しいな。結晶体は色々な属性がいたから、ファイヤーステッキだと間違いなく苦戦しただろう。
「安定さを優先させて無属性の魔法弾を放てる装備を選んだ、と言えなくもないですが……」
エリーゼも何だか妙だと思ってるようだ。まあ、無理もない。
「おいっ! 何か怪しいぞ!」
「インチキじゃねーのか!?」
事前情報なんてないから一回目と二回目で装備や魔道具を変えたチームなんて一組もない。そんな中で明らかに競技に有利になるような装備にしていたらそう思うよな……
「では! 競技スタートです!!」
係員はそんな野次に負けじと声を張り上げ、競技の開始を宣言した!
が……
「おいおい! 『銀の爪』の奴ら……」
セシル達は一戦目と同様、魔道具の性能頼みの戦い方なのだ。
「いや、装備を変えてもそれじゃ駄目だろ……」
誰かがそう呟いたのにまるであわせたように、『銀の爪』の動きが悪くなっていく。『銀の爪』はただただ攻撃するだけなので、緩急つけて出現する魔物達に対応出来なくなっていくのだ。
「うっわ―、ひっでえな」
「これは……」
やがて『銀の爪』が誰よりも早く失格となると、見ていた冒険者達はしんと静まり返った。
「こ、今回はやったか?」
「敵の数が多すぎる。非現実的」
「性格の悪い奴が考えたんでしょ、きっと!」
静まり返った部屋に競技から戻った三人の声が響く。そして、それは三人が自分達の得点を確認すると、更に大きくなった。
「何ぃぃ!? 三点だと!」
「前回より下がってるってどういうこと!?」
「評価方法がおかしい!」
三人が好き勝手にそんなことを言っていると、ついに我慢の限界を超えたある冒険者が大声を出した。
「お前ら、バカだろ! あんな戦い方で点が取れるわけがないだろ!」
「ヒッ!」
いつもは強気なニノが息を呑む。だが、大声を出す冒険者は一人では収まらなかった。
「あれだけ競技に適した魔道具を持っても最下位。それがお前らの実力だ! 何でそんな簡単なことも分からないんだ!」
「文句を言う前に現実を見ろ! お前らは何もかも足りないんだよ! この点差を見て分からないのか!?」
「くっ……」「うっ……」「……」
周囲の冷たい視線に対し、恨めしげに声を上げる三人。だが、そんな彼らと俺の視線が合った時、奇妙な声が聞こえてきた。
「ケッカをカクニン。ケイヤクヲリコウシマス」
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