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タンク

応援ありがとうございます!

(セシル視点)


 赤暴牛レッドバイソンの一件から別の街に拠点を置いた俺達だったが、それからも失敗続きだった。


「高速種……厄介だな」


 勿論、苦戦しているのは俺達だけじゃない。だが、失敗続きでついにランクがBに降格してしまっては何か手を打たざるを得ない。俺達が選んだのは、新たな仲間を募集することだった。


「でも、何でタンクなの? 何かアイツの顔がちらつくんだけど!」


 ニノ、その話は昨日もしただろ?


「タンクといってもカウンター主体のクラスだ。アドゥとは違う」


 俺がそう答えると、シオンも大きく頷いた。


「攻撃が一番大事なのは変わらない。でも、高速種相手に先手は取れない。だから、後の先をとる」


 これは実際、多くのパーティーが考えていることだ。まあ、俺達がしぶしぶ認めたのは最近だが。


「それは分かるけどさあ~」


 ニノは不満げだ。まあ、俺も不満はあるけどさ。


「あんたらが『銀の爪』か?」


 お、来た来た! 


「俺はギーラン。クラスはデュエルナイトだ」


 ギーランは高レベルの冒険者だ。元々はAランクパーティーにいたのだが、パーティーが解散したため、俺達『銀の爪』の誘いに乗ってきたのだ。


(まあ、解散の原因は俺が作ったんだけどな)


 勿論ギーランはそんなことは知らない。渡りに舟だと思ってるのだろう。


(これで次のクエストは成功間違いなしだな)


 俺は内心ほくそ笑んだ。



「ちょっと、どうなってるのよ!」


 這々(ほうほう)のていでモンスターから逃げ出した後、ニノはそう叫んだ。


「待て、ニノ。ギーランは俺達とのクエストは今日が初日だ。連携が上手く行かなくても仕方がない」


 そうは言ったが、俺は内心ギーランに対する罵詈雑言を並べていた。


(タンクの癖にモンスターの攻撃を受けきれないなんて……)


 ギーランに防御を任せて攻撃に専念した俺達。しかし、ギーランはすぐにモンスターの攻撃に耐えられなくなり、戦闘不能。壁を失った俺達は今までのように敗走せざるを得なくなったのだ。


「タンクなのに攻撃を受けきれない。それはもはや存在意義がない」


 シオンは口調こそ落ち着いているが、言葉は辛辣しんらつだ。


(まあ、これだけ言われれば、次は手を抜かずにやってくれるだろう)


 今回の失敗、その原因はギーランの慢心にある。元Aランクパーティーという驕りが油断を生んだのだろう。  


(なんせ、アドゥでさえ平気な顔で一時間、二時間と魔物の攻撃に耐えられるんだからな。Aランクパーティーのタンクに同じことが出来ないはずがない)


 が、ギーランから返って来たのは予想外の返答だった。


「ふざけるな! どうなってるはこちらのセリフだっ!」


 はあ? 何で逆ギレしてるんだ、コイツ……


「お前ら何で俺をサポートしないんだよ! タンクにアタッカーが一人、サポートが一人つくのが常識だろ!」


 は?


「タンクに援護? 何でそんなことしなきゃ行けないのよ!」


「下級モンスターの攻撃でさえ大地を割る威力なんだぞ! 一人で耐えられる訳がないだろ!」


 何?


「だってアイツは一人で攻撃を受けてたわよ」


 ニノが戸惑いながら呟く。


「回復魔法だってほとんどかけたことはない」


 シオンもニノに続く。俺に至っては茫然自失状態だ。


「ならあんた達はそのタンクにおんぶに抱っこだったってことだな! 防御も考えずにただただ攻撃するだけなんて子どもでも出来る!」


 ……


「スキルはいくつかあるのかも知れないが、お前達は素人以下だよ! こんなパーティー、もうごめんだ!」


 そう言うと、ギーランは一人で街への帰路についた。


「何よ、アイツ! 好き放題言っちゃって!」


「負け犬の遠吠え」


 ギーランの姿が見えなくなると、ニノとシオンは口々に文句を言い始めた。


「まあ、終わったことだ。とにかく次のことを考えよう」


 正直、ギーランはかなり期待外れだったが、仕方がない。


「もうっ! 何だか気分が悪いわ! 別の街に行きましょう!」


 ニノは嫌なことがあるとすぐその場所を離れたがる。まあ、この思い切りの良さはいいところでもあり、悪いところでもあるな。


「賛成。アイツの顔、もう見たくない」


 シオンも賛成のようだ。まあ、確かにあの街にこだわる理由は何もないな。


「ここからだと……」


 冒険者ギルドがあるようなところとなると……


「なら、次はミスカルデだな」

読んでいただきありがとうございました! 次話は明日の7時に投稿します!

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