表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/52

しゃーなしやな

そう、このタイミングで親ドラゴンが念話で話しかけて来たのだ。こちらを今の今までまさに高みの見物をしていたのだろう。


「いや、あのドラゴン頭に直接話しかけるのが出来るんだけどそれで今からこっちに来るって。拒否権は無いって」


気軽に、おまえんち遊びに行ってもいい? みたいな友達感覚でいうんだから困る。


「…………え?」


その日、驚いたり笑ったりとした二階堂だったが、これほどの焦りを見せるのは初めてだった。

俺といくら激突してもその余裕を崩すこともなかったのに。汗をだらだら流して青ざめている。


「つーかよくよく考えれば俺悪くないし。うん、絶対揺ぎ無いほど悪くない。寧ろお前らが悪い。謝ろうかと思ったけど、違う。俺はただ誘拐された子供を誘拐犯から救っただけだもん。お前らが俺に謝れ。今俺に謝れ」


「え? ちょ、え? これ本当か? 冗談じゃなくて?」


俺が答える前に町中にサイレンが響き渡った。答え合わせの時間が来たのだ。

避難警報だ。各地に備えられたシェルターに避難してくださいと響き渡っている。放送者の焦りが声に出るほどで結構切羽詰まっている。流石にドラゴンが出たことが知れ渡れば混乱は避けられないから放送にドラゴンのことは出なかったが、タイミング的に俺が言っていることが本当だと証明された。


「今のところ話に来ているだけって言ってるけど攻撃して来たらやり返すって」


もっと早く言えと殴られた。無理だって、俺だって今言われたばかりなのに。

二階堂がぶち切れながら携帯を取り出して怒鳴るように喚いている。今日一番のブチ切れ具合だ。戦闘でもここまで怒らなかったな。たぶん一番の衝撃だろう。

首を横にしてみると早乙女は青ざめ、他の能力者たちもてんやわんやになっている。

あの強者の風格を漂わせている彼ら彼女らがこれほど慌ててるのを見ると、結構楽しい。

いいよね、プライドの高そうな奴らの余裕が崩れるところ。人間性が出て面白い。


「おい、治療止め。そいつを取り押さえろ‼ 絶対に逃がすな‼」


俺は一切抵抗せず大人しくしていたが、それでも地面にうつ伏せにされ腕を後ろに回される。

あんなにやさしく治療してくれていた治療班でさえ手のひら返しだ。


「ほえー、やっぱ流石の二階堂もやっぱマジモンのドラゴンは怖いんだ。戦ったらどっちが強いん?」


「昔一回戦ったけどボロ負けして見逃してもらったらしい」


忙しそうな二階堂に代わって早乙女が答えた。

うひゃあ、やっぱつえーんだドラゴン。おおーと俺の口から感嘆の声が漏れた。まあ、ここまで来たら勝ったな。きっとあの親ドラゴンは俺を助けてくれるはず。わが軍の圧倒ですな。


「おい‼ ドラゴンは何の話をしに来るって!?」


「こっちからは話しかけられねーんだよ、一方的に伝えられてる。憶測だが、誘拐された子供が帰って来たからって親は誘拐犯を許すと思う?」


ばさりばさりと威圧するような尊大で、翼で空を飛ぶ音と言うより空間を殴っていると表現してもおかしくない轟音が耳に届いた。

ドラゴンだ。ドラゴンがはるか上空からこっちに向かってくる。

遠目で見てもわかる巨体。

月明かりを反射し、きらきらと邪悪に禍々しく、そして美しさをその身に湛えていた。

戦闘ヘリや戦闘機がスクランブル発進して飛んで行くのが見えた。

二階堂が何か切れながら戻らせるよう指示を出すが遅い。


遂に攻撃が始まる。人類対親ドラゴン。

それはまあ当然火を見るよりも明らかな結果となった。先手を打ったのは人類で始まったが、効いていない。

ドラゴンの角が輝いて周りに何か蜃気楼のような揺らめく丸い空間が現れ、ミサイルは反れ、近づいたヘリは到底スペック上できないような動き、まるで天に吸い込まれるように上に落下したと思えば次の瞬間には横にそれ、地上に落ちて言った。

何だ今の。何をした結果何が起きたのか微塵もわからない。

ドラゴンが吠えた。それだけで空間自体を揺さぶるような衝撃波が生まれ、人類の利器は役立たずとなって墜落していった。


やっぱりわが軍は圧倒的ですなあ。ちゃんとパイロットたちは脱出レバーを押せただろうかが心配だ。


二階堂が嘗てないほど怒りを見せながら携帯で何かを指示し、それが届いたのかどうかわからないが戦闘機たちが戻っていく。

それを見たドラゴンは溜息を吐いて、何でもないと言った顔で俺達の上に降りて来た。


「おーい‼ ここだー‼ こっ―――‼」


俺が昼ぶりの再会を楽しもうとしたら、なんというデジャヴ。相も変わらず雑に鷲掴みにされた。

コイツにとって俺の定位置ってここなのか?

断待遇改善要求をする所存だ。


『嘆かわしいほどお粗末な竜族のブレスが見えたかと思ったら貴様か。昼の時も何かひっかかったが、まさか混じっているとは』


「は‼ お昼ぶりでございます‼ お子さんは無事帰宅なされたでしょうか!?」


『うむ、それに関してはよくやった。こってり絞ってやったからこれに懲りただろう。人類はお前のように目を見張る者もいれば分不相応に強欲な者もいることに』


そしてドラゴンはぎろりと大きな目玉を動かし、二階堂他能力者をつまらなさそうに眺める。まるで今までいるのは知っているが取るに足りない者として無視していたように。


「何をしに来たドラゴン……‼」


あの二階堂が遂に俺にすらしなかった武器を抜刀して身構えている。

こりゃあ本当にヤバそうだ。なんとなく二階堂の本気の片鱗を経験した俺だからこそいうが、ドラゴンの方が強い……しかも圧倒的に。絶対に勝ち目はないだろうが人類のために戦う覚悟のようだ。例え死ぬのがわかっていても。


『当然貴様ら人間が我が一族の幼子を誘拐したことだ。貴様らは万死に値する』


「……‼」


ほらやっぱり。お前らが悪い。圧倒的な力を背景に善悪を語るのはいいよね。

軍はその軍事力を背景に善として俺に圧力をかけていたが、いざその力が負けてしまえば悪を押し付けられてしまうのだ。だってほかならぬ自分たちが力に頼った方法を取ったのだから。もし、ドラゴンを一方的に倒せる力があれば俺がしたのはただの悪以外何者でもなかっただろう。


でもドラゴンはこの東京を焼け野原にするのならそりゃあ、わざわざこんなふうに話しに来ないだろう。話も警告も無しにいきなり上空からブレスを吐いて急襲すればいいのだから。

何か言いに来たのだ。

その場に居た人類皆が固唾をのんだ。その結末を知るために。


『しかし……この人間には借りがあった。だから此度の誘拐は水に流してやろう』


ほっ、と息を吐いて胸を撫で下ろした。

それと同時に何人かがどんな過去を送ってドラゴン相手に借りを作らせたんだと視線を投げかけてくるが、俺は顔を反らして知らんぷりした。いいだろ俺のお陰で助かったんだから。

でも、だったらドラゴンは何をしに来たんだ。


『だが遠くからこの人間を眺めて確信した。誘拐された我が子を助けた人間が野盗のように追い詰められているのを。善として助けた者がいればそれを悪として追う者がいる。人間にも色々な思想の者が居る、そしてその中にはきっと幼体のドラゴンがいると知ればまた罪を犯す者も居るとな』


「そ、そんなことはな「確かに」鈴木ぃ‼」


つまりは、万引きした奴が無罪放免されたけどそれじゃあ懲りないし再犯起こしそうだってことだ。模倣犯も出るかもしれない。

だって事実じゃん。何かここまでの流れでやんわりとわかったが、子供ドラゴンの件は不意遭遇で簡単に捕まえられそうだったから上の指示とか聞かず独断で捕まえたのだろう。きっと了承を得るにしても時間がかかるだろうし、捕まえた後親に攻められた場合の防衛だ何だ準備や会議をしていたら当然その間に逃げるだろうから末端が暴走して先走ったのだ。

誘拐したのは俺の過去の功績で許されたけど、その俺のお陰で助かったのにみんなで俺を囲って追い立れば、ああこいつら再犯起こすと思われても仕方ない。



『三日後、この地の人類を滅ぼす。貴様だけは我らについて来れば助けてやるが、残るというのなら容赦はせん』 


そう言って、ドラゴンは俺を地上に立たせると飛翔して去っていった。


残ったのは苦虫を噛み潰したような二階堂と、呆れる早乙女、そしててんやわんやしている能力者たちだった。そんな彼らは何とも言えない表情で俺を見つめていた。

馬鹿、やめろ。そんな目で俺を見るな。


「俺を恨むなよ。どうせこんな行き当たりばったりの子供誘拐作戦俺ですら見つけられたんだから親ドラゴンも見つけてたよ。寧ろ俺に謝罪した後感謝もしろ。俺が見つけてなかったら今頃ここは更地になってたんだ。懇切丁寧に腰を折って遜って感謝しろ」


俺は早乙女に頭をペシっと叩かれると横になり、医療班の治療を待つのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ