節目
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数日後、俺達はお揃いのマントを身につけ、隣町まで移動する行商人を護衛するクエストを受けていた。
本来、Dランクの俺達が受けられるクエストじゃないんだが、ギルド長の立っての願いで受けることにしたのだ。
「本当に大丈夫なのか?」
移動中、依頼主である行商人は何度も俺達にそう言った。
「俺達はギルド長に頼まれてここにいるんだか」
クエストの依頼者であるはずの行商人は常時こんな感じだ。
「ちっ! 高額の報奨金を出して依頼したのにDランクの冒険者かよ。あのギルド長、覚えてろよ!」
小声で言ってはくれてるが、まあ聞こえてる。
「……っ」
このやりとりがある度にエリーゼは怒りで顔を歪める。彼女の性格上、俺のことを気にしてくれてるんだろうけど、気にしてないから大丈夫だぞ?
「それにしても、何でそんなに警戒してるんだ?」
「実は隣のトールスまでの道中に時折妙な魔物が出るという噂があってな。実際何人もの仲間が痛い目にあっている。だから、腕の確かな冒険者に護衛して貰いたいたかったんだが……ちっ!」
「……っ!」
どうもトールスへ向かう途中にある海岸に見たことのない岩のようなものが漂着した後からそうした噂が広まってるらしい。
「妙な魔物か……」
そんな話を聞きながら進んでいくと、突然何かが近づいてくる気配がした。
「エリーゼ!」
「はい!」
行商人と馬車を守るようにフォーメーションを組んでいると、森の奥から一匹の子鬼が姿を現した。
(子鬼? だがちょっと違うような……)
全体的に細身だが、手足だけは普通の子鬼よりはるかに発達しているのだ。
(こいつが妙な魔物なのか?)
俺が子鬼を観察しながらそんなことを考えていると、突然子鬼の姿が消えた。
(なっ!)
だが、俺は子鬼の姿が消えると同時にスキルを発動する。
「【挑発】!」
これでエリーゼや行商人が狙われることはない。
ガキン!
俺は何とか子鬼の攻撃を盾で防ぐ。子鬼のクセに何てスピードだ!
「【敏捷性上昇】」
「【守護壁】」
エリーゼと俺は何とかスキルを発動させるが、その間この子鬼は二回も攻撃してきた。
(普通の子鬼とはスピードが違いすぎる……)
エリーゼから【敏捷性上昇】をかけて貰っても反撃なんて夢のまた夢だ。
(なら、あれを試してみるか!)
赤暴牛を倒した時に得たスキルのことだ。
「【盾打撃】!」
【盾打撃】はその名の通り、盾で攻撃するスキルだ。あんまり強そうには聞こえないかも知れないが、防御しながら攻撃出来るという利点がある。それに加えて……
ドサッ
あれ? 子鬼が倒れた。一撃で?
(確かに死んでる……HPや防御力は低いのか?)
何だったんだ、こいつは……
「た、倒したのか?」
あんまりにもあっさり終わったせいか、行商人は本当に危機が去ったのか不安げだ。
「ああ、心配ない」
「凄腕の冒険者を何人も返り討ちにしたと聞いたのだが……」
「なんなら確認するか?」
俺が子鬼の死体を持ち上げると、行商人は悲鳴を上げながら後退った。
「ひっ!」
え?
「止めてくれ! そんなものを近づけないでくれ!」
……いやいや、魔物の死体くらいでビビリすぎだ。行商人なんだろ?
「いや、死んでるから大丈夫だぞ」
「分かった! 分かったから止めてくれ! 今までの態度も謝る! だから勘弁してくれ!」
あー なんか漏らしてる。これ、俺が悪者か?
「流石アドゥさんです!」
エリーゼが満面の笑みを浮かべる。か、可愛い……
「とりあえず先に行こう」
「はいっ!」
俺は行商人に何度も声をかけ、何とか出発させた。
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