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ガイア・後編



「戻ってきたか」


 湖を後にして再び戻ってくると、イエンさんにそう声をかけられた。労るような目付きは変わらない、だがすぐにおや?と声を上げながら私に顔を近付けてきた。


「イエン、あまりそうじろじろと見るものではありませんよ」


「それは分かっているんだが…」


 ガニメデさんに注意を受けて顔を引っ込めた、きっと私の目の色が変化して珍しいのだろう、私だってそう思う。


「どうして瞳の色が薄くなっているんだ?何があったんだ」


 少しだけ、ほんの少しだけ下がっていた頭を上げてイエンさんを睨んだ、そしてガニメデさんにも視線を向けてからこう言った。


「知っていたんですよね?あの湖の奥に仮想世界があることを。力を使う前のアマンナと出会いました」


「………」


「………」


 真剣に耳を傾けているのは分かる、けれどその表情の下に何を思っているのかは分からない。


「どうしたんですか、どうして黙っているんですか」


 私はちょっぴり、少し...いや、かなり怒っていた。様子を見に来てくれたガニメデさんとはまだ一言も口を利いていないし向こうも気を遣ってか、ここに戻ってくるまでの間一言も話しかけてこなかった。


「その、実は…」


 途端に気遣わしげな様子で口を開いたガニメデさんに変わり、イエンさんが説明してくれた。


「俺から話そう。前に一度、お前に兆し有りと言ったことがあったよな?そして、湖の奥にある場所は俺達では何ら変化が起きなかったんだ」


「だから私を行かせたんですか?」


「そうだ。あの場所がただの森ではないことに気付いていたんだが俺達ではどうにもならなくてな、最後にお前を使って実験したんだよ。何があったのか教えてほしい」


「どうしてそう、わざと悪い言い方をするんですか、余計に怒らせたいんですか?」


「………」


「ふふ、どうやらアヤメの方が一枚上手のようでしたね」


「私の胸にパッドは入ってない!」


 苛立ち紛れにガニメデさんの胸をぱしんと叩いてやった。



「どういう聞き方をしたらパッドの話しになるのですか…いたたた」


「ごめんって、ただ場を和ませようとしただけだよ」


「それで手を上げるのはどうなんだ、本当に怒ったと勘違いしてしまったぞ」


「うぐぅ」


 皆んなが休んでいる搬出口前に向かう道すがら、三人肩を並べて向かっていた。けれど怒っていたのは本当だった、どうして事前に言ってくれなかったのかという憤りと今もまだ耳朶に残る彼女の叫び声が私をそうさせていた。


「それで、向こうで何があったのかしら、言える範囲でも構わないから教えてもらえると…」


 また私を気遣ってくれたガニメデさんの目を見ながらきちんと答えた、私もはぐらかすつもりは毛頭なかった。ただ、ほんの少し甘えたかっただけだ。


「ううん、ちゃんと起こったままを伝えるよ」


 それから湖の向こう側であった事を二人に説明した。あの男の子がバルバトス君に似ているところから、森を抜けると初めて見る街があったこと、そこには沢山の「生身」の人達が住んでいること、ハット姿の男性と白い目をした警官隊に似た人達に追われたこと。そして、ペルソナエスタと呼ばれる擬似人格のアマンナとバルバトス君がその人達に殺されてしまったことを伝えた。


「ガニメデさんやグガランナ達が前に行ったことがある小屋の所でね、そこでアマンナの機体に乗って別れたの」


「………」

「………」


 居住エリアに到着したと同時に話し終えると、二人は何とも言えない表情をしていた。イエンさんが口を開き、一度口を閉じてから私に本当の話しなのかと聞いてきた。


「嘘ではありません、湖のほとりで目を覚ました時は夢かなと思ったんですが…証拠にこうして目の色が変わっていますし」


「ふぅむ……」


「アヤメは平気なのですか?その…綺麗だった目がそう霞んでしまって…」


 それでそんなに気を遣ってくれていたのか、勿論答えは決まっていた。


「別に。そこまで気にしていなかったし、視力が落ちたということもないから平気だよ」


 ありがとう、と伝えると曇らせていた眉がようやく少しだけ元に戻ったようだ。けれど疑問は山のように残っている。


「予想以上の結果だな…まず、マキナではないアヤメがどうやってアクセスしたのか分からない。それにペルソナエスタと呼ばれる存在も初耳だ。さらにアマンナとアヤメが追いかけられたのも理由が分からない」


「でもそれはペルソナエスタと呼ばれるものだから…ですよね?」


「聞いた限りでは他にも存在しているのですよね?ただそれだけで処刑されてしまうというのは些か不可解です。そのハット姿の男性はアマンナ様の存在を知っていたということでしょうか」


「間違いないだろうな。つまり、俺達だけだと思っていたが神々の周りには第三者がいると考えた方がいい」


「第三者…」


 イエンさんの読みは正しいように思う。確かにあの人はアマンナを見て「持ち場に戻れ」と言っていたし、「我が子を汚す真似は許せない」とも言っていた。


(あれ…何か変だな…)


 ハット姿の男性について考えていると何かに引っかかり違和感を感じた、その正体を探ろうとすると前からこっちに向かって駆けてくる人影が見えたのですぐに霧散してしまった。走ってきたのはアリンちゃんだった、その後ろは皆んなも付いている。


「アヤメさん!」


「おはよう、と言ってももう昼前だけどね」


 私の挨拶に返さずひしっと腕を取ってきた、こうも好かれてしまうと気恥ずかしい思いもするが悪い気はしなかった。


「随分と好かれているようだな、アヤメ」


「はい、ホテルからここまで一緒に頑張ってきた仲なので」


「とてもそうは見えませんけど……」


 どこか含む言い方をするガニメデさんが眩しそうに微笑んでいる、そんなガニメデさんの足元にはいつものように鹿型のピューマが寄り添っていた。



 戻ってきた搬出口では既に撤収作業が進められていた、深夜から明け方にかけて長距離を歩いてきた皆んなの顔にはまだ疲労が残っているようだけど幸い悲痛な面持ちをした人はいなかった。エレベーターの復旧作業も終わっておりいつでも使えるとガニメデさんが少し寂しそうにして教えてくれた。


「またお別れですね」


「また遊びに来るよ」

 

「………」


 その寂しそうな笑顔は変わらない。


「また遊びに来るからね、私のことを忘れていたら承知しないから」


「………はい」


「アヤメよ、あまり困らせるな」


 何が何でも返事を聞きたかったので少し強めに繰り返した、それを聞いていたイエンさんが私を窘めてきた。私だって分かっている、無理やり約束させたところで何ら意味はないことぐらい。それでも私はアマンナの思惑を否定したかった。

 撤収作業が終えたとアリンちゃんが報告に来てくれた、これでいよいよあとは街に帰るだけだ。先に帰ったマギリから何の報告もないことに一抹の不安を抱えながらもエレベーターに向かおうとすると、四人の傍にいたハデスさんがはたとその足を止めた。


「………足音?アヤメ、君は向こうでお友達でも作ってきたのか?随分と沢山いるみたいだが」


「……いえ、私達三人しかいませんでしたけど」


 いきなり何を言い出すのだろうと今通ったばかりの通路を見やる、とくに何も聞こえないようだけどハデスさんには届いているらしい、アリンちゃん達四人を背に庇うようにして前に出ている。何かがこちらに来ているのだ、それも大勢。


「見送りに来た訳ではなさそうだな…ひどく慌てているようだ」


 アリンちゃんが素早く指示を出した、エレベーターへ避難するように言われた市民達は何事かと訝しみながらも素直に従ってくれている。


「ハデス様の言う通りですね……イエン」


「言っておくが俺の部隊ではないぞ」


 私の耳にも複数の足音が聞こえ始めた、腰に差していたホルスターから銃を抜き放ち通路に向かって構える。不安を掻き立てる足音がはっきりと聞こえるようになり否応なしに緊張感が高まっていく、そして通路から顔を出したのは意外にもあの男の子だった。しかし、


「早く逃げて下さい!このままでは、」


「あぁっ!」


 撃たれた、背後から頭に一発。決して子供に向けていいものではない大型経口のライフルの衝撃で男の子が前に吹っ飛ばされた、そして地面に倒れるなり細かな粒子に変わって消えてしまった。


「全員構えて!」

 

 体の中で燻っていた怒りが瞬時に蘇り口からそのまま出ていた、私の怒声に怯えるようにして他の隊員らが銃を構える。見えた、あの警官隊だ、白目の警官隊が血相を変えてこちらに走ってきた。態勢を整える隙を与えないように無警告で発砲した、それに釣られて皆んなもトリガーを引き絞る。


「あれはっ?!まさかお前が向こうで見たという奴らかっ?!」


「見れば分かるでしょう!!」


 私達の背後から悲鳴が聞こえ、しまったと振り返った先では別方向から現れていた警官隊に撃たれている市民がいた。それを機にして搬出口前は阿鼻叫喚の様相に一変し、我先にとエレベーターへ逃げていく人達が増えていた。


(どうして?!どうして私達を攻撃するのっ!)


 怒りが指先にまで浸透しトリガーからなかなか離してくれない、アマンナやあの男の子を、さらには市民の人達にまで危害を加えたのだ。


「ハデスさん!皆んなを連れてエレベーターへ向かって下さい!」


 ハデスさんにお願いしたはずなのに、返事はアリンちゃんから返ってきた。


「嫌です!私もここに残って援護します!」


「いいから行ってっ!」


「……っ!」


 マガジンを交換していたアリンちゃんの肩を掴んでハデスさんへ向かって突き飛ばした、他の三人も怯えたように私から距離を空けている。それでいい。私に背を向けてエレベーターへ駆け出した四人、それから何か言いたげにしていたハデスさんもその四人の跡を追いかけた。


「……っ!」


「今度はお前の番だアヤメ。お前もさっさとエレベーターへ向かうんだ」


「イエンさん?!何をっ」


 マガジンを取り出そうと視線を外すと、今度は私が体を突き飛ばされてしまった。驚いて視線を上げると不適に笑うイエンさんの顔があった。


「ここは俺が殿を務める」


「でもっ!」


「お姫様を連れてエレベーターへ向かえ!奴らが神々に仇なす存在なら俺の敵だ!」


「行きましょう、アヤメ」


 ガニメデさんに腕を取られた、何て薄情なと思う反面、こうでもしてもらわないと足が動きそうになかった。

 最後にもう一度だけイエンさんが肩越しに振り向いた。


「達者でな、兆しを持つ者よ。ここは我らが特別師団が預かる場所、お前達が離れるまで死守してやろう。錦は持てなんだがこれもまた一興だ。行け!」


 ガニメデさんが強く腕を引っ張った、それに釣られて私も駆け出す。背後から眩い光りが生まれそれと同じくして敵の発砲音が鳴り響いた。

 頭の中は混乱している、何故、どうして、負傷した人は、色々な事が頭をよぎる。怒りが体に充満しやるせない脱力感もあった、それでもあの男の子の笑顔だけは頭から消えることはなかった。



✳︎



「兆しあり。我が主は上層の街にて待っておられる」


 上位サーバーであるプロメテウスから何者かが闖入してきた、狙いは愛しの友人かイエンと名乗るサポートプログラムか、あるいは...どちらにせよ時が満ちた。我が主が望む未来がもう目の前にある、我が子を解き放つ時が来たのだ。


[……っ────っ……っ]


 さらに何者かがハッキングを仕掛けてきたようだ、時間がない、ここで自らの存在が明るみに出てしまえば全ての計画が破綻する。


「急ごう」


 我が子の力を借りて空へ羽ばたく、向かうは()()を象徴するかのような上層の街、カーボン・リベラ。有と無と人とマキナを繋ぐその奇跡、この目で見られる時が来た。



✳︎



 どうやら逃げ遅れた人、先程の襲撃で死亡した人はいないらしい。傷付いた顔をしているアリンちゃんがそう教えてくれた。


「報告は以上です」


「ありがとう」


 端的に言葉を返してあまり顔を見ないようにした。中型のエレベーターはアリンちゃんの判断で先に上げている、元々あそこには負傷した人を乗せている車しかなかったんだ、その判断は上出来と言える。

 傍から離れようと踵を返すとアリンちゃんに引き止められた、他にやる事はないかと指示を求めてきた。


「今は無いよ」


「……そうですか」


 まだ何か言いたげにしている、きっと私が怒っている事を気にしているのだろう。だけど今は、今だけはそれに応える気力も余裕も無かった。それだというのにアリンちゃんが、


「……何かあったらすぐに指示を出して下さい!」


 無理やり私の前で笑ってみせた。顔を引き攣らせ、眉にしわを寄せながら気丈に振る舞っている。


「……強いね、アリンちゃんは」


「…え?」


「私は駄目だよ、さっき殺されてしまった男の子の事で頭が一杯なんだ」


 その強い姿勢につい弱音がぽろりと出てしまった。


「ごめん…」


 どう答えたらいいのかと悩ませてしまい、アリンちゃんに頭を下げた。私は年下の子にすら甘えてしまうのかと嫌気が差した時、近くにいたハデスさんが大股でこちらに歩み寄ってきた。


「いいか二人共、つい今し方聞いた話しだが、どうやら上が大変な事になっているらしい。先に上がった中型エレベーターの隊員から報告があったようだ」


「それはどんな…」


 アリンちゃんが先を促した。


「街は氷点下を大きく下回っているみたいだ、それと基地に大勢の人達が避難してごった返しているらしい」


 一体何が...もう頭が追い付かない...どうしてこう次から次へと異変ばかり起こってしまうのか。知らないうちに私は隣に立つアリンちゃんの腕を取っていた、縋るように逃げるように、そうせずにはいられなかった。



✳︎



 ここにいるグラナトゥム・マキナは私だけだ。この惨状を引き起こしたのも私、ならば取る手段は決まっている。それにここまで部隊を引っ張り続けてきたアヤメの精神も疲弊し今にも倒れそうになっていた、彼女を心の拠り所としているこの四人もアヤメの影響を直に受けておりその顔色は悪い。それがここにいる市民らにも影響をきたしているのは火を見るより明らかであった。

 網膜にログイン画面を呼び出す、すぐさま警告が発せられるが無視してアクセスすると「死の宣告」を受けた。


[マテリアル・コア並びにエモート・コアに甚大な被害を確認。ガイア・サーバーの汚染を防ぐためこれよりリブート処置を行います、期限内に必要なデータをアップロードした後マテリアル・コアをポッドに収めて下さい]


(自らリブートを受けにいったマキナは私が初めてだろうな)


 何の感慨もなかった、あるとすればこの子らの為に命を散らせる事ぐらいだ。


「ハデスさん?どうかしたんですか?」


 何かと私の角を触ろうとするアシュが声をかけてきた、一番のお喋りで不用意な発言も多い子だがそれと同じく周りに聡い子でもあった。胸の内だけで済ませた決意を読み取ったのか、気遣わしげに首を傾げている。


「何でもないさ、それより寒さを凌げるように何か着込んだ方がいい」


「それはどのみち上に行ってからですね、装備品も車に積みっぱなしなんですよ………それよりもアヤメさんの方が…」


 少し遠くでガニメデと話しをしている彼女を見やっている、先程見せた動揺は今なお尾を引いているようだ。その傍らにはアリンも付いていた。


「心配か?」


「そりゃまぁ…アリンのこと、突き飛ばしていましたし…」


 優しい人にそんな事をされてしまえば、たとえ側から見ていたアシュもショックを受けているのだろう。


「アヤメも精神的に追い詰められているんだ、私も頃合いを見るべきだった」


「………」


「彼女が弱いからではない、寧ろ真面目に過ぎるんだ。アシュもアヤメを支えてやってくれ」


「………はい」


 やはり聡い、その視線には私の発言を探っている気配があった。

 そこでようやくガイア・サーバーに繋がった、リブートへのカウントダウンが開始している。その数値を無視してタイタニスが構築したネットにアクセスしようと試みると、意外にも呆気なく繋がったので少しだけ驚いた。


(一体誰が…ガイア・サーバーから孤立していたはずなのに…いや、これは…上官の仕業か…)


 ガイア・サーバーからタイタニスのスタンドアロン・ネットに橋渡しがされている。それを遠慮なく使いカーボン・リベラの監視カメラの目を借りてみると基地へ避難していた理由が良く分かった。この時になって初めて私は自分の行ないを大いに悔いてしまった。


(スーパーノヴァ……そうか、ベラクルの街で孵化したあの個体は街を襲う為だったのか…)


 理由までは聞かされていなかった、あの頃の私はただの言いなりに過ぎなかったためとくに興味を持つこともなかった。だがその浅はかな行動がこうして実を結んでいるのは何とも皮肉だった。

 どうしたものか、どう排除すべきか。あの個体はカエル・レガトゥムと密接にリンクしておりレガトゥム内にあるリビング・サーバーから遮断しない限り、いくらでも蘇生と回復を繰り返す。もしくはそれすらも上回る火力があれば話しは別だが、いつの間にか配備されていた人型機が束になっても決定打に欠けているようだ。


(いや…これは……)


 一羽の鳥が幸運にもアクセスしているカメラの前を横切った、ピューマではない本来の生き物然としたその鳥がここに存在しているのはおかしな話しだ。さらに、ガイア・サーバーから橋が渡されたのはタイタニスが潜伏していた街の地下にある基地だった。


(いけるか…)


 カウトンダウンを見つめながら頭の中でスーパーノヴァ排除への算段を立てた。



✳︎



 誰かが口にした事がある、偶然は二回目までで、三回目が起こるならそれはもう必然と呼ぶべきだと。そしてその必然が起こってくれるような事はなかった、アサルト・ライフルを使用する機体が勝手に落ちたのは二回だけで、それ以降はさらに練度を上げて私達を追い立てていくようになった。


[ちっ!何だって向こうは上達していくんだよ!やってられるかっ!]


 編成三班副隊長のダイゴがそう喚いた。ジリ貧もジリ貧で、あとは自分達の身を守れる程度の弾数しか残っていない私達は死神とのドッグファイトを続けていた。引き付けるだけで攻撃は出来ない、スーパーノヴァが支配する空から引き離すだけで精一杯だった。これではいつ撃墜されるか分かったものではない。

 デルタ編隊で敵の攻撃を躱しつつ、街の外へ進路を取っているとようやくカサン隊長から通信が入った。


[待たせた!すまない!今から再出動してもう一度本丸を叩く!]


 ついで聞いたこともない、奥深い鈴の音を思わせる声がそれを制した。


[必要ないと申し上げたはずですよ、地上から見上げているだけで結構です]


[抜かせっ!敵の前でライトの代わりしかしていないお前に何が出来るっ!]


 カサンさんの言う通り、割り込んできた部隊は本丸の前に陣取り、深緑の機体を護衛するようにただ自分達の身を守っていただけなのだ。


[それでは見ていて下さい、これがデュランダルの本威です]


 私より低い位置にいたデュランダルの機体が一際強く輝いた。


(これは…前にアマンナが見せたものと同じ…)


 それならあのスーパーノヴァも同様に解体出来るの?割り込まれた鬱憤も忘れ、淡い期待を抱きながらデュランダルを見つめていると、さらに光りが強くなっていった。コンソールから祝詞を読み上げる巫女のように、厳かで凛とした声が届いてきた。それに合わせてスーパーノヴァの動きも止まるかと思いきや、デュランダルの悲鳴と共により活発になってしまった。


「────────────っ!!!!」


[どうしてっ?!……な……ないのっ!!]


 ノイズが混じっているその声は何を言っているのか聞き取れない、ただ不測の事態が起こった事だけは理解出来た。コンソールからさらに混乱した声が届いてくる、それは戦いの空にも影響を与え快く思っていない味方にも波及していった。


[何故っ?!せっ……く私が一から作った……のに!……それはどういう意味なんですか……まさか……!]


[通信を切れないのか!耳障りだ!]


[駄目!強制的に流されてる!何なのこの人達!]


 隊を率いている二人もデュランダルのおかしな声に翻弄されているようだ。


(何がしたいの!このデュランダルという人は!)


[そういう……そう……事なのね……何の話しを……これを見切っていたから介入させないように……何か……知って……ですか……]


 一人で二役の会話を再現しているのか、自分で言ったことに対して自分で聞き直している、ついに狂ったかと思ったがそもそもこの空は始めから狂っていた。そしてついに、私達も狂った死神に後ろを取られてしまった。あちらは遠慮なく攻撃を行なえるため圧倒的に不利な状況だった。


[……くそっ!ナツメ隊長に俺の勇姿を伝えておいてくれよ!]


「馬鹿!ダイゴ!」


 先頭にいたダイゴ機が急な失速、それを避けるため私ともう一機の僚機が大きく舵を切った。ついで後方から弾丸の雨が横殴りに降り注いで無情にもダイゴ機を捉えていた。


[ダイゴ!]


[時間は稼いだ!あとは、]


 機体が爆発四散し電子の海へと帰っていった。それを皮切りにして敵の猛攻が始まった、おそらくこちらに戦う体力が残っていないと判断してのことだろう、編隊を解き散り散りになって私達へと襲いかかった。


「ミズキ!」


 叫んだところで遅い、死神の弾丸はミズキ機をも捉えていた。


[アマンナのことよろしくね!]


(くそっ!何ていうことなの!何て説明すれば!)


 生き残った四機がロッテを組んで現空域から離脱した。



✳︎



 聞こえていた、ミズキの声はわたしにも届いていた。どうしてこの世界に来たのかは分からない、けれどその声はわたしの胸にきちんと届いていた。


["このままでいいの?"]


 お節介なピューマがわたしに話しかけてきた、いいはずがない。けれどどうする事も出来なかった。


[………ら、……ニール、……答されたし……]


["ん?誰の声だろう"]


 ピューマに直接通信をかけてくる者が現れた。けれどどうして?ここにいるピューマ達はもうサーバーとは切り離されているはずなのに。それにこの声は...


[こちら、コチニール、我が主応答されたし]


["主?君は一体何者なの?"]


 今度はハッキリとその声が届いた。



✳︎



「それは本当の話しなのですか?」


「あぁ、街では今、スーパーノヴァによる大虐殺が行われている。このまま向かってもここにいる人間達が危険な目に遭うだけだ」


「…………」


 ガニメデがその流麗な眉を曇らせた。お互い上層の街に足を踏み入れるのはこれが初めてだというのに何とも笑えない話しである。


「……その事はアヤメには、」


「伝えていない。今の彼女には荷が重過ぎる」


「ではどうすれば……いえ待ってくださいハデス様、それをどうやって知り得たのですか?まさか……」


「ご名答、サーバーにアクセスしたからさ」


「何を馬鹿な事をっ!」


 彼女の叱責がエレベーター内に響き渡った、近くにいた人間はおろか端の方で体を休めている人間もその大きな声を聞いて頭を上げている。あの子達が気付くのも言わずもがな、すぐに駆け寄ってくれた。


(何という贅沢な事か…こうも心配してくれる存在がいてくれるなんて)


 一番最初に近付いてきたミトンが声をかけてくれた。


「…何かあったんですか?」


「何でもないさ、気にすることはない」


「ハデス様、この子達があなた様を慕っているのは重々理解されていますよね?その返答は些か不誠実かと思われます」


 きちんと説明しろということらしい。足元に擦り寄っている鹿型のピューマの頭を優しく撫でていた。


「どういう事なんですか?ハデスさん、教えてください」


 アリンの生真面目な瞳が真っ直ぐに私を捉えている。リブートへのカウントダウンは着々と進んでいる、先程から上手くマテリアルを動かせなくなってきた。それでもなお、ここにいる全員へ届くように声を張り上げた。


「これから向かう君達の街にはスーパーノヴァと呼ばれる生命体が悪逆の限りを尽くしている!何を隠そう、この私が産み落とした最大の異物だ!」


 遠く離れた場所で膝を抱えていたアヤメも何事かと頭を上げた、憔悴し切ったその顔にも驚きの色が表れていた。やおら立ち上がり私の元へ歩み始めた。


「心配せずともこの私が落とし前を付けてやる!この命に代えてでも君達とこの街を守ってみせよう!」


 元から私は人間達にも興味がなかった、必然的にその街もだ。だが今は違う、違った、私の中に今までにない程明確な目的が生まれそれが鉛に変わりつつあるこのマテリアルを突き動かしていた。


「何を……まさか、ハデスさん」


 アヤメも私が何をしたのか理解したらしい、痺れを切らした四人がアヤメに詰め寄り問い質している。そして、リブートについて理解した四人が一斉に振り返って私に罵倒を浴びせてきた。


「何をやってるんですかハデスさん!自分から死にに行くだなんて!」

「今すぐに止めてください!」

「そうですよ!何を考えているんですか!せっかく仲良くなれたのに!」

「まだ恩返しもしていなんですよ?!」


(こんなに嬉しい罵倒があっただなんて…知らなかった)


 四人が遠慮なく私のマテリアルを殴ってくる、鉛に変わりつつあり鈍化してきたマテリアルでもその力強さが伝わってきた。アヤメがそんな四人を引き止めて、間に割って入ってきた。


「……どうしてそんな事したんですか、アリンちゃん達の事が心配じゃないんですか?」


「心配だからさ、この子達を守りたい一心でそう決断を下した。一切の悔いはない。それにだ、私は今日の今日まで自分という存在に自信が持てなかった、役割も無ければ使命も無い、ただ生かされているだけの自分が不甲斐なくて好きになることすらなかった」


「私もそうだよバーカ!一人でカッコつけないで下さい!」


 アシュが私の言葉に同意を示してくれた。


(そうか…そうか、私だけではなかったんだな…)


「………」


「だがな、そんな私をこの子達が変えてくれたんだ、だから私は守りたいんだよ。自分の為に使えなかったこの力を誰かの為に使うことが出来る、これ程の喜びは他にない。それが知れただけでも私の生に意味はあったんだ」


「………分かりました」


 憔悴しているはずなのに私の言葉を聞いたアヤメの目に力が宿った、くるりと背中を向けて四人に指示を出す。だが、意外にもアリンがその指示に反対していた。


「私達でハデスさんの援護をするよ、いいね?」


「……嫌です」


「駄目、ハデスさんの覚悟を聞いたよね?」


「嫌なものは嫌です」


「駄目なものは駄目!ハデスさんが敵を落とすまで私達が守るの!いいね?!」


「嫌ですっ!せっかく助けてくれたのにっ!せっかく仲良くなれたのにっ!わざわざ見捨てるだなんてできません!」


「誰が見捨てるって言ったのっ!ハデスさんの為に私達が体を張って守るんだよっ!今ここで恩返ししなかったらいつするのっ!」


「──っ」


 そして、エレベーター内にいる他の隊員へも号令をかけた。


「エレベーターが街に到着次第、戦える人はハデスさんの援護をお願いします!市民の方はエレベーターから出ないようにお願い致します!」


 私はてっきり反論が来るものと思っていた、元はと言えば私と司令官がやった事なんだ。その犯人が自分達で落とし前をつけると言ったところで信用されるとは思っていなかったが...誰も何も言わず、その手にしていた武器を高らかに持ち上げた。

 俯き下を向いているアリンの顔を覗き込もうと身を屈めたが、それでもなお下にあるアリンの顔を見ることが出来なかった。


「すまない。私は君に泣いてほしい訳ではないんだ」


「……だったら、そんな無茶な…こと、止めてください…」


「それは出来ない、私だって君達が傷付く姿を見たくないんだ。本当にありがとう、戦いがどうなろうと私はいずれ消滅してしまう、ここでお礼を言わせてもらうよ」


 目尻を吊り上げ睨んできた。最後は笑ってほしかったが、どうもその辺り私は不器用なようだった。


「そんなお礼は要りません!戦いが終わったら延々と説教してやりますから覚悟してて下さい!」


「………分かった、覚悟しておこう」


 ...いいや、これもこれで悪くない。私の生にまだ続きがあると思わせてくれるその言葉は震えるものがあった。

 もう間もなくだ、もう間もなく街へ到着する。



✳︎



[決断を、我が主]


["どうするの?"]


 わたしの周りには逃げ惑う人が沢山いた、そしてわたしの頭の中は囃し立てる二人でうるさかった。


(いや、うるさいとかじゃない…そんな事は分かっている)


 強い、そう強い忌避感があった。そうしてはならないという強い気持ち、また辛い思いをしてしまうという思い。空では今でも人型機が戦い、地上では市民の人達も武器を手にして戦っている。だがこのままではいずれ敗れてしまう、疲れを知らない()()()()()()の前では人はあまりに無力だ。


(あぁ…まただ、また知らない言葉が出てきた…)


 何だそれって自分でも思う。あの機体の名称なんて知っているはずがないのに頭の隅からぽろっと出てきてしまった。


[主。ガニメデと機体は揃っている、後は主の決断のみである、何を躊躇う必要があるのか]


["大切な人が死んじゃうよ?"]


 それでもだ、それでもわたしの意志は動こうとしない。何かが足りない、まだ足りない。


(だから何がだよぉ〜、しっかりしろわたし!)


 自分の記憶と戦っているとエレベーター前が何やら騒がしくなり始めた。武器を持って戦っている人達が声をかけ合い扉の前に集まりだした。


["もしかして、中層にいた人達が帰ってきたのかな?"]


 ピューマの言葉にはっとする、そうなるとあのエレベーターにはアヤメが乗っているはずだ。けれど今のわたしはピューマのエモートに紛れ込んでしまっているため誰だか分からないだろう。


(わたしにマテリアルがあれば…いや、でも、今はそんな事している場合じゃない…)


 さらに今度は空も騒がしくなり始めた、高高度で戦っていたはずの機体が急降下を行ない軍事基地まで押し寄せてきた。慌てた人型機が守りに入るが別方向から飛来した機体に挟み撃ちにあってしまい、息を吐く暇もなく瞬時に墜とされてしまった。


(マグネトロンによるマイクロ波で焼き殺している…環境汚染に配慮した非接触型殺傷武器…)


 パイロットが焼死してしまいコントロールを失った機体が基地へと墜落してきた。それに気付いた人達が慌てて駆け出し、間一髪のところで人型機から逃げおおせていた。守りを失ってしまった空には機体がさらに押し寄せており、エレベーターの扉へ近付いていった。


(何がしたいんだ……?)


 扉前に到着した機体は何度も体当たりを行ない突破しようとしている、その不可解な行動を前にして人々が遠ざかっていく。その隙に墜落してしまった人型機からパイロットを外へ運び出しているようだが、ここからでも分かる程にパイロットスーツが異常なまでに膨れ上がっていた。もしあれがアヤメだったら...そう考えた途端、何もかもが弾け飛び得たいの知れない恐怖がわたしの全てを支配した。


[主、時間がない。このままでは取り返しがつかなくなってしまう]


[分かってるよそんな事ぐらいっ!!けれど今じゃ駄目なのっ!!]


[何を言って……ガニメデによるバックアップはもう取れている、問題は、]


[うるさいっての!!]


 そう怒鳴り返すと静かになった。そのおかげもあって恐怖は去ってくれたようだがまだ何の()()にもなっていなかった。まだ足りない、()()な何かがまだ足りていないのだ。このままではまた失敗してしまう、そうなってしまえばわたしはまたただの()()に戻って世界から無慈悲な()()をしてしまう。事を起こすには()ての()が熟していなければならない。


["あれ、あの人型機はどうして動くの?"]


 記憶と戦い混乱しているとピューマがぽつりとそう呟いた。確かにわたしの視界にもそれが映っていた。無情型広域機にパイロットを焼かれたはずの人型機が動き出し、半狂乱になって扉に体当たりを続けている機体へと覚束ないながらも駆け出していた。



✳︎



「止まれっ!聞こえているだろエフォルっ!!」


 とんでもないタイミングで中層攻略部隊が帰ってきてしまった。起動したエレベーターの音を聞きつけたのか知らないが、空を覆っていた黒い機体が殺到し今も扉を突破しようとしていた。


(くそっ!あいつは何を考えているんだっ!)


 昏倒して意識が戻らないリューオンとキリの体を兵舎移した後の出来事だった。慌てた様子の隊員らが私を呼びに来たのですぐに駆け付けてみれば、墜落していた人型機にエフォルが無断で乗り込み勝手に立ち上げていた。

 インカムに向かってもう一度呼びかけるとようやく返事が返ってきた。


[うるさいっ!おれだってまだまだ戦えるんだっ!]


「お前は隊員ではない!ただの民間人だっ!」


 腰に収納していた近接武器を抜き放ち、背後から敵を串刺しにしていた。さらに続けて武器を振るおうとしたがその動きが半端な所で止まってしまった。人型機のあちこちから火花が散り始めている、制御機構に深いダメージが入っているせいだ。黒い機体の標的が扉から人型機へと代わりその凶悪な腕で挟んだ。


[何でだよ!何で動かないんだっ!おれだってバルバトスを動かしていたんだぞっ?!]


「いいからさっさと逃げろっ!!」


[逃げられるかっ!おれだってなぁ!助けられてばかりは嫌なんだよぉ!]


 無理やり腕を動かして一つの腕を払い退けた、それでもまだ一つ残っている。耳障りな音が響き始め腕と人型機が赤く熱せられた時、その黒い機体の足元に一台の車が突っ込んでいった。そして荷台から血相を変えて降りてきたのがあの日、私が基地代理司令の座に着く原因を作った男、ヒルトン警視総監だった。


[それはこちらの台詞だ少年っ!]


 さらに荷台から降りてくる影が三つ、黒い機体に怯むことなく銃を発砲し続けようやく一機落としてみせた。


(なんつう気迫っ!)


 腕を外されていた機体がヒルトンらへ視線を向けた、さらに腕が赤く染まり始めていた。あのままでは焼かれてしまう。


[ダンドラっ!あの腕を狙えっ!]


「馬鹿よせっ!」


 私の叫びも届かず、ヒルトンの傍にいた男が腕目がけて発砲してみせた。思っていた通り派手な爆発が起こって四人は吹き飛ばされ、そして最後の一機も仰向けに倒れていった。痛む足を引き摺りヒルトンの元へと向かう、見るからに負傷しており浅い息を繰り返していた。


「あんた馬鹿か!爆発すると知ってて撃たせたのかっ!」


 体の半分近く火傷を負い、潰れてしまった右目と共に私に顔を向けた。


「……お陰で、子供一人、救う事が出来た、文句を言われる……筋合いは、ない」


「あんた……カリブンで悪巧みしようとしていた罪滅ぼしでもしたかったのかっ?!」


「……それだけじゃない…今の今まで…散々搾取してきた……もう、うんざりだったんだよ、ここいらで、人助けでもして、精算したかったんだ……」


「それで自分の命を落としていたら洒落にならないだろうがっ!そこでじっとしていろ!いいな!」


 幸い意識はある、早く手当をすれば命は助かるはずだ。他の三人も地面に倒れて呻き声を上げている。


「くそったれ!少しぐらい空気読めってんだっ!」


 そんな私達に構うことなくさらに黒い機体が上空から押し寄せてくる、他の隊員らへ救護と応戦の指示を出しながら痛む足を無視してヒルトンを抱え起こすとエレベーターから扉が開く音が響き渡った。

 ついに帰ってきた、長らく基地を空けていた部隊が、そして私の妹もだ。こんな状況でもなければ街を挙げて祝杯でも上げたいところだが、代わりにエレベーターの内側から高らかな祝砲があがった。


「総員前へ!ハデスさんを護衛しつつ敵を払い退けて!」


 アヤメだ、アヤメが指揮を取っている、何て凛々しいことか。


「……アヤメ」


 エレベーターの中から出てきた大勢の隊員が銃を構え、近付いてきた敵を片っ端から撃ち墜としていた。その中央には黒い甲冑姿の奇怪な人間もいたが、目と耳が激しく点滅を繰り返している。


(あれもマキナなのか……いや、今はそれよりもこいつらを兵舎の中に!)


 人手を頼み、すぐに駆け付けてくれた人達と一緒になってヒルトンら四人組を兵舎へと引っ張っていく、その途中というか、人型機から降りていたエフォルもこっちに駆けてきた。


「……おれも手伝う、」


 その申し出は有り難いが先に言わねばならない事がある。それと、


「い──だぁっ?!?!」


「のぼせて迷惑かけて言う事がそれかぁ!!先に言うことがあんだろぉ!!誰のお陰で助かったと思っているんだぁ!」


「……っつう〜。悪かったよ…おっさん」


 眉尻を下げて泣きそうになっていたエフォルの頭に遠慮なく拳骨をかましてやった。泣きそうになっていた表情もすぐに変わり、今は生意気そうにヒルトン達を見ていた。ぞんざいな物言いにまたキレそうになったが、ヒルトンはにやりと笑ってみせた。


「胸を張れ……お前があそこで悪足掻きをしたから……部隊の連中が無事だったんだ……俺達の方が一足遅かった……」


「………」


「こんな擦れた女の言う事なんか気にするなよ。いいか、漢気ってもんに年齢はない、そしてお前はそれを持っている。人を取るか金を取るか迷う時が来たら必ず人を選べ」


「よ、良く分かんないけど…そうするよ」


「金を選んだらこいつみたいになるぞエフォル」


「はっ……そうさな……」


 どっちを選んでもカッコいいのでは?と、首を傾げたエフォルの首根っこを掴まえて一緒に連れて行くことにした。


(頼んだぞアヤメ)


 何かを成そうとしている奴の目は違う、腹の据わり具合が違うというか、それが目に表れるというか。アヤメの目にもそれが表れていた、疲れているはずなのに生気を失っていないその目は歴戦の兵士を思わせた。



✳︎



 うわうわうわ。これはやってしまったぞ。


[マギリ、色々と言いたいことが山のようにあるんだけど今はいい。周辺をくまなく探して鳥を見つけてくれるかな]


 怒っている、それも無理もないかなと一人で納得した。何せ街の現状について報告していなかったのだから、けれどそれも分かってほしいと思うのは私の我儘だろうか。


「と、鳥ってあの鳥のこと?」


[他に何がいるの?……いい?良く聞いて、スーパーノヴァとあの変な機体を繋いでいる役割を持ってるの、その鳥のせいで拾い範囲に渡って機体が仮装展開されているらしいから私達で撃破しよう]


 まるで見てきたかのような言い方だな...他のパイロットからもエレベーターシャフトで別れた部隊が帰還したと報告をもらっていた。親友の身を案じ、あれそういえばまだ報告を上げていなかったと一転して自分の身を案じている時にアヤメから通信が入った。第一区を視界に収められる高度にいた私達はアヤメの指示に従い各パイロットへ伝達を行なった。数名は「見つけられる訳ないだろ!」と文句を返してきたが、意外にも目撃したというパイロットがいたのだ。その情報をアヤメに伝え、すぐに即席の捜索班が組まれ向かうことになった。


「アヤメは知っているの?スーパーノヴァについて」


[知ってるよ、近くにマキナの人がいるから教えてもらったの。それと、マギリの隊は基地の護衛についてくれる?何が何でもここを死守しないといけないから]


「了解!」


 親友からの頼みとあっては断るはずもない、仮想から参戦してくれた人型機と共に基地へ進路を取った。


「それとアヤメ、仮想から皆んながこっちに来てくれたよ」


 思っていた通りの反応が返ってきたので一人でほくそ笑む。


[えぇっ?!どういう事なのっ?!]


「さぁね。見事に全員、編成された六班と一緒に戦っているんだよ……けど、まぁ、少なくとも二人はもう撃墜されてしまったけど…」


 高い位置から徐々に沈み始めた太陽の光りを背中に受けて基地へと目指す、極寒の風が機体を撫でていく音と親友が何やら話している小さな声を耳にいれながらコンソールを確認すると、敵の反応も基地へと向かっているようだった。

 誰かと話しをしていたアヤメから再び通信があった、その内容を聞いた私は心から安堵した。


[おそらくだけど、仮想世界の実習生がこっちに来られたのはスーパーノヴァの力を利用したみたいだよ、誰がやってくれたのか知らないけど。それと、撃墜されたパイロットも死亡した訳じゃなくて私達と同じように向こうで復活してるみたいだから]


「そっか……それならいいよ」


 基地へ向かっていた敵部隊の一部が反転し、同様に進路を取っていた私達に接近してきた。胸から覗いているのはアサルト・ライフルの銃身だ、すぐさま発砲し赤く熱した線が襲ってくる。


「ったく!少しぐらい遠慮しろっ!」


 向かってくるのはデルタ編隊が二つ、すっかり編隊飛行による連携が得意になったようだ。各機に散開を命じて敵部隊をやり過ごす、背後にあった「入刀」雲を迂回しながら再び敵部隊が接近してきた。



✳︎



「早く接続してください!時間がありませんよ!」


「わ、分かっている、そう急かさないでくれ」

 

 ハデスさんは今もサーバーにアクセスして何やら真っ最中、ログイン状況を示すサインは点滅を繰り返し傍らにいるアリンちゃん達に守られている。


(しっかりしないと!あと少しなんだから!)


 結婚逃しが口にしていた「負うた子」という言葉の意味が少しだけ分かったような気がする。身近にいる年下の子に、あんな気丈に振る舞われたら嫌でも立ち上がらなければならない。それが却って私の為になっていたのだ、近くにグガランナやアマンナがいたらきっと私は立ち上がれなかったに違いない。

 部隊を一時預け格納庫にやって来ていた、そこには実験機として製造された初期の人型機が格納されており手近にいた整備員に調整を指示していた。手元にはないあの相棒の代わりに人型機用長距離電磁投射砲のセッティングを依頼していたが、機体側の出力不足により飛行戦闘はおろか、静止射撃が精一杯らしい。


「それでも構いませんから!」


「な、ならもう十分だ!いつでもいける!」


 ハッチを閉じて、重い足取りの機体を動かした。衝撃吸収もいまいち、コクピットの視界も狭くレバーの取り付け位置も私の体格に合っていない。けれどそれがどうしたと格納庫から出て上空に蔓延る敵機体へ視線を向けた。


[何をやっている!お前に出動の許可を与えた覚えはないぞ!すぐに戻せ!]


 別の格納庫からこっちを睨んでいる結婚逃しがいた、ズームアップされたその顔にははっきりと縦じわが刻まれている。


「そうあんまり睨んでばかりだとしわが取れなくなりますよ」

 

[聞いているのか、すぐに戻せ!ここはあたしの戦場なんだ!子供がでしゃばる必要は、]


「ナツメもそう言ってテッドさんを失いました、今でも深く後悔しているはずです。カサン隊長も同じ後悔をするんですか?」


[………]


 口を閉じたのを好機と見て声高に宣言した。


「今から常勝不敗のアイリスの実力を披露してやるから黙ってそこで見ていろぉ!」


 何とか持てる長距離電磁投射砲を屈んだ姿勢から肩に担ぎ直して電子レティクルの調整に入る。機体と武器のバージョンが合っていないせいで視界にノイズが走っていた、電子空間制御の補助を諦めシステムを切ると視界がクリアになった。後はズーム機能さえ使えたら問題ない。


(よし)


 レティクルの向こう側でマギリ機を捉えた。三角形の編隊飛行をしている敵部隊にその跡を追われている、マギリから報告があったように胸部からアサルト・ライフルの銃身が見えていた。あいつだ。あいつは何が何でも率先して撃破しなければならない、あいつの射程に収まってしまったらこちらにはなす術がない。

 レバーのトリガーに指を添えてタイミングを見計らう、カーボン・リベラの上空は乱気流に見舞われ風の読みだって当てにならない。だからこそこの人型機用スナイパー・ライフル、電磁気力を纏った弾丸なら風の抵抗も和らげてくれるはずだ。


「…………」


 敵部隊がマギリ機の巧みな機体操作に巻かれてしまい進路が外れていく、リトライのためデルタから横一列の編隊に切り替えたその瞬間を逃しはしなかった。


「──っ」


 重いトリガーの割には引きやすい、きっとあの整備員の腕が良かったんだ。盛大な破裂音と共に発射された長距離用電磁投射砲の弾丸が見事に三機まとめて貫いていた。



✳︎



 後ろに差し迫っていた敵部隊が一瞬の中に大破、というより真昼の花火を上げながら撃墜されたので何事かと思った。


[今の何っ?!]


「こっちが聞きたい!味方の援護?!」


[それにしたって射角がおかしい……まさか基地方面から?]


 そんな馬鹿な話しが、きっと低高度にいた味方機が私を援護してくれたのだろう、そう思いはするが近辺に味方機の反応がない。前方に展開していた敵部隊も見えない相手からの攻撃に戸惑っているようだ、さらに低高度から二射目が放たれ複数の機体が爆発四散した。


(え……まさか……この化け物みたいな射撃精度は……)


 他のパイロットも気付いたようだ、さすがに目前で行われては認めざるを得ない。


[まさか、帰還したというアイリスからの援護か……?]


 味方の呟きは三度放たれた弾丸により掻き消され、前方にいた敵部隊がたった二回の射撃で全滅していた。そして当の化け物パイロットから通信が入った。


[こちらアヤメ、周囲にいるアサルト持ちをピックアップして、私が墜とす]


「り、了解。念のために聞くけど今は何処にいるの?」


[基地だよ、この機体が古いから静止射撃が限界だし補正も受けられないから手動で調整してる。この分ならまだ戦えそうだから安心して]


「………了解」


 聞いた?基地からこの空域まで手動調整で撃ち落としているんだよ?

 アヤメと通信を終えた後、味方のパイロットが私の心を代弁してくれた。


[あれで近接戦も得意ってんだから……ほんと世の中不条理だ。それでさらに本人も可愛いって神様も調整ミスったんじゃないのか]


「激しく同意」

[同じく]


 この後、心強い援護射撃を受けながら周囲に散開していたアサルト持ちを探し出しアヤメに撃墜させていった。



✳︎



 おいおいおいおい...何だあれは...あの距離で敵を墜とせるのか?あたしらの技術力がまるで子供に見えてしまう。悔しいったらない。


「早くしろっ!」


 機体の追加調整をしている整備員に唾を飛ばす、不明機による敵への何かしらの攻撃が失敗したようで奴らはさっさと遁走していた。そのおかげで戦場のパワーバランスは崩れてしまいあたしの機体もさらなる調整が必要になってしまった。

 整備にあたっていた整備員がこちらに駆けてくる、その顔にははっきりとした不快な色があった。


「隊長!これ以上武装するのはさすがに不味いですよ!それに機体制御だって並みのパイロットには扱えないものですし!」


「つべこべ言わずにさっさとするんだ!そうでもしなければ奴らに勝てん!」


 尻を蹴飛ばし作業に戻らせた。

それにだ、このままではまたあたしは何も成せずに終わってしまう。あの子の為にと奮起したはずなのにこのまま終わることだけは許されなかった。

 エレベーター前に展開している攻略部隊も躍起になって敵を撃破している、その中央では初めて見るマキナが陣取り何やら作業を続けているようだ。アヤメはとにかくあのマキナを守ることに専念しているようだ、だからこそ長距離用の投射砲を使ってアサルト・ライフルを使用する敵を優先的に狙撃しているのだ。しかしそれはあちらも同じ事、攻撃対象を周辺にいる人型機からアヤメが使用している旧式の人型機へと変えて殺到するようになった。いくら破壊力が高い投射砲とは言えど連続射撃には向いておらず、次第に被弾率も高くなっていた。そうまでしてもアヤメは機体を退けることなく射撃を繰り返していた。

 そんな折、ようやく機体の調整が終わったようだった。尻を蹴られた整備員が親の仇のようにあたしを睨みながら報告にやって来る。


「遅い!」


「どうなっても知りませんからね!」


 格納庫内のデッキに固定されている人型機を見上げる、機体の積載量ぎりぎりまで追加した武装とブースターで今にも倒れてしまいそうだ。どこかを撃たれただけでも爆発しそうなそのアンバランスな機体へ乗り込みハッチを閉じる。すると格納庫の出入り口からあの子がやって来た、スイだ。


(すまない)


 外部のスピーカーを切っているため、スイの声はこちらには届かない。きっと怒っているに違いない、もしくは止めに来たのかもしれない。だが、こちらも引くに引けはしないのだ。

 スイの顔を見ないようにして機体を進め格納庫から出ると、上空にはさらにアヤメ機を狙う敵が旋回行動を続けていた。射撃に見舞われ続けていたアヤメ機もぼろぼろだ、いつ大破してもおかしくはない。肩にマウントしていた後付けのミサイルポッドを起動し、狙いを上空にいる敵へと定める。


[カサン隊長?!何ですかその機体!]


「黙って見ていろ!これが大人の意地ってやつだ!」


 トリガーを引いたそばから警告音が発せられる、機体の積載量を超えた武装により発射した際の衝撃吸収が間に合わないことを知らせている。それは百も承知で次から次へと墜としてやった。いくらか綺麗になった空では、あたしの機体に怖気ついたのか生き残っていた敵が後退を始めた。

 だが、そうではなかった。敵はあたしに恐れをなした訳ではない。本丸のために道を空けただけだった。


[あれは……あれが……]


「…………」


 いつの間に移動していたのかスーパーノヴァがその腹を見せて基地の上空を支配していた、その腹には街そのものが収まろうとする程に大きなレンズが覗いている。次第に赤く発光し、まだ夕暮れ時ではないというのに基地全体が赤色に染まっていった。

 アヤメが機体の起こし砲身をスーパーノヴァへ向けようとするが、あちらも過度の武装をしているため機体のバランスが取れないようだ。


「観念しろ、お前の役目はもう終わりだ」


[だけど!あんなの放っておいていい訳ないでしょ!]


「何のためにあたしがいると思っているんだ、今度はあたしがお前らに浅瀬の渡り方を教えてやる」


[カサンさん!今すぐに退避して下さい!基地から退避命令が出されました!早く機体から降りてエレベーターシャフトの中に!]


 スイだ、懲りずに機体から通信をかけてきた。


「それは出来ない、あたしが奴を墜としに行くよ。お前こそ先に逃げろ」


[カサンさん!お願いですから!言う事を聞いてください!私はまだきちんと謝っていないんですよ?!あの時私の代わりにマギールさんを怒ってくれたのにっ!勘違いをして酷いことを言ってしまって!]


「いいさ、気にするな」


[気にしますよ!だから!]


 スイの涙声があたしの決意を鈍らせた。スーパーノヴァのレンズがさらに強く発光していく、周囲の温度が急激に上昇していることを知らせておりアヤメ機の装甲板が焼け爛れ始めてきた。


[カサンさんっ!!!私を一人にしないで!!もう一人ぼっちは嫌なんですよ!!!]


 ...やはり聞くべきではなかった、さらに決意が鈍り、その隙を与えてしまった。


[そう生き急ぐことはない人の子よ。ここは私が預かろう]


 一発の発射音が街中に響き渡った、それは必滅の砲弾によるものか、はたまたいもしない神の怒りか。人型機が束になっても出せない高火力を纏った砲弾がスーパーノヴァの顔面を捉えた。


「────────────っ!!!!」


 スーパーノヴァの巨体がここに来て初めて大きく傾いだ、その衝撃により発光していたレンズも弱まり束の間太陽の光りが基地に落ちた。


[万能の化身にして冥界の王たるこのハデスが自らの汚名を雪いでみせよう。散ったマキナの権能を駆使してスーパーノヴァを墜とす]


 そして、軍事基地の空にはもう一つのスーパーノヴァが徐々に現れ始めた。



✳︎



 準備は整った。タイタニスの基地に残されていた「ファクシミレ・マキナ」のデータを使い、街中に隠されていたその試験機を一つに纏めてみせた。さらにオーディンの権能、ラムウの権能、タイタニスの権能を用いてあり得ざる機体を構築していく。リブートまでもう間もなくだ、だが、間に合った。


「────」


 私の近くにいてくれたアリンがずっと叫んでいる、だが既に聴覚は機能しておらずその声を聞くことが出来なかった。


(ありがとう)


 そう、一言だけ感謝して残る全ての力を使って機体制御に集中する。タイタニスの権能を使って機体を構築し、ラムウとオーディンの権能で砲弾の威力を底上げする。テンペスト・シリンダー内の天候を操作するラムウの権能によって、天然の電気磁力が発生し砲弾に磁界を生成していく、その量は無限大に近い。


(あぁ…これが私の最後か、何と口惜しいことか…)


 完成されつつある機体を眺めながらそう強く感じた。出来ることならこの子らの傍に居たかった。近くで元気なこの子達を見ていたかった、それだけが後悔だった。しかし、私の決意は揺るがない、これからの未来の礎になるなら何の無念があろうと言うのか。

 届くはずはないと知りながらも言わずにはいられなかった。


[お前に分かるか、自分にしか成し得ない事があるという喜び、それを成せる感動、命を散らしてもなお余りあるこの感慨]


 さぁ、とくと味わえ、これが私の成せる事だ。


「──────…………………………」


 超新星爆発の如き光りが空を覆う、その名の通りスーパーノヴァが発生し放たれた砲弾が敵に直撃した。さらにもう一つの星も爆発したようだ、私が産み落としてしまったスーパーノヴァの巨体が鮮やかに散っていった。仕事を終えたファクシミレ・マキナの機体が空で散り始める、それと同じくして私の視界も霞始めてきた。


[アヤメ……最後のお願いだ……鳥を……落としてくれ……]


 散っていったファクシミレ・マキナとスーパーノヴァの星屑が一点に集まり始める、あれがあちらとこちらを繋ぐルーターだ。早く処分しなければ...また復活を遂げてしまう。霞消えゆくその視界の最後にもう一度小さな星が散っていった。


[……落としましたハデスさん]


[……ありがとう……これで、何の心配も……]


 体中の力が抜けていく、それは甘く...全ての思考も奪われていった。


[少し休んでいて下さい、何かあったらまた叩き起こしますので]


 あぁ...まだ続きがあるのか...また...頼りにしてくれるのか.............とても、楽しみだ.................................



✳︎



 空から幾億の星が降ってくる。機体から降りて基地に降り立ち眺める空にはもう、スーパーノヴァの姿も黒い機体の姿もなくなっていた。エレベーター前に展開していた部隊に視線を向けてみやれば、地面に横たわったハデスさんに皆んなが泣き付いていた。涙を流し声を張り上げ死を悲しんでいる、堪らず視線を逸らしてカサン機を見やればスイちゃんが駆け寄っているところだった。これでようやくこの街に「危ないっ!!」


「え」


 見上げた空には消えずに残ったスーパーノヴァの破片があった、間近で見てもやっぱり綺麗。

 その破片がわた────────






「……しろ!…………!!………!!」


 誰かの叫ぶ声で目を覚ます。


「………!!………!!」


(アオラ……)


 泣きじゃくっている、どうしてだろう。


 体を起こそうにも力が入らない、どうしてだろう。


(あぁそっか……私……)


 死ぬのか。何だ、そうかと分かった時は実に呆気ないものだった、焦りもない、怖くもない。グガランナはどうしているだろう、私が死んだと知って悲しむかな。


(アマンナは……アマンナは、どこ)


 いた。


 近くにいた。


 いてくれた、あの時と同じ子牛の姿で。


「あぁ…アマンナ……良かった………」


 星々のように輝くその赤い瞳はアマンナだ。


「約束……守って……くれたんだね……私がいなくなるまで……傍にいてくれるって……」


 良かった...最後に会えて...良かった─────



















《特別独立個体総解決機アマンナ、起動!》

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