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5話 『屋敷訪問、そしてテンプレ』

「……ここが、リリアの家なのか?」


「はい。

……どうぞ、入ってください!」


リリアに招待され、リリアの家に泊まる事になった俺とステラは、リリアの家を見て驚いた。

リリアが自分の家と言って連れてきた場所は、屋敷と呼ぶに相応しい程大きな家だったのだ。

家の中に入った俺達は、リリアの事についてより詳しく知ることになった。


「……立派な屋敷じゃないか。」


「はい、亡くなった両親が遺したものですけど……」


俺とステラは応接間に通され、恐らく紅茶と思われる飲み物を出された。

……後で知った事だが、この世界の食料事情はやはり元いた世界とは違う。

牛やら鶏やら、家畜は居るようだが、数が少なく高級食材との事。代わりに果物や野菜の料理が一般的のようだった。

……だが、やはり日本の食べ物が恋しい。

米だ、米が足りない。というか無い。



「こんなお屋敷に住んでるのに、何で冒険者に?」


「俺も気になってた。

財産が無いわけでもないだろうに」


「……大したことはないんです。

ただ外の世界を知りたかっただけ……

両親がまだ生きてた頃は窮屈な引きこもり生活で、憧れだったんです。

……あんな事になってしまいましたけど……」


それからハッとして、リリアは慌てたように頭を下げた。


「……き、今日はありがとうございました!

その、凄かったです!あの、男の人をぶんっと投げ飛ばすの……」


「あぁ、あれね……

正直、上手くいくなんて思ってなかったんだが……まぁ、あれは偶然の産物と思ってもらって良いよ」


……実際、偶然に条件が重なったのだ。

相手が自分を下に見ていたこと、一対一であったこと、相手の武器がナイフだったこと、相手が柔道という概念を知らなかったこと……

様々な偶然が重なった結果だ。


「カイト……まさかとは思うけど死ぬ気だったんじゃないでしょうね!?」


「まさか。一応考えてたよ」


……まぁ、人を殺すのに抵抗があったというのも事実ではあるのだが。


話が一通り終わった後、俺は出された飲み物を飲んだ。


「……美味いな。やっぱり紅茶っぽい……」


「コウチャ?」


「え?あぁ、すまん。何でもない」


「コウチャ……は分かりませんが、これは『スカレット』ですよ。上質なシュガーを溶かしこんでいるのでほんのり甘くて美味しいでしょう?」


「ちょ、シュガー!?

高級品じゃない……本当にお金持ちなのね……」


「シュガー……砂糖……だよな。

……意外と食材は同じなのか?」


それにしても、砂糖が高級品なのか。

昔の人間でもあるまいに、随分物の価値が違うようだ。逆に安いものもあるかもしれない。


「えっとそれでですね、その……」


リリアが何かモジモジしながら言ってきた。


「何だ?」


「……先程もお話した通り、私どこかのパーティに入りたくて今日はギルドに行ったんですが、中々話しかけられず……

……カイトさん、わ、私をパーティメンバーに入れてくださいませんか!?」


突然の願い出で少し驚いたが、俺は考える。

エルフであるステラは弓に長けていて支援戦闘が可能だ。かく言う俺もLv1ではあるが今日の事でLv1とは生前の自分の肉体を基準にしたものだと分かった。戦えないことは無い。

だが…………


「……俺としては嬉しいが……

……戦えるのか?」


人間の、しかも性格のおっとりしている彼女が戦えるのか不安だった。


「も、もちろんです!

父から剣を教えて貰ってましたし、魔法も少しなら……!」


……何か面接官になった気分だ。

しかし、この世界では女の子にも剣を教えるのが普通なのだろうか?

正直リリアの武器といえば可愛らしくて子供っぽい顔には似つかない胸の2つの大きな塊くらいだと思っていた。

……ドスケベかよ俺。


「分かった。

多分俺、まともに武器使われたらリリアやステラより弱いけど……良いか?」


「は、はい!ありがとうございます!」


屈託のない無邪気な笑顔で喜ばれた。

ただ同行を許可しただけだが、こう喜ばれると悪い気はしない。

「ぐぬぬ……」という表情で俺とリリアを見ているステラはなんなのだろうか……


「良ければ、いつか剣を教えてくれ。

剣はその……まともに練習したことは無いんだ」


「そうなんですか?

お昼の戦いでは普通に良い構えでしたけど……」


「まぁ、遊び程度ならやったことはあるから」


言うまでもなく、ガキの頃やったチャンバラだが。意外と通じるものがあるらしい。



「あ、そうです!

良ければ、お風呂に入ってください!」


「お風呂まであるの?どんだけ金持ちなのよ……」


「風呂か……有難いな」


そういえば昨日は入ってなかったな。

どうやら風呂もこの世界では富裕層の物らしい。

温泉はあるのだろうか……毎日ではなくともたまにでいいから風呂には入りたい。


「男女別れてますので、いつでも入れますよ!」


「……俺は少し後に行くよ。

ステラ、リリアと一緒に入ってきたらどうだ?」


「えぇ、そのつもり。

行きましょう、リリア」


「はい!

……あ、お風呂は応接間からでて右側の突き当たりにあるのでご自由に……」


「あぁ、ありがとう」


ステラとリリアが出ていった後、俺は1人考えていた。これからどうするか。

取り敢えずギルドには入った。男1女2ではあるが仲間も手に入れた。

そろそろ剣も訓練するべきだろうか。

魔物とやらとの戦闘にも慣れなければ……

そういえばレベルってどうやって上がったと知るのか……


「……キリがないな」


俺は諦めて風呂に向かうことにした。

風呂はすぐに見つかった。入り口が2つ、それぞれ青と赤のパネルがはめられていた。

俺は無意識に青の方に入り、脱衣場で服を脱いだ。

……服洗ってないな。ずっと同じ学校の制服だし。

俺はタオルを手に取り、風呂へと続く扉を開けた。

……人影があった。


「何だ?使用人で…………も…………?」



……湯けむりの先には、一糸纏わぬステラとリリアの裸体があった。


「……………………」


「「……………………」」


俺達は全員、一瞬思考を停止させる。

……一瞬の静寂のあと、


「「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」」


少女2人は咄嗟に自身の胸元と股の辺りを手で隠し、同時に悲鳴をあげた。


「あ、アンタ何でここに!?」


「か、カイトさん、あ、あの…………」


2人の健康的な女体に一瞬理性がトびそうになるのを抑え、回れ右をして……


「誤解だぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


腰にタオルを巻き、服を取り、着ずにそのまま脱衣場の扉を出て、隣の赤のパネルの扉をよく見る。


「…………『男』…………

マジか……真逆とか奇跡的すぎるだろ……」


この世界では、男性は赤、女性は青のイメージが常識らしい。無意識に元の世界の常識に従ってしまった……


「……どうするか……」


男性の方の浴場に入り、どうすれば許して貰えるか1時間以上黙考する。

俺がのぼせてフラフラになったことは言うまでもない。


……その後の事はよく覚えていない。

ただ土下座する俺と、赤面しながら怒鳴るステラ、同じく赤面してプルプルと震えるリリアというビジョンだけは覚えている。



……翌日、俺達は少しギクシャクしながらもギルドへと向かった。



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