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はじめましてこんにちは ジョ〇ー・デップです

41層に至った俺はここで冒頭に戻る。

正確には数日遭難者を探して回って、そして適当な洞穴というか山に飲み込まれたような形の遺跡を見つけて入ったらアホどもを見つけたのである。


全員まだ生きていたのは驚いたし、東京で最も人気のあるダンジョンの一つの最前線を攻略しているプロがもはや様式美と言っていい古典的な落とし穴にひっかかるアホとは腹抱えて笑いたかったが、いやーそのあと同じように嵌ってしまった俺としては非常に見苦しい言い訳をさせてもらうけど、こりゃあ引っかかるや。


落とし穴ってさあ普通、穴に踏み入った一歩目で落ちるみたいであって反射神経さえよければさ穴の淵にいるわけだから何とか振り返って淵を掴んだりして助かることもあるだろうにさこの落とし穴は性格が悪いや。

なんせ真ん中あたりにさしかかったあたりで一気に穴のふたが落ちるみたいに嵌るんだもん。


取り合えず俺は知的生命体を代表して、今も上から石を投げつけてくる服すらまとめに着れなさそうな石器時代の野蛮人共に落ち着くよう理性的に話し合うよう説得をかける。

それにしてもなんてかわいそうな人たちだ。

荒んだ環境に長いこといたことで現代人がここまで退化してしまうなんて。

人間として凶暴さが滲み出ている。野性味というか類人猿としての面が全面的に押し出されている。

人間の威嚇行動を銭湯で戦闘状態の武器をブルンブルンと振り回した男性しか見たことが無かった俺は、それに近い何かなのだろうと全てを見透かすようにほくそ笑む。


ここは文明人な俺がまずはこちらから紳士らしく、怪我を負った野生動物を愛をもって歩み寄るような細心の注意を払って警戒させないよう言葉を選ぶ。

何だったら彼女みたいに可愛がっちゃう。


「助けてくれ! 金なら幾らでも出す! 早く俺を助けるんだ!」


「お前ホント三下みたいなこと言うなあ。助けるわけないだろ」


この俺を助けられるのに助けないだと? 

俺はなあ、自由を愛し人間の自由に枷を嵌めるようなことはあってはいけないというアメリカンな思考を持ちつつも俺以上に自由な存在は許しえないというイギリス的な思考すら併せ持つ世に類稀な感性を持つ男だ。

やはり下等な猿どもに金の有難さを説くのが間違っていたか。金の使い方さえわからないまで退化するとは。何て怖いとこなんだダンジョンは。


え、それじゃあ……何が目的で?

わかったぞこいつらめ! 何て下劣で破廉恥な野郎どもだ。


「……っく、殺せ‼ 辱めは受けんぞ‼ 例えそうなっても体は好きにできても心までは好きにできると思うなよ‼」


「男が言うんじゃねえよ‼」


違うの? もう何がほしいんだよ。

地位か? 権力か? 日本の支配者にでもなりたいのかよ。

残念ながら中学2年生が成りたい職業第一位征夷大将軍の任命権は俺の手にはないのだがなあ。


俺に与えられそうなものがわからねえよ。

ただしここはダンジョンで彼らは冒険者だ。

彼らの背後関係を思い出した俺には冴えわたる頭脳明晰な知恵があって、彼らの欲するものを犯人を追いつめるような見事な推理から導き出されて彼らの欲望を曝け出す。


「力が……欲しいか?」


「ああ、わかった。さてはお前馬鹿だろ」


「これでよくここまでこれたなあ」


「アホやこいつ」


そうだよなあ。君たちみたいな力を崇拝する武骨者たちはウホ、まだごり押しが通用するウホって答えるか。他人に貰った力なんて自分で手にれなければ何の意味もないもんな。


「じゃあ……今から命乞いをしますんで面白かったら見逃してくれませんか」


そうだ、彼らはアイドル兼冒険者だ。

いわば芸人。

昨今の芸人はバラエティだの何だの垣根を越えて活躍することが求められていて芸能人としての活躍をすることも事務所が強要してくる。

動画サイトにあげたりするにしても毎回華やかなバトルを撮れるわけでなくそうなればトークや体を張っての笑いは必須だろう。


いや待てよ。

俺は右手に握りしめたデータチップを見下ろした。

これにはそんな彼らの痴態を収めた映像だ。

此方にはあちらにないアドバンテージがあるのだ。

これを回収しなかったら、誰かが将来骸骨が大事そうにデータを握るの見つけて世間にお披露目することとなる。


「つーかお前らは俺を助ける他無い。この映像を取り返さないといけないからなー。それに帰り道は? 俺が拠点にしているポイントには物資があるぞ」


俺はこれ見よがしに懐から高カロリーバーを出して振ってみる。


「くそがあ」


まあその気になれば俺は飛んで脱出できるのだけどね。

悪態と共に下ろされたのは俺が彼らに快くプレゼントしてやったロープだ。それを掴んで手で合図する。

当然自分で掴んで登るようなことはしない。あっちは人手があるんだ、彼らに引きが上がらせる。


俺は有名な映画を思い出して、その逆として上に行っているから親指を下に突き指しながら上がって行ってやったらそこには武器を携え今か今かと構えた野人の群れがあった。


ここだけの話だが俺はそこそこ強い。あの30層で戦ったトロールもやってみないとわからないけど感触的にタイマンでも時間はかかるが勝てるかもしれない。

そこは完全に中堅の冒険者以上の実力があるのだろうが、たった数人の初心者でも連携されれば―――下手すらゴブリン相手でも囲まれれば一撃も受けずに勝つような実力は低いのだ。


強敵は倒せても、雑魚数匹に囲まれて連携されれば攻撃を受けずには捌けない。

自分の弱点がわかるからそこを補うようこれから努力を積むことを計画できるのだが、今のとこできていないのは事実だ。


だから穴から出てきたところ横合いから5人の中で一番ガタイがいい男に取り抑えられ麗しの玲子さんはカメラとデータを没収し、リーダーらしい水瀬は俺の荷物を勝手に物色して好き放題し、苦笑いを浮かべながら神職っぽい優男が周囲警戒して―――


「――――――覚悟ォ!」


鬼神や。そうかこの階層こんなモンスターが出るのか。

髪の毛が逆立ってバチリと火花が散っている。

雷様が俺の腹に―――ゴハァ‼


マウントを取って烈火の如く殴り始めた。


「いった、予想以上痛いンだけど‼ ちょっとこの小さいゴリラ早く俺の上からどけてくれ!」


「……こいつ人間じゃない‼ 電気がおかしい、中に金属が詰まってるみたい‼」


彼女は俺を殴ると信じられない物を見たように電気が迸る手を開閉する。

そういえば鎧越しにぱちぱちと儚い線香花火のような電気が俺の体の中をほとばしる。何だこれ、胸がドキドキする。不整脈? それとも恋? 俺がこんなツルペタに?

水瀬はこんなロボット居るわけないだろと言いつつも油断せず俺に武器を向けている。

アイリスもいつでも俺を殺せるよう未来的なフォルムの銃を胴体に押し付けている。


「ゆっくり頭部装備を取って」


「何だ、お前。もしかして俺のことが知りたいのか? 気になって気になって夜しか眠れない。……俺に惚れてんだろ」


そういうことか…逆だったか。こいつが俺に恋してるのか。

うーん。地獄のようなダンジョン生活でたまっている…ってやつかな? 盛りのついた猫みたいに欲求不満な奴だ。しょうがないにゃあ…。ここは俺が一つ体を貸してやって天国見せてやんよ。


「イッタ、殴んな‼ 俺はパンチしたら点数つけてくれるマシーンとかじゃないんだぞ。冗談通じないのかよ」


「夜寝てんなら健常者だろ。もういいこっちで外す、動いたら殺すからな」


そうして彼らは俺の頭部装備の首元をもって外す。

そこには風に幻想的に舞う煌めく赤い長髪に、まるで金属質のような滑らかで光を反射する肌に吸い込まれるようなそれでいて不思議と体の内側暖かくなるいつまでも見ていたくなる瞳を持つ世界の女性を魅了してやまない美貌の好青年が―――




―――居るわけもなく盗んだ下着を頭に装着した変質者がいた。


無言のガチビンタされた。

そうか、正式な着用方法を守らなかったから怒っているのか。違うか。


バッ‼ と俺の下着……じゃない、を取られて……でもない取り返されて遂に俺の顔が割れることとなる。まあ別に隠しているわけでないんだけど。

それで顔を確かめるために10の瞳が向けられる。


「……誰?」


当然のリアクションをされた。


そこでアイリスが懐から端末を出してバチリと電流……充電したのだろうか立ち上げて俺の顔を撮影する。いきなりするものだからあへ顔ダブルピース出来なかったじゃないか。


「ちょ、勝手に撮んなよ」


「あ、……ごめん。プライベートとかあるもんね。アイドルやってんのに至らなかった」


「プロのカメラマン以外に撮影されるのはちょっと」


「おし、わかった。もう黙れ」


出来ればエロ同人みたいに脱がしたパンツを口にくわえるみたいな黙らせかたをされたかったが、代わりに寂しい口には銃口とディープなキスをさせられた。


「顔認証……レベル3以上のライブラリにない。軍人は……性格的になさそうだけど」


ふがふが。


「何?」


「いや……あのポケットの財布に……保険証が……。何で身分証とかで身元確認しないの? 常識ないんじゃない?」


「お、おう……」


どうやら俺に常識を疑われたことがよほど彼らなりの矜持を傷つけたらしい。

けど一切の隙がない正論に、彼らは反論もせず素直に腹あたりから鎧に手を入れて大人しく財布を取り出した。


そして保険証と顔写真付きの学生証を見て俺の身元を確認した。確認してやはり


「それで誰?」


そこに帰結した。謎が謎を呼んだ。

水瀬は東京都にいる全員分のレベル3以上の冒険者は流石に覚えていなくともライブラリで顔認証できるし、パーティメンバー全員の情報網を生かせばこと新宿ダンジョンに絞れば名前が出てこない人間はいても中堅以上は顔だけは覚えている。


学校で名前を憶えていない他のクラスの者でも廊下とかですれ違ったりして何となく顔だけは覚え、プライベートでばったり会えば同じ学校の奴と気づくようなものだ。

たまにクラスメイトにすら覚えられていない奴もいるけど。


「つーか学生なの?」


「身分証明そのまんまの人間だよ。オタクのとこのマネージャーが俺の探偵事務所に捜索依頼に来て……ほら名刺がそこに」


財布を指さして、万札裏のスペースから名刺を出してもらう。


「ああ……ほんとだ。っつーか最初からそれを言えっていうか捜索ならちゃんと普通に助けろ‼」


「それでも誰? 何でマネこんな奴知ってたの?」


名刺を財布に戻そうとした水瀬が、そこにある他の名刺に気づく。


「え、ちょっと待って。二階堂さんと早乙女君の名刺もある。ってことは軍関係者? いや一般学校生で軍学校生じゃないよね」


「ああ……あいつらは、まあ敵かな。戦いあった仲ではあるけどその後で名刺貰った」


そこで通路の奥からキリリリと物音。

まるで巨大なやすりが摩擦器にこすり合わせた、その表現はあっているけどなんとも可愛いものか工事現場からでもそうはしないだろう騒音値をたたき出しながら反響する。

もう君たちが大声で無神経に喋っているから、何かモンスター来たじゃん。

聖職者の優男が反射的に音がした方に明かりを向けようとしたから、俺が下から手を伸ばして止める。


「よせ、逃げるぞ」


厄介な奴がきやがった。この音の主は俺が知るこの階層で出るモンスターの中でも周囲の仲間を際限なく呼ぶ能力がずば抜けて高く、追跡を撒くことは比較的簡単にできても正面からぶつかるのは分が悪い。

既に仲間を呼びながらこっちに向かってきている。起こりが、狩りの前の準備運動が既に済んでいる証拠だ。この状態でやりあうのは馬鹿だ。


俺は注意が反れたのを見て拘束を力づくで解くと荷物をもって逃げ出す。

彼らは俺を信用するかしないか、あとはそれだけだろう。


「来な、拠点に向かう。拠点になら依頼主があんたたちに渡してくれっていう物がある」

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