10話 『異端』
宿に戻ったカイトはベッドに入り、手に入れた素材はどうしようかなどと考えながら眠りについた。
そのまま何事もなく朝を迎え、ベッドを出る。
カイトは朝に強い方だった。
「そういやあの神からの夢はもう見なくなったな……あれ1回きりなの?あの神ボコしたいんだけど」
愚痴を言いながら、カイトは宿の部屋を出てそのまま外へ向かう。
ステラは既に起きてきていたが、リリアはまだのようだった。
「おはよう。リリアはまだ寝てるのか?」
「おはよ。多分寝てるわね。
どうする?私起こしてきた方がいい?」
「頼む。俺が部屋に行くのもなんだし」
その後ステラがリリアを起こしてきた。
元々裕福な家庭出身だからなのか分からないがリリアは朝に弱いようだった。
何度も申し訳なさそうに謝っていたが別に気にしてはいない。
というかかわいい。
カイト達はアリッタのギルドに向かう。
アリッタのギルドはトルカの物と比べて外観からして大きく、実際に入ってみるとずっと広く、人もトルカよりずっと多かった。
「予想よりずっと大きいな。
広さもトルカの倍くらいはあるぞ」
「都市や村の大きさ=ギルドの大きさとも言えますからね……行ったことはありませんが王都はもっと大きいと聞いたことがあります」
そんな会話をしながらカイトはトルカのギルドの受付嬢から受けた説明の中に、
「ギルドカードを提示すればどこのギルドでも魔物の素材などを売却が出来る」
みたいな説明があったのを思い出した。
「取り敢えず、クエストを見てみましょうか」
「あー……ちょっと待っててくれ。
売りたい物があるから行ってくる」
「売りたい物?
アンタ何か持ってた?
【ウリ・ボア】の素材……ではないわよね。
アンタ剥ぎ取りとか出来なかったし」
「うーん……今は出来るというか」
「あ、アイツだよアイツ!」
受付まで行こうとすると、近くにいた少年がこちらを指さして騒いでいた。
「……あんな装備の奴がか?
何かの間違いだろ。」
「ギガ・マンティスなんてベテランの冒険者や傭兵でも殺される事があるんだぞ。
あんなガキが倒せる訳ねぇ」
そして周りのガラの悪い傭兵っぽい雰囲気の厳つい男達がヒソヒソと話していた。
「……何なの?アイツ……」
「さあ?何か言ってるけど……まあどうでもいいな」
カイトは無視して受付に向かう。
……何故かギルド内の皆がこっちを見て話してる気がする。
装備なんかもボロで笑われても別に気にしない性格であるため、アイテムストレージから袋に入れたギガ・マンティスの素材を受付に差し出す。
「えーと……素材の売却ですか?」
「そうだ。
えーと何だったか……
あぁそう、【ギガ・マンティス】の素材で……」
「「「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」」
カイトが【ギガ・マンティス】と言った瞬間周りがザワついた。
さっきの傭兵風の男も、受付嬢も、後ろのステラとリリアも、ギルドの全員が驚愕の叫びを上げた。
「ほら、言ったじゃん!
アイツだよ、昨日俺が怒らせちまったギガ・マンティスを殺したの!」
「し、信じるか!どっかから盗んだんだ!」
「いい加減信じろォ!」
「……何なんだ一体……」
「あ、アンタ、その魔物って……
その、でっかいカマキリの魔物……?」
「あぁ。
デカかったなー……2メートル以上は軽くあった。正直ビビった」
「ぎ、【ギガ・マンティス】は冒険者ランクB以上推奨の強力な魔物です!
とても私達Fランクが倒せるような魔物では……!」
「え?そうなん?
確かに強かったけど……そんなに?
……あ、受付さん、ちなみにどのくらい価値があるんだ?」
「「「サラっと流すなぁぁぁぁ!!」」」
この日、Fランクで【ギガ・マンティス】を倒した猛者としてカイトは一躍有名になってしまった。
結局素材はギルドに売却し、全部で5000ゴルドになった。この世界では大金のようだ。
これをキッカケにカイトは少しずつ周りから尊敬と畏怖の目で見られるハメになる。