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It takes all the running you can do, to keep in the same place

突如始まった三体のクイーンVSプリケットVS人間の運びとなった戦いで、しかし人族代表こと俺は早々脱落か。成されるがまま、クイーンによって生産された量の飽和で攻め立てる先兵共の好きにされていた。


この俺をこんなにももみくちゃにできるんだ、とんだファンサービスである。


この進化前のクイーンは失敗から、敗北から学んで補うように進化する特性がある。冒険者が逃げまくるから追尾捕捉型に進化したように。プリケットが対俺に独自に進化したように。


逆に敵に対して撃破無いし攻撃が有効であることが認められれば、大して学ぶことが無くて進化しないのだ。


ボディにいいのが入ってしまったフリをして亀のように固まる。ある程度迫真の演技でやられ役をするのはモブ人生を送ってきた俺にはうってつけだった。痛みもあのクレイジーピンクと比べれば指圧マッサージみたいなものさ。


敢えて戦わない。戦わずして勝つ。まさに俺に相応しい戦い方だ。現代に蘇った孫子と言ってもよくってよ?



一方であのプリケットは、もうどうしようもなかった。

それは恐怖か、それとも怒りか。集合体恐怖症と言われても傍目からは納得するだろう。彼女は同胞から攻撃を受け、やり返してしまい、時には自分は味方だと説得を繰り返しているが既に戦火はケツに着いたのだ。


完全に俺と同じこの塔にとっての異分子として、いやより脅威度の高い排除すべき敵と見做されて他のクイーンに攻撃を受けている。

集中的にリソースを掃き出し、敵を学習し、模倣する。

しかもまるで自分たちがどのように進化すればいいかなぞる軌跡として都合のいい例が目の前にあるのだ。皮肉にもだ。


複数体のクイーンはより脅威と断定したプリケットに対して対プリケット専用進化をしてしまったのだ。

ここでプリケットのとれる選択肢は一つしかない。機械らしく冷徹に冷酷に血が通ってない機械のように牙をむいた同胞のクイーンたちを処理をする。

そうすればあっさり勝てたのだ。

けれど彼女は甘かった。青かった。人間みたいに進化して人間みたいな致命的な失敗をした。


人間である彼女には同胞意識があっても機械にはそれが無かったのかもしれない。

それとももしかして俺が、人間如きが過去クイーンであったプリケットの完全に進化するまで手を出さなかった過程を意識して対抗しいるのかもしれない。くぅーしまったな、小さい頃から日曜朝の変身中の敵は攻撃指定はいけない英才教育がここで出てしまったか。日本人は要らぬプライドを持ってしまった。もうこれはカルマである。


解せんな。まあ俺はただ進化したらどうなるかという興味で手を出さなかったので、本来ならそんな隙をさらした敵はガンガン撃破スコアに刻ませてもらうのだが。

俺はとうの昔にプライドなんて何の役にも立たないからどぶに捨ててしまった。

きっと今頃海にまで流れ着いているであろう。食べた魚が食あたりを起こして白い腹を上にして死んでいるのが目に浮かぶ。

もうここまで来たら俺には彼女の到底理解しえない思考を推し量るしかないのだ。黙って外で見守るしかないのだ。


彼女は他のクイーンの進化を許してしまったのだ。

3人に勝てるわけないだろうに、彼女は馬鹿野郎お前自分は勝つぞお前‼ と馬鹿正直に戦ってしまっている。




そして最後はあっけないものだった。

物流の濁流に押し流されるその果ての終点、胴体がひし形の騎士が槍をもってそれぞれのクイーン三体から生み出された。走る軍靴の音が終焉をもたらすように、ひっちゃかめっちゃかの音の暴力の中スポットライトを浴びたように目立って聞こえた。


その三体の騎士は槍を翳すとプリケットの力を避雷針のように雷となって吸収し、ひし形の胴体が充電メーターのように下からエネルギーが溜まっていく代わりにあの目が悪くなりそうな暗室みたいな赤い光が消えて世界に色が蘇った。しかしそこで終わらない。彼女は力を纏ったその槍で貫かれ、旗を掲揚するかのようにその戦果として串刺しのまま掲げられた。



彼女は最後まで俺を恨めしく見ていた。

怖いよ、お前止めろよ。夜トイレにいけなくなったらどうすんだよ。


好奇心と退屈が彼女を殺してしまった。

人間の要素を取り込んだ彼女の負けである。人間の世界はな正しく人に優しい人になりなさいと強要して押し付けてくる他人がいるが、前提としてまだ世界が正しく優しい世界になっていないのだ。素晴らしきかな、足の引っ張り合い。


バーナード・ジョーの言葉ではないが、お前は世界を人間を見誤ったのだ。世界は嘘をつく悪い人の方が得をする世界なのさ。

俺は、俺なら問題に直面した時、善人でなく悪党として問題解決を考える。


君は空を飛べるから人間の天井が見えてしまって、仄暗い底を見なかったのだ。

そこがどれほど醜悪で憎悪を憎悪で塗りつぶす忌避できない悪があるかも。

深淵を覗くとき落っこちると危ないゾ。だからって覗くのを臆してしまってはいけないのだ。






だなんて意味のない言葉で飾って悦に浸ってかっこつけていたら、彼女は自分の頭を引きちぎって俺の方に投げてきた。

ウソ、マジかよ‼


「ギョ‼」


見事なセンターフライをお手玉しながら手に収めると彼女の目からは切れそうな蛍光灯のように点滅をしていた。

まだ頭部内臓のバッテリーで動いているようだ。けれどそれもあともう少しだろう。





「鈴木太郎……私は見た……いや繋がった」


「うお、喋った。つーかなに? 辞世の句?」



頭部だけでしゃべった。人間は正確には口から出なく喉の方からだけどそこんとこ細かいところは気にしたら負けか。繋がったって、あんた自分の首ちょん切ったばかりですやん。

それにしてもこいつどこからこんな知識と言い俺の名前と言い、引き出してんだ。

クイーン同士でスレとか知恵袋とかやってんのか?




「いいか、聞け。100層を目指せ。そこで彼女がずっと貴様を待っている」


「は? え? 何どういう意味?」



よく意味わからん。100層で何で誰が俺を待ってんの? 女神的なものがよくここまでたどり着けました褒美をやりましょうみたいなものかな。

何、ネタバレ? フラゲ情報でゲーム配信者にネタバレ爆撃するアンチか?

俺はされても気にしないけど。




「よーわからんけど100層とかめんどいし、俺行かんからな」


「何もわかっていない……貴様の力は、ドラゴンの力などでない。偶然ドラゴンの力が宿ると思ったか? それは全て仕組まれた必然だ」



お前に何がわかる。お前なんて自我に目覚めて、つまり生まれて死ぬまでたった数時間の分際でよお。以前の俺のことなんてわかるわけないだろ。

それにドラゴンとのイベントがあったところは専用機器でも持ち込まないとスモッグとか電磁波で電波が届かないオフライン地区だぞ。




「……は! わかった、お前負け惜しみだろ。最後にわけわからん言葉を言ってしこりを残したり、印象を強くしようとする。こっすいなあ」



そんな人気投票を気にするキャラみたいなこと最後にすんなよ。有終の美を飾れよ。強者は強者らしく最後までそうであってほしかった。



「何故ダンジョンが生まれたか……理由がそこにある」



この塔だって日本だけじゃない。似たようなのが世界中に何本も上に伸びる塔は確認されている。勿論下にもだ。興味ねえよ。そんなもんどっかの偉い学者が解明してんじゃねえの?

今でもちょくちょくダンジョンが発生しているらしいし、わかっても止められんのだろう。たかが一般人の一人が背負うにしては無責任に大きすぎて後ろにひっくりかえるのが目に浮かぶ。




「全ての始まりは―――」


「It takes all the running you can do, to keep in the same place」


彼女に相応しい別れの言葉をかける。

それじゃあ、もう壊れたラジオはうるさいけんねーじゃけんバッテリーぬきまひょか。

口に手を入れてそれっぽいのを引き抜いて終わらせてやった。


俺にはまだ仕事が残っているのだ。


そう、3体の進化途中のクイーンだ。

今度こそ慢心せず倒さなくてはいけないだろう。大丈夫、こいつらはまだ途中だしそこまで強くなっていない。




これが終われば追々遭難者を探しに行かなければいけないだろう。

俺は指をぽきぽき鳴らすとその有象無象の群れに突っ込んでいった。





致命的なそれに気づかずに。





It takes all the running you can do, to keep in the same place

不思議の国のアリスの赤の女王が言ったその場にとどまるためには、全力で走り続けなければならないという意味の言葉です

良く色々なものに引用される有名な言葉ですね

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