6話『スタート』
カイトとステラ、リリアの3人は一悶着あった翌日、揃ってギルドに向かっていた。
パーティーとして一緒に行動することになり、取り敢えず今後の方針を決めようということだった。その道中、
「どうしてわざわざギルドで?
別にリリアの家でも出来ただろ?」
「旅をする以上クエストを受ける事も多くなるだろうから、取り敢えず簡単なクエストを見てみようって話よ。
まあ私達はランクも低いから……
受けられるとしても薬草の納品とか、弱い魔物の討伐依頼くらいでしょうけど」
「ランクってどうやって上げるんだ?」
「ある程度の実力が認められて、かつクエスト受注に意欲的であること……ですかね?」
「地道にやるしかないってことね……
まあここに滞在するのも今日まででしょうし、今のうちにやる事をやっておかないと」
そうこう話しているうちにギルドに到着した。
カイトからしたらいい思い出では無いが初戦を繰り広げた場所である。なんとなくだが悪いイメージがある。
「あ、カイトさん!
良かった……昨日はタイミングが合わなかったのですがお話が!」
ギルドに入るなり受付嬢に話しかけられた。
「……俺何かやらかした?」
「昨日の男の件じゃない?
悪い事では無いと思うけど」
「まあそうですね。昨日、ウッズさんを憲兵に引き渡したのですが、彼を元に悪質な冒険者が芋づる式に見つかりまして……
カイトさんに報奨金が贈呈されるそうです。」
「えぇ……
別にお金目的じゃなかったんだけど……」
「まあそう言わずに。
実際にカイトさんの働きは非常に役立った訳ですから……
ギルドを介してお渡ししたかったのですが次にいつお越しになるか分からなかったので報奨金受け取りの際は憲兵の駐屯地に……」
などと言われた。
文無しとまではいかないまでも資金面では不安があったのだ。貰えるものは貰っておく。
「……さて、これからどうしようか。」
「……憲兵からの報奨金なんて滅多にありませんよ?何でそんなにしれっとしてるんですか……」
「……というかいくら位貰えるのよ。」
「さっき明細貰った。ほれ」
「「……何ですか(なの)この額!?」」
明細書には50,000ゴルドと書かれていた。
50,000ゴルド……つまり約10万円である。
向こうではまあ学生には過ぎた額かもしれないが驚くほどの額でもない気がする。
この世界の物価が全く分からない。
「……そんなに凄いか?」
「アンタ本気で言ってる!?
たまに常識無いなとは思ってたけど流石にその認識はマズいわよ!?」
「こ、これだけで王都の一等地が十分買える額です……どうしてこんなに……?」
……10万で土地が買えるだって?
元の世界では有り得ない事だが……
待て、確か今のこの武器……
「おい待て、この武具が800ゴルドだぞ?
流石に物価がおかしすぎるだろ」
「「…………?」」
「……あれぇ?」
どうやらこの辺りの価値観というか……
物価は恐ろしい程不安定のようだ。
普通は1000ゴルドで1年間十分に生活できるらしい。
確かになまくらとはいえ剣が1000円の時点で大分おかしいとは思っていたが……
ちなみにこの時初めて知ったが、ゴルドより下にピリカという単位があり、100ピリカ=1ゴルドらしい。
日本円における2円=1ゴルドのようだが、物価的に言えば1ピリカ=10円といった計算だ。
……もうよくわからん。
カイト達はその後雑談を混じえながら方針を話し合い、次に目指す場所を決めた。
次の目的地はトルカから少し離れた都市「アリッタ」。
理由としてはトルカよりもギルドの規模が大きく、低ランク向けの依頼も多いようだったからだ。
その日憲兵の駐屯地に行き、ホクホク顔で次の土地に向かうのであった。