第百六話 底無しの優しさ
106.a
薄く、そして青白い空には赤紫色に焼ける雲があった。太陽がようやく地平線に顔を覗かせたばかりの時間帯だ。
「馬鹿ばかしいにも程がある……」
「あのぅ…本当にごめんなさい。僕のせいで迷惑をかけてしまったみたいで……」
「あぁ、この借りは必ず返してもらうから覚悟しておけよバルバトス」
「なははは…」
「本当に反省しているんだろうな…」
情けない笑顔を浮かべて頭をかいているのが、アマンナのお兄さんと名乗ったバルバトスだった。
◇
あの四人はパイプラインに乗せてホテルへと突っ返した、アマンナとヴィザールはともかくミトンとカリンには負傷者の手当てから食糧の搬送まで激務をこなしてもらったのだ。そのお返しが無人搬送というのもどうかと思うが、私以外の全員はふらっふらのふらふらだったから歩く体力も気力も無かったことだろう、騒ぎの張本人が一番元気にしているのもまた腹ただしかった。
曰くバルバトスはアマンナに怒っていたらしい、もしくは嫉妬。自分以外を兄だと慕う妹を一つ懲らしめるために幽霊のフリをして驚かせていたのだ。馬鹿ばかしい。
「ねぇ、君は眠らなくても大丈夫なの?目の下にクマが出来てるけど……わっ」
「年上に向かってその口の利き方は何だ、教育がなっていないにも程がある」
「………」
少し惚けたような顔付きをしているバルバトスを連れて工事地帯の中を歩く。入り口近くにあった倉庫群が主に食糧と一部日用品、それから中央にある建物の群れはナノ・ジュエルを利用して得られる各種エネルギーがあるらしい。電気、ガソリン、挙句人型機でも使用できるジェット燃料まで用意されている。これだけ整った設備を持っていながらこの街を捨てた先祖が不思議でならなかった。
「ねぇ、そろそろ頭から手をどけてほしいんだけど……歩きにくい」
「あぁ、それは悪かった」
手櫛で髪の毛を整えて儚い印象を抱かせる男の子が上向いて私を見た。アマンナ達が言っていたようにこの子の足元が透けているのだ、どんな理屈か知らんが大方イエンが使役していた防人分隊と同じものだろう。幽霊見たりは枯れ尾花とは良く言ったものだ、いや違うかもしれない。
「ナツメは僕のこと何とも思わないの?足は透けてるしアマンナのお兄さんって自称してるんだし……自分で言うのもなんだけど今をときめくホットな話題だと思うんだけど…」
「馬鹿にしてるのか?」
「ち、違うやいっ!」
「お前のことなら落ち着いてからいくらでも聞いてやる。それよりこの先には何があるんだ?」
ちなみにだがさっきの情報は全てバルバトスからの受け売りだ、こいつは見た目とは裏腹に何でも知っているようだった。
「あっれぇ〜…ここでネタばらしのつもりだったんけどまぁいいか。この先は軍事施設だね、武器やら弾薬やら、後は工業製品なんかも生産されていたはずだよ」
「武器?この時代にビーストはいなかったはずだが…」
「違うよ、大昔は人同士で戦争が行われていたんだ。今はハンザという組織が情報統制をかけて機密事項扱いにしているけどね、つまりは隠蔽」
「……ハンザと言えば、総司令が在籍していた組織か…」
「そそ。それで今はマキナ根絶を掲げて武装蜂起している組織でもある、これまた厄介で僕のもう一人の妹があっちにいるもんだからどうしようかと頭を悩ませているんだよ」
「昔からハンザという名前だったのか?曰く付きの組織であるのは知っていたが…」
「えぇ〜…ここまで言っても食い付かない、はてさてどうしたものか…」
う〜んと唸り始めたバルバトスは、何というかちぐはぐな印象を受けた。言葉使いや態度は年上のそれを思わせるが、本質的なところはまだ子供のままのように思うのだ。アマンナの兄と言うからには同じマキナだろうが、何故私に付いて回るのかも理解できなかった。
「バルバトス、お前の話しにも興味は惹かれるが今は現実的な事が聞きたいんだ。ハンザ上層連盟への制圧作戦と、それから負傷者を運び出す手段を探している」
「ふむふむ。つまり僕達三兄妹に対する優先度が低いという事だね、それならまずはタスクを消化しようではないか、パチンっ!」
「下手くそかお前、指を鳴らせないからといって口で言うな」
「う、うるさい!」
顔を赤くして本気で怒っている、そういうところが子供っぽいとは言わないでおく。私達はちょうど工事地帯の中央に立っていた、入り口から少し歩いた距離にある場所だ、右も左も倉庫か生産工場の建物がありその一角がにわかに騒がしくなった。ミトン達から教えてもらった、誰も足を踏み入れたことがない所からだった。
「何をやった?」
「へへん、それは見てからのお楽しみってやつで」
その居丈高な態度に腹を立てた私はデコピンの構えでバルバトスを追いかけた。観念した小僧のおでこに喝を入れようとすると、
「あ、きたきた」
「……え?」
建物の奥から数台の軍用車両が一人でに走ってきたではないか、幌付きの荷台には簡易型のベッドも置かれている。私達特殊部隊でもここまで立派なものはなかった。
「……これ、まさか、この一瞬で作ったのか?」
「そそ。ここを寝ぐらにしていたマキナの置き土産を使ってね、あと数台は作れると思うよ」
その話しを聞いてピンときた。
「そのマキナっていうのは…」
本当にバルバトスは何でもお見通しらしい、その物知り具合に薄ら寒い思いをした。
「君達を裏切ったプエラ・コンキリオだよ」
✳︎
物々しい雰囲気に包まれている。誰もが屋敷内を駆け回り、不安からか手にした銃器を威嚇するようにわざと鳴らしていた。
「配置に付け!人型機はもう目前だぞ!」
一人の男が隊員らに向かって叫んだ。ここ、第十九区はカーボン・リベラ政府によって包囲されているところだった。長年に渡って総司令を輩出し続けてきたハンザ上層連盟を有するこの区は岐路に立たされている、政府に従うべきか内包している秘密を隠すため戦うか、そのどちらかだ。けれど、そのどちらにせよ血を流す戦いは避けられそうにはなかった。
[これが最後よね]
[はい、あなたには辛い思いをさせてしまいますが…]
[どの口が言う]
プログラム・ガイアの権能はまるで魔法だ、チートと言ってもいい。これだけ騒がしい屋敷内にいても誰からも気付かれないのだから。
手にした自動拳銃の重みを不愉快に思いながら足を進める、向かう先は大勢の人間に守られている卑怯者の連盟長、名はアンドルフ・アリュール。ウルフラグ特別技術団の団長にして米国が誇る最高位の研究者だった男だ。
男が隠れている部屋から数人の隊員が出て行った、それらに当たらないよう注意しながら脇を通り部屋の前に立つ。自動光学迷彩が解かれ貧相な私の体が露わになった、構うものかと扉を開けて中に入るなり、
「誰だ貴様はっ?!どこから入ったっ!!」
罵声だ。
「私はプエラ・コンキリオ、あなたが根絶を目標にしている敵の親玉ってところかな」
「アンドルフより各隊員へ!至急私の部屋に来い!繰り返す、」
「言っておくけど通信は使えないわよ、こっちにはプログラム・ガイアの手があるんだもの」
「Bitch!!何が狙いだ……俺のこの命か?良いのか?ここで失くせば貴様らにも損害が出るぞ」
「あら?私を殺したくないの?この期に及んで自分の事なのね、ウルフラグの団長が聞いて呆れるわ」
「………人違い、ではないのか、俺はハンザを仕切るアンドルフ・アリュールだ」
(どういう事?どうして自分の立場を……)
会話を盗み聞きしていたのか依頼主から連絡が入る。
[プエラ、深く聞き出す必要はないわ。処理をお願い]
[ねぇ、自分のケツの拭き方を知ってる?そもそもあなたが始めた事なんでしょう?どうして他人の私が落とし前付けなきゃいけないの]
[まぁ……何て口の悪い……]
[そりゃどうも]
もう、手の届かない所に行ってしまったあの人を思う。全てはこの時の為にと裏切ったのに、そんな私に待っていたのは自由ではなくさらなる隷属だった。上官がプログラム・ガイアの子機であると知らされ、中層の各街々に「種」を撒いていけ好かない同僚との仕事も終えてさぁ行こう!とした時に声をかけられた。散々っぱら私の姿を借りて余計な事をしていたこの女にだ。
(ビッチ!良い響き、気に入った)
いつか面と向かって口汚く罵ってやろう、あんたのせいで私がいる場所が無くなってしまったと、私の知らないところで散々あの人達を苦しめていたせいだと。
目の前に立つ男も不憫に思う。プログラム・ガイアの手により記憶を継承し続けられてきた一族だ。グラナトゥム・マキナの放棄、それからカエル・レガトゥムの発動によって全てが亡き者へと変わりゆく、その記録を持っているがために今から消されてしまう男だ。本当に、不憫に思う。
口の端に泡を溜めながら未だ喋り続けている男に向かってトリガーを引いた。これで私も立派な人殺しだ、残るはあと一人。
(あぁ……どうしてこんな事に……こんな目に遭うなら……)
その先は考えないようにした。考えてしまえば全てが無駄なことになってしまう、あの人との記憶も思い出も、口付けしてくれたあの温もりも。それだけは嫌だった。
✳︎
「ここが……そうなのか」
「うん、割と綺麗だよね」
バルバトスの案内でプエラの寝床とやらに来ていた。寝床と言ってもここは人型機も駐機できそうな程広いハンガーだった、やたらと眩しい蛍光灯の群れの下には古ぼけた戦闘機が一つだけあった。そしてその周りには...まぁ何と言えばいいのかあいつらしいというか、有り体に言って大変散らかっていた。ゲーム機もさることながら服飾の類いも無造作に置かれていたのだ。
「この機体もプエラが作ったものなのか?」
「そうじゃないかな、所々破損しているしきっと墜落しながら操縦方法を学んだんじゃない?エディスンの近くに小さな集落跡があったけどそこでも墜落したみたいだからね」
「あいつ……」
プエラの私物で山盛りになった机の前にバルバトスが立った。一枚の写真を見つけたようで、ほぉとかなるほどぉとか構ってほしそうに独り言を呟いている。
「何だ、お前の両親でも映っていたのか」
冗談のつもりだったのだが...
「うん。君のことも良く分かったよ、ほらこれ見てみて」
「え?」
渡された写真は荒い解像度で大昔の物らしい、私達のすぐ後ろにある機体と同じ物が写真にも映っており、その前にはある一団が笑顔で肩を並べていた。
「プエラ・コンキリオはこの機体を模写するためにアーカイブから引っ張ってきたんだろうけど、君のご先祖様がそこに映っているよ」
「何でそんな事が分かるんだ」
「ディアボロスが管理しているデータにアクセスしたんだよ、君のバイタルサインとよく似ている」
指でとんとん、とした場所には一人の女性が気難しそうに立っていた。確かに私と同じ黒髪だがこれだけでは到底信じられない。
「ま、そういう事もあるだろう。良く似た人間はいくらでもいる」
「ほんとっ、君ってそういうところ淡白だよね……でもさ、イエンに言われなかった?」
「何を?」
写真を机に戻しながら投げかけられた言葉に、さらに薄ら寒い思いをしてしまった。
「兆しありって」
106.b
「よっ」
誰かの軽やかな声で目を覚ました。そして次に疲労によるものか、体の重たさを感じる。それに窮屈さもあって大変苦しい、身動ぎをすると太もも辺りに手の感触があって少し驚いた。
「おはようカリンちゃん、あと少しで部屋に着くからね」
「ええっ?、え?」
さらに驚いた、アヤメさんの声がすぐ近くから聞こえてきたから。というよりこれは...もしかして私、おんぶされているの?とんでもない、あまりの申し訳なさに急いでアヤメさんの背中から降りようとすると、
「わっ、ちょっと待って!落ちちゃう落ちちゃう!」
「すいませんせいません!す、すぐに降りますからっわわわっ!」
「あ〜れぇ〜」という声をどこか遠くに聞きながら二人して前につんのめってしまった。しかし、予期していた強い衝撃はなくおそるおそる目蓋を開けると私はアヤメさんを下敷きにしてしまったようだ。細い体には似つかわしくない胸に頭を埋めて、全身でアヤメさんの温もりを感じてしまった。
「いったぁ〜…駄目だよ、急に暴れたりしたら、大丈夫?」
このまま死んでもいいと思いました。
◇
と、馬鹿な事を言っている訳にもいかなくなった。お姉ちゃんが熱を出してしまったのだ。
「お姉ちゃん……」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ベッドに横たわり苦しそうに喘いでいる、顔も全体的に赤く汗もびっしょりだ。
ゆっくりと扉を閉めて、朝日だけで明るくなっているリビングへ戻った。ここに電気が通っていないため明かりを点ける手段もなく、お姉ちゃんの食事も冷たい物ばかりになっていた。
「うん…そう…詳しい人によれば、外傷もないし、感染症の疑いもないからただの疲労じゃないかって……うん……」
リビングではアヤメさんが背もたれに体を預けながらナツメ隊長と通信をしていた。お姉ちゃんの容態を報告しているその声にただ耳を傾けていた。
(置いていかれちゃうのかな……)
出発は今日だと聞いている。医務室でも手当てを受けて身動きが取れない人もいたけど...どうするのだろうか。
「分かった、じゃ」
「……ナツメ隊長は何て言っていましたか?」
「延期にするってさ」
「……そうですか…」
心からほっとした。ナツメ隊長を悪く見るつもりはないけど、どうしたって厳しさが先にきてしまうし、一部の隊を残して先行するものとばかり思っていた。
「もしかして置いていかれると思った?」
「…………はい、その、失礼なのは分かっているんですが…」
「まぁ、あの人相だから無理もないね、いっつも目を細めて睨んでるように見えるし」
どう答えたらいいのか迷ってしまう。私にはない、二人だけの時間を見せつけられたようで少しだけ不愉快な気持ちになった。立ち尽くしたままの私を見かねてか、アヤメさんがソファをぽすぽすと叩いて隣に座るよう促してくれた。素直に従った私は隣に腰を下ろしてアヤメさんを見つめた。
「昨日はごめんね、ちょっと言葉が悪かったよ」
「いえ、そんな……」
「今さらこんな事を言うのは卑怯だって分かっているんだけど…別に嫌いだから怒ったとかじゃないから、ね?そこは信じてもらえると…」
嬉しいかなぁ、とどこか自信なさげに言うアヤメさんが少しだけ信じられなかった。どうして謙虚に振る舞うのか、私はこんなにもアヤメさんの事を考えているのに。けれど悲しいかな、気の利いた言葉が出てこず当たり前のことを口にしていた。
「はい、嫌われたとか…思っていませんから」
「そう?それならいいけど…」
(こんな人でも自信が持てないことってあるのかな……)
リビングに置かれたフットライトが目に入った、きっと電気が使えなくなってしまった代わりに誰かが光源として置いてくれたのだろう。朝焼けの光りに負けてしまって全く使い物になっていない、節約しようと手を伸ばすとアヤメさんが先に持ち上げた。
「これあんまり役に立たなかったね、ちっとも照らしてくれない」
「これ、アヤメさんが持ってきたんですか?」
「そう、フロアエントランスにあった物を拝借してきたんだよ」
「そうだったんですね…それならもっとたくさん持ってきたら使えるかもしれませんね」
「それじゃあただの泥棒だよ、カリンちゃんって意外と逞しい?」
「そ、そんな事ないですよ」
他愛のない会話、けれど次の言葉が待ち遠しく相手のことばかり考えてしまう。
「そう?メインシャフトで仲間を庇って大怪我までしたのに?……いや、あれは私のせいだったね……ごめんね、ほんと」
どこか意地悪く笑っていた顔が途端に暗くなってしまった。そのころころと変わる表情が面白くつい笑ってしまった。
「……なぁにぃ、笑うことないじゃん、これでも結構気にしてるんだよ?びしっびしっ」
「いた、痛いです、痛いですアヤメさんっ」
アヤメさんが声に合わせながら私の脇腹を突いてきた。浮かれてしまいそうになる程楽しく、そして何もかもがひっくり返ってしまいそうな気持ちになった、自分でも良く分からないけれど、とにかくそんな感じ。深夜の食糧庫で水浸しになりながらやった搬出作業の疲れも、ホテルで続く異変の連続にも、この中層までやって来る間にあった出来事も、色んなことを忘れてアヤメさんと笑い合えた。胸がすくような、喉の奥がひくつくような、とにかく自分がここにいるということが信じられない、けれどそれが堪らなく嬉しかった。
「カリンちゃんは平気なの?深夜働き詰めだったんだよね」
「はい、大丈夫……とは言えないです……体も怠いですし、それにお腹も減りました」
まるで子供のようだと自分を馬鹿にするけど、素直に、何も考えずに言うのは何とも心地良かった。
「だよね〜、軽食ならあるけど食べる?というか食べなよ、どうせ今日は延期になったんだしさ」
「はい」
キッチンへ向かったアヤメさんの後を追いかける、とくに手伝いを頼まれたわけではないけど近くにいたかったのだ。
「え〜……確かここに昨日の残りが……」
もう使えなくなってしまった冷蔵庫の中を物色しているアヤメさんに向かって口を尖らせてみた。
「ただの残りじゃないですかぁ」
素早く反応したアヤメさんが再び意地悪な顔をして、手にしたお皿を持って私に近づいてくる。どこかひょうきんな感じで右に左に振れながら悪ふざけをしていた、そんな歩き方をしていたら落としてしまいそうだ。
「何だと?残り物でも立派な食べ物なんだぞぉ〜」
「ふふっ、アヤメさんの方が子供みたいですね」
少し重そうにしているアヤメさんに再び付いてリビングに戻ってくると、部屋で寝ていたはずのお姉ちゃんがソファに座り込んでいた。未だ息も上がっているし苦しそう、汗まみれでパジャマが肌に張り付いていた。
「わっ、アリンちゃん?!」
アヤメさんも驚き慌ててお姉ちゃんの元へ向かっていく。ソファの上でぐでんぐでんになっていたお姉ちゃんがゆっくりと起き上がり、駆け寄ったアヤメさんにべたっと引っ付いた。
「気持ち悪いぃ……それに頭も痛いよぉ…」
「汗をかいてるからだよ、すぐに着替えをしよう、ね?さっぱりとして気分も良くなるよ」
「うん………熱い…」
「頑張り過ぎなんだよアリンちゃんは、だから熱を出して体が休みたいって怒ってるの」
「だって私が頑張らないと……カリンも甘えん坊だし……アシュはふざけてばっかりだし……ミトンは何を考えてるのか良く分かんないし……」
「うん」
(お姉ちゃん……)
ぜっっっっったい私に気付いてないよね?!目の焦点も定まっていない、アヤメさんのことしか映っていないようだ。
「皆んな……本当は、軍に行くつもりなんてなかったのに……私が行きたいなんて言ったから……だから、頑張らないと……」
「どうして軍に行こうと思ったの?」
それは私も聞いたことがなかった。
「このままじゃ駄目だって……皆んなもいなくなってしまうって……思ったから……」
お姉ちゃんに気付かれないようゆっくりと腰をカーペットに下ろした。そんな私にも気遣うようにアヤメさんが少しだけ視線を寄越して、誰よりも聖母に見える優しい微笑みを私のお姉ちゃんに向けた。
「だから頑張ろうって思ったんだ」
「うん……けど、何をやっても褒めてもらえなくて……怒ってももらえなくて……どうしたらいいのか分かんなくて……アシュには八つ当たりもした……カリンにも酷いことした……ミトンは……良く分かんない……」
「………」
お姉ちゃんの告白めいた呟きが、私の心を揺さぶっていた。そんな風に考えていたなんて思わなくて、私もお姉ちゃんに褒めてもらえることはなかった。けれどそれは、お姉ちゃんもきっと一杯いっぱいだったのだ、副隊長になってからそれはなおのこと顕著になっていったように思う。
「もういいよアリンちゃん、あとは私達が何とかするから。そんなに頑張らなくていいんだよ」
「でも……」
「それなら私を頼って、私じゃなくてもいいよ、他の誰かを頼ってもいいから無理はしないでね?今みたいに熱を出して倒れた時ぐらいは甘えてもいいんだよ、一人で食事を取ろうとしないで」
「うん……」
「立てる?今からシャワールームに行こっか、着替えをしよう」
「うん……」
言われるがまま、されるがままにお姉ちゃんがアヤメさんに付いていく。不思議と私はとても安心していた。だってあのお姉ちゃんを見てくれる人が現れてくれたんだから。
(良かったねお姉ちゃん)
この時はまだ、心からそう素直に思うことができた。
106.c
「くそったれが……」
あたしの足元にはハンザ上層連盟長の遺体がシートに被せられた状態で横たわっていた。眉間に一発、綺麗に撃ち抜かれてあっけなくこの世を去ってしまった。
綿密に立てていた計画が全ておじゃんだ、こんな事があっていいのか、一体誰がこの男に銃を突き付けたというのだ。それにあたしのやる気も霧散してやり場のない怒りだけが胸に蟠っていた。またしてもあたしは何も成し遂げられず、獅子身中の虫に手柄を横取りされてしまったのだ。
[カサン、すぐに帰投しろ]
「…………」
[聞こえておるな、これ以上現場にいても意味がない]
「わぁってるよっ!!」
[…………いたたた、馬鹿者大声を出すな]
「隊長?どうしたのですか?」
同じ現場にいたマヤサが声をかけてきた、こいつも先の襲撃で目をやられており今日も眼帯を付けている。
「何でもない」
「いやぁそれにしても、仏さんに向かって言う事じゃないですけど穏便に済ませられて良かったですね」
「………」
「あらら」
現場検証のために入ってきた警官隊の者達と入れ替わるように部屋を後にした、下らない冗談をかましたマヤサは引き続き現場に残っている。
(どいつこいつも生き急いだ連中ばかりだ、五体満足のあたしがガキに見えてしまう)
マヤサに然りマギールに然り、ビーストとの戦闘を経て後遺症を残し、それでもなお働き続けている連中に囲まれていては肩身が狭くなってしまう...そう思うのもただ贅沢なことなのか、今のあたしには分からない事だった。
◇
人型機によって十重二十重に囲われた第十九区は、作戦開始後半時間もしないうちにあっさりと陥落した。作戦指揮を取るマギールの元に第十九区所属の警官隊から連絡が入ったのだ、「ハンザ上層連盟長であるアンドルフ・アリュールが何者かに殺害されてしまった」と。これ以上の抵抗に意味を見出せなかった警官隊は無条件降伏を受け入れ、今はアオラが仕切る第一区へ護送されていた。
結果としては両者共に怪我人もなく大団円で終わったことになる、最良の結果というものだ。しかし謎は残したままだ、一体誰が連盟長を殺害したのかということだ。
第十九区へ降りるインターチェンジの手前、護送車両を改造して作られた移動型の作戦本部の中でマギールと相対していた。このじいさんもまた、入院していればいいものを目が覚めるなり病院から抜け出してきたのだ。「儂は人間でないが故に入院する意味もない」と医者や看護師を困らせながら勝手に退院してきた、あの病院ではもう二度と面倒を見てもらえないことだろう。
「ふむ…簡単な聞き取りをした結果だが、私設部隊の中に犯人はおらぬようだな」
「抜かせマギール、ここはドラマの中じゃないんだ、親玉を撃った奴が必ずいる」
「儂もそう思うのだがな…あやつの部屋には感圧式の警報装置が仕込まれているようで、関係者は周知の事実らしい」
「何?」
「忍び込むのは不可能だと皆が返事をしておる、外部の者による可能性が高い」
「事前に警報装置を解除すればできる話しだろうに」
「その際にもアンドルフへ通知が行くようになっていたらしい。あやつもまた儂と同じマキナに身をやつした人間でな、それも不可能だ」
「……そんな馬鹿な話しが、それならその警報装置はどうなんだ?」
「今調査しておるところだ、これで何の痕跡も無ければあやつの自殺ということになる。それはあり得ん話しだが……」
勝手に退院してきたマギールは年相応に車椅子に乗っている、意識は取り戻したが体、言わんやマテリアルの調子が悪いらしく当分は車椅子での生活になるらしい。手すりに肘を置きながら頬杖をしているマギールが何やら考え事を始めた。
「なぁ、あんたはマキナの面倒を見ていたんだろ?」
「……うむ?それが?」
「こういう事をしでかす奴に心当たりはないのか、人間に出来なくてもマキナには出来たりするんじゃないのかと思ってな」
「……お前さん、少しは想像力が豊かになってきな、儂も同じ事を考えていたところだ」
「しらばっくれるな、心当たりがあるんだな」
「あるにはあるが動機が分からん、マキナが特定の個人を殺害する理由がまるで思いつかん」
「あんたに分からなくてもそいつにはあるんだろ?だったら次は何をすると思う?」
頬杖をついていたマギールが頭を上げてあたしを見据えてきた。
「お前さん、探偵にでもなったつもりか?何をそんなに慌てておるんだ」
「慌ててなどいないっ!」
図星を突かれてしまったあたしはつい声を荒げていた、護送車の中にはあたし達以外にも人が詰めている、何事かと奇異な視線を向けてすぐ赤の他人のフリをしていた。
「それに関しては儂の方から調査を進めておく、お前さんは待機しておれ」
「足で稼ぐぐらないあたしにでも出来る、あんたのその足で何が出来るっていうんだ」
「今のお前さんは冷静さがまるでない、馬鹿な妄想に取り憑かれて先走るのが目に見えておる。なまじっか人型機も持っておるから尚のことだ。待機していろ、よいな」
力任せに通信機器を叩き付けた、驚いたように飛び退いたマギールの姿は良い気味だった。
✳︎
全く...儂の周りにいるじゃじゃ馬連中は何とかならんのか、あの世であいつと顔を合わせたら文句の一つでも言ってやろう、儂に押し付けるなとな。まぁよい、それよりもだ。
「すまんが機体の誘導を手伝ってきてはくれんか」
有り体に言えばただの露払いだが、そんな儂の言葉にも素直に従い係りの者が車から降りて行った。それを見届けてから随分と調子が悪くなった通信機を立ち上げ、久しく見なくなったあいつに連絡を取った。まさかこの儂が...思えば中層であいつから連絡を貰ってからこの怒涛の日々が始まったように感じられる。
[何かしら]
「グガランナ、今お前さんは何処におる?」
[メインシャフト一階層、お姫様の所よ。それが何?]
やたらとつっけんどんな物言いには引っかかったがこちらにも言い分はある。
「まさかお前さん、儂がナノ・ジュエルを融通してやったことを忘れた訳ではあるまいな?」
通信機の向こうで躊躇う気配がした、大方儂の言う事に耳を傾けるつもりもなかったのだろうがそうはいかない。
「それにだ、誰が行方をくらましたアヤメを保護したと思っておるんだ、言ってみろ」
[…………はぁ、もう分かったわよ、それで何かしら?こっちも忙しいから手短に]
「何だ、お前さんもようやく虫の素晴らしさに気付いたのか?」
[切るわよ?]
「上層にいるある男が殺害された、人の手による犯行とは思えない。ディアボロスはどうしておる?」
予想だにしない答えが返ってきて柄にもなく面食らってしまった。まさかそのような事態になっているとは露とも思わなかった。
[知らないわ、皆んなマキナとしての役目を取り上げられたから行方知らずよ、最後に会話した時もオーディンを殺されてしまって随分と取り乱していたようだけど]
「…………」
[マギール、聞こえているわよね?]
「……何が、どうなっておる……マキナの役目を取り上げられた?」
[あら、あなたはプログラム・ガイアと長い付き合いがあるのではなくて?まさか何も知らされていないなんて事はないでしょうに]
「…………」
人が変わったという言葉はあるが、グガランナ程顕著な者は初めてだ。何故それを知っているのか、そして何故そこまで冷淡に言えるのか、本当にこいつはあの変態グガランナかと疑ってしまう程だった。
「あぁいや…お前さんの言う通りだが……オーディンが殺されたというのは何だ」
あぁ...いや、そういう事か、テッドが戦死した経緯について合点がいった。そうなればディアボロスがアンドルフに手を下したとは考え難い、そんな余裕はないはずだからだ。
[オーディンの権能を行使してノヴァグを起動させてホテルにいた人々を襲わせていたからよ。ナツメさんがオーディンを止めて、その復讐の刃にテッドが巻き込まれて亡くなったの]
「分かった。それともう一つ」
[何?]
苛立ちを隠そうとしないこいつにいよいよ不信感が募っていく、それに大事な質問だ。グガランナにとってはアイデンティティと言っても良いぐらいに。
「何故お前はアヤメのそばにいてやらないのだ?中層が危機的な状況にあるのだぞ?心配にならんのか」
[今の私がそばにいても何の役にも立たない、それにいっ時の逢瀬にもう興味はないの]
あぁ...こいつはやはりグガランナだ、言葉がとんでもなく重い。つまりは「永遠の逢瀬」しか頭にないということだ、アヤメよ...とんでもない女に好かれたものだ。
「まぁ良い、あまりやり過ぎるなよ、アヤメに嫌われたら元の木阿弥だ」
[………何ですってマギール…]
あぁ...テッドよ、すまんがすぐに戻って来てはくれんか。通信機の向こうで罵詈雑言を吠えまくるグガランナを宥めに行ってはくれないか、このままでは唯一関わりがなかった天の牛に命を取られてしまう。
✳︎
「リュー…」
「………」
できることなら無事に作戦が終わってほしいと願っていた。それがこんな結末になってしまうなんて誰が予想できただろうか。確かに連盟長は暴走していたように思うし、周りの者の声に耳を傾けようとはしなかった。それでもだ、命まで取られるような事をしたとは思えない。あの日、バルバトスに救われたのが父との最後になってしまうだなんて、まだまだ言い足りない事はあった。また会えるだろうと、いつか落ち着いてからゆっくりと話しができると思い込んでいた。
キリの気遣わしげな視線が目の前にある、第十二区の公務室でスイやアオラさんと待機しているところだった。父の訃報はマギールさんからもたらされた。
「冥福を祈るよ、リューオン」
「……あなたに弔われて父も喜んでいるでしょう」
「………」
つい、皮肉が口をついて出てしまっていた。この人は関係がないはずなのに、情けなくも八つ当たりをしてしまった。隣に座るスイには軽く睨まれてしまい、キリが僕のことを庇ってくれた。
「ごめんねアオラ、リューは平常心ではいられないんだよ」
「当たり前だよ、家族を殺されて普通でいられるはずがない」
「…すみませんでした、馬鹿なことを言ってしまいました」
「別にいいさ」
テーブルに置かれた端末が振動し着信があることを知らせている、アオラさんが端末を手にして小声で二言、三言交わしている。すぐに電話を切ってスイに介護されながらソファから腰を上げた。
「向こうにいた連中が早速こっちに来たんだとよ、すまないが私はこれで失礼するよ」
片手に杖を握って、もう片方の手はスイの肩に置かれている。
「その足は治療されないのですか?」
「怪我の功名ってやつかな。この足でいたほうが皆んな不思議と言う事を聞いてくれるんだ」
「……あなたという人は……」
「立っているものは親でも使えってね、目的の為なら何だってやるさ」
そうして、スイに怪我の功名の正しい使い方を教わりながら区長が部屋を後にした。
「いい?リューはあんな事したらダメだからね、絶対病院に連れて行くから」
「キリ、君は僕の母親か何かなのかい?そんな事言われなくても分かっているよ」
「妻」
「ん?」
「親じゃなくて妻」
「何を言って…」
「忘れたなんて言わせないよ?」
「………」
頭の片隅がちりちりとし始めた時、公務室に置かれていた端末からコール音が鳴った。これ幸いにと飛び付いたのが運の尽きだった、相手はマギールさんからではなく一度しか会ったことがない元総司令からだった。
[基地に車を回せ、今すぐにだ]
106.d
周りの喧騒をうるさく感じたわたしは重たい目蓋を開けた、重いのは目蓋だけではなく体もそうだった。
「今…何時……」
どうやらソファの上で眠っていたようだ。あれ、確か最後の記憶では食糧庫からパイプラインに乗ったはずなのでは...いつの間にこんな所へやって来ていたのか。バカみたいに重たい体を起き上がらせて周りを見やればメインエントランスのようだ、ホテルの入り口に突っ立っていた一人の男性がわたしに気付いて声をかけてきた。
「やーっと起きたか寝坊助め、もう昼前だぞ」
「……誰」
「そこに転がってる奴と一緒に俺らが運んでやったんだぞ?覚えてないのか」
ソファとローテーブルの隙間に挟まれるようにしてヴィザールが未だ眠りこけていた。食堂に到着してから気絶するように眠っていたわたし達をこの人が運んでくれたらしい。
「覚えてない……けどありがとう」
「敵の数も減ったからといって油断はすんなよ、まだまだ彷徨いているんだからな」
「……あぁうん」
言葉使いは特殊部隊のそれだ、粗暴というか野暮ったいというか。けれど、下品な事は何も言わず純粋にわたし達を気遣ってくれているのが良く分かった、なので再びソファにダイブした。
「二度寝……甘美な誘惑……」
「おい、人の話し聞いていたのか?起きたらさっさと部屋に戻れよ。今日の出発が延期になったからといって気が抜けてやいないか」
「え?延期になった?」
「何だお前、聞いてないのか?」
聞いた話しによると、重傷者を運ぶ手段の確保とそれから第二部隊の副隊長が寝込んでしまったためらしい。第二部隊の副隊長ってアリンさんだよね?何故に特別扱いと思い聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「あの嬢ちゃんらは……何て言えやいいのかな……このホテルでもとにかく騒いでいたんだよ、毎日面白おかしくな。それがここに空気を入れてくれていたっていうかだな……」
「ごめんなさい、説明が下手くそ過ぎてよく分かりません」
「うっせぇ!分かっていることをいちいち言うなっ!元気を分けてもらっていたんだよ!毎日楽しそうにしているあいつらを見て塞ぎ込まずに済んでいたんだ!みーんな言ってらぁ!」
「………」
第二部隊、アリンさんにカリンさん、それからミトンさんにアシュさんはホテルでの生活を満喫していた奇特な一団だったらしい。皆んなナノ・ジュエルの確保に躍起になって殺伐していた中で、その四人だけは我関せずと遊び回っていたのが逆に良かったようだ。そんな部隊の副隊長が倒れたと聞いて、部隊や生き残った市民の人達が待ってあげようと話しがまとまったらしいのだ。もちろんナツメが間を執りなしたみたいだが...
「ま、そういう訳だから俺の代わりに見舞いに行ってやってくれ」
「怖そうなおじさんがハァハァ言いながら心配してましたって伝えてくるよ」
「そいつぁいい!こっちもクタクタだからな!」
あ、この人ハァハァの意味が分かってないな。
◇
「起こしてくれてもいいだろうに…赤いの」
「いや、あんなに気持ち良さそうにしてから起こすのがしのびなくてさ、そのまま末長く眠っていれば良かったのに」
「それは僕に死ねと言っているのか」
別に付いてこなくてもいいのにタタリもアヤメの部屋に行くと言って聞かないのだ。それに起こしてくれてもと文句を言っているが、ソファから立ち上がる時にタタリのお腹を踏んづけているんだよね。まぁいいか、気付いていないみたいだしこのままにしておこう。
「それよりタタリ、あんたはご飯食べなくてもいいの?」
「働きながら少しだけ食べたから問題は待て、今何て言った?タタリ?」
「そう、タタリ」
「いやいやその名前はどこから、それに僕にはヴィザールという立派な名前があるんだ」
「でもあんたさ、「祟りじゃあ!祟りじゃあ!」って騒いでたじゃん。ミトンさんもカリンさんも陰であんたのこと「タタリ」って呼んでたよ」
「…………」
そう、「タタリはどこに行った」とか「タタリが運んでいる分で最後」だとか食糧を搬出している時はずっとそう呼んでいたのだ。わたしはそれに乗っかっただけ。
「……僕は君と一緒にいるだけで評価が落ちていくように感じるんだけど」
「人のせいにするな、失礼な奴め」
「あぁ…何という…いたいけな少女に嫌われてしまうのがこんなにも辛いことだなんて…」
何しに来たんだこいつ、もうアヤメの部屋はすぐそこなのに、廊下に置かれた一人用のソファに座って頭を抱え込み始めた。
アヤメの部屋に到着すると、中から華やいだ声が聞こえてきた。そういえばいつか、わたしをアヤメとテッドが挟んでキスをしてくれたことがあった。ほうほうなるほど、あの時のナツメはこんな気分だったのかと扉を開けて中を確認すると、
「アヤメさぁ〜ん、この小説も面白いんですよぉ〜見てくださいよ〜」
「ちょ、アリンちゃん、元気になったからってあんまりはしゃいだら駄目だよ」
「そうだよお姉ちゃん!ちょっとべったりし過ぎだから!」
「何言ってんの?あんただってアヤメさんに引っ付いてるじゃん」
「ほら二人とも、元気になったら離れて、私もくたくたなの」
「なら私がご飯を食べさせてあげますね!さっきのお返しです!はい、あ〜ん」
「もう!それだけ食べたらちゃんと寝るんだよ」
アリンさんがアヤメにスプーンで何かを食べさせているところまでは見た。しかし我慢の限界だった。
「我が名はアマンナ!底無しの優しさを求める者っ!今ここに!我が御霊に宿いし原罪を解き放ってくれよう!アぁぁあマンナぁぁあっジェラシぃいいっ!!」とか喚きながら腕をばってんにして三人の所へ飛んでいった。
※次回 2021/9/3 20:00 更新予定