結晶体
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「ないわよ、アンタの名前」
「0点は表示さえされない?」
ニノとシオンが見ているのは自分達より下ばかりだ。……まあ、『銀の爪』は最下位なんだけど
「お前らバカか! 上を見ろ!」
「バカですって!」
「上?」
野次馬の罵声にニノが再び怒りだす一方、セシルとシオンは訳が分からないといった様子で順位と得点が書かれたボードの上の方を見上げると……
「アドゥのパーティが一位……有り得ない」
シオンが呆然としてそう呟くと
「ご、五百点だって……俺達の百倍か」
ポカンと開けたままのセシルの口から言葉が漏れた。
「何よ、二人共! アドゥの点はなんて……ヒッ!」
騒いでいたニノもようやく俺達の成績を知ったらしい。
分かったらもう構わないでくれよ、頼むから。
「あっはっは! 最下位の癖によくあんな偉そうな態度が取れたな! やっぱ、お前らすげーよ、レベルが違う!」
「しかも、相手は二位の『黒鉄の剣』と百点以上差をつけてる『守りの樹』だぞ!? ほんっと、信じられないような身の程知らずだな、お前らは!」
「くっ……」「………」
セシルとシオンは悔しそうに唇を噛む。なあ、もう止めようぜ。
「こんなの間違いよ! アドゥなんかが──」
「そういや、このねーちゃん、確か競技の前に面白いこと言ってたな」
なおも自分の負けを認められないニノの言葉を遮ったのはギャラリーの一人だ。
ん? 何だっけ?
「俺は確かに覚えてるぜ! 確か自分が負けたら、土下座するってな」
「「「「「!!!」」」」」
ああっ! そう言えば!
「丁度良いからここでやって貰おうじゃないか! なあ、みんな!」
「そりゃいい!」
「なっ!」
ニノは周囲の“早く! 早く!”というコールに慌て、怯え、それから……
「っ!」
「あっ」「逃げた!」
ニノはギャラリーを突き飛ばすと、明後日の方向へと逃げて行った。その目に涙が見えるのは気のせいだろうか。
「アドゥ、許さない!」
「この借り、必ず返すからなっ!」
そう言うと、シオンとセシルはニノを追いかける。だが、待て。俺は何も悪くないだろ。
「とりあえず、行きましょうか」
それまで黙っていたエリーゼがポツンとそう言った。多分、呆れ返ってるんだろう。まあ、俺も一緒だ。
もう俺の前に現れるなよ、ニノ
※
「アドゥ、勝負!」
ニつ目の競技が始まる直前、俺達の前にシオンが一人で現れた。
「勝負って……俺はもう嫌なんだけど」
勝つとか負けるとかそういうこと以前に、もうコイツらと関わることが嫌だ……
「アドゥさんに突っかかるのはもう止めて下さい」
「邪魔。私はアドゥに用がある」
お前な、エリーゼに当たるなよ
「お前の方が邪魔になってるんだが」
「次の試合、私達が勝ったらニノの言葉は忘れる。それが約束」
聞いてね―
「俺の言い出したことじゃないんだし、勝負しなくても俺は忘れたいんだが」
「負けっぱなしは嫌」
ハイハイ
「嘘つかないように契約!」
おいおい! そこまでするのか!?
シオンが突き出した珠は魔法契約を結ぶための魔道具だ。魔法契約というのは、決して破れない指切りげんまんのようなもの。したがって、こんなに軽々しくするものではない。
ついでに言うと、この魔道具も大変高価な代物で、借りるだけでも相当な金がかかる。
「そこまで言うなら、あなたはアドゥさんに負けたら何をしてくれるんですか!」
エ、エリーゼ! またそんなことを
ブチ切れてるな……
「私が負けたらアドゥに土下座する。まあ、有り得ない」
スッゲー自信だな。何か根拠でもあるのか?
「分かった。じゃあ、それでいい」
正直さっさと済ませたい。直ぐに競技だしな。
※
「こういうことか……」
二つ目の競技の相手は結晶体。しかも、ご丁寧に色んな種類がいる。
(こいつらは物理攻撃が通りにくいんだよな)
しかも、魔法攻撃がメイン。俺の魔法防御力は物理防御力ほどではない。
まあ、しかし、やることは変わらない。
「【挑発】!」
俺がスキルを発動させると、エリーゼもスキルを使った。
「【魔力付与】」
ん? そのスキルは……
(確か武具に魔力を付与して魔法攻撃力や魔法防御力を高めるんだったな)
今まで使ったことがなかったから、忘れてた。
(あ、しかも盾にかけてくれてる)
流石エリーゼ! これなら魔法を恐れずに戦える!
「【盾打撃】!」
そこからは一つ目の競技同様、いつも通りの展開だった。
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