9話 『強敵との邂逅』
ギガ・マンティスの鋭利なカマがカイト目掛けて勢い良く振り下ろされる。
その一撃は大木も断ち切る威力。まともに受ければ死は免れない。
「危ねぇっ!?」
カイトは寸でのところで後方に跳び、何とか一撃を躱した。
「……今のは……【見切り】の効果か?」
【剣士】の中に、【見切り】という名のスキルがあった。
動体視力と反射神経を向上させるスキル。
ギガ・マンティスの攻撃は、一般人では目で追えぬ程のスピードだったのにも関わらず、カイトが難を逃れたのはこのスキルと上昇したステータスのお陰である。
「例の凶暴化……ではないか?
何というか、あのゴリラから感じた殺気が無い……」
思考を巡らせるも、魔物は待ってはくれない。
ギガ・マンティスは更にカイトの頭目掛けて鋭い突きを入れる。
「ぐっ……!」
カイトは身体を捻って辛くも躱す。
カマが頬を掠めた痕がヒリヒリ痛む。
カイトの中に死への恐怖が溢れるも、出来るだけ冷静であるように努める。
「クソ……やらなきゃやられるってか!?」
カイトは剣を鞘から抜き、戦闘態勢をとる。
スキル【剣の心得】で無意識的に構えの精度も高まっていた。
そしてカイトに再び凶器が振り下ろされる。
「【シールド】!」
カイトは覚えた魔法【シールド】を発動し、ギガ・マンティスの一撃から身を守る。
ガキン!という音と共にシールドの崩壊も始まるが、その隙をカイトは狙った。
「……せいっ!」
ギガ・マンティスの腕目掛けて剣を振るう。
ギガ・マンティスの腕はなんの抵抗も無くスパッと切れた。
「……やっぱり硬いのはカマだけか!」
ギガ・マンティスが狼狽している内に、もう片方の腕も切り落とす。
ギチギチという音を立てながら飛び立とうとした所をカイトの剣が頭と胴体を真っ二つにする。
しばらくの痙攣の後にギガ・マンティスは力尽きた。
「はァ、はァ……!
か、勝ったのか……俺が……?」
戦闘中は無我夢中だったが、自分の身体が自分の物でないかの様に素早く、そして力が強くなっていた。
改めてカイトは「レベル」と「スキル」の重要さを認識した。
「……レベル上がってら……5か
レベル3がレベル30倒してこれか……
やっぱり上がりにくいのかねぇ……」
その後カイトは【狩人】にスキルポイントを振り、【解体】スキルを手に入れ、ギガ・マンティスの素材を幾らかアイテムストレージに入れた。
「【大蟷螂の鋭刃】、【大蟷螂の薄羽】に【大蟷螂の目玉】……ネーミングが某ハンターゲームっぽいなぁ……」
カイトは倦怠感を抱きながら、アリッタの宿へと帰って行く。
「……そういや、何でいきなり襲ってきたんだろ。餌とでも間違えたのか?」
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「……ギガ・マンティスをあんなに簡単に……」
カイトが去った後、1人の少年が木陰から姿を現す。
「魔法も使ってたよな……一体何者なんだ?」
カイトの知らないところでカイトの株が上がり始めていた。
その事をカイトが知るのはもう少し先である。