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神器

興味を持っていただきありがとうございます!

 爆発するように広がった白い光が一瞬で消えた後、俺は自分の体に異変が起こったことに気がついた。


「傷が治ってる!?」


 加えて、俺は見たこともない盾を持っている。これは一体……


「アドゥさん!」


 エリーゼの声! そのおかげで俺は鉄犀アイアンライノスの存在を思い出した。


 ドドドドドド!


 再び鉄犀アイアンライノスが俺に向かって突進する。スピードと威力は間違いなくさっき以上だ!


(一端避けてスキルを使ってから……)


 冷静になった頭で俺はそう考える。だが、その時、不思議な声が俺にささやいた。


(このまま迎え撃て、だって?)


 正気とは思えない提案だ。しかし、俺は何故かその声に従った。


「【盾打撃シールドバッシュ】!」


 その瞬間、鉄犀アイアンライノスの巨大が弾かれるように宙を舞った!


「え?」


 予想外の展開に戸惑う俺を余所に、鉄犀アイアンライノスの体は地面に落ちた。


(動かないな……)


 鉄犀アイアンライノスはピクリとも動かない。まさか倒したのか?


(いや、いくらなんでも威力が高すぎるぞ)


 俺の【盾打撃シールドバッシュ】は素の攻撃力はさほど高くない。カウンターが決まったとしても鉄犀アイアンライノスを一撃で倒すような威力はないはずだ。


「アドゥさん、お怪我は?」

「大丈夫だ。ありがとう、エリーゼ」


 エリーゼは俺の言葉に安堵した笑顔を浮かべた。が、すぐに首を傾げた。


「アドゥさん、その盾は?」

「これは……」


 そう言われて俺は自分の持っている盾に目を向けた。


(そう言えばこの盾はどこから……)


 俺が持っていたのは見たことがないくらい立派な盾だ。


“それは我が里に伝わる神器だ”


「「!!!」」


 急に声が頭に響く。これはさっきと同じ大樹の声だ。


“人間よ。そなたの闘志、確かに見届けた。故に魔を払うための力を授けよう”


「エルフの里に伝わる物を人間の俺が持っていて良いのか?」


“種族は関係ない。持つべき者の手に渡る。神器とはそう言うものだ”


 声がそう告げると共に神器についての知識が頭に流れ込んで来た。


(この世界が生まれた時、神は人やエルフ、動植物を創り、悪魔は魔物を創ったとされている)


 これはエルフに伝わっている話らしい。エリーゼに目線で尋ねると、彼女はしっかりと頷いた。


(悪魔の創り出した魔物に全ての生き物が苦しめられていることを悲しんだ神は地上に自らの一部を投げ込んだ。これが神器と呼ばれる力)


 この盾が神の一部……?


(盾の形になったのは、この形が俺に合っていると神器が判断したからで、今までの持ち主の場合は他の形になっていた、か)


 神器が今までどんな形をとっていたかについても知識として流れこんできたが、正直覚えきれない……


“その力で我が娘を守って欲しい。我が娘は……”


 大樹の声は次第に小さくなり消えた。


(なんかえらいものを貰ってしまったなあ)


 大樹の話が本当なら、神器は世界の存亡に関わる物だということになる。


(そう言えば、大樹の言う“我が娘”っていうのはエリーゼのことだよな)


 エリーゼを守りたいという気持ちに嘘はない。そのための力だというのなら、まあ、受け取っておくか。


「アドゥさん」


 エリーゼが“どうしましょう”と言いたげな顔をする。まあ、話のスケールがあまりにも大きすぎるよな。


「とりあえず、休むか」


「はい! 私の家に行きましょう!」



 次の日、大樹についた傷に簡単な手当てをした後、俺達は里の外へと向かった。


 ちなみに、エリーゼによれば、俺達がこの里に来る羽目になったあの熱湯の噴出は大樹が弱り、地下水の量と温度をコントロール出来なくなったためらしい。


(本来は里のエルフが気を付けなきゃいけないんだろうけどな……)


 エリーゼは何も言わなかったが、多分そう言うものだろう。


(大樹の世話は本来、奴隷の仕事。だから、昔ながらのエルフ至上主義の村長はしたがらない、か)


 大昔、森だけでなく大地の全てを支配していた頃、エルフは他種族を奴隷として支配していた。だが、今はそうは行かない。


(考えを柔軟に切り替えられたら良いのになあ)


 そんなことを考えながら歩いていると、ああまただ。


 ギロ


 すれ違いざまにエルフの男が音でも鳴りそうな勢いで睨んでくる。


(相変わらず視線が痛いな)


 俺達に対するエルフの態度は勿論変わらない。まあ、あと少しの辛抱だ。耐えよう。


 ちなみに神器はいつの間にか消えていた。どうやら神器の力が必要な時に出て来るらしい。


(便利だよなあ)


 まあ、普段から持っていると目立つので、今は自分が前から使っていた盾を持っている。


「まだ里にいたのか!」


 誰かと思えば里長だ。もう里を出るって時に出会うとはな……


「今から出るところです」


「汚らわしい! 何故もっと早く出ないのだ!」


 もっと早くって……まだ朝だぞ。


 俺達がそんな暴言を浴びていると馬車の集団が里へとやって来た。


「おおっ! ようやく!」


 里長が笑顔を見せる。ああ、この馬車を出迎えるためにここに来たのか。


「あれ、兄貴じゃないですか!」


 ん? その声は確か……


赤暴牛レッドバイソンの時の……」


 エリーゼにそう言われて思い出した。赤暴牛レッドバイソンから逃げてた二人組だ。


(名はロランとジョー……だっけ?)。


 確か最後には舎弟になるとか言っていたような。

読んで頂きありがとうございました! 次話は明日の7時に投稿します!

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