叱責
またまたブクマをありがとうございます!
「うっ……」
気がついた時、俺の視界には見たことがない天井が映っていた。
「どこだ、ここ……」
俺の基準からすれば、かなり贅沢な部屋だ。正直何故自分がここにいるのか、さっぱり分からない。
(俺は確か……)
そう振り返り、俺はようやく思い出した。そうだ、合成獣の最後の一撃を防ぎ損ねて重傷を負ったんだった。
(ヘマしたな……いや、エリーゼは!)
その時、俺は自分の手を覆う柔らかな感触に気がついた。
(エリーゼ?)
正確には覆っているわけじゃない。俺の手の方が明らかに大きいから、重なっているだけだ。だが、何でさっきは自分の手が包まれているように感じたのだろう……
「……! アドゥさん、起きて!」
エリーゼはそう言うなり俺の手をきつく握りしめた。
「大丈夫ですか!? どこか痛みませんか?」
「落ち着け、俺は大丈夫だ」
「いえ、大丈夫じゃありません!」
うおおっ! 近い近い近い!
エリーゼが額がぶつかるほどの距離まで顔を近づけてくる。しかも、何か怒ってる……
「分かってるんですか!? ただでも肋骨が折れていたのに無理な姿勢で防御するから肋骨が内臓に刺さって……」
ああ……道理で急に意識が遠退いたわけだ。
「『灰猫』のヒーラーさんでも応急処置しか出来ないくらいの重傷だったんですよ!?」
「『灰猫』の皆は無事なのか?」
エリーゼに言われてナッシュ達の話をまだ聞いてなかったことを思い出したんだが、これは完全な悪手だった。
「今はアドゥさんの話をしてるんです!」
「お、おお……すまなかった」
しかし、何でエリーゼはこんなに怒っているんだろうな……
「もう少しで死ぬところだったんですよ! いつも無茶ばかりして……アドゥさんの馬鹿!」
エリーゼ、泣いてる!? これ、悪いのは俺か? 一体どうしたら……
「いや、俺のクラスはガーディアンだし、仲間の盾になるのが仕事で……」
エリーゼはそのまま顔を俺の胸に押し付けた。服を濡らすエリーゼの涙は止まらない。俺はエリーゼがどれだけ自分のことを心配してくれていたかを思い知らされた。
「悪かった。別に死ぬ気だった訳じゃないんだ。合成獣が君を狙ってると気づいたら──」
ん? 俺は何を言ってるんだ?
「とにかく、エリーゼを守りたいと思っただけなんだ。心配かけてすまない」
「……」
エリーゼは目尻に溜まった涙を細い指先で払いながら、ようやく顔を上げた。
「ごめんなさい。アドゥさんが私のことを守ってくれたんだって分かってるんです」
エリーゼが再び俺の手に指を絡める。細い指だ……そして信じられないくらい滑らかだ……
「でも、何かアドゥさんが“何でもなかった”みたいな感じだったのを見たら自分が押さえられなくて……」
タンクは敵の攻撃を受けてなんぼのロール。だから、攻撃を受けるのは当たり前だと思われてるし、俺もそれでいいと思ってた。
(だが……)
エリーゼにとっては違う。エリーゼにとって、俺はタンクである前に仲間なんだ。
「悪かったよ、エリーゼ」
「あっ!」
俺はエリーゼの手をギュッと握りしめた。
「俺が倒れたらエリーゼを守れなくなる。だから、俺は決して倒れないことを君に誓う」
待て待て待て!
何か勢いと雰囲気でよく分からないことを言ってるぞ、俺は!
こんなことを言われたら、エリーゼだって困るだろ!
「そ、それなら今回だけは許して上げます……」
あれ? 困ってない。というか、顔を赤らめてそっぽは向いているが、満更でもないように見えるな……
何で?
………
………………
ま、いっか。
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