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vsアニマル系能力者 

「何これ」


頭が痛くなった。こんなん頭おかしくなりますよ。

なんで‼ こんな‼ 俺の周りで事件とか問題が立て続けに起きるものか。ヒロインもろくにいないのに。相応の美女の付属を要求する‼ 待遇改善‼ 待遇改善‼ 


思わずああああああ‼ とキチゲを発散して泣きに入る。こんな有様になって流石の俺も狂いそうだ。こんな俺をだれが責められるというのだろうか。

知恵熱が出ている。

10秒。いや3秒でいい。少し放心して壁に寄りかかって笑うような泣くような情けない声が自分の口から漏れ出した。

一瞬の時間で長考ともいえる判断を行う。



助けるべきだろうか? いやここは俺の感情はどうでもいい。何がしたいかではなく何が起きるか、それを考えるんだ。この後起きるだろう事態を想定して最も良い判断を下せばいいのだ。

捕まった子供ドラゴンはどうなるか? 生け捕りにされているっぽい。このあときっとテンプレみたいにどっか軍の施設に運ばれて解剖されたりするんじゃないだろうか。そうなればどうなるか。周囲を探している親ドラゴンは最後は人間の町に行きついて近所のガキんちょが岩をひっくり返して下に居る虫を見つけるがごとく探すに決まっている。

街中でそんなことになったらたぶん先ほどギルドで調べたレベル5クラスの人が出張って、町はバーべーキューになる。大戦争だ。どっちが勝つか負けるか、被害規模も見当がつかない。

経済的混乱、物価の崩壊が導く行先はきっと学校に通う日常生活には戻れないだろう。

うん? 休校? あれいい気がしてきたな。


じゃあ逆に仮定としてここで俺があれを助けるとしよう。どうやって? 穏便にその積み荷を解放してくださいだなんて一般市民Aが言ったところでどうなるか。きっと無視か、妨害行為と見做されて捕まる若しくは最悪射殺される。

どっか研究所か収容施設に入られる前に強襲するしか無いのではないだろうか。

そんなことをすればそりゃあ怒られるどころじゃない。きっとどこまでも軍に追いかけられるに違いない。

これって知らぬ存ぜぬを貫いて今のうちにどっかのシェルターに駆け込むか、他都市に亡命するべきじゃないかな。なんだったら第三ダンジョンの奥地に逃げてもいい。


「ギュアアアアアア‼」


そんな中現在進行形で軍用車両の中からドラゴンの悲痛な声が聞こえる。その声を聞いてどうするかの判断が吹き飛んだ。

ああああああこれは俺の駄目なところだ。いつまでも治せない悪い癖だ。こういう時こそ冷静に考えて慎重な判断をしないといけないのに。

自分がこれから何をしようとしているのかわかっているのか俺は。


くそう、もう少し頭が良ければまた違った方法できっと全てが丸く収まるとはいわんがこんな糞よかマシな作戦が立てられるのに。


「ああもういい知らん。どうとでもなれ」


もうやけくそだ。

そう言い捨てて俺は走って先回りする。

まだここは幸い外壁地区。道路に沿って整備もされているがスラム街のようなものだ。入り組んでいて車も時速30キロは出ない。街中に入ればそりゃあ無理でも奇襲をかけるのはうってつけだし、軍の戦力も急行するまで少し時間がかかる。

やるならここが一番いい。


周囲を見渡して焚火をしているホームレスの集団を見つけると財布から札束を引き抜いて渡す。


「そのでかいコートくれ。あとマフラーも。そんでこれを冒険者ギルドに持っていって。依頼番号はこれの……納品だからって言えばいい」


家無しのおっさん達は投げ渡された少なくない金銭を拾うと大人しく指示を聞いてくれた。

それを見届けてから俺は財布を焚火に投げ入れて、溶けていくカードを尻目にああ再発行めんどくせーぞと馬鹿みたいに笑った。まだ成功するかどうかもわからないのにそのあとの心配をするだなんて。


受け取ったコートのフードを被ってマフラーを口に巻く。衣類からは嫌な匂いがしたがこの際黙って使う。

その場でぴょんぴょんと跳ねて身体具合を確認する。もはや人外の領域まで達した俺の身体能力は踏み込んだ地面を全力を出せば簡単に砕き、その体は風のように疾駆できる。

うん、体調がいい。生憎今から決行しようとしていることができるのが恨めしい。


ひゅっとその場で跳ねると建物の屋根に着地し、駆け抜ける。

タンッ‼ タンタタンッ‼ 軽快な足さばきから信じられない程重く、鋭い跳躍を繰り出す。それを誰かが見たらきっと軽快な走りと言わず、巨大鈍重な戦車が全体を無理やり引っ張るような慣性を纏った走りを幻視したかもしれない。

そうして弓なりに体を反らして力を溜めると建物の屋根から砲弾のように射出された俺は装甲車に落ちて力づくでその装甲を容易に引きちぎるのだった。














軍というのは一枚岩ではない。穏健派もいれば過激派もいる。入隊時期や所属、全てで違ってくる。

高尾山方面奪還作戦が白紙になり、軍は背負わなければならない重責から解放されたと安堵する者もいれば奪還を強く望んで憤る者も一定数居るのもまた当然であった。

もっぱらそんな中、高尾山方面の巡回をするのは奪還を切望する一派で構成されていた。

その彼らですらモンスターが溢れ出た当時その地域で生活していた住民の関係者や、そちら方向に居住区域を広めたい利益目的の人間といった複数の思惑がある人員で構成されている。

ただそんな彼らも等しく全員が意気消沈し、勢いがなくなっていた。上層部からの指示で警戒ラインを大幅に後退させられ事実上閑職に追いやられたに等しかったからだ。

その日もまた巡回する部隊は何か奪還できる糸口が無いか探していた。このままでは人員削減も時間の問題だ。

何もできなくなる。現状を打開できる希望を探していた。

そんなところにひょっこりとドラゴンが現れた。幼体でしかも近づいても逃げず攻撃もしてこない。

人懐っこく無邪気な個体だった。

餌を用意して装甲車の中に置いてみると自ら入ってきて難なく捕まった。

その場に居合わせた者は今までの苦労は何だったのかと苦悩すらした。

こうして捕獲されたドラゴンは移送されるのだった。















建物の屋上から躍り出た俺は装甲の上に落下した。装甲はその衝撃をもろにくらって円状にべこりとへこむ。無事に着地すると同時に後続の護衛車の運転手と目が合った。驚いて目が大きく見開かれていたのが阿保そうだ。

俺はゴリラがするように両腕を足元に叩きつけ、右腕の五指を揃える。力を込めた右腕は爪切り不足な鋭利な爪も合わさって一つの刃物を彷彿とさせる。金属疲労が限界のそこに突き刺すと容易に装甲を貫いた。

行ける。切れ込みが入ればこっちのもんだ。貫手であけた穴を起点に力づくで装甲を引きはがし、そこで事態を把握した軍人のライフルから銃弾が発射される。

痛い。けどデコピンくらいの痛さだ。流石金属製の体。キンタマに当たりさえしなければ……当たった。当てたやつ絶対に許さない顔覚えたかんな。

それでも、は? 全然痛くないいんだからね‼ と強がってクールにポーカーフェイスを気取ってあけた穴から中に侵入する。


中には驚いた表情の武装した軍人と死人でも見たかのようにそれ以上に驚くドラゴンの顔が見えた。

そこでも発砲されたが弾かれて車内で跳弾する。それを見て有効でないと瞬時に判断して銃を捨てて抜刀された。軍刀ってやつだ。何それカッコいい。

車内は狭い。しかも囲まれている。圧倒的不利、だから逆にそれを利用する。壁を蹴り、天井を這い、スーパーボールのように跳ねまわる。

ひっちゃかめっちゃかだ。もし外から人がこの揺れ具合の車を見ていたら中で致しているんじゃないかというぐらいの揺れ具合だ。

当然走行中のこの車の慣性とか曲がるのはわからない。バランスを崩したり、思うように動けない。

その結果斬られるつもりはないが斬られた。けど痛くない。血も出ていない。相手が刃こぼれした刀に驚愕するが俺もそれを一緒に見て驚いた。相手も揺れ動く車内の中でしっかり足腰がはいっておらず太刀筋がぶれたのだ。それでも刃物が効かないとはまさかここまで自分自身が強くなっていたとは。


武器が利かないのならこっちのものだ。

背部のドアを蹴破って今なお抵抗する軍人たちを落とす。車内からのゴミのポイ捨ては法律で禁止されているが俺は人道主義者だ。人をゴミだなんて思わない。だから大丈夫。セーフ。

最期の情けにちゃんと後続車に引かれないよう脇に捨てた。


「さあて捕らわれのお姫様を助けるか」


振り返ってアホを見る。天下のドラゴンだというのにまるで犬のように鎖につながれている。ちと全身を拘束する鎖の数が多くて犬がつけるようなマズルまで口につけられていて、そうこれは間違いなく犬だ。そう思い込む。

血も涙もない冷徹な軍人に捕えられたドラゴンでなく犬を助けているのだから、きっといつもどこからともなく現れる動物愛護団体とか畑を荒らす動物を殺すなと無責任にクレームをつける人たちが今回も出張ってきて俺を守ってくれるはずだ。

鎖を噛み千切って、口につけられているのを外すとドラゴンが飛びついてきて俺を押し倒す。

固いうろこに、艶のある肌、鋭い犬歯に力強い眼。

もうね感極まってドラゴン自身何したいのかわからないってくらい頬ずりされたり甘噛みされたり匂いを嗅いだりしている。


あーうんこんなんだったこんなんと再確認して脇にどける。

久しぶりの再会を喜びたいのはわかったがそんな暇はない。

顔をぺろぺろ舐めまわされるが後だ。命の恩人にまた助けられた喜びに浸っている場合じゃない。


慣性が止まる。車が停車したようだ。なら次は当然乗り込まれる。


「怪我はないか? 背中に乗せて飛んでくれ」


ドラゴンは子供であるがそこは任せろと言わんばかりに自信気に息づいた。怪我も幸いないみたいだし逃げ切れるかもしれない。

後は山で下ろして貰ったら何気ない顔で歩いて帰ればいいだろう。今日はもう暗いから明日になりそうだが。






ドラゴンに乗ると乗馬でない……そもそも馬に乗ったことが無いから比較しようがないが暖かい鱗に、血の流れる脈動を感じる。

新鮮な感覚だ。

助けてやったがもう既に逆にコイツに助けてもらわないと応援が続々到着しているだろうから俺が危険だ。捕まったら最後晩御飯まで家に帰れないどころか当分くさい飯を食わされることになる。


やっぱり計画性のない行き当たりばったりは良くないね。高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変とも言えるかもしれないが。もう少しクールに生きたいものだ。

こんなことばかりしていてカッコ悪いのかカッコいいのかわからない。いやドラゴンに騎乗する男がカッコ悪いわけがない。つまり俺はカッコいい。そんな俺絶賛彼女募集中です。


あほなことを考えてないでケツのなんとなくの置き場所を確かめたらいざ出陣する。



ドラゴンに乗りながら車の後部ドアから出ると周囲にはそれぞれ険しい顔をしている軍人がすでに配置についていて照明に照らされる。

なんつーかアイドル気分だ。勿論スポットの中心にいる俺がグループのリーダーだ。お前らは脇役な。センター取る夢が叶った‼ 直後火線も集まったが。


「ハッ‼」


銃弾の嵐の中それをものともせず子供ドラゴンが助走をつけて飛び立つ。前回のフライトは親に鷲掴みにされて飛んでいたが今回はまるで空をかける竜騎士の気分だ。


もうね興奮したよ。脳汁ドバドバ。この俺の華麗なるところを魅せつけてやった。

最高のシュチュエーション。男ならば誰もが憧れるロマンをこれでもかと詰め込んだ場面だ。


これだよこれ。見ろよ叩き上げの軍人どもが阿保のように口をあんぐり開けて呆然としている。きっと謎の襲撃者として連日新聞の一面を飾ること間違いないだろう。夢みたいだ。

どうしよう俺にファンなんかできたら。帰ったらサインの練習をしてみるのもいいかな。

つーかなんで親ドラゴンは俺を鷲掴みにしてあんなぞんざいに扱かったんだか。今回みたいに背中に乗せてくれればいいのに。









理由はすぐ思い知らされた。

銃撃は全く効かず一瞬で建物の上にすぐに高度は達し、乗り越えた壁が自分を守る盾になるがごとしですぐ銃弾はかすりもしなくなった。そも3次元に動く空飛ぶ物体にただのライフルで当てることがいかに難しいか。

いえーいと調子に乗ってガッツポーズをし、手の届かない所にまで逃げてひと段落と安心しているところだった。

上から翼の生えた男が飛行するその勢いで俺に蹴りをかましたのだ。まさか空を飛んでいるから更なる上から攻撃が来るとは思わなかった。避ける余地もなかった。


あー確かにシートベルトないから鷲掴みだったのか。それに下手糞な奴に追突されたところを見るに結構な頻度で衝突事故があるみたいだ。こりゃあエアーバッグつけるのも要相談だ。あおり運転早く取り締まってほしい。そう地面に叩き落とされながら思い知る。


「何が起きているんだ。どうしてドラゴンが街中に居る。それに乗っていた奴は……?」


翼の生えた男が呟いた。お前敵も味方も何も事情知らないでいの一番に俺蹴ったんかい。

子供ドラゴンもギョッとして振り返るが、それに急いで叫ぶ。


「お前は早く帰って親に怒られて来い‼ 俺は大丈夫だから‼」


子供ドラゴンが青ざめたのが見えた。何だかんだ俺が死にそうにないのを信じているのかドラゴンは心配そうに何度も振り返りながらそれでも飛んでいく。まあ、命を二回もすくっているから信頼熱いんだろう。それでいい。子供が遊び歩いているにはちと遅い時刻だ。俺は不良だからいい。過去のバイトだってまだ遅い。


「早乙女大佐‼ ドラゴンをすぐに追ってください‼」


移送車の中から偉そうな現場責任者みたいなおっさんが叫ぶ。

翼の生えたその男は早乙女というのか。早乙女は一瞬追おうとするが、俺を見て、そして回りを見て迷っているみたいだ。俯瞰できるからこそ状況を見極めているんだ。

下は騒然としていた。周囲の市民は銃声と街中にモンスターが現れたこともあり阿鼻叫喚で逃げ回る。交通渋滞も起こっている。

破壊された軍用車両。響く銃声。

控えめに言っても混沌としていた。


「無理だ‼ 幼体とはいえ流石にドラゴンには勝てない‼ 街中を戦場にする気か‼」


早乙女は追うのを諦め場を治めて一般市民の保護を優先した。

良いぞそれでいい。あの子供ドラゴンはこれで完全に逃げ出せる。

ならあとは俺だけだ。ありがとう早乙女さん。あんたが市民を大切にする模範的な軍人で助かった。


改めて見ると不思議だ。猛禽類を彷彿させる瞳に肩甲骨あたりから伸びる茶褐色の翼。足は五指でなく鷲のような鍵爪。

飛んだことがあるからわかるが股間付近がスースーしていないだろうか。あんなイケメンそうな人なのに股下スースーしているのを必死に耐えていると思うと何か微笑ましいね。不覚にも望んでいないのに何故か空を飛ぶ経験頻度が多い俺としてはそれの対処方法を教えてもらいたかったりしなかったりする。


バサリバサリと轟音を立ててまるで闇の中を飛ぶそれは、人間が本能的に恐れる地獄からの使者の悪魔を彷彿とさせる。

人間に羽が生えた程度では飛べないような物理法則がしないでもないが世の中意外と侮れない。

その場にいる皆が一斉にそいつに注目した。場が一瞬で支配されたとでもいうのか。否が応でも反応せずにはいられない存在感。なんというカリスマ性。きっとこういう人がマルチ商法のボスとかをやっているに違いない。

あれが噂のアニマル系能力か。出来れば初めてお近づきになる相手は可愛い牛のアニマル能力者の女の子が良かった。視界を汚された思いだ。


「さてと気になることは沢山あるが……そこ逃げるな重要参考人」


隙を見てこそっと逃げ出そうとしていたら止められる。流石は鷹の目だ。

どうもこのままあっさりと帰してはくれないらしい。

行先を阻まれる位置に芝居がかっているほど鮮やかに地面に舞い降りて俺の行方を止める。


「ママが夕飯までには帰ってきなさいって」


「君は……遊び気分で軍用車両を襲ったのかい?」


早乙女は応援要請を聞いて、軍を襲う襲撃者だから薬中か反政府組織か危惧して急行したが蓋を開けてみればドラゴンは出るは襲撃者は一人。話はできそうだし冗談を言う余裕もある。ドラゴンともなぜか意思疎通ができているともきたもんだ。

こりゃあやっかいな事案だと内心ぼやいた。




くつくつと笑う翼の生えた痛い格好の優男に俺は戦慄すると、逃げようとするがそうは問屋は下ろさない。


「ヘイヘイ‼ 俺は一市民の代表だ。軍がドラゴンっていう爆弾を町中に持ち込んだのを処理したに過ぎない」


罪なき模範的な一市民の言葉を聞いて早乙女が笑うのを止めると、俺を睨む。序でに何か作戦があったわけでない、たまたま子供のドラゴンを捕まえられたから勢いで移送していた他軍人を睨む。確かにドラゴンを生け捕りにできたらそれはかなり軍事的にも経済的にもはるかに有用で利益になる。だがそれは同時にドラゴンの怒りを買う危険な行為でもある。

そんなことを瞬時に考えているのだろう。

そして最後に視線は戻ってきてまた俺も睨む。

怖い。親ドラゴンに睨まれ慣れている俺のストレス耐性を貫通できるほどでないけど。


へらへら笑っていると次の瞬間早乙女が消えたと思わず錯覚するほどの勢いで蹴りが「―――う、わ‼」俺の胸を捉える。


「何が一市民だ。やはりだ、何だこの感触、衣服じゃない体の材質そのものがおかしい。鉄? 重さもあり得ない。君は本当に人間なんだろうな」


感触を確かめながら蹴りぬいた姿勢の早乙女の視線の向かう先、そこではぶっ飛ばされた俺がケロッと立ち上がる。反応はできなかったがダメージは負っていない。そんな反応だ。事実ぶっとばされて壁に激突したが苦痛に顔を歪ませるでも痛がるそぶりもなく攻撃をうけてから一度も瞬きもせずその視線を早乙女から外さなかった。こうしたら強者のふるまいみたいでかっこいいと思ったからしたのだ。

本当はめちゃくちゃ痛くてやせ我慢しているだけなんだけど。


「ちゃんと市役所で戸籍あるわ‼ 税金も納めてる‼ お前ら誰の金で飯食ってんのかわかってんのか‼」


憤慨して抗議するが何が面白いのか早乙女は愉快そうに笑っている。

野郎やっかいだ‼ 何をしたのかわかった。鳥のアニマル系能力は地上では素早く移動できないという固定概念に足を引っ張られた。早乙女が翼で羽ばたいて前方への推進力とほんの少しの浮力で滑るように地上を駆けたのだ。


「結構全力で蹴ったのにこんなに堪えないのがいるとはね。動きからして対人戦闘はずぶの素人。軍人じゃないのは間違いないが冒険者だったとしてもレベル4以上は全員覚えてるし目ぼしい3の該当者もいない。10秒以内に投降するなら私の奢りで尋問室でカツ丼食わせてあげてもいい」


「はっ‼ お前こそ3秒以内に俺を見逃したらラーメン奢ってやる」


渋谷の駅前のあの高いモンスターの肉を使っている日本一うまいって噂のだ。今ならオークのチャーシューもつけてやる。

君あそこ好きなの? 

いや、行ったことない。一人で行くのが嫌だったから誰か誘っていこうかなって。


俺はおもむろにぱんぱんとほこりを払って立ち上がると駆けだす。動きが対人戦をしたことがない素人丸出しだって? そりゃあ人とまともにやる必要がないからな。今までもそうでこれからもきっとそう。


だから俺はまったく戦いについていけないで傍観していた下っ端軍人の群れに飛び込む。

早乙女は野郎と舌打ちするが俺はそれが面白くてへへへーんと笑う。今のでわかった。あれはロケットのようなもの。細かく曲がったり微調整できない。特に入り組んでたり障害物があれば尚。

下っ端は俺を抑え込もうとしてくる者、逃げる者、色々居るが相手にならない。逆に早乙女の邪魔にしかなっていない。それを狙ってやる。案外俺って能力者相手でもやれるみたいだ。

一人のポーチから失敬する。スモークグレネードだ。

このままじゃ応援が来てじり貧なのはわかっている。お前の相手なんかしてられるか。


煙に巻く。文字通り煙幕の中で俺は逃げ出す。このスラムと言ってもいい壁外地区は生憎俺にとってホームともいえるべき場所。庭で在りテリトリーだ。

バイトで荷物の配達も、頻繁にある再配達もした。子供の頃なんかはピンポンダッシュもしたのが懐かしい。今も子供じゃないのかって? 違うよ、ピンポンダッシュだなんて子供のやることは卒業した。最近やっているのは食い逃げだ。


裏路地に逃げ込み、素早く曲がり角を短時間に何回も曲がる。

これが逃亡の極意よ。

ここで俺に追いつける奴なんかいない。

加えて底知れないドラゴンのスタミナによって結構な距離を稼いだ。これなら


「逃げられると思ったか? 煙幕なんて翼があれば簡単に散らせるんだよ」

実は早乙女は数メートル上昇できるだけで基本は滑空です 有事の際に高度を確保するために普段は高い所で待機しています

一応飛行能力者は数人で隊を組んで一人風系統の能力を加えて飛行する形

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