追放
手軽に読めるように工夫しました! 個人的には様々なことにチャレンジした作品です。よろしくお願いします!
「君はクビだ」
「は?」
我ながら間の抜けた言葉だ。だが、親友で信頼出来る相棒でもあるセシルからこんなことを言われるとは思いもしてなかったんだ。
「分からないか? 君はパーティーのお荷物なんだ」
「お荷物ってなんだよ!」
売り言葉に買い言葉。俺の語気が荒くなる。が、セシルはあくまでも落ち着いていて、しかも冷たい。
「君はパーティーに何か貢献しているのか?」
「俺はタンクだ。みんなを魔物の攻撃から守──」
「最近魔物が俺達に攻撃したか?」
「うっ!」
「だからアンタはお荷物なのよ!」
そう言って俺に指を突きつけるのはニノ。髪を肩口まで伸ばした魔法使いだ。
「今時の戦闘スタイルは先手必勝! とにかく攻撃しまくって相手に攻撃を許さないのが最善なの!」
人は神から与えられたスキルで世界の敵である魔物と戦う。魔物が理を超える力を武器とするなら、人の武器は知恵だ。人はスキルを研究し、進化させることで強くなる。
だが、そうなると魔物もやられまいと己の力を進化させる。その結果、攻撃力がインフレーションを起こした。今や下級の魔物でさえ大地を割るほどの攻撃力なのだ。
そのため、魔物から攻撃を受けないことが最善となる。すると、自ずと……
「タンクが攻撃を引き付けて……なんて戦術は時代遅れなの! そんなことも分からないの!」
ニノの言葉に俺は返す言葉もない。確かにそれが今のセオリーだ。しかも『銀の爪』には……
「もし、怪我をしても私が治す」
そう言ったのは、パーティーのヒーラー、シオン。神秘的な雰囲気を持つシオンは回復魔法と水属性の攻撃魔法を身につけたマギと呼ばれるクラス。つまり、ウィザード兼ヒーラーとして働けるのだ。
「分かっただろう? 君はパーティーの役に立てないんだ」
「だけど、俺だって色々頑張っ──」
「分かってる。戦闘以外で色々やってくれていることは。だけど、正直惨めすぎて見てられない」
「……」
戦闘の役に立ってないことは分かっていた。でも、仲間だから出来ることをしようと思ってやっていたんだ。
だけと、セシルからは、俺の親友からはそうは見えていなかったらしい。
「もーっ! セシルは優し過ぎっ! それじゃあ、勘違いしちゃうよ。コイツと私達はもう住む世界が違うんだって、ちゃんと言わなきゃ」
ニノが俺にビシッと指を突きつける。
相変わらずきついな……昔は魔物が現れると真っ先に俺の後ろへ逃げてきたのにな。
「セシル、駄目だよ。はっきり言うべき。もうパーティーにアドゥの席はないって」
何? 席がないってどう言うことだ?
「ああ、うん。そうだね、シオン」
セシルは一つ咳払いをした。
「アドゥ、実はこの間、俺達『銀の爪』に入りたいっていう冒険者が来てね」
なっ!
「とても優秀な冒険者で、凄い固有スキルを持ってる重戦士なんだ」
重戦士……それって俺とポジションが被ってないか?
「馬鹿なアンタにも分かるように言ってあげる。アドゥ、アンタはもう用済みなの」
「私達、『銀の爪』はアドゥがいたままじゃAランク止まり。だから、ここでお別れ」
「……」
つまり、結論は決まっているらしい。なら、もう話をする意味も、話を聞く意味もないか。
※※
俺は自分の荷物を持って外へ出た。さっきまでいたのは『銀の爪』の名前で借りている宿。パーティーから追放された俺が居るのはおかしいだろう。
(というか、俺がごめんだしな)
腹は立つが、先ずは宿を決め、適当なクエストを見つくろわなければいけない。金はそこそこあるが、今の俺は仲間がいない。怪我でもしてクエストを受けられなくなれば、収入がなくなるのだ。
(だから、とにかく金銭的な余裕が欲しい)
安い宿を選び、冒険者ギルドに行って、『銀の爪』からの脱退手続きをした。俺から手続きをしてやるというのが、せめてもの意趣返しだ。
が……
「あ、既に済んでますよ。で、これが新しい冒険者プレートです」
くそっ! シオンの仕業だろう。シオンはニノのように直接不満をぶつけるんじゃなく、こういう搦め手を使ってくる。
「冒険者ランクもご確認下さい」
サラッと言われたその言葉に俺は内心ため息をつく。つまり、今までよりランクが下がってるということだ。
(パーティーを組んでいると、パーティーとしての実績が加味される。けど、ソロだと俺個人の能力でランクが決まるもんな)
冒険者プレートにかかれたランクはD。つまり、下から二番目だ。
(ウソだろう! 最低でもCだと思ってたのに)
だが、それをここで言っても仕方がない。俺は少しでも実入りの良いクエストを探し、受注した。
読んで頂きありがとうございました! 次話はお昼の十二時に投稿します。