5点
応援ありがとうございます!
(ニノ視点)
始まってすぐにセシルのウイングソードから放たれた【蒼波斬】が子鬼の首を切り落とす。カッコイイよ、セシル!
「シオン! ニノ!」
「分かってる」「了解!」
私は攻撃魔法、シオンはファイヤーステッキで子鬼に攻撃しまくった。
「くっ! ちょこまかとっ!」
だけど、うっとおしいことに、攻撃をかわしてくる子鬼もいる。もうっ! 汚い顔を見せないでよ!
ガン!
セシルが止めきれなかった子鬼が後衛の私達に襲いかかる。シオンは準備していた防壁魔法で防ぐけど、私は……
「そんなもの、効かないわ!」
私は攻撃をかわしもせずに子鬼に攻撃魔法を放った。攻撃をした直後に私が放った魔法は流石に回避できず、子鬼は姿を消した。
「どんどん行くわよ!」
私はセシルの隣に並んで攻撃を受けながら攻撃魔法を放つ。早くクリア出来ればその分特点がもらえるからね。
「私も!」
シオンは私達の影から【火槍】を放つ。そうよ! 攻撃こそ『銀の爪』の心情よ!
「これなら勝てるな!」
「もちろんよ! 私達が一位よ!」
競技が始まってから五分が過ぎた時には子鬼は皆姿を消していた。
「ふう……余裕ね」
「私達なら当たり前」
私とシオンは手を取り合って勝利を喜ぶ。
(こんな快勝久しぶり!)
私達同様セシルもまた剣を鞘に納めて笑顔を浮かべていた。
「高速種、今まで気負いすぎていたのかもしれな──」
不意にセシルの声が消える。そして、私達がそれに気づくより早く、何かが私に襲いかかった!
ガキン!
バリアローブが青子鬼の攻撃を受け止める。
「セシル、いつの間に!」
私達はようやくセシル倒されたことに気づいた。
「許さないっ!」
シオンがファイヤーステッキを振るう。が、もう【火槍】は放てない。
ガン!
青子鬼の攻撃がシオンを襲い、彼女の姿は一瞬で消えた。
「よくもっ!」
私は攻撃魔法を準備する。その隙に青子鬼が殴りかかってくるけど、気にしない。だって、私はダメージを食らわないもの。
(子鬼の時みたいに攻撃してきた時に魔法を当てればっ!)
私が詠唱を始めると、青子鬼が私に拳を振るう。
(ビビるな、私っ!)
でも、本当はビビるべきだったんだ。既にバリアローブが吸収できるダメージはとっくに超えていた。私の意識は青子鬼の拳を浴びたところで途切れてしまった。
※
(アドゥ視点)
『銀の爪』の戦闘が終わった後、辺りは騒然となった。
「おい、何だよ。あの素人みたいな戦い方は」
「あれだけの魔道具があってあれか? 完全に宝の持ち腐れじゃないか」
『銀の爪』の競技内容を見た冒険者は口々にボロクソに文句を言い始めた。
「何よ、この点数!」
ニノの声だ。どうやら、競技から帰った後、自分達の得点を知ったらしい。
「五点……」
「青子鬼を倒せなかったからか? しかし、子鬼とは上手く戦えたはず……」
シオンやセシルがそう言うと、周りの冒険者はドッと笑い声を上げた。
「“子鬼とは上手く戦えたはず”だって!? ないわ―、その発想!」
「何ですって!?」
ニノが眉を吊り上げるが、誰も気にした様子はない。
「あんな戦い方でお前らよく生きてこられたな。Bランクが聞いて呆れる!」
「いや、待て。あんな素人丸出しの戦い方で生き残ってるんだ。運の強さはBランク……いや、Sランクだよ!」
「俺達の戦い方が素人丸出しだと!?」
セシルも顔色を変えるが、誰も取り合わない。やがて、次の競技が始まることを告げるアナウンスが流れると、皆はぞろぞろと自分の席に戻り始めた。
「あばよ! 素人!」
「運頼みの『銀の爪』、覚えておくぜ!」
「あっ! ちょっと待ちなさいよ!」
ニノが誰彼構わず捕まえようとする中、俺はエリーゼを急き立て、皆に紛れててっししようとしたのだが……
「あっ、アドゥ! 見つけた!」
見つかった……
「アンタ達、何点だったの? 私達の勝ちに決まってるけど、一応聞いてあげる!」
あれだけ周りにボロカスに言われてまだこんな強気でいられるのが凄いな。
「何だ? まだ何かやるのか」
「あのね―ちゃん、懲りないな!」
散り始めていた冒険者の動きが再び止まる。
「心配しなくても私達は今回不本意な結果になったからさほど点差は開いてないわ! 安心して言いなさい!」
「ニノ、アドゥは0点に決まってる。攻撃力が低すぎる」
周りからは“アイツ等絡んでる相手が誰か分かってるのか!?”とか“おもしれえな、自分から恥の上塗りをするのか!?“なんて言う答えまで聞こえてくる。
(これ以上は流石に可哀想な気がするな……)
まあ、“煽っておいてなんだ”とか思われるかも知れないが。
「0点ってのは言いにくい。無理に言わせなくてもいいじゃないか」
セシルはそう言うが、口元が緩むのを隠せてないな……
「いいの! はっきりさせたいの!」
別に調べようと思えば、俺達の点数は簡単に調べられる。そうしないのは、俺に負けたと言わせて、溜飲を下げたいからだろう。
「アンタでもいいわ、早く!」
ニノはエリーゼの方を向いてそう言った。
(偉そうな口調だな)
しかも、自分からエリーゼに名前を聞いた癖に覚えてないのか。
(いいだろう、お前がそういう態度ならっ!)
俺はニノの後ろにある順位と得点が書かれたボードを指差した。
読んで頂きありがとうございました! 次話は明日の7時に投稿します!