暑い日の出来事 みんなで巽を怖がらせよう!夏のホラースペシャル!(4)
「暑い―。」
我が家のエアコンは開店休業のし過ぎてもう閉店した。
子どもにとってはこの暑さは殺人的だろう。
「ごめんね。エアコン無くて。」
申し訳無さで目線を反らす。
「アイス~」「も切らして無いんだ。」
最近電気がそもそも流れていない。
水道が遂に昨日途切れた。
不味い、もうそろ不味い。
「暑い~~」
子どもの顔が紅くなっていく。
違和感を感じる。
額に手を触れると熱くは無い。
というか……
触れられない。
あれ?そう言えばこの子は誰だ?
我が家で転がるこの子は誰だ?
僕に家族は居ないし、そもそもこんな所にわざわざ預けるなんて正気の沙汰では無い。
あぁ、そうか…………そういう事か。
「僕?帰ろうか?もっと涼しいところが有るよ。」
「………ん。」
そう言って幽かな僕の手を差し出した。
そうだ……僕は死んだんだった。
少し前にここで死んで、電気は止まり、水も止まり、肉体は朽ち始めようとしていた。
たった一人で死んでいたんだった。
「行こうか………僕?」
「…………ん。」
幽かな僕に連れられて子どもは部屋を出て、てくてく歩いていく。
人気の無い道路の端を歩き、車の多い大通りに出る。
「さぁ、この先だ。」
「この先……涼しいの?」
「あぁ、勿論。とても、涼しいよ。」
幽かな手で子どもを引いて僕は彼を連れて行く。
「どうしたんだい?僕。」
「お兄さんが涼しいとこに連れてってくれるって………」
「お兄さん?そんな人は居ないけど……君………迷子?」
「?」
これで良い。
クソみたいな暑さでやられて死んだ奴を一人連れてって何になる?
お断りだ。
暑さで死んだ僕の出来る事は熱さに唾吐くだけだ。
水道止められた家から異臭がすれば誰か気付くだろう。
じゃぁな。僕。
暑さに気を付けて、長生きしろよ。