それから
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しばらくすると、俺はミンスの冒険者ギルド長に呼ばれ、今回の件についての報告を求められた。
「なるほど。しかし、赤暴牛の次は合成獣の高速種とは……。君達の活躍には目を見張るものがあるな」
「いや、たまたまです」
合成獣の高速種と遭遇したのも、奴を倒せたのも全ては偶然だ。
「謙遜するな。この件は王都の冒険者ギルド本部に報告しておく。召集されるかも知れないから心づもりだけはしておけよ」
げ……
「あと、冒険者ランクはBランクに上げるからな。まさか、この期に及んで“まだ早い”だなんて言わないよな?」
いや、俺達はまだ……
と言いたかったのだが、その言葉は冒険者ギルド長の無言の圧力に封殺されてしまった。
「代わりといっちゃなんだが、部屋はそのまま使っていいぞ」
俺がいた部屋はミンスの冒険者ギルド内にある一室で、引き続きそこを使って良い……いや、そこを使うように言われた。今回の褒美という意味合いと勝手に何処かへ行かれては困るという事情があるのだろう。
「とりあえず、ゆっくりしておけ。怪我も治りきってないだろうし、呼び出しがあった時に移動出来ないような状態だったら困る」
俺達はギルド長のそんな言葉に見送られて部屋を出た。最後の部分が本音かな……
まあ、宿代が浮くのは助かるし、それはいいのだが、一つ問題があった。それは……
「なあ、相部屋っていうのは色々問題じゃないか?」
「?」
エリーゼは一瞬意味が分からないといった表情を浮かべたが、すぐに指を振りながらドヤ顔を浮かべた。
「ふふふ……そんなことを言って私を遠ざけよようとしても無駄ですよ」
「へ?」
本気で意味が分からない……
「アドゥさん、私には分かってるんですよ。早速筋トレしようとか思ってるでしょう?」
「? そりゃ軽いものは大丈夫だろう?」
「駄目です! 自分の怪我の程度が分かってないんですか!」
「!!!」
「怪我が治るまでは無理は禁物です! 私がつきっきりで無理をしないか監視しますからね!」
「おっ、おう……」
まあ、良いけどさ。一体何をしようか。
「久々にゆっくりしましょうよ。たまには休みも必要です」
「確かにな」
『銀の爪』を追放されてから、本当に色々あったし、この辺りでゆっくりするのも悪くないかも知れないな
※
(???視点)
「何? 合成獣の高速種がもう討伐されただと!?」
驚きのあまり大きな声が出たことで部下は怯むが、そんな些事には構ってられない。
(ようやく進化させたのに、もう倒されるとは……)
合成獣の高速種は良い出来だった。火耐性は低いが、敏捷性と攻撃力が高い上、高速種の中では防御力も高い。間違いなく、戦果を上げてくれるはずだったというのに。
「間違いないのか?」
俺は思わずそう確認した。すると、部下からは更に予想外の情報がもたらされた。
「間違いありません 『守りの樹』というCランクパーティーが討伐したそうです」
「Cランクだと!?」
俺は再び大声を出した。
(『守りの樹』? 聞いたこともないぞ)
あの合成獣を倒したのが無名のCランクパーティーだというのか。
(一体何者なんだ?)
俺の中で疑問が渦巻く。が、はっきりとした事実が一つあった。
(何者かは知らんが、危険な奴らだな)
危険。そう、危険だ。長年の俺の計画をぶち壊す可能性さえある危険因子だ。
「是非直接話を聞きたい。ここに呼び出せ」
そう命じると共に、俺は別の部下を呼び、『守りの樹』に対する情報を集めるように指示した。
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