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記憶の買える店  作者: PeDaLu
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吉谷玲香編

九条先輩に誘われてアウトレットモールに行ったけども、待ち合わせの場所時間、それにあの反応。アウトレットモールでの行動。ほぼ全てが私の知っている一樹だった。どうしてそんな事になっているのか分からないけども、九条先輩の中には確実に一樹がいる。それじゃ、あの横原一樹に見える一樹は一体何者なのか。比べる対象が無いから分からないけども、もしかしたら一樹が分裂して……。ま、とにかくデートにでも誘って話せばなにか分かるかも知れない。

そう思って、九条先輩とアウトレットに行った夜に一樹に電話して、日曜日に出かける約束を取り付けた。


「そう。そう。待ち合わせ時間は……」


昨日の九条先輩と同じことをやってみた。明日はバイトのシフトは入っていなかったけども、無理を言って入らせてもらった。一樹の中に別の人は入っててその人に迷惑がかかるかも知れないけど、しれは仕方ない。なんて考えながらバイトをしていたが、昨日の九条先輩のように一樹がお店に入ってくる気配はない。あと3分で約束の時間8時半だ。


「結局来ない、のかな」


「誰がこないって?なんかかっこいい人でも来るの?常連さん?」


同僚に話しかけられたけども、そんな場合じゃかなったので、私の彼氏かも知れない人、と答えたら不思議そうな顔をしていた。


「さてと」


バイト先の制服から私服に着替えて。今日は例の青いニットを着ている。一樹が一樹なら、このニットに何らかの反応があると予想して。そして約束とは逆で私が一樹を探す羽目になったのだけれど。ため息をついて駅ビルを出たら、そんなため息は安心に変わった。


「一樹。お待たせ」


「ああ。玲香ちゃん。良かった。電車で向かうと思ったからここかなって。絶対に前を通るし」


一樹は駅前の時計台の下で待っていた。時間きっかりだ。私の記憶と場所が違うけど、時間はきっかり。さて、電車の中の行動とかアウトレットに到着してからの行動はどうなのかな……。の前に。このニットについてはなにも反応がない。アウトレットモール到着してこのニットを見たらどんな反応をするのだろうか。


「いやー僕、まさか玲香ちゃんと一緒にお買い物に行けるなんて思っても見なかったからびっくりしたよ」


「なんで?一樹は如月先輩が気になるんじゃなかったの?」


「そうなんですけど。玲香ちゃんとも一緒に出かけられるのは嬉しいかなって」


このお調子者のような反応。一樹に近い。でもなんか違う。一樹ならもっとはっきりと冗談めいて話すはずだ。それと。このニットについても聞いてみようと思う。


「一樹、今日の私のこのニット、どう?」


「ん?似合ってると思うよ。仮に僕に選んで欲しいって言われたとしてもそんな感じのを選んだような気がする」


反応に困る。どっちなのか。ニットには気が付かないけども買うとしたら同じようなもの。まるで玉虫色だ。他にも電車の中であった私の記憶の中にある出来事を一樹に振って見たけども、9割はハズレ。1割はなんとなく正解、みたいな感じだった。判断はつきにくいがここまでは、一樹は見た目だけ、の可能性が高い。


「ねぇ、一樹、アウトレット、どのお店から回るのが良いと思う?」


この問には一樹は私のお店よりも先に自分が行きたい場所を選ぶ。入り口に大きなクマがいるアウドドア用品のお店だ。


「え?僕が選んでもいいの?」


誰もそんなことは言っていないけど。ま、そう思ったのならソレについて行くことにする。


「クマ……」


「え?ああ、クマだ。ダウンコート着てるね」


これは私の記憶通り。その後も記憶通りだとしたら、一樹は小さく折り畳めるサコッシュを買うはずだ。


「それを買うの?」


「なんか便利だと思って。何色が良いかな」


一樹が選んだのはサコッシュじゃなくて小さく折り畳めるリュックサック。微妙ではあるけどもなにか違う。感覚にも違和感がある。そのあと、例の店で着ているニットの売り場に来たけども、同じものが売っていることにすら一樹は気が付かなかった。私が同じものの色違いを手に取っても、だ。


「わからない……」


「どうしたの?なにか迷ってるの?」


「そうじゃなくて。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?」


私はアウトレットモールでの買い物を早々に切り上げて、例の公園を目指した。一樹は最初どこに向かっているのかわからないと言った顔だったが、目的地が近づくに連れて察したようだった。


「例のベンチ?なにか確かめたいことでもあるの?」


「ちょっとね。正直、一樹は私の知っている一樹じゃないような気がして。それでちょっと確認させてもらえたらなって思って。せっかくのデートなのに身勝手でごめんなさい」


一樹は嫌がるでもなく、私の話を聞いて「いいよ」とだけ返事をして例の公園のベンチに向かった。


「ここ。ねぇ、一樹はこのベンチに私と来た記憶、ある?」


「ここに……。正直言うと無い。でも例の言葉は断片的に覚えていた。完全にじゃないし、九条くんに全文聞いても、そうなんだ、みたいな感覚だった」


やっぱり、今、私の目の前にいるのは私の知っている一樹じゃなくて、見た目だけ一樹の別人なのだろうか。でもそんなことってあり得るのだろうか。もう少し確認してみようかな


「一樹は今日の私の服とかなにか感じたことはないの?」


「ん?似合ってるとは思うけど、それもなにか関係あることなの?」


察してはいるものの、一樹が選んでくれた、という記憶はやはり無いようだ。これは『確定』でいいとおもう。目の前にいるのは一樹の見た目をした誰か別の人。私の知らない別の人。


「ね、ねぇ。大丈夫?」


「え?」


「だってそんな……」


私は自分でも気が付かないうちに涙をこぼしていた。私の知っている一樹はどこにいるの。私の愛した一樹はどこにいるの……。そう思っていたら涙が溢れてきたらしい。一樹には悪いけど、今日はこれ以上一緒にいられない。ゴメン、とだけ伝えて返事も聞かずに走ってその場から逃げるように、いや、逃げ出した。


「私の一樹はどこ……」


家に帰ってから、昨日の九条くんとのデートを思い出す。今日の一樹よりも明らかに九条くんのほうが私の知っている一樹に似ている。似ているというよりも同一人物に思える。信じられないけども、九条くんと一樹が入れ替わっているとしか思えない。そう考え始めた私は確認せずにはいられなくなってベイサイドへ走った。


「奏さん!」


「ど、どうしたの?」


「どうしても聞きたいことがあって。ねぇ奏さん。あなたすべて知っているんでしょ?」


「なにを?」


奏さんは遅かれ早かれこの日が来るのは分かっていたのだろうか。大きくため息をついてからこう言った


「もうすぐ閉店時間になるから、そこの席に座って待ってて。あと、店長~、店長もだからね」


店長さんも?その時は分からなかったけども、話を聞いてすべてを理解した。



「私が?」


「そう。吉谷玲香、という人物、つまり、あなたがこの世界のイレギュラーなの。なんでこんな事になっているのかは私達にもわからないんだけどね。ね、店長は本当に知らないの?」


「奏さんは疑り深いですね。私にも本当にわからないんですよ。なんで吉谷玲香、本人がこの世界にいるのか。だって美桜ちゃんと存在がオーバーレイしちゃうでしょ?流石に僕もそんなことはしないよ。それに。横原一樹くん。彼も本来はこの世界にいるべき人じゃないんだ」


「ちょっとまって。今の話だと、この世界は記憶の世界で本当の世界じゃないってこと?」


「そう。この世界は記憶の世界。私達が店長のハサミで切り取った過去の記憶の世界なの。九条紅月、紅月くんの記憶と如月美桜、美桜ちゃんの記憶を切り取ってそこに別の記憶を縫い付けたの。もう察しがついているかも知れないけど九条くんには横原一樹、美桜ちゃんにはあなたの記憶を縫い付けてある」


「じゃあ、一樹、あの私の知っている一樹の見た目をした一樹はなんなの?誰なの?」


「えっと……」


「奏ちゃん、それは僕から話すよ。実はね。彼もイレギュラーなんだ。ここにあるのが九条くんと如月さんの記憶なんだけどね」


そう言って店長さんは2つの瓶を棚から取り出した。コーヒー豆だと思っていたそれは、店長が手をかざすと青白く輝き始めた。


「記憶?」


「そう、記憶。九条くんと如月さんから切り出した記憶は個々にある。それでだ。切り取ったってことはそこは空白になる。なのでそこには別の記憶を埋め込むことになるんだ。もうわかったかい?」


店長の話。にわかには信じられないけど、目の前の光景を見て震えが止まらなかった。


「九条くんには一樹の記憶が、如月さんには……私の記憶が?それじゃあ、なんで一樹と私はこの世界にいるの?私はなんで記憶を切り取られたはずなのに全て覚えているの?」


「だからイレギュラーなの。本来、お互いの記憶が入れ替わった状態で同じ世界に存在したら、今回みたいに混乱するのは当然だしね。だから、あなたがこの世界に存在する理由と、一樹先輩に九条先輩の記憶が入っていることが私達にも分からないの。本来なら私達観察者がその存在を消去することもできるんだけど……」


「奏ちゃん。それはね、君たちは本来この世界に存在しない、すべきではないのだけれど、現実として、この記憶の世界に存在している。それを僕たちが消し去る権利はないのさ。恐らくはだけど、君たちは自力でこの世界に入り込んだ。その選択を僕たちが消去することは私のポリシーに反する。だから玲香ちゃん。玲香ちゃんはこの世界で成すべきことを自ら考え、行動するといい。さっきも言ったけど、一樹くんの見た目をした一樹くん、玲香ちゃんの記憶を持った美桜ちゃん、この二人が存在する事を理解した上で行動、選択しなさい」


正直、混乱している。そんなことって。この世界が記憶の世界なんて。私は誰なの?なんでここにいるの?一樹と九条くんは入れ替わっているから一つの記憶が存在しているし辻褄が合う。でも私は。私と如月さんは同じ記憶。さっき店長さんは記憶を切り取ったって言っていた。切り取られた私は……そうだ。


「あの。一つ質問良いですか?」


「なにかな」


「一樹と私、私達の記憶を切り取ったんでしょ?だとしたら、現実世界の私たちは今どうなっているの?」


「それは……」


「奏ちゃん」


店長は奏ちゃんが答えそうになったのを静止してこう教えてくれた。


「寝ているね。九条くんも如月さんも寝ている。記憶の中の話だからたったの一晩の出来事なのさ。だから同じように一樹くんと玲香ちゃんも寝ているよ」


「そうなんですか……。それじゃ、現実世界には私の知っている一樹がいるってことなんですね?」


「そうなるね」


だとしたら、この世界での私の存在意義はなんなのか。本来存在すべき九条くんと如月さんの邪魔をしているだけの存在なのだろうか。そもそもあの二人に私達の記憶を縫い付けた理由は何なのだろうか。そのことも聞いてみたけども、答えられない、ということだった。



「店長、いいんですか?あの場で彼女を消去することもできたじゃないですか」


「だから、奏ちゃんは裁縫、得意なのかい?彼女の存在を消去するということは九条くんと美桜ちゃんの記憶を縫い直すことになるよ?僕はそう言いうの得意じゃないからさ。そんなことより、奏ちゃんは夏海くんをよく見ておいてね」


「そっか。夏海のこともあるんだった……。なんで初回からこんなことになるのよ……」


ーーーーーーーーーーー


【横原一樹編】


「うーん。僕はこれから何をするのが一番いいんだろう」


如月さんに告白したのは良いけども、その後、どうすれば良いのか恋愛経験のない僕にはわからない。正確には自分から告白したことがないから分からない。玲香ちゃんが言うには僕は玲香ちゃんにあの言葉で告白したらしいけど。実感がないから本当のことのように思えない。とりあえずは僕から如月さんに連絡してみて、話を聞いてくれるのならなにか話してみよう。考えるのはそれからでも遅くないはずだ。


「来てくれてありがとう」


「それは良いんだけど、なんで私にいきなりあんなこと言ったの?私、知っていると思うけど紅月と付き合ってる身なのよ?」


「分かってる。でも自分の気持に正直にならないのは後々後悔すると思ったんだ」


「一樹、そんなに積極的な人だとは思わなかったけど、まぁ、モテるのは気分の悪い話じゃないわ。だから今日だけ付き合ってあげる。紅月にもそう言ってあるから安心してね」


出だしから振られてしまった感はあるが、時間はまだある。今日で何かしら僕のことが気になる、というようになれば成功と呼んでも良いような気がする。それに。これは確認すべきだ。僕は玲香ちゃんと一緒にいたときになにか不思議な感じがしたけども、如月さんと一緒にいたときも同じような感覚があったからだ。


「あの。如月さん。僕はあまり話しが得意な方じゃないので、単刀直入に聞くんですけど、如月さんと玲香ちゃんって姉妹だったりするんですか?なんか似たような雰囲気を感じるので」


面食らった。まさかそんな質問が出てくるなんて。


「なんでそう思ったの?」


「同じような雰囲気を感じるんです。如月さんと玲香ちゃん」


「同じような、かぁ。それ、私も感じてたんだよね。そもそも例の告白の言葉、あんなの一言一句違わずに2人が覚えてる、というか発言するなんて思えないのよ。だから、私と玲香ちゃん、同じような、というよりも同じ何じゃないかなって思ってる」


「同じ、ですか?じゃあ、あの写真に写ってた僕と玲香ちゃん、あの玲香ちゃんは?」


そうだ。写真は物理的な証拠だ。それに目の前にいるのは如月さんだ。玲香ちゃんじゃない。同じ人が同時に存在するなんてことはあり得ない。


「たぶんだけど。あの玲香ちゃんがオリジナルで、私は玲香ちゃんの記憶かなんだか分からないけど、玲香ちゃんが体験したことを知っているんだと思う。まぁ、それだと、本当の私はどこにいったの?ってなるんだけどね」


自嘲気味にそう言った如月さんだけど、そう考えれば合点がいく。そう考えていたら如月さんは言葉を続けた。


「でもね。私も紅月と一樹、一樹と同じように二人に似たような雰囲気を感じることがあるの。だから、私と似たような感じ……、似たようなじゃないか。簡単に言うと紅月と一樹、中身が入れ替わってるんじゃないかなって。そう考えると、今までの違和感がなくなるの。私の中の玲香ちゃんは紅月の中にいる一樹を、今私の目の前にいる一樹は私の中の玲香ちゃんと、オリジナルの玲香ちゃんを見ているの」


「えっと……そう考えると、僕は玲香ちゃんのことが好きで……あれ?」


確かにわかりにくい。


「ちょっとまってて。私も頭の中を整理するから」


如月さんはそう言うとベイサイドに行こうと提案して、僕は彼女の後に続いた。


「いらっしゃい。今日は奏ではいないよ」


「大丈夫です。奏ちゃんに会いに来たんじゃないので。それと店長さん、紙とペンを貸していただけますか?」


私は店長から紙とペンを受け取っていつもの窓際の席じゃなくてカウンター席に一樹と並んで座った。そして、ベイサイドに向かう途中に考えていたことを紙に書き始めた。


「店長さん、ちょっといいですか?」


私は書いた紙を店長に見てくださいと声をかけた。幸いにしてお客さんは私達だけだったので、店長はそれに応じてこちらに来てくれた。


「ふぅむ。これは?」


「相関図です」


「なるほど。で。如月さんの下に(吉谷玲香)、九条くんの下に(横原一樹)、横原くんの下に(九条紅月)と書いてあるのは?」


「その人達にカッコで書いた人たちの記憶というか人格が入ってませんか?」


「それをなぜ僕に?」


「一番の傍観者だったからです。それと、奏ちゃんといつも話していたからです。もしかしたら夏海もかも知れませんけど」


私は今紙に書いた3人以外の店長さん、奏ちゃん、夏海は今回の一連の出来事を知っていると推測した。冷静すぎる。私達だけがあたふたしていたのにこの3人はその様子をいつも冷静に見ていた。


「なるほど。感が鋭いね。ここで僕がとぼけても良いんだけど、どのみち奏がチョンボしてバレるだろうから、僕から説明するよ」


案外簡単に店長は種明かしをしてくれた。その内容は信じられない内容だった。この世界は記憶の世界。入れ替わっているのは人格じゃなくて記憶。写真を持っている吉谷玲香、という人物は私の予想通りのオリジナル。紅月と一樹が入れ替わっていたのが分からないけど、それも理由を聞いたら教えてくれた。


「店長、それ本当なんですか?」


一樹が驚きの声をあげた。私もびっくりしてる。というより、誰が聞いてもびっくりすると思う。


「店長さん、僕たちはなんでこんな世界にいるんですか?」


一樹が私が考えていることと同じ内容を店長に聞いてくれた。


「それも言っておいたほうが良いのかな。この相関図に書かれている通り、如月美桜さん、あなたの記憶はこの世界に存在していない。本来は九条くんの記憶もこの世界に存在していないはずだったんだけどね。さっきもちょっと言ったけど、この世界の吉谷玲香という人物、そして君、横原一樹という人物は私の予定ではこの世界に存在していないはずだったんだよ」


「なぜですか?」


「本来の目的にそぐわないからさ。この世界はずっと独りでお互いに心を伝え合うことができずに高校生活を終えてしまった如月美桜、九条紅月という人物が過去の記憶でその思いを果たす、というのが本来の目的だったんだ。でも実際には君と吉谷玲香、というイレギュラーが発生している。それが原因で今の状況になっている。僕の権限で君と吉谷玲香という存在をこの世界から切り離すこともできるんだけど……。横原一樹くん、君は自分自身の記憶のかけらがあるようだね」


「はい」


そう答えると店長さんはこう続けた。


「君の中の九条紅月をこの場で消し去ることも僕にはできるけど、如月美桜さん、あなたはどうしますか?今、目の前にいるのが、現実世界で好きだった九条紅月くんです。見た目は横原一樹くんだけどね。消し去っても良いのかい?」


僕と玲香ちゃん、一体どういう関係なんだ。玲香ちゃんの言葉通り、僕が例の告白をして写真にあったように僕と玲香ちゃんは付き合っているのだろうか。その付き合っていたという記憶を九条くんと如月さんに入れて、果たせなかった恋の記憶を体験させているとでも言うのだろうか。だったら……。


「ずいぶんと悩んでいるようだね。如月美桜さんも悩んでいるようだね」


店長は優しくそう言ったけども、起きている内容は優しくない。僕はどうすれば良いんだ?


「僕はね、今のままで良いと思ってるよ。この世界で君たちは考えている。成長している。現実世界に戻ってもそれは消えないよ。だから君たちの思うように進みなさい」


お客さんが来て店長が僕たちの前から去った後に、如月さんと今聞いた内容について相談した。結論はこのままの状態で自ら考えること。中身が誰であろうと、この世界ではそれぞれがそれぞれの考えを持って行動している。だから僕は自分の中の九条紅月という記憶を消さない選択をした。

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