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緑の鍵 少年と少女の物語  作者: レイス
第三章 謎の敵現る
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強敵現る

 「・・・!」

 その時、セシリアの表情が強張る。顔が包帯で隠れているせいで、周りの大人達やザックス達には見えなかったが。

 「・・・ザックス・・・!」

 「?どうしたんだ、セシリア?」

 「・・・殺気・・・!・・・それも・・・大勢・・・!」

 「!皆!敵がいる!」

 「何だと!?」

 ザックスの突然の発言に困惑する大人達。だが、すぐにそれが事実であることを知る。

 突然、大人の一人が倒れたのだ。首から夥しい血を流して。

 「!?」

 「敵だ!」

 武器を構えるザックス達。その敵は、倒れた大人の側にいた。黒い服を着、黒いフードを被り、手には血に染まった短剣が握られていた。

 「・・・いつ近付いてきたんだ!?全然気が付かなかったぞ・・・!?」

 男に警戒する大人達。だが、次の瞬間、別の大人も首から血を吹き出して倒れた。

 「!?」

 なんと、別のフードの男がそこにいた。それどころか、いつからいたのか、多数のフードの男がザックス達を取り囲んでいた。

 「・・・こんなにいたのか・・・!?全然気が付かなかった・・・!」

 「皆、私の周囲に円陣を組んでください!ザックスとリクさんも!ティック達は私から離れないで!」

 ミーアは、この場にいる人間に指示を飛ばす。大人達は、ミーアを守るように円陣を組み、フードの男達に向かい合う形になる。ザックスとリクも、武器を構えていつでも敵を迎撃できるようにした。

 ティック、リリー、セシリアの三人は、ミーアの側にいるような形になる。ティックは、いつでも弓を撃てる体勢を取り、ミーアも収束術の発動準備を行う。だが、リリーは狼狽えるばかりで、準備する余裕がなかった。セシリアはというと、とても静かであったが、周りの人間は、怯えているのだと思っていた。

 「・・・。」

 男達は、フードのせいで表情を全く窺うことができなかったが、それでも感じ取れるほどの殺気を醸し出していた。ザックス達を生かして帰す気がないことは明白だった。

 「・・・。」

 男達は、一斉にザックス達に襲い掛かった。一番攻撃が集中したのは、ザックスの方だった。子供であるザックスは、一番倒しやすいと判断したのだろう。だが、それは思い違いだった。

 「!来たな!」

 ザックスは、剣で敵の短剣を受け止める。男は、そのまま押し切ろうとするも、予想外に強いザックスの力に突破できない。

 「そこ!」

 その瞬間を狙い、ティックは矢を射る。男はそれを易々とかわす。

 (完全に当たったと思ったのに・・・!)

 敵の反射神経に驚愕するティック。だが、だからといって攻撃の手を緩めるわけにはいかない。再度、矢を射る。敵は、再びそれをかわしてしまうが、それが命取りとなった。

 「ファイアバレット!」

 ティックの矢をかわした男に、火の玉が直撃する。収束術の準備をしていたミーアが、敵の隙を突いて術を発動したのだ。

 ファイアバレット。火属性の一番弱い収束術である。だが、腕の立つ収束術士が使えば、そして、人間が相手なら、致命傷を与えることもできる。これを見た誰もが、男を倒したと思えた。

 「!!!」

 だが、男は倒れることなく、踏み止まった。それには、大人達はおろか、ミーア自身も驚愕する。

 (ファイアバレットに耐えた!?・・・まさか、あの服は収束術に対する防護服!?そんな服を着ているのは、政府の人間くらいのはず・・・!・・・何者なの!?)

 だが、その隙を見逃さなかった者のいた。ザックスである。踏み止まったとはいえ、体勢を崩したことに変わりなかった。ザックスは、男の身体を剣で切り裂く。男は、口と傷口から夥しい血を流し、その場に倒れた。

 「まず一人!」

 「こっちも一人!」

 ザックスが敵を倒したと同時に、リクも敵の一人を串刺しにしていた。ザックスに集中していたことが災いし、その隙を突かれたのだ。それからザックスとリクは、ティックの援護と二人の連携で敵を次々と仕留めていく。

 だが、他の大人達は芳しくなかった。抑えるのに必死で、倒すまでには至らなかった。だが、そんな彼らをミーアが援護する。

 「ファイアボム!」

 ファイアバレットより強力な火属性の収束術。それが、敵の一体に直撃する。さすがにこれは耐え切れなかった様子で、敵は黒焦げとなり、その場に崩れ落ちた。

 「リクさんとザックス以外の人は、防御に専念してください!私が仕留めます!」

 ミーアの指示で、防御に専念した大人達は、ミーアの術が来るまでとにかく耐え切り、敵は、ミーアの術で、一人、また一人と倒されていく。そして、十分くらいが経った。ザックス達は、ようやく敵を全滅させることができた。

 「・・・被害の確認を。」

 「・・・五人、死にました。怪我をした人間も、十数名ほどいます。」

 「・・・そうですか・・・。」

 犠牲者が出たことに、ミーアは心痛な面持ちとなる。ある程度の被害は覚悟してはいたが、やはり、今まで一緒に暮らしてきた人間が目の前で死ぬのは心情的に応えたのだ。

 「・・・これで、全部だろうか?」

 リクは、敵が全滅したにも関わらず、警戒を解いていなかった。ザックスとティックも同じだった。

 「・・・分かりません。でも、まだ隠れている可能性は否定できません。」

 「・・・だね。この森、隠れるにはもってこいだもん。」

 「・・・。」

 そんなザックスとティックとは対照的に、リリーは目の前の光景にすっかり恐怖してしまったのか、その場に座り込んで動かなかった。

 「・・・大丈夫・・・?」

 そんなリリーを気遣うように、セシリアが側にいた。セシリアは、心配そうな顔をしていたが、やはり、顔に巻かれた包帯のせいで、表情が窺えなかった。

 「・・・ごめん。・・・ちょっと・・・無理・・・。」

 「・・・。」

 「・・・君達、ここで何をしているんだい?」

 「!?」

 突然、ここにいる人間の声ではない声が聞こえてきて、ザックス達は声のした方を向く。

 そこには、黒いロングコートを着た、白い髪の少年がいた。少年は、まるで人形のように整った顔立ちをしており、美少年という言葉が相応しかった。だが、ザックスが感じたのは、そんなありふれたことではなかった。

 (・・・いつからいたんだ?・・・全然、気配を感じなかった!・・・こいつらと同じだ!)

 先ほどの敵と同様、まるで現れるまで気配を感じさせない少年に、ザックスは身構えるのだった。

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