所詮はモブ
主人公は所詮モブなので基本的にこそこそ一人でやっていく感じです これからも基本誰かと絡んでも一区切り終えると別れてまた別の人と出会う人生リセット癖のある性格 たまーに以前登場したキャラが再登場して絡むこともある
周りの人間の方で勝手にストーリーが進んで行って問題が起きたら あいつなら巻き込んでも良心痛まないなと巻き込まれることもしばしば そんな風にやっていきたい
土方のあんちゃんたちは結構面白かった。知性宿る美しき獣って感じで激しく動きつつも理性的でもあった。
阿保と自覚のある俺にわかりやすくいろいろ教えてくれる。たぶん俺が理解できないと彼らも意思疎通できないとわかってあちらから俺のレベルにあわせてくれたのだ。
専用の冷却装置とは別にぶ厚い防護服や機材を背負いながらもやはりその所作の細部にプロの洗練が垣間見える。
最初こそは結晶洞窟の美しさに目を奪われていたがいざ歩けばどこを踏めばいいかとかの地面の具合や負担にならないよう最低限の滑らかな体重移動。歩きとはいえこのダンジョンでちゃんと俺についてきているところに職人気質が見られた。
初対面に近いがその積み上げられた努力は感嘆せずにはいられない。
「ダンジョンは高低差があるからな。迂回路を考えたり時には壁を削って階段にしたり橋を架けるんだ。道路整備も俺たちの仕事だ」
「ほえー。ああ、ここはマップで見た通りあっちに迂回路有りますけどここより高低差というかほぼ切り立った崖なんですよね。他に何か聞きたいことありますか?」
「いやここまで特にないけど……何で坊主は半そで半ズボンの恰好で大丈夫なんだ?」
「気合です」
「そっか。そう言う時もあるよな‼」
いいねこういう時それで解決できる人たちって。俺キライじゃないよ。体育会系って今まで嫌厭していたけど何だ簡単じゃないか。コミュニケーションでコミュニケーションに非ず。彼らはソウルで理解しあっているのだ。
「問題はこのマグマだなあ。まるで川だ。上流と下流はデータにあるけど実際に見た感じどうだった?」
「あーこれ上流はもう大噴火って感じで無理なんですよ。下の方は滝もあるし流れが合流して太くなるんで、ここが一番細くて流れも穏やかかなあ。下行く時は気を付けた方が良いですよ。マグマの中に大きな魚型モンスターがいて、陸を這いずってミノを引きずり込んでいるの見たんで」
あれを見た時はいつか一本釣りしてやろうという目標が木端微塵に砕けたのだった。釣りデビュー失敗の瞬間である。
「おっかねえなあ」
「そうなんですよ。実は俺も油断して引きずり込まれた経験ありまして。あそこのマグマ意外と深いんで気を付けてください」
「……‼ よく無事だったね」
「やっぱ気合が違いますから」
「お前何でもかんでも気合で済むと思ってるだろ」
因みに魚に関してはスタッフ一同が美味しくいただきました。
マグマに関しては予算によって値段プランが違うらしく上と要相談案件だろう。俺がどうこうすることじゃない。面倒なのは大人に投げればいいのだ。こういうことが好きなタイプがいるのだから。
橋を架けるのか地下通路か。川を埋めるも曲げるのも何のその。
「……弊社なら年内施工も可能です‼」
俺はぼそっと魔法の言葉をつぶやいた。どうやら効果は抜群のようだ‼
「それな。営業はちょくちょく現場を殺しにかかるけど今回は別。社長が親戚らしくてミスリルの案件持ってきてくれたんだよ。そん時は諸手を上げて喜んださ。どこの企業も欲しいからな。まあ親戚でも出来が悪かったら切られるからな。今後の契約のためにもしっかりするぜー」
前回通したワイヤーが残っていたのでとび職的な人が追加にワイヤーを持って、俺の後ろをついてマグマの中にある岩を飛び飛びで越えてくる。
「結構アバウトなんですね。もうちょっと念入りにするかと思った」
「そそ、ダンジョン内って法律とか何もないし結構自由でね。本来の仕事ならありえないけど敵とかいるからうちの場合はパパッとやるの。それにここは酸素ボンベのリミットあるから時間は大事だ」
追加でワイヤーを打ち込んで頑丈に念入りにする。大人数でマグマを渡ったことも一度や二度でないとのことで慣れているらしい。
後続も続くがそれでもやはりこの素人の俺が投げ込んだだけの岩の上を渡ってくるのは肝が冷えたらしい。
「応急処置で能力者に橋を架けてもらおうかな」
「え? そんなこと出来るんですか?」
「後続に居るんだ土系統支配の能力者。能力者も人間だからな。怪我したとか子供が生まれたとか安定志向で後方勤務ちらほらいるんだよ。来るまで時間かかるだろうしにいちゃんは俺達を案内したら帰っていいから作業見れるかもな」
「うーっす。ここからはすぐそこなんでちゃちゃっと行きます」
何かいいよね。大勢の先頭を歩くの。率いている気分になる。
定期的に小さな観測気球が打ち上げられ、地質も調査される。以前からあったデータもあり結構頑丈で山岳工法でトンネルを作っていく方針らしい。距離が長ければ換気システムが整えるまで風系の能力者で送風作業を行う必要もあるらしい。
大空洞に到着する。
入り口をくぐるとおおーと感嘆する声が聞こえる。大規模鉱床に囲まれたこの空間は職人魂を大きく揺さぶるみたいだ。
「ああーでかいでかいでかい。これで通路先もまだ続いているかもしれないんだっけ?」
「……たぶん。通路先は行ったことないんで気を付けてください。こっちの通路にミノタウロスの足跡が続いているんでミノはそっちかと」
「おっけい。あとはこっちでやるからもう帰っていいよ」
正直手伝う気はない。足引っ張るだけだろうし俺みたいな異分子は扱いにくいだろう。邪魔しない範囲でなら見学は許可されたが。
続々と後続が続いて物資が運搬されていく。
大量のドローンが音をたてて飛び立ち、それぞれの通路には調査隊が進行する。その後頑丈な扉が通路に設置されてバリケードが設置される。発電機にガソリンが注がれて低重音が響いて照明器が立ち上がる。すると薄暗かった大空洞が光でより鮮明に光景が浮かび上がる。組織で動くという大きさ、規模が改めて認識される。
高温地対応テントが張られて拠点が作られれば、地質調査や測量機で本格的に始まる。
この先は整地や落盤に気を付けて補修作業など採掘までの下準備が始まるのだろう。
たぶん俺が卒業するくらいまでは色々かかると言っていたので卒業したら堀りに来てもいいかもしれない。
銀は銀でも聖銀であるがやはり銀鉱脈と言えばポトシ銀山を想像してしまう。それとは比べ物にならない程設備が充実しているが、ケチれば悲惨なことになるだろう。
ポトシの山そのものは八〇〇メートルほどであったが一〇〇年近くは高水準の銀を産出した。ここは規模はわからないが下手をすれば学校の歴史の授業で習うかもしれないことになるレベルらしい。覚えるべきものが増えてうへえと反吐が出そうだ。第一ダンジョンの方も教科書に出ないものの地元のことがちょくちょくテストに出るのは当然のことで銀が含有率の高い鉱物の自然銀とか輝銀鉱とか角銀鉱とか書かされたのは記憶に新しい。勉強ができないと工夫として日給三ドル以下の仕事をさせられるのは嫌な物だ。流石に守り神に捧げものをしてコカの葉を口に入れて下が見えない高所を薄い板切れの上を歩いて病気や保証のない笑えない生活はしたくないだろう。
俺もいろんなバイトやそれこそポーション代を稼ぐときになりふり構わず工夫も視野に入れていたのが懐かしい。設備や保証、病気対策に労働賃金が良ければ検討してもいいかもしれない。
俺はその後帰路に就くと能力者の橋建設を見ると帰るのだった。
後日。
会社の会議室に居た。もう出ても良い事になっているが学校に行くくらいしかなくてここでたむろしていた。
俺はあれ程毎日のように入っていたダンジョンには入る気がしなくなっていた。今まで自分だけのダンジョンって感じの特別感のあった場所は昼夜人が行きかって、今求められているのは一人の学生じゃなくて専門の技術を持った多数の大人たちだったからだ。
身内でひっそり語り合っていたあまり売れてない漫画がアニメ化で人気になり、新参が来たのは嬉しいがコミュニティが混沌と荒らされた気分だ。
そのことで案外あの危険と隣り合わせの場所を存外気に入っていたのかと気づかされた。もしくわ人に求められる人材というのが居心地が良かったのかもしれない。今は懐かしくもある。
おっさん連中含め上層部はてんてこ舞いだ。日夜嬉しい悲鳴だと仕事に追われている。
逆に俺や管理人は閑職に追いやられていた。俺はダンジョンに潜らず、管理人は他の人に引き継いで管理人ですらなくなっていた。
事が収まるまで大人しくしている予定なのだ。
会議室のテレビの電源を入れるとおっさんが映っている。人のよさそうにぺこぺことしつつもしめるところはしめて一躍時の人だ。彼もまた忙しそうだ。
「おっさんまたテレビ出てますね」
「あんたも発見者で新聞載ってたじゃん」
「端っこですけどね。悪い気はしませんでしたね。この前久しぶりに学校行ったら全校朝会で表彰貰ったんですよ。サッカー部が大会優勝した後だから全然話題にならなかったけど」
アハハハハハ‼ やっぱ地味だなと管理人の笑い声が響く。ぼりぼりとせんべいをかじってテレビの電源を落とす。
虚しくなってリモコンを机に転がして立ちあがる。
虚しいような悪態をつきたいような、でもそれがすべて子供のわがままだとわかっている。ダンジョンは皆のもの……とはいわないがこの会社が所有しているものなんだ。だから当然俺にどうこうできることではない。それにこれはいいことなんだ。所属している会社が繁盛して人が集まることは。
それでも納得がいかなくて壁際に寄って窓から見える光景を見る。
今日も昨日と同じで蟻のようにダンジョンが口を開いて人を飲み込んでいくのが見えた。確か今からだったはずだ。ミスリル場まで足を運んでいたミノの巣が発見された。その掃討作戦だ。
これが終わればおおよその危険はなくなり、それこそ専門の知識が無くて腕っぷしの強さだけの冒険者の、つまりは俺なんかの仕事は当分なくなる。勿論肉体労働である工夫の仕事は絶賛募集中だがそれは質より数が求められている。
「行かないの?」
「行かねー。規模も少し大きいけど平均的な大きさらしいし」
「何か懐かしいね広場で社員集まって食べてたの」
何やかんや貧乏だ貧乏だとあくせく忙しく皆で働いていたころが思えば一番楽しかったかもしれない。金はあって困らないけど。
俺としては強くなる目標が空中で宙ぶらりんのまま分解した不完全燃焼感が否めない。
一番楽しかった時だったのに。
けどこのダンジョンにもういられないのも事実だった。
後悔はしていない。自転車操業ではないがあまり未来が明るいとは言えないこの会社には必要だったのだ。俺としてもこの会社の人たちにも幸せになってもらいたい。
「老害って言うのかな。あそこのあんちゃんたちと話してたらやんわりとそう言うのはどこにでもいるんだって。古参連中が変わりゆく流れに乗れなくて自分たちこそがこのダンジョンを開拓し切り盛りしてここまでやってきたんだって。俺は別に利権が手から離れて悔しがっているっていうわけじゃないけど。ごめんなんかうまく言えない」
自分をどこか特別だといつ間にか思い上がっていたのか? あの有象無象の中に紛れてアイデンティティーが消えるのを恐れたとでもいうのだろうか。わからない。きっとこれが素直で他者ともっとうまく関係を築ける様な人間なら抵抗もわだかりもなくあの中に混じって自分の居場所を見つけられたのだろう。
俺はどうだろうか? たぶん他の新参連中と混じって作業しても馬鹿だから自分だけ怒られてそうだ。俺も決して出来が悪いというわけでないがきっと大半は俺以上に出来が良くて劣等感に苛まれる。それで嫌になってすぐやめる。目に浮かぶ光景だ。
「外の空気吸ってくるや」
胸が苦しかった。自分を特別だと思いたくなかった。いつの間にか思っている自分が嫌だった。
だから前にそろそろ進むべきかもしれない。何者になりたいか決めるべきだ。
俺はそうして町の雑踏に消えるのだった。
まさかこの後、あんなことになるだなんて思いもせず。
これからも何か主人公が功績をあげても基本周りの人に利益とか流れたり美味しいとこもらわれていって金持ちになっては借金したりとなるのを考えています




