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第十八話 ナツメ

18.a



 また、使われなくなるだろうと思っていた通信端末からコール音が鳴る。儂は、手にしていた標本を棚に戻して、替わりにアヤメに作ってあげた、失敗した対物ライフルを持つ。弾は撃てないが、何かを殴る時にはちょうどよい。


[マギール?プエラよ、今いい?]


 聞こえてきたのはあの二人からではなく、マキナの司令官を務めるプエラ・コンキリオからだった。


「お前さんか…どうしたのだ?」


 珍しい事もあるものだ。彼女は確か、好き勝手動き回るマキナ達に辟易していたはずだ。それが、通信端末越しに肉声で会話をするなど。


「プエラ・コンキリオよ、まさかお前もマテリアルで干渉しておるのか?」


 介入と干渉は違う。似たようなものだが、介入は問題解決にあたって何かしらの目的がある場合だが、干渉はただ自分のマテリアルを造って目的もなく動き回ることだ、まさにグガランナやアマンナのように。


[…うん、一人ぼっちは寂しかったから…]


「…そうか」


 何も言えない、寂しいと言われたら黙って頷くしかない。プエラ・コンキリオの本領は、マキナ達を纏め上げ、テンペスト・ガイア指示の元に、このテンペスト・シリンダー内で起こった問題を解決していくところにある。その問題が複雑であればある程にプエラ・コンキリオはその力をいやまして発揮していくことだろう。

 だが、ここでは、ディアボロスが製造したビーストと呼ばれている人間駆除機体と、上層へ移住した人間達が、飽くことなく戦闘を繰り返しているだけにすぎない。この駆除機体による攻撃が、ディアボロスのエラーにでもなればプエラ・コンキリオの出番もあろうが、奴がリブート処置されないという事は、プログラム・ガイアにとっては正常であると判断されている証である。

 なおのこと、プエラ・コンキリオの出番がない状況なのだ。だが、


「あまり、関心はせんなプエラ・コンキリオよ」


[…はい、すみません]


「まぁいい、それで、儂に何の用だ?」


[ナノ・ジュエルがどれくらい残っているか、マギールは知らない?調べているの]


 立ち直りが早いな...さっきのしおらしい声は何だったんだ。


「調べてどうするのだ?まさかお前さんも、人型のマテリアルを持とうと言うのではあるまいな?」


 あの、糞ほどに迷惑をしたマキナの顔と、人形のように可愛らしい顔が同時に浮かぶ。


[…いいえ違うわ、上層から来た人がナノ・ジュエルを欲しいと言ってるのよ]


「何でまた?」


 なつめーかわってーと声がする。ん?誰かと一緒にいるのか?


[ナツメです、通信越しでのご挨拶をお許し下さい]


 ...あぁ何と、何という礼節、礼儀であることか...


「…構わんよ、お前さんが上層から来た人かね、儂の名はマギールだ」


[プエラから聞き及んでいます、師事を行うという古い言葉の、マギエステスが由来である事も、我々人間のためにどうか、ナノ・ジュエルについてご教授願えないでしょうか]


 通話口から、どうかされましたかと慌てた、ナツメと呼ばれる人間の声が聞こえる。儂はあまりの礼儀正しさに床に膝を付き、この者のために老骨を捧げようと、一人で勝手に誓っていたところだった。



✳︎



 通話口から聞こえてくる、マギールと呼ばれるマキナの声は、どこか気難しい印象があった。

 ナノ・ジュエルについて、詳しく教えて欲しいとプエラに頼んでみたはいいが、そこまで詳しく知っているわけではないと断られてしまった。そこで、代わりにマギール氏を紹介すると言われて、今通話しているのだ。 


[すまない、気が動転してしまってな、礼儀知らずの馬鹿なマキナ達にも、お前さんの姿を見せたいものだ]


 礼儀を知らない馬鹿なマキナ?そんな奴もいるのか、まるで人間と変わらないな。今話しをしているマキナは老人の声をしているし、プエラに至っては、まぁ何だ、イジり甲斐のある可愛い奴だ。


「?」


 小首を傾げながら見つめているプエラの頭を小突く。いたいんですけどと小さく抗議をするが、マギール氏の話しに肝を冷やしてしまった。


[ナノ・ジュエルの量についてだが…そもそも、お前さんら人間に渡すのは、厳しいかもしれん]


「それは何故ですか?量が足りないからでしょうか?」


[いいや、ここらを管理しているディアボロスというマキナが、ナノ・ジュエルを人間に渡すことを認めはせんだろうからな]


 聞いた事ある名だ、不思議と心臓が跳ねてしまう。


「その名前についてなら、一度聞いた事があります、子機であるウロボロスというマキナが、ディアボロスの名前を口にしていました」


[うろぼろす?聞かん名だな…いや、奴が製造したのか、しかし何でまた…、あぁ、そういう事か]


「何でしょうか?」


[ウロボロスは確かにディアボロスの子機だと言ったのだな?それなら簡単な話しだ、ディアボロスは本腰を上げて、お前さんら人間の調整に入ったのだろう]


 調整?調整とは何だ、ディアボロスにしろウロボロスにしろ、私達人間に良い感情を持っていない事は態度と言動で分かる。だが、


「調整とは何ですか?攻撃や、殲滅でもなく、何を調整するのですか?」


[数だよ、お前さんら人間の数が増えすぎたのだ、これ以上テンペスト・シリンダー内で人間の生存圏が増えてしまうと、ここが崩壊してしまう]


「…」


 こことは、このテンペスト・シリンダーの事か?いやだが、我々が増えていくのは当たり前の事だ。平和に暮らして、自分の人生を全うしていく中で伴侶を見つけて、子供を産んでいくのは当たり前の事ではないのか。


「いや、しかし…我々は当たり前の日々を過ごしているだけです、特別にテンペスト・シリンダーに害を与えているわけでも、ましてや、マキナと敵対しているわけでもありません」


[そうだろうさ、プログラム・ガイアはお前さんら人間のために組まれた、文明発展の手助けを目的としたシステムだ]


「それなら何故?何故我々が、殺されなければならないのですか?」


[今、まさしく直面しておるではないか、資源の問題に、もう上層には潤沢な資源が残っておらんのだろう?だからこうして中層までやって来ているではないか]

 

 マギール氏の言葉に反論できなかった。


[この問題の解決法を、ディアボロスなりに考え出した結論であろう、お前さんら人間の数を減らさねばいずれ、テンペスト・シリンダー内の全ての資源が無くなってしまうと]


 開いた口が塞がらない。それは確かにそうだが、だからと言って何故一方的に殺されなければならないのか。

 ナノ・ジュエルについて詳しく教えてもらおうと思っていたが、とんでもなく理不尽な話しを教えてもらった。


「では、ディアボロスというマキナがナノ・ジュエルを減らしているのですか?我々人間に取られないよう」


[何の話しだ?奴にそこまでの権限は無かったはずだ]


 権限が限られているのか、ではナノ・ジュエルを管理しているマキナがいるということか?


「それなら誰が管理をされているのですか?」


[誰もしておらん、そもそもナノ・ジュエルはテンペスト・シリンダーが建造された時に総量が決められておるのだ、それをお前さんらが住んでいる地下、言わばメインシャフト内でリサイクルして総量内で使っておったのだ]


 プエラに教えてもらった事と同じだ、それが減った原因について尋ねてみた。...聞くべきだったのか、聞かない方が良かったのか、今の私には判断する術が無かった。


「それが減った原因に、何か心当たりはありますか?」


[お前さんらが使っているカリブンだろう、あれはナノ・ジュエルがリサイクルされる前の物だ]


「…は?」


[ディアボロスが数を減らすのに躍起になっているのも頷けるものだ、ナツメ、お前さんには悪いがこれ以上ナノ・ジュエルを渡す事ことはできん]


「いや…待って下さい、そんな話は一度も聞いたことが…」


「あろうがなかろうが、何か関係あるのか?お前さんらがリサイクル前のナノ・ジュエルを使い、そのまま捨てていた事が減った原因だ」


「…」


[すまんが、ナノ・ジュエルはお前さんらのためだけに作られた物ではないのだ、悪く思わないでくれ]


 そう言って、マギール氏からの説明が終わった。我々人間は、知らずに貴重な資源を使い潰していたわけだ。それで、中層にやって来て、困っているから資源を渡してくれと言われて、渡す奴がいるはずもない。

 いつの間に立っていたのか、私の横にいたプエラが頭を撫でてくる、だが、思わず手を振り払っていた。


「やめてくれ、馬鹿にしているのか!」


「ち、違う!そんなつもりじゃ…ご、ごめんなさい…」


 傷ついたように下を向いてしまう、ただのやつ当たりだ。だが、止まらなかった。


「お前は知っていたのか、私達が使っているカリブンの事について、何故教えてくれなかったんだ!」


「私は知らないよ!知らなかったんだよ!マギールの話しを聞いて、私も、」


「あの戦闘機とやらに使ったナノ・ジュエルは私達のっ…くそ」


 そこまで言いかけて、ぐっと言葉を飲み込んだ。言いがかりにも程がある、だが、言い切らなくてもプエラには伝わってしまったようだ。


「…ごめんなさい、貴重な物を、無駄使いしてしまって…」


 そう言って、私に頭を下げるプエラ。違う、こいつが謝ったところで何の解決にもならない、そんなことは分かっている。むしろ、私がやつ当たりをして頭を下げさせたのだ。だが、今更やつ当たりだったと言うこともできず、私も視線を下げてしまう。

 それから私とプエラはしばらく無言で過ごし、どちらからともなく部屋を後にした。



18.b



[オーディン、応答しろ]


[何だ?]


[奴らがエディスンに近づいて来ている、迎え討つぞ]


[お前、あんな廃墟にいるのか?]


[…少し、言葉がキツくなったな我が兄弟]


[…我からの愛と知れ、兄弟よ、これ以上疎まれるわけにはいかんのだ]


[ならいい、迎え討つは語弊だな、今急ピッチでピリオド・ビーストを再建造しているところだ]


[すぐにできるのか?俺が先行しようか?]


[いや、今回は失敗するわけにはいかん、万全の準備をしてから行う、何があっても抜けがけするなよ、オーディン]


[あぁ分かった、オリジナルの調整をしておこう]


[…いいのか?]


[構わんさ、コアさえ守れば良いだけの話しだ]


[知っているな?マテリアルにエモートを保存した状態で破損してしまえば、お前はリブートされてしまう事を]


[あぁ]


[ならいい、到着はどれくらいになる?]


[もう間もなくだ、直に中層へ着く]


[ならいい]


[(それしか言えんのか)それより、グガランナのオリジナルが出払っているようだが、何か知っているか?]


[はぁ?何故?いや、お前が知らないなら俺が知るはずもないだろう]


[そうだったな、失礼な事を言った]


[…オーディンよ、問おう、何故グガランナは我らに味方しない]


[本人に聞いてくれ、というかお前はグガランナにちゃんと説明したのか?今の状況を]


[…した]


[本当か?]


[ちょりーーーーすっ!待った?待ってた?待っててくれた?いやぁ俺って超人気者だぜぇ!!照れるねぇ]


[おい、何か入ってきたぞ]


[何かとはひどい言い方するねぇ、俺のこと忘れた?ウロボロスっちだよ?]


[は]


[ディアちゃんがさぁ、俺の知能を上げてくれてさぁ、おかげでカッコいー喋り方になったんだよね!ありがとねディアちゃん!ちゅっ]


[おいディアちゃん、説明しろ]


[やめてくれオーディン、俺はそんな呼び方を認めたつもりはない、ウロボロスが勝手に呼んでいるだけだ]


[これがあのウロボロス?お前と同じダサい喋り方をしていたではないか]


[(この喋り方ダサいのか…)俺にも分からん、作業効率を上げるために知恵を付けたんだがな、おかしなところに付いてしまったんだ]


[そんな!そんなことないよディアちゃん、俺は感謝しているぜ?それになんせもっかい、人間と戦えるんだからな!次はぜってー全滅させてやっからよ!だから安心して、ディーアちゃんっ♪]


[きしょく悪いわぁ!!]


[ディアちゃん、俺はいるか?下層で待機していようか?邪魔しちゃ悪いからな]


[勘弁して!!]


 その言葉を最後に通話を切る。

...初めての経験だ、まさかオリジナル・マテリアルを起動することになるなど、あの時ディアボロスから聞かされたテンペスト・ガイアの計画を知った時に、まさかこんな事になるとは予想もしていなかった。

 今すぐにでも、全マキナへ呼びかけを行いたい。テンペスト・ガイアの計画を知らしめ、決議にかけさせて破棄にしてやりたい。だが、計画内容も一切の矛盾が無い、然るべき未来であるとも言えよう。だがしかし、我らマキナも生きているのだ。いくら作られた存在と言えども、意思があり、記憶をし、感情を発露し、他者と接していく我らも人間とは違いないはずだ。

 オリジナルから見える景色は格別であった。以前に造ったマテリアルは、我が名の由来である人馬一体の物を製造したが、遠隔操作であることに変わりはなかったと、今なら言える。何もかもが鮮明に、このマテリアルに纏わりつく空気も手に取るよう分かる。立ち上がる時に手にした金属の冷たさも直に伝わってくるのだ。素晴らしい、これが生身の体という事か。

 目の前には、合計で十二のマテリアル・ポッドが存在している。収納されている部屋は広大、端も見えない程だ。有機型蛍光灯に鮮明に照らされたポッドは、一つ一つに名前が刻印されている。我が名はオーディン、ただ割り当てられた名に過ぎないが、今はこの名を誇りに思う。

 扉が空いているポッドは全部で四つ、剣を授かりしオーディン、司令官たるプエラ・コンキリオ、マキナを修理する機能を持つグガランナ、そしていつの間にいなくなったのか、ピューマと呼ばれる環境洗浄機能を持つ機体を造ったティアマトだ。

 この中でとくに大きなポッドがグガランナのものだ、マキナにもよるが殆ど全てのマキナを収納できるのではないだろうか...いや、グガランナの大きさを超えるポッドがある。その異質な程に巨大なポッドの名前はタイタニス、俺が立っている場所からかろうじて刻印された名前が見えるが、ポッドの端がまるで分からない。もしやこの広大さは、タイタニスに合わせて作られたものかもしれない。

 踵を返し、マキナ達のポッドが置かれた場所を後にする。下層と中層を繋ぐ道やエレベーターなどは何も無い、下層と中層の間にあるのは大型のケーブルやラジエーター、それに自動点検をしている機械群で埋められた外殻部と呼ばれる場所だ。自力で行く他にない。

 道すがら、通信が入った。意外な相手に少し、臆してしまったのが情けない。


[オーディン、今どこにいるの?]


「答える義理はない、今更何の用だ」


[あの時は悪かったわ、あなたに興味がまるで無かったから]


「切るぞ」


[ディアボロスの居場所を教えなさい]


 有無言わせぬ口調、それにまるで俺が知ってて突然という言い方だ。


「調べたければ勝手にしろ、何故わざわざ聞くんだ」


[あなたの意思を尊重しているからよ、何をしようとしているのか教えなさい]


「それなら簡単な話しだプエラ・コンキリオ、誰も対処しない人間の数を減らすのだ」 


[減らした後は?]


「…は?」


 質問の意味は理解できたが、意図が分からない。


「何故そんな事を聞く」


[人間の数が減ったら、テンペスト・シリンダーの問題は解決するの?]


「何の問題だ」


[…資源の話しよ、ナノ・ジュエルの量が減っていること、人間を今のナノ・ジュエルでも賄えるように減らしているのでしょ?]


 ...面倒だ。テンペスト・ガイアの計画を唯一知らせていけないのがこの司令官だ。こいつとテンペスト・ガイアは強い繋がりがあったはず、だから過去に一度、計画について知っている事を聞き出そうと、会いに行ったはいいが塩対応で追い返された。


「…さぁな、俺はディアボロスと共同で事にあたっているにすぎん」


[嘘が下手ねあなた、過去に一度計画について教えろと、私の所に来たでしょうに]


 こいつ、覚えていたのか。

どうはぐらかそうと思案しながら、外殻部へ繋がっている大型のハッチを開ける。人間用に作られた物だろう、何とか身を屈めて抜けることができそうだ。ポッドの置かれた場所から通路を自前の足で歩き、壁に設置された点検用の大型ハッチであろう、開閉ボタンを自前の指で押す。潰さないように慎重に。

 たったこれだけの事で、俺は感動していた。今まで遠隔操作でマテリアルを動かしていたが、これはものが違う。全ての反応がダイレクトに伝わってくるのだ、歩く足に伝わる光沢が無い通路と、人間用に作られたハッチの開閉ボタンの頼りない感触、それにハッチを抜けた先、恐らく俺が初めて足を踏み入れた外殻部と呼ばれる場所だ。


[オーディン?]


 プエラ・コンキリオに我々の動きを知られるわけにはいかない。テンペスト・ガイアの計画を止めようとしているのだ。奴の直接の部下にあたる司令官に知られては、我々が妨害されることだろう。


「お前の指揮官に聞いてみてはどうだ、テンペスト・ガイアの方が何かと詳しいだろう」


[…そう、分かった、悪かったわねオーディン]


 その言葉と共に通話が切れる。一体何だったのだ、急にかけてきたかと思えば、こちらの嫌味にすぐに引き下がった。

 プエラ・コンキリオの通話で気を取られていた俺は、何かが足に引っかかり危うく転びそうになっていた。


「っぶねぇ!!」


 ...良かった通話が切れた後で。

足には透明な糸があった、このハッチにも有機型蛍光灯が設置されていたおかげで、鮮明に見ることができる。一本だけなら透明だが、束になるとどうやら白く見えるらしい。俺の足以外にも、腕や頭に無数に付いていた。これも何か、人間達が使っていた点検用の道具だろうか、しかし何故ここに?もし点検用なら誰かが使っていたことになる。

 俺の予想とは裏腹に、遠くから体を揺らす程の咆哮が聞こえてきた。


「ーーーーーーーーーーッ!!!!!」



18.c



 コンコルディアのメインコンソールからもう間も無く目的地に到着すると、マップ上に示された光点に近づいている事をメッセージで知らせてくる。

 コンコルディア頭部に装着された、カメラレンズ越しに見えている風景は、山の裾野にある街を映し出している。植物に喰われた哀れな街、だがあそこに資源があるはずだ。カリブンがあれば良いが、無くともそれに代わる新たな資源を探し出さねば。


[もう、間も無くですね総司令、街が見えてまいりました]


 外部スピーカー越しに、サニアが声をかけてくる。今は、ナツメの代わりに探索隊の指揮を預けている。


「ナツメの代わりに良くやってくれた、サニア」


[えぇ、ナツメ隊長の代わりは疲れました、私には荷が重すぎます]


 ...よくある事だ。こいつだけは生き残るだろうと目をつけた奴でも、あっさりと戦場で息絶える事が。


[総司令、街に到着次第、探索隊を分割してナツメ隊長の捜索にあたらせます、よろしいですね]


 質問ではなく確認だ、こいつも中層へ来てから随分と態度が変わった。いや、あのエレベーターでの私の失態を見てからか。こうなってはどうしようもない、下手な摩擦は避けるべきだろう。


「好きにしろ」


[ありがとうございます、総司令]


 形ばかりの返礼、だが、サニアの顔が険しい事に気づく。


「何だ?」


[…九時の方向、ビースト、お分かりになりませんでしたか?]


 そう言葉を残し、他の隊員へ指示を出しに行く。こんな所にまでビーストがいるのかと疑問に思うが、カメラレンズが捉えた遠距離映像には確かにやつらに似たものが映っている。

 その体格は大きく、人と同じかそれ以上だ。頭部は小さく、胴体が一番大きいように思う、手足は短く爪もあるにはあるが見慣れたビーストのように、攻撃性に優れているようには見えない。

 あのビーストを調べるために、コンコルディアからサーバーにハッキングをし、データログをあたらせる。少しの間を置き、メインコンソールに表示された情報には、 


識別名:森林洗浄型ピューマ・食肉目クマ科

個体名:ヒグマ

製造責任者:ティアマト

管理者:ティアマト


 森林洗浄型、ピューマ?あのビーストに似たやつはピューマという名前なのか、それともクマが名前なのかは分からない。それに製造されたという事は、自然と生まれた生き物ではない、それにティアマトという名前は聞いた事がない。こいつもタイタニスと同じマキナであろうか。


[あれ、もしかして、クマなんじゃない?クマに似てるいるような…]


[クマって、確か凶暴な動物だよね?昔は人間も襲ってたって、前に博物館であったような…]


 スピーカー越しに隊員らの会話が聞こえてきた、まさかこんな時に不勉強さが祟ってしまうとは。

 ついで、サニアが各隊員らに指示を出す声が聞こえてきたところで、コクピットに異変が起きた。


[ご機嫌よう偽物のグラナトゥム・マキナ、私の声は聞こえているかしら]


「!!」


[あら、あなたは人間よね…あぁそういう事、よくできているわね]


 一言も発していないのに何故分かった、それにこいつは何だ?少女のような声に聞こえるが...まさか、


「ご機嫌よう、いかにも、ご明察の通りだ」


[そう、あなたはタイタニスと知り合いなの?よく似たシグナルサインだけど]


「…まぁ、そんなところだ、中層探索に知恵を貸してもらった」


 こいつは、本物のグラナトゥム・マキナだ。まさか、本物と対話する日がこようなど...プログラム・ガイアについての概要は知っていた、だが、マキナがどのような生命体なのかは一切知らない。コンコルディアを作る際にタイタニスを調べはしたが、動いていなかったのだ。それをいい事に隅々まで調べたが...


[タイタニスが?よく貸してもらえたわね、あの神経質な職人が、そんな粗末なものは作らないと思うけど]


 粗末呼ばわりか、仕方がない。これ以上、余計な事を話して明るみに出ないようにしなければ。


「我らに何か用立てか、期待に沿えられるとは思えないが」


[えぇ、あなた達は資源を求めて中層にやってきたのでしょう?]


 何故それを知っている?本物は何でもお見通しという事か?


「…それが何だ、渡せないと言いたいのか?」


[いいえ、あなた達に協力したいの、街が見えているわよね?エディスンの街が、今となってはただの廃墟だけど、そこで落ち合いましょう]



✳︎



「すまない…こんな老いぼれの我儘を聞いてくれたばかりに…」


 儂の目の前には、頭部と胸、心臓辺りを撃たれたピューマが、息も絶え絶えに横たわっている。儂の家から街までは少しばかり歩く、楽をしようとたまたま近くを歩いていたピューマに声をかけたのだ、熊に似せられたこいつは持久力も速さも高い、それだけの理由で選んだにすぎない。それなのに...


「mwt,wptjgdm,mgtwqdgmgw@…」


「お前さん…」


 言葉を失う、まさかそんな事を考えていたとは、想像もしていなかった。


「だからと言って、儂の心が軽くなることはない…何か、何か一つでもいい、罪滅ぼしをさせてはくれないか」


 我儘を聞いてもらい、挙句に許しを求めた。浅はかだ、こいつとは比べものにもならない程に、重責に耐えられる自信がないために甘えているのだ。いくら、マキナに似せたとは言え、己が人間である事を思い知らされた。


「ajgt,mwtp…mpwtgdp,pnw…wpmgwj…」


「あぁ、分かった…約束しよう、すまなかった、心優しきものよ…」


 そう言い終え、動かなくなってしまった。

街にいるナツメ達と会うために向かっていた間に起きた悲劇だ、いつの間に進軍していたのか、上層からやって来ていた人間共が街の近くに展開しておった。奴らはピューマについて何も知らなかったのだろう、それに見た目はアヤメがビーストと呼んでいたやつらに似ている。こちらに攻撃する意思は無かったというのに、一方的に撃たれてしまった、それをただ、黙って見ていたのだ。

 涙を流す資格は儂にあるのか、甚だ疑問だ。心優しいピューマに別れを告げ、街へと歩みを進める。

 ピューマを攻撃した人間の部隊は、すでに引き上げ本隊と合流をしたようだ。不思議と怒りはない、あるのは自身に対してのみだった。

 上層にいる人間共ではない、ここにいる中層のピューマ達のために動く以外にないと、儂を守ってくれたピューマと約束したのだ、いいや、儂が勝手にもらった許しだ。それを成そう。



✳︎



 私に割り当てられた部屋を出る。行き先は...やはりあいつの所だろう。

 今日はよく晴れている、部屋から見えていた戦闘機が、いつも以上に太陽光を反射して眩しかった。自分の意義を主張しているかのようで、部屋に居づらかった。

 建物のエントランスへとやって来る、ここはこの街の病院だと聞いたが、そうとは思えない程に綺麗で落ち着いた雰囲気がある。エントランスの中にも植物があり、入り口の近くや、待合い室のソファ、果ては壁の中からその顔を出している。

 プエラがいる部屋は二階、エントランスの正面にある大階段から登ってすぐの部屋だ。行かなければならないが、どうしてか、足が動かない。私の近くにあった、植物のツタに覆われたようなデザインをしているソファに腰を下ろす。

 そのまま下を向き、また同じ事を考える。


(どうすればいいんだ…資源が無いならここにいても意味がない…)


 いいや、資源はあるにはあるんだ。だが、決められた量しか無く、マギール氏にも断られた。それに、知ってか知らずか、どちらにせよカリブンを捨てていたのは私達だ。このままでは、いずれカリブンが底を尽いてしまう。何のためにここまで来たのか...それに、 


(ひどい事をしてしまった…)


 プエラの傷ついた顔を思い出しただけで、胸に鉛を落とされたような気分になる。助けてもらった命の恩人にしていい態度では無かったと、今なら言える。だが、あの時はそれどころでは無かった。


(またか…そう言ってアヤメにも振られてしまったというのに…)


 堂々巡りだ。同じ事を考え、同じ問題にぶつかり、同じように自己嫌悪している。何も変わらない、変わっていない。アヤメに振られて少しはマシになったかと思ったが。

 重い腰を、なかなか離してくれないソファに沈めていた時、エントランスの自動扉が開いた。


「ふむ、ここか、プエラ達がいる病院とやらは」


 入ってきたのは初老の男性に見える、禿げた頭に顔には皺があるが、足腰はしっかりとしといて筋肉も衰えていない。服装は、セーターのような厚手な上着と、足の筋肉を隠そうともしない薄手のスラックスを履いている、そして特徴的なのが腰に巻いた大きな布だ。スラリと、だがしっかりと胸を張る出立はまるで、退役した軍人にも見えた。


「君かね、プエラと一緒にいたナツメという人は」


 話しかけられた、あれ程上がらなかった腰が簡単に持ち上がり、慌てて挨拶を返す。


「は、はい、そうですが、あなたは?中層の方ですか?」


「分からんかね、君とは通話したはずだが」


 あ、え?この人がマギール氏?イメージしていたのと違って驚いてしまった。


「失礼、しました…私はナツメです、いえ、通話越しで挨拶はしましたが、」


 突然の事に慌ててしまい、言葉にならない。


「いいさ、それよりプエラはどこにおる、あやつと話しがしたい、無論、君ともだ」


「プエラなら、階段を登ったすぐの部屋に、」


「守衛室か…何かしておるな、まぁいい」


 そう言って、颯爽と階段へ向かうマギール氏、私も慌てて後を追う。近くを通った時に見えた手の甲には、人間には無い薄らとした線があった。それを見て、この人は私と違うのかと、どこか他人事のように感じてしまった。

 階段を登り、遠慮なく扉を開けて入るマギール氏、私も何度か扉の前には立ったが扉が開くことは無かった...いや、開けることすらしなかったのだ。


「プエラ・コンキリオ!どこにおる!儂がわざわざ出向いてやったぞ、返事をしろ!」


「?!」


 急な怒声に再度驚く、私の中でマギール氏に対する気難しいイメージがより一層確定的になった。それにこの声量、本当に軍人をしていたのではなかろうか。

 だが、プエラからの返事がない。どこかへ行ってしまったのか、しかし空の相棒と呼んでいた戦闘機も駐車場に置いたままだ。


「あやつ…いや、おるではないか、何故返事を…」


 そこで声を止めたマギール氏に違和感を覚え、私も彼が見ている方向へ視線を向けた。

 そこには、胸に手を当て安らかに眠っているように見えるプエラがいた。ベッドの上には、白い花弁を持つ花がプエラの周りに置かれ、これじゃまるで...


「プエラっ!!」


 私は、マギール氏にも負けない声量で、傷つけてしまった愛らしい少女の名を呼んだ。



18.d



 あー...どうしよう、戻るに戻れなくなってしまった...

 タイタニスと似た偽物のマキナとコンタクトを取って、街で落ち合う約束を取り付け、もののついでにディボロスにも通話をかけたら、凄い勢いで追い返されて、気を取り直してさぁ街へ出かけよう、という時にナツメが私の体に抱きついているではないか。いや、まだマテリアルに戻ってないから、サーバーから眺めてるだけなんだけど。


「お前、そんなに思い詰めていたのか、あぁ何て事だ…」


 いや確かに悩んではいたけどね?

えぇどうしてこうなった、というかマギール見てるだけじゃなくて止めてよ!

 マギールにナビウス・ネットが無いので仕方なく、部屋に設置された通信機にコールをかける。


[お前さん何をしておるのだ、早く起きんか]


「起きれないでしょう?!この状況見て何とも思わないの?!マギールから説明してあげてよ!」


[どこまで喋っておるのだ?下手な事は、]


「いいから!ナツメが泣き出しちゃったじゃない!」 


 ぶつぶつ言いながら、私の胸に顔を当て泣いているナツメへと近づくマギールは事もあろうに、


「心配せんでも、プエラ・コンキリオはそばでお前さんを見守っておる、だから泣く必要はない」


「!!やっぱり…プエラはもう、この世にいないのですか…」


 バカ!マギールそれマジで私が死んだ事になってるじゃない!!いや確かに意味は合ってるけど!

 もう一度コールをかける。


[早うせんか、ナツメが可哀想だ]


「どの口が言うの!マギールがややこしい事を言うから余計に泣いてるじゃない!」


[お前さんが起きねば、この状況は解決せんと思うが?]


 確かにそうだけど!何?こいつに恥ずかしいという感情はないの?事前に説明してもらって、誤解を解いてから起きようと思ったのに!


[あぁもういい、話しを進めるぞ]


 進めるな!


[ナノ・ジュエルについてだが、やはり人間達には諦めてもらう他にないだろう、だが、代わりになりそうな資源なら心当たりがある]


 え?本当に進めたよこの老いぼれ。


「ねぇマギール?あなたに感情や思いやりはないの?ナツメを放ったらかしにして、話しを進める自分を省みた方がいいと思うよ」


[やかましい!お前にそこまで言われる筋合いは無い!この問題はここにおるピューマとも関わっておるのだ!いいからさっさと恥ずかしがってないで起きてこい!]


「?…マギールさん?誰と話しをして、」


 あぁぁあ!!!ナツメに気づかれた!こんの老いぼれマギール!しかも私が恥ずかしがってるの知っててあんな事を言ったのか!


[ほれ、お前さんにだ]


 あぁ!!!


「私に…ですか?誰から、」


 そう怪訝になりながらも、マギールから受話器を受け取るナツメ。


[私に、何か…]


「あーえー、そ、の、えー…ナツメ?」


 意を決して自分から説明しようとしたが、ナツメの言葉に何も言えなくなってしまった。


[プエラか?!あぁ悪かった私が悪かったよ、まさかこんな事になるなんて、最後にお前に謝る事ができた…本当に悪かった、お前にやつ当たりしてしまった事も、戦闘機を無駄使いとお前の口から言わせてしまった事も…本当にすまなかった、許してくれ…]


 本当は何ともない事を説明しなければいけない難しさと、恥ずかしさと、少し気遅れした頭にも、きちんとナツメの言葉は届いた。そんなに、泣くほど、思っていてくれたのかと、嬉しくなって余計に申し訳なくなってしまった。あったかい人だなと、どうせなら触れて欲しいと思った時には、マテリアルに戻っていた。


「ほんとーーにっ、ごめんなさい何ともありませんこのとおーーりっ」


 謝罪と無事である事を二つかけて、拝むように手を合わす私の姿を見て、ナツメは固まった。



「ふぉれはふぉうと、ここにくるはらさきにいいなはいよ、まひーる」


 マテリアルに戻った事を後悔するぐらいに抓られた。痛すぎる、ほんとにほっぺたが取れてしまったのではないかと、それぐらいに全力投球で抓られてしまった。全然あったかくなかった。


「休んだらどうだ?その口ではまともに喋れんだろう」


「うるはい」


「お前さんも、人間に愛されておるな、全く」


「ふぁ?これのどこは?」


「好きでもない奴に、そこまで怒ったりはせんさ」


 そういうものかな、よく分からない。


「んんっ!それに、私もってどういう意味?他にいたの?」


「あぁいたさ、兎にも角にも糞ほど迷惑なマキナが二人」


「あぁ、アマンナとグガランナの事、マギールが面倒みていたのね」


「何故知っておるのだ?お前さんが起動したのはつい最近だろうに」


「行く当てがなかったからメインシャフト内を調べてたの、その時にたまたま見つけたのよ、アヤメ?とかいう人と一緒にいるところをね」


「あぁ、アヤメは元気にしておったか?」


「していたと思うけど…その人の事は気にかけるのね」


「あれは違う、そんじゃそこらの人間やマキナとは一線を画しておる」


「そう?私は嫌いだけど、ナツメの事を悪く言っていたし」


「何だ、お前さんも儂と戦争するのか?いいぞ、受けて立とう」


「いや何でさ」


 どれだけ好きなんだアヤメという人が。

場所は変わって、ナツメと初めて会話したあのテラスに来ていた、今日はマギールもいるので仮想風景は弄っていない。外には、病院前の駐車場と、少しだけ私の相棒である戦闘機が見えている。


「それで、代わりになる資源を見つけたって、それは何?」


「ナツメが来てから話すさ、あやつにも関係する話しだからな、お前さんそろそろ呼んできてくれないか」


 ...ナツメは今、待合室にいる、はず。私が拝んだにも関わらず、無言で怒って抓ってきた、怖かった...けど、その顔は、涙で頬を濡らして目も鼻も赤くしていた。

 腰ってこんなに重たかったっけ、凄く行きづらい。

 なかなか立とうとしない私に、痺れを切らしたマギールが、


「さっきも言ったが、お前さんは好かれている、あのナツメという人間も優しい心の持ち主だ、他に取られたくなかったらさっさと行ってこい」


 その言葉を聞いてようやく重い腰が上がった。取られたくなかったから、せっかく出会えたんだ。いつまでも意地張ってないで、謝りに行こう。



✳︎



 今度は待合室のソファに腰をかけて、下を向いている。

 何だったんださっきのは...てっきり私は死んだとばかり...よく考えてみればあいつはマキナだ、私達とは作りも何もかもが違う相手に、よくもまぁあそこまで盛り上がれたものだ...

 駄目だ、さっきとは違う意味で会いづらい、もの凄く恥ずかしい。

 どうやって戻ろうかと悩んでいる時に、足音が聞こえてきた。小さく、ゆっくりと、まるで何かを探しているような足取りだ。

 プエラだろう、これでマギールさんなら私はどう反応すればいいのかと現実逃避をしていたら声をかけられた。


「ナツメ、さんですか」


 ...こんな声だったか、それにさん付けって、


「プエラか?」


 声をかけてきた相手は、待合室に入る一歩手前の所にいるらしく、姿が見えない。


「いいえ、プエラではありません」


 それに声も、プエラより高い。まるで子供の声だ。


「?なら一体…」


「私を見ても、驚きませんか?」


 何を言っている、見てもいないのに驚くなど。


(ここにいる子供だろうか、いや、プエラは誰もいないと言っていたはずだが…)


 出方が分からない相手に、どうしようかと悩んでいると、ゆっくりと通路から出たきた。


「?!」


 その相手は、まるで幽霊のような姿をしている。体は透けていて、今にも消えてしまいそうだ。


「君は…?」


 何とか声を絞り出す、声の通りに子供の姿をしていた。何かを喋ろうとした時、画面に見る砂嵐のような、ノイズが走り声が出せなかったみたいだ。


「すみません、声、うま、出せな、」


 声も途切れて聞こえてくる。これはどういう事ださっぱり分からない、だが私を知って声をかけてきたのだ。


「君は、私に用があって来たのか?」


「は、たす、もらえ、せんか」


 助けてもらえませんか、そう言いたいのか。私にできることはあるのか?


「何をすればいいんだ?」


 私の言葉が意外だったのか、驚いたように、嬉しそうに私に駆け寄ってきた。


「プエ、あわせて、くだ、あとは、なんと、」


「あープエラ?あいつに会わせたらいいのか?」


 もうそれはそれは嬉しそうに私の手を取ろうとしたが、


「浮気ですかぁ?!いいですねぇーモテる人は違いますねー!!さっき私に見せた涙はナノ・ジュエルですかぁ?!」


「おまっ、驚かせるなっ」


 急に現れたプエラが怒りながら私達の所へやってくる。浮気とは何だ。


「ナツメ!こんなのほっといてこっちに来て!あなたもうろうろしてないで、さっさと行きなさい!」


「こら、そんな言い方しなくても」


 一人は嬉しそうに、一人は嫌そうに顔をしかめて、三人連れ立って部屋を目指した。

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