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緑の鍵 少年と少女の物語  作者: レイス
第一章 少年達の探検
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いつもの四人で

 「・・・じゃあ、あの森の奥の遺跡に行くのが目的?」

 森に向かうために砂漠を移動している時、ザックスとティックは、リリーに今回の行き先と目的を話した。

 「ああ。あの遺跡は、発見されたばかりでまた調査が済んでいない。何か、面白いものが見つかるかもしれない。」

 「でも、昔の機械がまだ動いていて、危ないかもしれないから、そんな所に行くなんて許してもらえないからね。だから、僕とザックスは、近くで遊ぶみたいな感じで誤魔化したんだ。」

 「なるほどね・・・。それなら、尚更、私がいてよかったわね。」

 「どうしてそう言い切れるの?リリーは、僕やザックスのように、戦うの上手じゃないはずだよ?」

 「それは、今までの話よ。今の私には、これがあるんだから。」

 リリーは、腕に付けている簡易型収束機ギャザーを見せる。

 「今の私は、収束術が使えるのよ。」

 「収束術か・・・確かに、それがあれば、心強いな。」

 「でしょ?これがあれば、私だって戦えるんだから。」

 「収束術・・・先代文明の遺物を基にした技術だよね。それって、大丈夫なの?」

 「大丈夫よ。私を信用しなさい!」

 自信満々のリリーとは対照的に、ティックは不安げであった。

 (・・・収束術・・・。この星にある、目に見えない属性元素エレメンツってものを収束して使う技術だって聞いたけど・・・。・・・僕は不安だな。遺ってた昔の技術で使えるものを、そのまま使ってるらしいし。それに、収束機チャージャー簡易型収束機ギャザーも、発見された残骸を今の技術で無理矢理動くようにしているって聞いてるし。・・・大丈夫なのかな?)

 「でも、それはできるだけ使わないようにした方がいい。」

 しかし、自信満々なリリーに対し、ザックスは忠告する。

 「姉さんが言ってたけど、収束術はかなり疲れるらしい。頻繁に使えば、リリーの負担になるはずだ。」

 「分かってるわ。私だって、使えても三回が限度だもの。連発なんてしないわ。」

 「三回?それ以上使えないの?」

 「ええ。これ、意外と集中力を使うのよ。三回も使えば、もうクタクタなのよ。訓練を積めば、ミーアさんみたいに何度も使えるけど・・・今の私じゃ無理よ。」

 「それじゃあ、尚更それは、最後の切り札だ。俺が指示するから、それまでは使わないようにするんだ。」

 「分かったわ。使う指示は、ザックスに任せるわ。」

 リリーは、ザックスに期待されていると感じたのか、誇らしげに言葉を返す。

 そんなリリーを、ティックはやや呆れた様子で見ていた。

 (・・・まだ三回しか使えないのに、術師気取りなんてね。よっぽどザックスにいいところ見せたいのかな?まったく、いつもこうなんだから・・・。)

 いつものことだとはいえ、リリーのザックスに対する自己アピールに、ティックはうんざりした。


 しばらくして、三人は森の入口に到着した。森は、まだ日が射している時間帯であるにも関わらず、薄暗かった。

 「・・・明るい時に来ても、ここは不気味だね。」

 「ああ。よく入る俺も、怖いと思う時がよくあるよ。」

 「・・・。」

 「まあ、ここの地理はだいたい頭に入っているから大丈夫・・・。・・・?リリー?」

 リリーの方を何気なく向いたザックスは、リリーが身体を震わせているのを見た。表情も、緊張してるのか、怯えているのか、明らかに硬かった。

 「・・・リリー、無理ならここで待っていても・・・。」

 「!だ・・・大丈夫よ!どうせ、いつかは私も村の手伝いでやらなきゃいけないんだから、今日は、その練習よ!」

 「・・・分かった。でも、無理だと思ったら、言ってくれ。あくまで今回は、探検なんだ。村の仕事じゃない。」

 「・・・ええ。」

 ザックスに言葉をかけられたことで安心したのか、リリーは少し落ち着いたようだった。

 「よし、それじゃあ行く・・・。」

 「・・・やっぱり、リリーだった・・・。」

 「!?」

 突然、背後から声が聞こえ、三人は後ろを向く。

 そこには、セシリアが立っていた。

 「・・・セシリア・・・どうしてここに・・・?」

 「・・・ザックスに・・・付いて行きたかったの・・・。」

 「付いて行きたかった?だったら、村を出る時に言ってくれればよかったのに。」

 「・・・だって・・・。」

 セシリアは、リリーの方を向く。

 「・・・リリーがいたんだもん・・・。」

 「え?」

 「・・・ティックと遊びに行くって言ってたのに・・・リリーがいたんだもん・・・。」

 「何よ!私がいたら悪いの?」

 「・・・悪い。どうせ、ザックスに無理矢理頼み込んだはず・・・。」

 「別にいいじゃない!行くなら大勢の方が面白いだろうし!」

 「・・・じゃあ、私も付いて行っても問題ない・・・。」

 「ちょっと!何でそうなるのよ!」

 「・・・だって、大勢の方が面白いんでしょ?・・・だったら、私もいた方が面白くなるはず・・・。」

 「な・・・!」

 「・・・ねえ、ザックス。・・・駄目・・・?」

 「・・・分かった。セシリア、一緒に行こう。」

 ザックスは、少し考え込むも、すぐに答えを返した。 

 「・・・やった・・・!」

 ザックスの言葉に、セシリアは笑顔になり、目を輝かせた。もっとも、包帯で隠れた顔では、その表情を窺うことはできなかったが。

 「ちょ!ザックス!どうして!?」

 「ここまで付いて来たのに、仲間外れになんてできない。・・・それに、リリーも言ったじゃないか。大勢の方が面白いって。だったら、皆で探検した方がいい。」

 「そ・・・それは・・・。」

 自身の言ったことであるが故に、リリーは反論できなかった。

 「それじゃあ、皆。行こうか。」

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